私の名前は、鈴仙・優曇華院・イナバと言います。
変な名前だと思いましたか? 思いますよね? うどんげいんですもんね。何というか、どっかのロボットっぽい名前です。でも、いいんです。私、この名前、気に入ってますから。
何でかと言いますとですね?
「ウドンゲ~、ちょっと手伝ってちょうだ~い」
「あ、はーい!」
私の大好きな人がつけてくれた名前、だからです。てへへ……。
私は以前、月の兎をやってました。決して変身はしませんけど。
まぁ、今も昔も月の兎ではあるのですが、現状、地上をうろうろしているわけでして。『月の』という枕が、そろそろ必要なくなってきたかもしれません。
そんな私は、今、永遠亭というところで暮らしてます。
深い竹林の奥にある、純日本家屋です。そこには、わずかな人とたくさんの兎たちが暮らしています。時の止まった、悠久の楽園です。
さて、そこの人員構成を紹介しますね。
まず、私の師匠であり、尊敬する人であり、敬愛する八意永琳さま。
かつては月の都で暮らしていたという経歴を持ち、数多の医術・薬学を使いこなし、さらには戦闘もお手の物、という天才なのです。私は、このお方に師事して、現在、一流のお医者さん兎になるべく特訓中です。
永琳さまは、とっても素晴らしい人です。聡明でお優しく、まるで慈母のごとき慈愛を、その大きな胸(物理的にも)に秘めたお方です。この人のそばにいられる、ただそれだけが、私の幸せ。……もちろん、こんな恥ずかしいこと、当人の前では口に出せませんけど。
続けて、永遠亭の兎たちの長、因幡てゐ。
いたずら好きで嘘つきで、ちょっぴり腹黒で。だけど、本当は、寂しがり屋の恥ずかしがり。
実際の年齢はよくわからないけど、多分、私より年下……じゃないかな? 私にとっては、かわいい妹みたいなものです。手のかかる妹……と、言っても相違ないかな。
もう少し、私に対して態度を改めてくれたら嬉しいんだけど……でも、そうなると張り合いがなくなりそうで、これも複雑な乙女心というやつでしょうか。え? 違う?
そして最後に、永遠亭の主、蓬莱山輝夜さま。
かつては月の姫として、月よ花よと愛でられて育てられた方ですが、何やら、私には知るところのない事情で地上で暮らしているそうです。
お優しい方です。それでいて、同時にとても気高く、また……また……えっと……。
と、ともあれ、素晴らしい方なんです! はい!
……え? その素晴らしいはずの人が、何で紹介が最後なのか、って? ………………えーっと……ごめんなさい。
さて。
それにプラスして、大勢の兎たちの生活する、この永遠亭。
私は、そこで日々を暮らしているわけですが。このところ、ちょっと疑問に思うことがあります。
「あらあら、ウドンゲ。ちょっと、これ、着てみない?」
「わぁ……かわいい服……」
こんな風にして、私の師匠である永琳さまが、私にお洋服を渡してくれることが多い、ということです。
と言いますか、私の持ってる服の大半は、師匠からもらったものなんです。何せ、私がここに来たときは着の身着のままで、自分の荷物を持ち出してくる余裕なんてありませんでしたから。加えて、私たちは、あんまり人里には出向きません。何せ、頭にぴょこんとうさみみですからね。どこからどう見ても怪しい奴らです。たまに、『だが、それがいい』という人もいますが、そう言う人には弾幕でお帰り願ってるからともかくとして。
「ありがとうございます、師匠」
「あらあら。いいのよ。それじゃ、それ、着て見せてね」
「はいっ」
……しかし、師匠は、一体どこからこんなに服を?
