ある、秋の日。私とメリーはいつも通り家路に就くべく電車を待っていた…が、そこへ入ったのは電車の遅れを告げる放送だった。
涼しいから寒いへと変わりつつあるこの季節に既に待つこと一時間、寛容なことで知られる私ではあるが、さすがに怒りのぶつけどころを探していたのだ。
そんな時に不幸にも目にうつったのは鉄道会社の手先たる架線柱、私はそこにきらめく報復の足をふるったのだった…
「あーもういつまで止まってるのよ!」
私のしなやかな足が、武骨な架線柱を襲う。
電車はこない、車輌故障だかなんだか知らないけど、ひとまずその遅れを責めるべく行った私の正義の行動…だけど。
「いったーっ!?」
それは、強烈なカウンターによりたちまち終焉を迎えた。
…と。
「もう、蓮子ったら。何してるの?柱が倒れてきたらどうするのよ」
「いや、心配する相手が間違っていると思うわメリー。絶対私よりこいつの方が強いわ、どう見ても、かよわい乙女とコンクリート柱、強いのは一目瞭然でしょ!」
私は痛みに悶えつつ、隣で、『架線柱』の負傷を心配する友人に文句をつける。ちなみに、そんなのに喧嘩を売った自分の行為には目をつぶっておこう。
「そうかしら?私は蓮子キックはベトンの柱をも砕くと思っているのだけど?」
きょとんとしながら半ば本気の声で言った友人に、私はその『蓮子キック』をお見舞いしようかとも思ったのだけど、あまりに大人げないのでやめておいた、こんな事で怒っていたらメリーの相手などつとまらない。
私は両手を腰にあて、平和的な反撃を試みようとした。
「はぁ、私をどう思っているのか知らないけどね、メリー、私は…」
だが、私のかよわさを言葉で伝えることで、実力行使を平和的かつ理性的な解決法に置き換えようとして言いかけた私に、友人はあろうことかこんな事を言ってきたのだ。
「怪しげな能力と無謀な行動力を兼ね備えた秘封倶楽部の特攻隊長!」
「せめて斬り込み隊長と言いなさい!」
それでも十分嫌…っていうかそういう問題じゃない!それに怪しげな能力持ってるのはあんたも一緒じゃない!!おもわず大声でどなってしまった…
そして、友人が私に対して抱いている印象を問いただそうと思った時、その友人はとても残念そうにこう言った。
「えーだって斬り込みだと戻ってきちゃうかもしれないよ?蓮子」
「残念そうな目で私を見ない!」
指を唇にあて、上目遣いでこっちを見て来るメリーに、私はひとまず攻撃を中止したことを後悔しつつ言ったのだけど…
「だって戻って来ちゃうとハラキリ見られないよ蓮子?」
「だから私はハラキリ隊長じゃ…ハラキリ?」
いや、話が思いっきり飛んだ気が…って何でハラキリ?
「え、だってカミカゼって飛行機で敵に突っ込んでそこでハラキリするんじゃないの?」
「色々と間違ってるわメリー!!!」
私の叫び声は青空へと飛んでいき…消えた。
「あのねメリー、あなたは日本に対して偏見を抱いているわ。いつの時代の『外国人』なのよ?」
一分後、私はメリーを前にしてお説教をしていた。
…っていうかメリー、そもそもあなたは私にそんなことさせようとしていたの?
「そうなんだ…私日本人ってことある事にハラキリしたりカミカゼしたりするイメージがあったんだけどね。仕事失敗してハラキリ…契約とりつけできなきゃカミカゼ、そんな日本の企業戦士が、この国の栄光の一時代を築いたんだと思っていたんだけど?」
明るく言う友人は、なんていうか…こう無邪気だった。だけどね、だけどねメリー。
「そんなしょっちゅうハラキリだのカミカゼだのされたら、日本人は今頃いなくなっているわ!」
っていうか国際社会から相手にされなくなる…
「え、ハラキリのしすぎでこんなに人口が減ってるんじゃないの?」
だが、渾身の力で放った言葉はあっさり返された。メリー、あなたは今までそんな風に考えていたの?私は友人の頭が非常に心配になった。
ついでにそんな友人とつきあっている自分の頭も。
それにしても新説ね、今の人口減の理由はハラキリ過剰だったのか。早くハラキリ禁止令を出さないと、ハラキリがハラキリを呼んで、結局ハラキリを止められなかった責任を感じた最後の人間がハラキリしてこの国は死に絶えるわ…
