「起きろ~、起きろってば、霊夢~~」
目を開けてみるとルーミアが心配そうな、それでいて楽しそうな顔をして待っていた。
周囲は真っ暗で、鈴虫の声がうるさく聞こえる。
いつから眠ったんだろう?
外は真っ暗で目の前にルーミアがいる。
今座っているのは土の上で、後ろには木が立っていた。
目を瞑って考えてみた。
昼ごはんを食べて午後の緑茶タイムと称し、緑茶と羊羹を用意して一服ついた後境内に溜まっている落ち葉を掻き集めてたんだっけ?
そうそう、掻き集めている最中にこの木を見つけたんで休憩していたら眠くなって、そのまま寝ちゃったんだ。
全く、我ながら暢気な時間の過ごし方だ。
「霊夢、せっかくだから私と遊ぼう」
ルーミアが私の考えを中断するように声をかける。
特に用事も無いし、目の前のルーミアは純粋に目を輝かせていて、断るのは何か悪い気がする。
さっきまで木陰で眠ってたんで眠気も完全に飛んじゃってるしね。
「いいわよ。今日は付き合ってあげる」
「そうか、霊夢と遊ぶ機会は少ないから楽しみ~~」
ホントに楽しそうな声をあげながら無邪気に喜ぶルーミア。
その姿を後ろに見ながら博霊神社を出発した。
神社の境内を抜け、森を抜け、雲を抜けて、夜の星と半月を後ろにみながらルーミアの後ろをついていく。
秋の風が体を通り抜ける気持ちよさと綺麗な星を眺めながらの夜の散歩も悪くないかな?
星と月をバックに夜の遊覧飛行を楽しんでいると、目の前のルーミアが降下をはじめた。
慌ててルーミアについていくと見たことのある林に出る。
その竹林の中を鈴虫や松虫の鳴き声を聞きながら飛んでいくと、どこかで聞いたことのある歌声が聞こえた。
「ルーミア、あの歌はミスティアの?」
「そうそう、いつもこの辺で歌っているのよね~」
ミスティアの歌には人を鳥目にする魔力が篭っている。
今は夜、こんな外が真っ暗な時に鳥目になんてされたらたまらない。
とっさに自分の周りに結界を張り巡らせると、その姿が見えたのか先ほどまで歌っていたはずのミスティアが目の前に飛んできた。
「夜の演奏会にようこそ。 今日の演奏には魔力はこもってないから結界なんて張らなくても大丈夫よ」
「演奏会? ルーミアについてただ飛んできたからよくわからなかったけれど、確かにここだけ少し開けてるわね」
周りを見渡すと林の一角が開けていて座れそうな切り株が置いてあり、ご丁寧にテーブルらしきものも作られている。
広場の周りの木は演奏者用の舞台だろうか?