兎たちの服は、大抵、師匠が手縫いしているからともかくとして……これも、師匠が作ったのかな? ……にしては、毎回毎回、手が凝っていて……。いや、師匠が私だけのために、こんなにかわいい服とかを作ってくれるのなら、それはもう感謝の極みなんだけど。
でも……何でか気になったりするのです。
だって、師匠も、あんまり人里に降りることはありません。基本的に、我が永遠亭は、人間には関わらない方向で動いてますから。と言うか、普通の人間なら、この屋敷に来る前に迷って野垂れ死にするでしょう。
……まぁ、最近は、ここで病院もやっていて、そっち方面のお客さんが来るようになったんですけれど。
「うーん……」
鏡の前で衣服をあわせてみて、つと悩む。
師匠に聞いてみようかな。こういう服、どこから持ってきてるのか、って。
もしかしたら手縫いかもしれないし、もしかしたら買ってきてくれているのかもしれない。そう言うことは気にしないでいいのよ、って言ってくれているけれど……やっぱり、気になるものは気になりますよね。
そういうわけで、夜なのです。
何で夜なのか、って?
永遠亭は忙しいんです。特に師匠は、頼りになるから、もうあっちこっちから頼られて、一日中働きっぱなし。そんな師匠を『凄いなぁ』と思いながらも、自分の力量不足に、ちょっぴり肩を落としたりして。でも、私だって頑張るもん、って気合いを入れ直して。そんな毎日を送る私です。
さて、私のことはともあれとして、服の出所を聞かなくては。
えーっと……師匠の部屋は……あ、ここだここだ。
辿り着いた障子の前。今日は月の光が薄いから、辺りはうっすらと闇に沈んでいて。そっと、私は、「師匠、失礼します」と言って障子を開けて――。
「…………………………」
真実を知りました。
「あらあら……うふふ、私も、まだまだ現役でいけるかしら」
えーっと……端的に説明します。
師匠がセーラー服着てました。はい。
姿見に自分の姿を映して、ポーズ取ってます。一人ファッションショーです。確かに師匠はお若いです。見た目、まだまだ二十歳でも、頑張れば通じます。
でも、でもですね、師匠。
「八意永琳、十七歳ですっ☆ なーんて。
あら、似合う似合う。かわいいかわいいっ」
くねくねしないでください……ぶりっこしないでください……もう、何か、色々見ていて痛々しいですからっ……!
「あらあら。次にウドンゲにあげるのはこれにしようかしら。でも、ちょっともったいないかしらね。
うーん……じゃ、今度はこっちのミニスカートなんてどうかしら」
そうだったんですね……私に渡されていた服の数々は、師匠のお下がりだったんですね……!
「まだまだ、現役でミニスカートもいけるわねぇ」
大きいお尻と長い足が魅力的です、師匠!
だけど……だけど……やっぱり、かなり無理があると思いますっ!
「今度、秋の運動会でもやろうかしら。
そうなると……ウドンゲには、こっちの体操服とブルマがいい感じねぇ」
何でそんなものまで……。
「……………」
あ、何かじーっと見てますよ。
「昔は、これを着てトラックを走っていたわねぇ……懐かしいわぁ」
……昔も、あんなに胸が大きかったのなら、さぞかし、走る時、大変だったでしょうね。
だけど……だけど、師匠……。
「……ちょっとだけ」
ぴしゃっ。
私は、何も見なかったことにして、速攻で障子を閉めて脱兎しました。
私、鈴仙・優曇華院・イナバは、八意永琳師匠に一生ついて行きます。その手となり足となり、師匠を支え続けます。
そして、いつか、あなたの跡を継ぐにふさわしい力と品格と人格を手に入れて。あなたの弟子として、胸を張っていけるよう、日々、精進致します。
それが私の誓いです。私は、決して、この誓いを違えることはないでしょう。
だって、私は永琳さまが好きですから。
誰よりも、何よりも。この先、ずっと。
「ねーえ、ウドンゲ。このお洋服あげるから、ちょっと着てみてほしいな」
「ワーイ、アリガトウゴザイマスシショウー。イツモイツモスイマセン、カンシャシテマスー」
「あらあら」
……だけど、その時の私の顔って、多分、これ以上ないくらい引きつってたんでしょうね。
変な名前だと思いましたか? 思いますよね? うどんげいんですもんね。何というか、どっかのロボットっぽい名前です。でも、いいんです。私、この名前、気に入ってますから。
何でかと言いますとですね?
