フランがパズル遊びに興味を示したので、咲夜に買いに行かせて与えてみた。そう言えばここ数百年フランが一人で遊んでいる姿を見たことがない。いい機会だから加減知らずのこの子が上手に遊べるか見守ってやることにした。
最初はルービックキューブという、手の平サイズの奇っ怪な構造の箱だったが、フランはそれを私達の目の前で一瞬で色をそろえてしまった。流石は我が妹。その後私がやってみたけれど1時間経っても完成しなかったので砕いたのは内緒だ。
新しいパズルが欲しいと言うことで、今度はジグソーパズルを与えてみた。
写真立てサイズで十分だろうと思っていたが、フランはよどみなく1ピース1ピースを枠にはめていき、あっという間に完成させてしまった。凄いわね我が妹よ。私が好意でケースに入れようとしたらケースごと縦に圧縮されてしまったことは見逃してもらいたい。
もっと大きいのが欲しいと言うことで、興が乗った私はより大きなサイズのパズルを与えてみた。私やフランが寝転がってもなお余裕があるくらいの大きさだ。これなら作り応えがあるだろう。
フランは袋に詰まったパズルのピースを勢いよく机にぶちまけた後、すぐにピースをくみ上げ始めた。元の絵は一瞥しただけで、すぐに邪魔だと言わんばかりに端に寄せてしまう。それからというもの、ワンスナップでピースを拾ってははめ、拾ってははめを繰り返していき、数時間もかからずに見事に一枚の絵を完成させてしまった。エクセレントね我が妹よ。お願いだからのり付けを手伝ったとき私が誤って型枠に接着剤で爪を固定してしまい仕方なく引き裂いたことを許して。
変わったパズルが欲しいと言うことで、香霖堂の店主に相談してみたら表も裏も真っ白というふざけたパズルを出してきた。余り人を舐めるなとも思いつつもとりあえず与えてみたらフランは予想外に興味を持ったらしく、早速作り始めた。
どうやってそんなものを攻略するのか私達は一様に首をひねったものだが、フランは何も問題はないとでもいわんばかりにこともなげにピースをくみ上げていき、恐るべき事に前回の大型パズルよりも短い時間で完成させてしまった。ピースの切り口が巧妙にばらけているらしいこのパズルは正確にくみ上げなくては決して正しい長方形にはならないのだそうだが、フランが完成させたそれは一部の隙もないほどに完全な長方形になっている、と完成品を見たパチェは断言した。……マーベラス過ぎるわ我が妹よ。私は何か途方もない思い違いをしていたのかもしれない。
それから数日後、フランは一枚の大きなガラスが欲しいと言いだした。
困惑する一同。何に使うのかと私が問うと、「パズルを作る」のだという。
いまいち意図が理解できなかったが、可愛い妹のためだ。あまり使うことのない窓補填用のガラスを一枚磨き直して与えてみた。一体何をするのかと一同が見守る中、「お姉様達は離れていて」と言って、フランはいきなり床に置いたガラスを数百枚のガラスの破片に変えてしまった。
さっぱりわからない。疑問符を浮かべる私達を尻目に、フランは一枚板から無数に分かれたガラス片を念動力でシャッフルして一つの山を作り上げる。
そしてあろうことか、そのガラス片を単なるカーペットの床に一枚一枚、丁寧に敷き詰め始めた。
私達は未知の驚愕に言葉も出ない。だがフランはそんなことお構いなしに、屈託のない笑顔でその、私達には賽の河原積みにしか見えない遊びに打ち込む。
一種異様な光景に、しかし私達は声を上げることも出来ず、ただ観察するだけだった。誰もがその場から一歩も動こうとしなかった。動けなかったのだろう。思考が、現実の理解に追いつかないのならば仕方がない。
時間は――きっとあの白パズルを作り上げた時よりも、さらに早かった。
「はい完成」
そういって、フランは立ち上がり得意げな笑顔でそれを指さした。
そこには見事なまでに長方形の形を取り戻した大きな窓ガラスがあった。流石に一度割れたガラスの亀裂が全く見えなくなるということはなく、全体に蜘蛛の網のように数え切れないひび割れが生じてはいるが、形の上では紛れもなく元に戻っている。
私達は――愕然とするほかなかった。恐怖すら覚えたかもしれない。
どういう感覚で、どういう神経でこのような異業を平然とこなせるのか。
私の頭には――というより私達一同の頭には、シンクロニシティを持ち出すまでもなくとても陳腐でどうしようもないくらいしょうもない単語が浮かんだ。
ポンッと私はフランドールの頭に手を置いてわしわしと撫でてやる。
「フラン」
「なあにお姉様」
「ここしばらくパズル遊びばかりで体が鈍ってるでしょう。散歩しにいかない?」