ちょっとした隙間があってミスティア達が立って歌うのにはよさそうだ。
「演奏会って言うからには他の面子もいるはずよね、他の人たちはどうしたの?」
演奏会にしては少ない人数だったので聞いてみた。
「一人演奏会なんだから、誰もいないわよ。時々他の人たちがきたときは競演なんかもするけど、基本的には一人で歌ってるわ」
ミスティアらしい答え。
いつも演奏会と称してはここで歌っているであろう姿を想像しつつ、私はミスティアのほうに向き直る。
「どんな歌を披露してくれるの?」
「ご要望があればどんな歌でも歌えるわ」
胸を張って堂々としながら受け答えをするミスティアへのレパートリーを少し考えてみる。
今は秋、レパートリーの題材を考える最中、周りを見渡すと綺麗な紅葉が見えた。
「だったら、秋らしくもみじなんかいいわね」
「OK。折角きてくれたんだから張り切って披露するわね」
秋の夕日に~てる~山もみじ~♪
ミスティアの澄んだ綺麗な声が林の中に響き渡る。
静かでそれでいてよくとおる歌声が、秋の暗い夜を明るくしてくれる感覚。
切り株に座って聞いていると体の中にも響いていく。
谷の流れに~ちり~うく~もみじ~♪
2番に入ったころだろうか、ミスティアの歌にあわせてどこからともなくヴァイオリンとフルート、それにピアノの音が混じってきた。
ミスティアのソロ演奏も良い物だが、歌にあわせて綺麗に割って入ってきた謎の演奏はうまい具合に調和していて、ミスティアの歌を更に引き立てていた。
ミスティアと謎の演奏家達の競演が終わる。
盛大な拍手をルーミアといっしょに送ると、謎の演奏家(といってもバレバレなんだけどね。
メルラン、リリカ、ルナサのプリズムリバー三姉妹があらわれて挨拶をしてくれた。
「どう? ミスティアだけじゃ寂しいかなと思って、私たちも途中から参加させてもらったんだけど」
メルランが言うとリリカが突っ込みを入れる。
「ホントは霊夢が来たあたりから気づいてたくせに」
「こういうのは効果的に驚かせた方がかっこいいじゃない?」
「一番からやろうとしたらちょっと間に合わなくなったんで2番からスタートすることにしたのよ」
ルナサがキッチリとフォローを入れる。
なんだかんだいいながら結構仲がいい3人がそろって、演奏会らしくなってきた。
気がつくと、メルラン達が自己紹介をしている最中にミスティアが降りてきて隣に並んでいる。
「最初から見てたんなら、出てきてくれても良かったのに」
「これからはずっとお供させてもらうんだからいいじゃない」
「ん~……そうかも。で、霊夢。次のリクエストは?」
「そうね~、ルーミアは何かある?」
「今日は霊夢がお客さんだから霊夢が決めてくれればいいかなー」
「そうは言っても、あんまりこういうのを決めるのは苦手なのよね」
ちょっと決めかねてるとミスティアが
「だったら、キャンプファイアーでも歌いましょうか」
と言ってきたので歌ってもらうことにした。
遠き~山に~日は落ちて~♪
ゆったりとした友情の歌。
キャンプファイアーの歌にしては火が無いのがちょっと残念だけれど、そこはまた愛嬌。
そこに火があるような感じで見ていると、柔らかい蛍の光がゆったりと霊夢とルーミアの周りを彩り始めた。
柔らかで暖かい感じのする蛍の光。
キャンプファイアーの豪勢な火とは違うが、コレはコレで趣がある。
歌の演出として彩られ、霊夢達の周囲を彩っていたそれは、曲が終わるとともにスッ……と消えていく。
私はさっきまで光っていた明かりが気になったのでルーミアに聞いてみた。
「さっきまでの光はやっぱりリグル?」
「そーなのだー」
「蛍の光だったしね。リグルかなーって思って聞いてみたんだけど、あたってたみたいね」
「うん、リグルは時々こうやって私たちのところに遊びにくるの。リグルも実は歌がうまいのよ」
「ヘェ……意外ね~」
「ああ見えて細かいことに気がきくし、結構かっこいいんだから♪」
「お褒めに預かり光栄です、ルーミアさん、それに霊夢さん」
ルーミアとリグルについて話している間に、どこから寄ってきたのかリグルが挨拶をはじめる。
後ろに纏っているマントを片手でちょっと前に持ってきて、少し腰を落として貴族のような挨拶をする。
う~ん、ホント予想外。
こうやって見ていると紳士だし、結構かっこいいわね。な~んて素直に感心していると、
ミスティア達のそばにリグルは飛んでいき、通産3曲目の準備をはじめた。
「さて、霊夢さん。3曲目は何にします?」
「リグルが来たことだし「むしのこえ」なんていいかもしれないわね」
「それではお姫様。虫と鳥の混声合唱、演奏はプリズムリバー三姉妹。タイトルは「むしのこえ」 でお送りする演奏会をごゆっくりとご堪能ください」
先ほどまでの調子でカッコ良くリグルが決めて、3曲目が始まった。
あれ松虫が~鳴きだした~。
リグルの歌はルーミアが言っていたとおり結構上手い。
ミスティアが澄んだソプラノとするなら、リグルの声は豊麗なアルト。
いつもの姿だけでなく歌声も少年っぽいリグル。
実は女の子じゃなくて美少年で、何かの間違えで女の子になったんじゃないのかしら?