「ウドンゲ~、ちょっと手伝ってちょうだ~い」
「あ、はーい!」
私の大好きな人がつけてくれた名前、だからです。てへへ……。
私は以前、月の兎をやってました。決して変身はしませんけど。
まぁ、今も昔も月の兎ではあるのですが、現状、地上をうろうろしているわけでして。『月の』という枕が、そろそろ必要なくなってきたかもしれません。
そんな私は、今、永遠亭というところで暮らしてます。
深い竹林の奥にある、純日本家屋です。そこには、わずかな人とたくさんの兎たちが暮らしています。時の止まった、悠久の楽園です。
さて、そこの人員構成を紹介しますね。
まず、私の師匠であり、尊敬する人であり、敬愛する八意永琳さま。
かつては月の都で暮らしていたという経歴を持ち、数多の医術・薬学を使いこなし、さらには戦闘もお手の物、という天才なのです。私は、このお方に師事して、現在、一流のお医者さん兎になるべく特訓中です。
永琳さまは、とっても素晴らしい人です。聡明でお優しく、まるで慈母のごとき慈愛を、その大きな胸(物理的にも)に秘めたお方です。この人のそばにいられる、ただそれだけが、私の幸せ。……もちろん、こんな恥ずかしいこと、当人の前では口に出せませんけど。
続けて、永遠亭の兎たちの長、因幡てゐ。
いたずら好きで嘘つきで、ちょっぴり腹黒で。だけど、本当は、寂しがり屋の恥ずかしがり。
実際の年齢はよくわからないけど、多分、私より年下……じゃないかな? 私にとっては、かわいい妹みたいなものです。手のかかる妹……と、言っても相違ないかな。
もう少し、私に対して態度を改めてくれたら嬉しいんだけど……でも、そうなると張り合いがなくなりそうで、これも複雑な乙女心というやつでしょうか。え? 違う?
そして最後に、永遠亭の主、蓬莱山輝夜さま。
かつては月の姫として、月よ花よと愛でられて育てられた方ですが、何やら、私には知るところのない事情で地上で暮らしているそうです。
お優しい方です。それでいて、同時にとても気高く、また……また……えっと……。
と、ともあれ、素晴らしい方なんです! はい!
……え? その素晴らしいはずの人が、何で紹介が最後なのか、って? ………………えーっと……ごめんなさい。
さて。
それにプラスして、大勢の兎たちの生活する、この永遠亭。
私は、そこで日々を暮らしているわけですが。このところ、ちょっと疑問に思うことがあります。
「あらあら、ウドンゲ。ちょっと、これ、着てみない?」
「わぁ……かわいい服……」
こんな風にして、私の師匠である永琳さまが、私にお洋服を渡してくれることが多い、ということです。
と言いますか、私の持ってる服の大半は、師匠からもらったものなんです。何せ、私がここに来たときは着の身着のままで、自分の荷物を持ち出してくる余裕なんてありませんでしたから。加えて、私たちは、あんまり人里には出向きません。何せ、頭にぴょこんとうさみみですからね。どこからどう見ても怪しい奴らです。たまに、『だが、それがいい』という人もいますが、そう言う人には弾幕でお帰り願ってるからともかくとして。
「ありがとうございます、師匠」
「あらあら。いいのよ。それじゃ、それ、着て見せてね」
「はいっ」
……しかし、師匠は、一体どこからこんなに服を?
