Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

朝飯前

2006/10/13 07:16:38
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まどろみの中から意識を取り戻す。地引網のようなイメージ。数人の漁師が懸命に引いているような。
これを獲らねば今日の飯がなくなる、とばかりに気合をこめて。
えんやーとっと。ソーランソーラン。
ああ、でも力が足りない。海中に網を持っていかれてーー



二度寝。



持っていかれたーーーー

って、どこの錬金術師よ、それは。
くだらない想像を滅殺して体を起こす。




だいぶ秋になって眠るのも楽にはなった。まぁ春夏秋冬寝てばかりだからあんまり気にはならないけれど。
ただ食べ物は秋が一番おいしい。それだけで秋が好きになるような気がしないでもない。
たぶんしない。でも好き。






部屋を出、居間へ向かう。スキマを使った方が速いけど、廊下から見える風景を見たいから、歩いて。
廊下から見える奥山の秋の景色。高い空、青むのをやめた木々。
やっぱり私は秋が好きなのね。いや、嫌いなものなんてほとんどないかしら。




それより。いつもならある精気というか、気配というか。そういうものが家の中から全く感じられない。
藍が橙といっしょに出かけているのかしら。あら私置いてけぼり?
孤独ってつらいってどこかの人形焼きの旅芸人が言ってたっけね……。



なーんて昨日ちゃんと言われてたから確信犯ね。いや模倣犯?

そんな妄想も那由他の彼方へ吹き飛ばし、居間の扉を開ける。



誰もいない居間。静まり返った空間。1人分の料理が置かれている食卓。
わかってはいたどそれでも少々寂しい。
帰ってきたらたっぷりご奉仕してもらおうかしらね。



仕方なく用意されたお味噌汁に手をつける。



――。夢から覚めるまでの間。現へ戻るまでの間。夢と現の境界。
それをいただく一日の始まり。



今日もいい日になるように。そう願う。いつものように。

そう今日もいつもの一日で。何も変わらないで。そうであるように――




幸せってのは自分で見つけるものなのかもしれない。
2:23am
コメント



1.名前ガの兎削除
これは、色んな解釈の仕方がある話のように思う…
一瞬物悲しい話に見えちまった。
2.名無し妖怪削除
スープもとい、お味噌汁の冷めない距離って意外と難しいかも。
八雲一家、たまにはこんな日もある見本。
3.らららくらら削除
紫のいる澄んだ空間、静けさ。取りとめも無い思考と際立つ僅かな孤独。
想像して読むのがすごく楽しいです。