ああ、私はそんな事を考えた責任をとってハラキリをしないと…
勝手に思考を開始した私の脳、慌てて私は頭を振ってその思考を停止させる。
まずい、頭がメリーに浸食されている。メリーの精神汚染能力なら、下手したらなぜか自分がハラキリしなきゃいけない気がしてくる。
話を…変えよう。
「あのね、メリー、次の境界暴きの目的地だけど…」
「ハラキリって見られないのかなぁ」
「見れるかっ!」
いつも通りの秘封倶楽部の不思議トーク、いつも通り周囲の人間は足早に離れていく。しかし、ひとまず運転再開までの時間は潰せそ…
「…ご案内いたします。只今、電気関係のトラブルが発生した為、運行再開に遅れが出る見込みです。お客様にはお急ぎの所大変ご迷惑をおかけいたしますが、復旧までいましばらくお待ち下さいますようお願いいたします」
「…」
「もう、蓮子があんなことするから」
「そんなんで止まるわけないでしょっ!」
私たちの周囲に人はいない。私とメリーは、その後、『蓮子キック』の破壊力についての物理学的考察に入っていったのだった。
『次回、秘封倶楽部ハラキリ体験ツアーに続く』
涼しいから寒いへと変わりつつあるこの季節に既に待つこと一時間、寛容なことで知られる私ではあるが、さすがに怒りのぶつけどころを探していたのだ。
そんな時に不幸にも目にうつったのは鉄道会社の手先たる架線柱、私はそこにきらめく報復の足をふるったのだった…
「あーもういつまで止まってるのよ!」
私のしなやかな足が、武骨な架線柱を襲う。
電車はこない、車輌故障だかなんだか知らないけど、ひとまずその遅れを責めるべく行った私の正義の行動…だけど。
「いったーっ!?」
それは、強烈なカウンターによりたちまち終焉を迎えた。
…と。
「もう、蓮子ったら。何してるの?柱が倒れてきたらどうするのよ」
「いや、心配する相手が間違っていると思うわメリー。絶対私よりこいつの方が強いわ、どう見ても、かよわい乙女とコンクリート柱、強いのは一目瞭然でしょ!」
私は痛みに悶えつつ、隣で、『架線柱』の負傷を心配する友人に文句をつける。ちなみに、そんなのに喧嘩を売った自分の行為には目をつぶっておこう。
「そうかしら?私は蓮子キックはベトンの柱をも砕くと思っているのだけど?」
きょとんとしながら半ば本気の声で言った友人に、私はその『蓮子キック』をお見舞いしようかとも思ったのだけど、あまりに大人げないのでやめておいた、こんな事で怒っていたらメリーの相手などつとまらない。
私は両手を腰にあて、平和的な反撃を試みようとした。
「はぁ、私をどう思っているのか知らないけどね、メリー、私は…」
だが、私のかよわさを言葉で伝えることで、実力行使を平和的かつ理性的な解決法に置き換えようとして言いかけた私に、友人はあろうことかこんな事を言ってきたのだ。
「怪しげな能力と無謀な行動力を兼ね備えた秘封倶楽部の特攻隊長!」
「せめて斬り込み隊長と言いなさい!」
それでも十分嫌…っていうかそういう問題じゃない!それに怪しげな能力持ってるのはあんたも一緒じゃない!!おもわず大声でどなってしまった…
そして、友人が私に対して抱いている印象を問いただそうと思った時、その友人はとても残念そうにこう言った。
「えーだって斬り込みだと戻ってきちゃうかもしれないよ?蓮子」
「残念そうな目で私を見ない!」
指を唇にあて、上目遣いでこっちを見て来るメリーに、私はひとまず攻撃を中止したことを後悔しつつ言ったのだけど…
「だって戻って来ちゃうとハラキリ見られないよ蓮子?」
「だから私はハラキリ隊長じゃ…ハラキリ?」
いや、話が思いっきり飛んだ気が…って何でハラキリ?
「え、だってカミカゼって飛行機で敵に突っ込んでそこでハラキリするんじゃないの?」
「色々と間違ってるわメリー!!!」
私の叫び声は青空へと飛んでいき…消えた。
「あのねメリー、あなたは日本に対して偏見を抱いているわ。いつの時代の『外国人』なのよ?」
一分後、私はメリーを前にしてお説教をしていた。
…っていうかメリー、そもそもあなたは私にそんなことさせようとしていたの?
