Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

昼の紅魔館事情

2006/10/26 10:08:32
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続きです






 咲夜は激怒した。必ずかの邪知暴虐の図書館長を除かねばならぬと決意した。

 これまでも咲夜は、パチュリーに端を発する理不尽に巻き込まれていた。
 アームストロングを取ってこいというのはまだいい方だった。いや、そもそも、咲夜自身に厄介な仕事を被せるのは我慢が出来る。
 そういう意味では主人の方が容赦が無いからだ。

 だが主人にみょうちきりんなことを教えるのだけは許せなかった。今朝の「アクダイカンごっこ」など最たるものだ。
 一番酷かったのは「姉妹丼」なるものを実践したときだった。
 妹様は加減を知らぬと云われるが、姉の方が加減を知らない。性的な意味で。

 ここまで考えて、咲夜は「実は主人こそが己のあらゆる不幸の元凶なのではないか」という可能性に思い至った。
 第三者の視点から見れば一目瞭然なのだが、そこは惚れた弱みというやつで、即座に咲夜の頭から主人への意趣返しという選択肢は消えた。
 ちなみに惚れた弱みというのは具体的に言うと、第一次姉妹丼戦役勃発時に作成された咲夜のあられもない姿や声を収録した外の世界のマジック・アイテムのことだ。
 でぃーぶいでぃーとか言うらしい。ぶっちゃけ、主人にストレートに弱みを握られているのである。まさに悪魔の所業だ。

 とまれかくまれ。
 「私なら食事に毒を盛りますよ。」という天啓が博麗神社に伝わっているそうなので、毒でパチュリーに一泡吹かせようと考えた咲夜。
 手頃な所で美鈴の花畑、魔法の森や鈴蘭畑、果ては香霖堂や永遠亭の取締役から。
 およそ幻想郷で手に入りうる限りの毒物を、持ちうる資源を投じて入手。平たく言うと時を止めてる間に略奪。ただのコソ泥じゃん。
 口も八丁手も八丁で様々な困難を切り抜け、愛憎のエキスがアクセントの特製ポイズンを携えた咲夜は自室へと。
 途中で調理場に寄って、ティーセットと茶葉、お湯を調達。タイムロス0で沸かしたお湯は、能力でこぼれないように冷めないように。
 これが最後のティータイムとなるであろうパチュリーへのせめてもの手向けとして、茶葉は最高級のものを、ティーセットはレミリアが使用しているものの次に高級なものをチョイスした。
(必要なものはこれで全部。あとは、これを淹れたお茶に――)
 細心の注意を払ってお茶を淹れ、毒を注ぐ。ちなみに、わざわざ自室で淹れたのは、調理場で誰かに見られたときに、もう一人毒の餌食を増やさなければならなくなるような事態を避けるためだ。
 完璧な仕事。これから来るであろう(比較的)平和な日々を幻視して微笑む咲夜。
 ぬるり。

「咲夜ー」
 来襲。


「ベタ過ぎてお話になりませんわ!?」
(お嬢様、どうなさいました)
「何でいきなりキレてるの」
 冷静な受け答えに失敗した。咄嗟にティーセットを空間のポケットに隠すことは出来たが。
(――自室の空間隔絶を忘れていたわ)
 まぁ、隔絶したところでその気になればレミリアは入ってくるので意味が無いと言えば無いのだが、時間稼ぎにはなる。そうすればもっとゆっくり、巧く隠すことが出来た。
 そもそも、普段から従者のプライベートを一切考えない主人のことを忘れる咲夜ではない。だからこそ、主人が普段寝ている昼に作業をしているのだ。
「お嬢様…お休みではなかったのですか…」
「んー。気分が乗らない。それに目を閉じると、今朝の咲夜の姿が浮かんできてね…フフフ」
 この色欲魔。咲夜は心の中で毒づいた。
 まぁ、いい。ポケットを巧く調整すれば、そのままの状態で半永久的に保存が――
「ところで、さっきのお茶飲ませて頂戴」
「ベタ過ぎてお話になりませんわ!!」
「何キレてるのよ」
 吸血鬼の動体視力を甘く見ていた。
「お嬢様…あれは、私が自分で飲む為に用意したもので、お嬢様のお口に合うものではないかと…」
「従者の好みを体験しておくというのも主人の大事な仕事。それに、かなりいいティーセットを使ってたじゃない。咲夜のことだからお茶だって良いものなんでしょう?」
 ――万事休す。何でそこまでしっかりと見てるんだこの変態色欲吸血鬼は。
 九割方自棄になった咲夜は空間のポケットからティーセットを取り出す。もしかしたらお嬢様に精魂込めた毒が効くかもしれない。
 そうすれば、横暴な主人に怯えることも無くなる。件のでぃーぶいでぃー、『淫乱侍女長 ~小悪魔姉妹編~』の影に震える事だって無くなる。
(…初めからそうするべきだったわ)
 もうだめぽ。
 咲夜はいつもするように、優雅に、無駄な動作など1つも無い動きでカップに紅茶を注ぐ。
 さすがに最高級のお茶だけあって、香り高い。美しい薔薇には棘があるものだが。むしろこの場合は棘に花がついていると言うべきか。
「――どうぞ」