……と思わせる姿を見せてくれたリグルに合わせるミスティアとプリズムリバー三姉妹の演奏。
良く知っていて時々口ずさむ歌もこうやって聞いていると壮大なオーケストラの演奏会を見にきているように楽しめる。
「さて、4曲目……」
虫の声の合唱が終わり、4曲目のリクエストをリグルが聞きにきた。
「この演奏会で私も歌っていいかな?」
そのリクエストに答える前に、演奏会への参加を志願すると
「じゃあ、私も参加したい~」
とルーミアも言い出した。
……結局、舞台の観客はゼロで歌い手が4人、演奏者が3人というおかしな面子になった。
4曲目の演目はルーミアが決めてくれた「小さい秋見つけた」
今まで聞く側でずっとやっていたけれど、実際歌うのはそんなに嫌いじゃないのよね。
毎日祝詞を読んで発声練習をしてるんだから多分大丈夫と自分に言い聞かせて伴奏が終わるのを待つ。
いよいよ歌いだし。
小さい秋~小さい秋~小さい秋~み~つけた~。
みんなに合わせるように大きな声で歌い始める。
…………終了。
4曲目が終わり、周りを見渡す。
予想以上にうまくハモッてくれたし、私としては結構満足できたんだけどどうだったかな?
「霊夢も意外とやるのねー」
素直に驚いてくれるルーミア。
他の面子も結構驚いてくれたようだった。
ちょっとドキドキしながらみんなと歌ったけれど、うまくいったみたいで一満足。
結構調子よく歌えた4曲目が終わった後は、なし崩し的に雑談したりソロで持ち歌を披露したり、音楽知識を披露したりと宴会的なノリで明け方まで過ごした。
持ち歌で意外といえば意外なんだけれど、プリズムリバー三姉妹まで歌ってくれたのはちょっと予想外かな。
いつも楽器の演奏ばかりが目に入りがちなんだけれど、歌う方もそこそこ……いや、かなりうまく歌えるんだなーとちょっと驚いたっけ。
結果、演奏会の雰囲気じゃなくなったけれど朝までいろいろ歌ったり踊ったりして気が付くと暗かった空がだんだんと明るくなってきた。
「もうそろそろ帰ることにするわ」
「霊夢、帰っちゃうのか?」
「人なんか全然来ないけど、今日の日課が待っているもの」
「霊夢、楽しかったか?」
「楽しかったわ、今日は誘ってくれてありがとう、ルーミア」
「また来てくれるか?」
少し寂しそうな顔で受け答えをしているルーミアにウインク一つ。
「勿論、今度は魔理沙とか他の人とかも誘って来たいわね」
今までの暗かった顔がいつもの元気な顔に戻った。
「今度はもっと凄い演奏会にするわよ」
私は笑顔で答えるルーミアの姿を確認すると、私は明け始めた空を博麗神社に向かって飛んでいく。
……うん、たまにはこういう日も良いわよね♪
昼頃。
縁側でお茶をすすりながらまったりと過ごしていると、昨日の疲れが出てきたのか眠くなった。
「あ~なんかとっても眠い。それにお日様があったかくてとっても気持ちいいわ」
午後の暖かな日差しの中、仮眠を取っていた霊夢が起きると外は真っ暗。
目の前にはルーミアが待っていて……。
目を開けてみるとルーミアが心配そうな、それでいて楽しそうな顔をして待っていた。
周囲は真っ暗で、鈴虫の声がうるさく聞こえる。
いつから眠ったんだろう?