兎たちの服は、大抵、師匠が手縫いしているからともかくとして……これも、師匠が作ったのかな? ……にしては、毎回毎回、手が凝っていて……。いや、師匠が私だけのために、こんなにかわいい服とかを作ってくれるのなら、それはもう感謝の極みなんだけど。
でも……何でか気になったりするのです。
だって、師匠も、あんまり人里に降りることはありません。基本的に、我が永遠亭は、人間には関わらない方向で動いてますから。と言うか、普通の人間なら、この屋敷に来る前に迷って野垂れ死にするでしょう。
……まぁ、最近は、ここで病院もやっていて、そっち方面のお客さんが来るようになったんですけれど。
「うーん……」
鏡の前で衣服をあわせてみて、つと悩む。
師匠に聞いてみようかな。こういう服、どこから持ってきてるのか、って。
もしかしたら手縫いかもしれないし、もしかしたら買ってきてくれているのかもしれない。そう言うことは気にしないでいいのよ、って言ってくれているけれど……やっぱり、気になるものは気になりますよね。
そういうわけで、夜なのです。
何で夜なのか、って?
永遠亭は忙しいんです。特に師匠は、頼りになるから、もうあっちこっちから頼られて、一日中働きっぱなし。そんな師匠を『凄いなぁ』と思いながらも、自分の力量不足に、ちょっぴり肩を落としたりして。でも、私だって頑張るもん、って気合いを入れ直して。そんな毎日を送る私です。
さて、私のことはともあれとして、服の出所を聞かなくては。
えーっと……師匠の部屋は……あ、ここだここだ。
辿り着いた障子の前。今日は月の光が薄いから、辺りはうっすらと闇に沈んでいて。そっと、私は、「師匠、失礼します」と言って障子を開けて――。
「…………………………」
真実を知りました。
「あらあら……うふふ、私も、まだまだ現役でいけるかしら」
えーっと……端的に説明します。
師匠がセーラー服着てました。はい。
姿見に自分の姿を映して、ポーズ取ってます。一人ファッションショーです。確かに師匠はお若いです。見た目、まだまだ二十歳でも、頑張れば通じます。
でも、でもですね、師匠。
「八意永琳、十七歳ですっ☆ なーんて。
あら、似合う似合う。かわいいかわいいっ」
くねくねしないでください……ぶりっこしないでください……もう、何か、色々見ていて痛々しいですからっ……!
「あらあら。次にウドンゲにあげるのはこれにしようかしら。でも、ちょっともったいないかしらね。
うーん……じゃ、今度はこっちのミニスカートなんてどうかしら」
そうだったんですね……私に渡されていた服の数々は、師匠のお下がりだったんですね……!
「まだまだ、現役でミニスカートもいけるわねぇ」
大きいお尻と長い足が魅力的です、師匠!
だけど……だけど……やっぱり、かなり無理があると思いますっ!
「今度、秋の運動会でもやろうかしら。
そうなると……ウドンゲには、こっちの体操服とブルマがいい感じねぇ」
何でそんなものまで……。
「……………」
あ、何かじーっと見てますよ。
「昔は、これを着てトラックを走っていたわねぇ……懐かしいわぁ」
……昔も、あんなに胸が大きかったのなら、さぞかし、走る時、大変だったでしょうね。
だけど……だけど、師匠……。
「……ちょっとだけ」
ぴしゃっ。
私は、何も見なかったことにして、速攻で障子を閉めて脱兎しました。
私、鈴仙・優曇華院・イナバは、八意永琳師匠に一生ついて行きます。その手となり足となり、師匠を支え続けます。
そして、いつか、あなたの跡を継ぐにふさわしい力と品格と人格を手に入れて。あなたの弟子として、胸を張っていけるよう、日々、精進致します。
それが私の誓いです。私は、決して、この誓いを違えることはないでしょう。
だって、私は永琳さまが好きですから。
誰よりも、何よりも。この先、ずっと。
「ねーえ、ウドンゲ。このお洋服あげるから、ちょっと着てみてほしいな」
「ワーイ、アリガトウゴザイマスシショウー。イツモイツモスイマセン、カンシャシテマスー」
「あらあら」
……だけど、その時の私の顔って、多分、これ以上ないくらい引きつってたんでしょうね。
でもまあ取り合えずスク水師匠の写真でm(前頭葉切除
最高じゃないか!!!1