「そうなんだ…私日本人ってことある事にハラキリしたりカミカゼしたりするイメージがあったんだけどね。仕事失敗してハラキリ…契約とりつけできなきゃカミカゼ、そんな日本の企業戦士が、この国の栄光の一時代を築いたんだと思っていたんだけど?」
明るく言う友人は、なんていうか…こう無邪気だった。だけどね、だけどねメリー。
「そんなしょっちゅうハラキリだのカミカゼだのされたら、日本人は今頃いなくなっているわ!」
っていうか国際社会から相手にされなくなる…
「え、ハラキリのしすぎでこんなに人口が減ってるんじゃないの?」
だが、渾身の力で放った言葉はあっさり返された。メリー、あなたは今までそんな風に考えていたの?私は友人の頭が非常に心配になった。
ついでにそんな友人とつきあっている自分の頭も。
それにしても新説ね、今の人口減の理由はハラキリ過剰だったのか。早くハラキリ禁止令を出さないと、ハラキリがハラキリを呼んで、結局ハラキリを止められなかった責任を感じた最後の人間がハラキリしてこの国は死に絶えるわ…
ああ、私はそんな事を考えた責任をとってハラキリをしないと…
勝手に思考を開始した私の脳、慌てて私は頭を振ってその思考を停止させる。
まずい、頭がメリーに浸食されている。メリーの精神汚染能力なら、下手したらなぜか自分がハラキリしなきゃいけない気がしてくる。
話を…変えよう。
「あのね、メリー、次の境界暴きの目的地だけど…」
「ハラキリって見られないのかなぁ」
「見れるかっ!」
いつも通りの秘封倶楽部の不思議トーク、いつも通り周囲の人間は足早に離れていく。しかし、ひとまず運転再開までの時間は潰せそ…
「…ご案内いたします。只今、電気関係のトラブルが発生した為、運行再開に遅れが出る見込みです。お客様にはお急ぎの所大変ご迷惑をおかけいたしますが、復旧までいましばらくお待ち下さいますようお願いいたします」
「…」
「もう、蓮子があんなことするから」
「そんなんで止まるわけないでしょっ!」
私たちの周囲に人はいない。私とメリーは、その後、『蓮子キック』の破壊力についての物理学的考察に入っていったのだった。
『次回、秘封倶楽部ハラキリ体験ツアーに続く』
メリーの精神汚染力を甘くみたアナタが悪いのデース。
読者はもう、ハラキリを見ずにはいられないのデェス…。
あと、蓮子キックはタキオン粒子によって対象物を原子崩壊させるんじゃ(違
アッザムさんの秘封はいつ読んでも笑えますね
ってかハラキーリ・セップク丸思い出した
メリーの頭の中身はどうなってるんだろう
て訳で、つづけー。
そして蓮子キックすげえwこれが究極の物理学(違
そして順序が入れ替わりますが最初に翼様、四人目の名無し妖怪様へ。
まさかリクエストされるなどとは夢にも思わずに…どうしましょう?やるにしてもかなりカオスになりそうな気がします。やめた方が賢明な気も…
でも、「>読者はもう、ハラキリを見ずにはいられないのデェス…」とか言われちゃうと、もうやるしかないじゃにですか(責任転嫁orz)!
という訳でリクエストにお応えしちゃいます♪予告ですが、アッザムにしては恐ろしい位カオスになりますよ?本当にいいんですか?いいんですね?
っていうか、さっきから耳元で「ハラキリ~カミカゼ~」とか言っている金髪の少女がいるんですよ。「書かないとハラキリ~」とか、ハラキリはしたくないので書くことにします。ちなみに、その隣では黒髪の少女が「♪」とか言いながら(?)蹴りの練習してるんですよ、風音が…
>名無し妖怪様
ええ、先程熟練の妖忌殿にお願いしておきました…あれ?
>あざみや様
平和です~こんな感じの二人が大好きなのですよ。
>月影蓮哉様
>蓮子キックはタキオン粒子によって対象物を原子崩壊させるんじゃ(違
な…なんかよく分からないですが恐ろしげな、ベトンの要塞を砕くどころか、鈴仙の故郷を丸ごと消滅させそうな気がしますよ?
>二人目の名無し妖怪様
>アッザムさんの秘封はいつ読んでも笑えますね
やや、そう言って頂けると感激です。そして…
>ハラキーリ・セップク丸思い出した
何ですかそれっ(爆)
>三人目の名無し妖怪様
メリーの頭の中身はどうなってるんだろう
私も知りたいのですが、乙女の秘密と言われては引き下がるより他ありませんでした。
>七ツ夜様
>蓮子キックすげえ
ええ、彼女のキックの破壊力の威力は、その時代の科学でも測定不能だったとかなんとか(嘘です)
まったく関係の無い話ですがゲーセンで交代せずにお金を入れ続けるのを
「連コイン」といいます
連コイン>れんこいん>れんこIN>蓮子IN
理由はありません いま思いついたそれだけです
ご清聴ありがとうございました
ご感想ありがとうございました!
>こいつ なかなかリアルバトルでオンフィルムなSSを書くじゃないかww
お褒め(?)頂き光栄です♪
>「連コイン」といいます
>連コイン>れんこいん>れんこIN>蓮子IN
蓮子って、ゲームセンターで結構意地になっていそうなイメージがありますね(笑)
そして、聞くもの全てが東方化されるのは、既に貴方がメリーに汚染されているからですよ?ふふふふふ…(一番汚染されているのは私ですorz)