外は真っ暗で目の前にルーミアがいる。
今座っているのは土の上で、後ろには木が立っていた。
目を瞑って考えてみた。
昼ごはんを食べて午後の緑茶タイムと称し、緑茶と羊羹を用意して一服ついた後境内に溜まっている落ち葉を掻き集めてたんだっけ?
そうそう、掻き集めている最中にこの木を見つけたんで休憩していたら眠くなって、そのまま寝ちゃったんだ。
全く、我ながら暢気な時間の過ごし方だ。
「霊夢、せっかくだから私と遊ぼう」
ルーミアが私の考えを中断するように声をかける。
特に用事も無いし、目の前のルーミアは純粋に目を輝かせていて、断るのは何か悪い気がする。
さっきまで木陰で眠ってたんで眠気も完全に飛んじゃってるしね。
「いいわよ。今日は付き合ってあげる」
「そうか、霊夢と遊ぶ機会は少ないから楽しみ~~」
ホントに楽しそうな声をあげながら無邪気に喜ぶルーミア。
その姿を後ろに見ながら博霊神社を出発した。
神社の境内を抜け、森を抜け、雲を抜けて、夜の星と半月を後ろにみながらルーミアの後ろをついていく。
秋の風が体を通り抜ける気持ちよさと綺麗な星を眺めながらの夜の散歩も悪くないかな?
星と月をバックに夜の遊覧飛行を楽しんでいると、目の前のルーミアが降下をはじめた。
慌ててルーミアについていくと見たことのある林に出る。
その竹林の中を鈴虫や松虫の鳴き声を聞きながら飛んでいくと、どこかで聞いたことのある歌声が聞こえた。
「ルーミア、あの歌はミスティアの?」
「そうそう、いつもこの辺で歌っているのよね~」
ミスティアの歌には人を鳥目にする魔力が篭っている。
今は夜、こんな外が真っ暗な時に鳥目になんてされたらたまらない。
とっさに自分の周りに結界を張り巡らせると、その姿が見えたのか先ほどまで歌っていたはずのミスティアが目の前に飛んできた。
「夜の演奏会にようこそ。 今日の演奏には魔力はこもってないから結界なんて張らなくても大丈夫よ」
「演奏会? ルーミアについてただ飛んできたからよくわからなかったけれど、確かにここだけ少し開けてるわね」
周りを見渡すと林の一角が開けていて座れそうな切り株が置いてあり、ご丁寧にテーブルらしきものも作られている。
広場の周りの木は演奏者用の舞台だろうか?
ちょっとした隙間があってミスティア達が立って歌うのにはよさそうだ。
「演奏会って言うからには他の面子もいるはずよね、他の人たちはどうしたの?」
演奏会にしては少ない人数だったので聞いてみた。
「一人演奏会なんだから、誰もいないわよ。時々他の人たちがきたときは競演なんかもするけど、基本的には一人で歌ってるわ」
ミスティアらしい答え。
いつも演奏会と称してはここで歌っているであろう姿を想像しつつ、私はミスティアのほうに向き直る。
「どんな歌を披露してくれるの?」
「ご要望があればどんな歌でも歌えるわ」
胸を張って堂々としながら受け答えをするミスティアへのレパートリーを少し考えてみる。
今は秋、レパートリーの題材を考える最中、周りを見渡すと綺麗な紅葉が見えた。
「だったら、秋らしくもみじなんかいいわね」
「OK。折角きてくれたんだから張り切って披露するわね」
秋の夕日に~てる~山もみじ~♪
ミスティアの澄んだ綺麗な声が林の中に響き渡る。
静かでそれでいてよくとおる歌声が、秋の暗い夜を明るくしてくれる感覚。
切り株に座って聞いていると体の中にも響いていく。
谷の流れに~ちり~うく~もみじ~♪
2番に入ったころだろうか、ミスティアの歌にあわせてどこからともなくヴァイオリンとフルート、それにピアノの音が混じってきた。
ミスティアのソロ演奏も良い物だが、歌にあわせて綺麗に割って入ってきた謎の演奏はうまい具合に調和していて、ミスティアの歌を更に引き立てていた。