 永遠にも感じられる時間。その愛らしい唇へとカップが運ばれて――


「――美味しいわ…」


 今何と言った?


「素晴らしいお茶ね! こんなの私に出したことも無いじゃない! 1人でこんな素晴らしいお茶を楽しもうだなんて…ずるいわ」
 咲夜には何が何だか分らない。吸血鬼なのだから毒なんて飲んでもけろりとしているのではないかとは思ったが、真逆アレを美味いとは――
(毒が魔術的変化でも起こして調味料にでもなったのかしら)
 と、興奮気味のレミリアがお代わりを要求し、珍しく混乱していた咲夜はお茶を注ぐときに数滴机に垂らしてしまい…

 じゅっ

 テーブルクロスが溶けた。
 咲夜の背をイヤな汗が伝う。
(やっぱりお嬢様は規格外だわ…)
 無邪気に喜ぶ主人に計り知れないものを感じた、ある日の昼下がりだった。





























「――そうだ、咲夜」
「はい?」
「このお茶、咲夜のものよね」
「ああ、いえ。お気に召されたのでしたら、全て飲んでしまわれて構いません」
 こんなもの飲んだ日にはどうなることやら。咲夜は手のひらの汗をそっと隠しながら瀟洒に微笑んだ。
「ねえ…口移しで


           飲ませてあげようかってまた不自然な改行(※紅魔館内スラング:時間停止の意)が!?」
 瞬きをする間に、従者の姿は掻き消えていた。
「…フフフ。これはパチェが言ってた『ウフフ、捕まえて御覧なさい』というヤツね!? 咲夜! 今行くわぁぁぁぁぁぁ」
 一陣の紅い風が咲夜の自室を飛び出した。








「ほうら捕まえた」
「やめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてやめてとめてアッー!!!」








 コンコン
「美鈴ー。居るー?」
 慌てた様子で内側からドアが開く。
「お嬢様 …と、咲夜さん? 珍しいですね。どうかなさいましたか?」
「入ってもいいかしら?」
「勿論。汚い部屋ですが…」
 二人を招き入れた美鈴は、レミリアが咲夜をひきずるようにして入ってくる様子に軽く眉をひそめた。
「あの、咲夜さんどうかしたんですか」
「もう、私が口移しでお茶を飲ませてあげた途端、ぐったりしちゃったのよ。もう何度もシてるんだから、そこまで照れなくてもいいじゃない。ねぇ」
「相変わらず仲が良いですね。羨ましいです」
「あら…それは咲夜が羨ましいのかしら? それとも、私が羨ましいの?」
「あ、あぅ…」
「もう、冗談よ。そんな顔しないの」

 暖かな雰囲気で談笑する二人の声を聞きながら、咲夜は
(――何故お嬢様は――美鈴の部屋に入るときはきちんとノックして、きちんとドアを開けて、きちんと許可を得て入るのですか――)
 と、心中で呟いて。


 遠のく意識を手放した。






人を呪咀ば穴二つほれとは、よき近き譬ならん。
        ――鳥山石燕 『今昔画図続百鬼・巻之上―雨』


説得力がないかもしれませんが、僕はパチュリー様もレミリア様もフランちゃんも大好きです。咲夜さんは愛してます。
あまり
コメント



1.NicO削除
ぼくのほうがあいしてます。

こういうお嬢様はもっと愛してます。
2.あざみや削除
あまりさんの愛は確実に伝わってますよ……(惚
3.名無し妖怪削除
でゅぷりけーたーという外の世界のマジックアイテムがありまして。
ぜひそのでぃーぶいでぃーを1枚複写させてくだ(ソウルスカルプチュア
4.CODEX削除
うぼあー    死 亡 確 認  南無~
5.名無し妖怪削除
続きのねちょを期待してます!
6.暇人削除
>でぃーぶいでぃー、『淫乱侍女長 ~小悪魔姉妹編~』
本気でみたいんですがどうすればいいんでしょうか?
7.名前が無い程度の能力削除
うはメロスwww