ぬるり。
ドアから首が生えてきた。
「咲夜ー」
「着替え中ですお嬢様。あと、ノックしてきちんとドアを開けて入るのがレディの嗜みですとあれほど」
常習犯のようだ。
「今更下着姿を見られて照れ合う仲でもないじゃない。昨日はあんなに――」
「秘め事を秘めておく事も淑女の嗜みですわ。すぐに着替えを済ませますのでどうか外でお待ちになってください」
メイド服を抱きしめるようにして肌を隠す。隠せてないのでかえって扇情的だった。
「そうは言うけど、いつも私の着替えの世話してくれるじゃないの。貴女だけ見放題じゃないの。無料でご開帳じゃないの」
「何処でそういう言葉を…いえ、仰らなくて結構です。お嬢様の友人を殺めるのは忍びないので。ともかく、せめて全身出るか全身入るかはっきりさせてください」
ぬるぅり。
入ってきた。
しまった、やっぱり頑として出て行くように言うべきだった、と咲夜はより強く服を抱きしめた。露出が増した。
「出来れば出て行って欲しかったのですけど…」
「良いじゃない着替えくらい」
「いやらしい目で見るじゃないですか」
「それは私の着替えの時の貴女のことかしら」
「そのような事は」
「今時間止めて狼狽えたでしょ」
「そのような事は」
「じゃあ何よ今の不自然な改行は」
「メタですわ」
しかもベタだ。
「ともかく咲夜だけずるいわ。私にも着替えを手伝わせるか、そっと目を閉じて身を委ねるか、おとなしく私の着替えで劣情を催してる事を認めるかなさい」
「認めたらどうなるのですか? 参考までに」
「明日から着替えは一人でやることにして、私に着替えを手伝わせるか、身を委ねるか選んでもらうわ」
(冗談じゃないわ、あれだけが生きがいなのに――)
結局やましい事を考えていたらしい。
「手伝っていただくのと身を委ねることが同義に思えてならないのですが。お嬢様、手をにぎにぎしながら近付くのはお止めください」
「それはお前を食べる為よ」
抱きしめていたメイド服をもぎ取られた。お嬢様はマジだ。
「訊いていません。お嬢様、さも当然のようにブラに手をかけないでください、ちょっと、キャー! 犯されるー!」
「ええい大人しくなさい」
「大人しくすれば私をベッドに運ぼうとするのを止めてくださいますか?」
「ホラ、アレよ。おとなしくしてれば合意の上の行為ってことで」
「おーかーさーれーるー!」
「よいではないかよいではないか」
「何処でそんな…ああもう、今度図書館に運ぶお茶に毒を仕込む必要性が出てきましたねってナチュラルにそんな所に手を伸ばさないでくださアッー!」
どすんばたん。
咲夜の部屋の前をたまたま通りかかったメイドAは軽くため息をついた。
「今日も仲良いわねぇ、メイド長とお嬢様」
いつものことらしい。
>>より強く服を抱きしめた。露出が増した
貴方は判っておられる人のようだ……GJ!