ミスティアと謎の演奏家達の競演が終わる。
盛大な拍手をルーミアといっしょに送ると、謎の演奏家(といってもバレバレなんだけどね。
メルラン、リリカ、ルナサのプリズムリバー三姉妹があらわれて挨拶をしてくれた。
「どう? ミスティアだけじゃ寂しいかなと思って、私たちも途中から参加させてもらったんだけど」
メルランが言うとリリカが突っ込みを入れる。
「ホントは霊夢が来たあたりから気づいてたくせに」
「こういうのは効果的に驚かせた方がかっこいいじゃない?」
「一番からやろうとしたらちょっと間に合わなくなったんで2番からスタートすることにしたのよ」
ルナサがキッチリとフォローを入れる。
なんだかんだいいながら結構仲がいい3人がそろって、演奏会らしくなってきた。
気がつくと、メルラン達が自己紹介をしている最中にミスティアが降りてきて隣に並んでいる。
「最初から見てたんなら、出てきてくれても良かったのに」
「これからはずっとお供させてもらうんだからいいじゃない」
「ん~……そうかも。で、霊夢。次のリクエストは?」
「そうね~、ルーミアは何かある?」
「今日は霊夢がお客さんだから霊夢が決めてくれればいいかなー」
「そうは言っても、あんまりこういうのを決めるのは苦手なのよね」
ちょっと決めかねてるとミスティアが
「だったら、キャンプファイアーでも歌いましょうか」
と言ってきたので歌ってもらうことにした。
遠き~山に~日は落ちて~♪
ゆったりとした友情の歌。
キャンプファイアーの歌にしては火が無いのがちょっと残念だけれど、そこはまた愛嬌。
そこに火があるような感じで見ていると、柔らかい蛍の光がゆったりと霊夢とルーミアの周りを彩り始めた。
柔らかで暖かい感じのする蛍の光。
キャンプファイアーの豪勢な火とは違うが、コレはコレで趣がある。
歌の演出として彩られ、霊夢達の周囲を彩っていたそれは、曲が終わるとともにスッ……と消えていく。
私はさっきまで光っていた明かりが気になったのでルーミアに聞いてみた。
「さっきまでの光はやっぱりリグル?」
「そーなのだー」
「蛍の光だったしね。リグルかなーって思って聞いてみたんだけど、あたってたみたいね」
「うん、リグルは時々こうやって私たちのところに遊びにくるの。リグルも実は歌がうまいのよ」
「ヘェ……意外ね~」
「ああ見えて細かいことに気がきくし、結構かっこいいんだから♪」
「お褒めに預かり光栄です、ルーミアさん、それに霊夢さん」
ルーミアとリグルについて話している間に、どこから寄ってきたのかリグルが挨拶をはじめる。
後ろに纏っているマントを片手でちょっと前に持ってきて、少し腰を落として貴族のような挨拶をする。
う~ん、ホント予想外。
こうやって見ていると紳士だし、結構かっこいいわね。な~んて素直に感心していると、
ミスティア達のそばにリグルは飛んでいき、通産3曲目の準備をはじめた。
「さて、霊夢さん。3曲目は何にします?」
「リグルが来たことだし「むしのこえ」なんていいかもしれないわね」
「それではお姫様。虫と鳥の混声合唱、演奏はプリズムリバー三姉妹。タイトルは「むしのこえ」 でお送りする演奏会をごゆっくりとご堪能ください」
先ほどまでの調子でカッコ良くリグルが決めて、3曲目が始まった。
あれ松虫が~鳴きだした~。
リグルの歌はルーミアが言っていたとおり結構上手い。
ミスティアが澄んだソプラノとするなら、リグルの声は豊麗なアルト。
いつもの姿だけでなく歌声も少年っぽいリグル。
実は女の子じゃなくて美少年で、何かの間違えで女の子になったんじゃないのかしら?
……と思わせる姿を見せてくれたリグルに合わせるミスティアとプリズムリバー三姉妹の演奏。
良く知っていて時々口ずさむ歌もこうやって聞いていると壮大なオーケストラの演奏会を見にきているように楽しめる。
「さて、4曲目……」
虫の声の合唱が終わり、4曲目のリクエストをリグルが聞きにきた。
「この演奏会で私も歌っていいかな?」
そのリクエストに答える前に、演奏会への参加を志願すると
「じゃあ、私も参加したい~」
とルーミアも言い出した。
……結局、舞台の観客はゼロで歌い手が4人、演奏者が3人というおかしな面子になった。
4曲目の演目はルーミアが決めてくれた「小さい秋見つけた」
今まで聞く側でずっとやっていたけれど、実際歌うのはそんなに嫌いじゃないのよね。
毎日祝詞を読んで発声練習をしてるんだから多分大丈夫と自分に言い聞かせて伴奏が終わるのを待つ。
いよいよ歌いだし。
小さい秋~小さい秋~小さい秋~み~つけた~。
みんなに合わせるように大きな声で歌い始める。
…………終了。
4曲目が終わり、周りを見渡す。
予想以上にうまくハモッてくれたし、私としては結構満足できたんだけどどうだったかな?
「霊夢も意外とやるのねー」
素直に驚いてくれるルーミア。
他の面子も結構驚いてくれたようだった。
ちょっとドキドキしながらみんなと歌ったけれど、うまくいったみたいで一満足。
結構調子よく歌えた4曲目が終わった後は、なし崩し的に雑談したりソロで持ち歌を披露したり、音楽知識を披露したりと宴会的なノリで明け方まで過ごした。
持ち歌で意外といえば意外なんだけれど、プリズムリバー三姉妹まで歌ってくれたのはちょっと予想外かな。
いつも楽器の演奏ばかりが目に入りがちなんだけれど、歌う方もそこそこ……いや、かなりうまく歌えるんだなーとちょっと驚いたっけ。
結果、演奏会の雰囲気じゃなくなったけれど朝までいろいろ歌ったり踊ったりして気が付くと暗かった空がだんだんと明るくなってきた。
「もうそろそろ帰ることにするわ」
「霊夢、帰っちゃうのか?」
「人なんか全然来ないけど、今日の日課が待っているもの」
「霊夢、楽しかったか?」
「楽しかったわ、今日は誘ってくれてありがとう、ルーミア」
「また来てくれるか?」
少し寂しそうな顔で受け答えをしているルーミアにウインク一つ。
「勿論、今度は魔理沙とか他の人とかも誘って来たいわね」
今までの暗かった顔がいつもの元気な顔に戻った。
「今度はもっと凄い演奏会にするわよ」
私は笑顔で答えるルーミアの姿を確認すると、私は明け始めた空を博麗神社に向かって飛んでいく。
……うん、たまにはこういう日も良いわよね♪
昼頃。
縁側でお茶をすすりながらまったりと過ごしていると、昨日の疲れが出てきたのか眠くなった。
「あ~なんかとっても眠い。それにお日様があったかくてとっても気持ちいいわ」
午後の暖かな日差しの中、仮眠を取っていた霊夢が起きると外は真っ暗。
目の前にはルーミアが待っていて……。
美鈴にバトルクライ、魔理沙とアリスに天体観測のデュエット
車輪の歌をモコケネコンビ、アルエを永琳と輝夜コンビでリクエスト
藍とかゆーかりんとかれみりゃとか後チルノとか……。
絶対この場があったら行きたいなーと思ってたり。