フランは、一も二もなく喜んですぐさま咲夜に外出の支度をせがんだ。仰せのままに、と咲夜が準備のために姿を消すのをきっかけとして、他の面々もそれぞれ散り散りに元の場所へと戻っていった。
……
数日前に戯れ言のように口ずさんだ思い違いとは、このことだったのだろうか。というか戯れ言が真実だったのか。
気が触れていてはできないことなのか、気が触れているからできることなのか。
歯止めがきかないという程度。天才と天災の線引き。あの子の才能はどう転んでも埒外の事象を引き起こす。
それは――それも運命なのか、はたまた運命に逆らうのか。
なんにせよ、もうあの子を縛り付けるつもりはさらさらないが、パズル遊びは少し距離を置いてもらおう。このまま続いたら館をパズルにしてしまいかねないからね。
最初はルービックキューブという、手の平サイズの奇っ怪な構造の箱だったが、フランはそれを私達の目の前で一瞬で色をそろえてしまった。流石は我が妹。その後私がやってみたけれど1時間経っても完成しなかったので砕いたのは内緒だ。
新しいパズルが欲しいと言うことで、今度はジグソーパズルを与えてみた。
写真立てサイズで十分だろうと思っていたが、フランはよどみなく1ピース1ピースを枠にはめていき、あっという間に完成させてしまった。凄いわね我が妹よ。私が好意でケースに入れようとしたらケースごと縦に圧縮されてしまったことは見逃してもらいたい。
もっと大きいのが欲しいと言うことで、興が乗った私はより大きなサイズのパズルを与えてみた。私やフランが寝転がってもなお余裕があるくらいの大きさだ。これなら作り応えがあるだろう。
フランは袋に詰まったパズルのピースを勢いよく机にぶちまけた後、すぐにピースをくみ上げ始めた。元の絵は一瞥しただけで、すぐに邪魔だと言わんばかりに端に寄せてしまう。それからというもの、ワンスナップでピースを拾ってははめ、拾ってははめを繰り返していき、数時間もかからずに見事に一枚の絵を完成させてしまった。エクセレントね我が妹よ。お願いだからのり付けを手伝ったとき私が誤って型枠に接着剤で爪を固定してしまい仕方なく引き裂いたことを許して。
変わったパズルが欲しいと言うことで、香霖堂の店主に相談してみたら表も裏も真っ白というふざけたパズルを出してきた。余り人を舐めるなとも思いつつもとりあえず与えてみたらフランは予想外に興味を持ったらしく、早速作り始めた。
どうやってそんなものを攻略するのか私達は一様に首をひねったものだが、フランは何も問題はないとでもいわんばかりにこともなげにピースをくみ上げていき、恐るべき事に前回の大型パズルよりも短い時間で完成させてしまった。ピースの切り口が巧妙にばらけているらしいこのパズルは正確にくみ上げなくては決して正しい長方形にはならないのだそうだが、フランが完成させたそれは一部の隙もないほどに完全な長方形になっている、と完成品を見たパチェは断言した。……マーベラス過ぎるわ我が妹よ。私は何か途方もない思い違いをしていたのかもしれない。
それから数日後、フランは一枚の大きなガラスが欲しいと言いだした。
困惑する一同。何に使うのかと私が問うと、「パズルを作る」のだという。
いまいち意図が理解できなかったが、可愛い妹のためだ。あまり使うことのない窓補填用のガラスを一枚磨き直して与えてみた。一体何をするのかと一同が見守る中、「お姉様達は離れていて」と言って、フランはいきなり床に置いたガラスを数百枚のガラスの破片に変えてしまった。
さっぱりわからない。疑問符を浮かべる私達を尻目に、フランは一枚板から無数に分かれたガラス片を念動力でシャッフルして一つの山を作り上げる。
そしてあろうことか、そのガラス片を単なるカーペットの床に一枚一枚、丁寧に敷き詰め始めた。
私達は未知の驚愕に言葉も出ない。だがフランはそんなことお構いなしに、屈託のない笑顔でその、私達には賽の河原積みにしか見えない遊びに打ち込む。
一種異様な光景に、しかし私達は声を上げることも出来ず、ただ観察するだけだった。誰もがその場から一歩も動こうとしなかった。動けなかったのだろう。思考が、現実の理解に追いつかないのならば仕方がない。
時間は――きっとあの白パズルを作り上げた時よりも、さらに早かった。
「はい完成」
そういって、フランは立ち上がり得意げな笑顔でそれを指さした。
そこには見事なまでに長方形の形を取り戻した大きな窓ガラスがあった。流石に一度割れたガラスの亀裂が全く見えなくなるということはなく、全体に蜘蛛の網のように数え切れないひび割れが生じてはいるが、形の上では紛れもなく元に戻っている。
私達は――愕然とするほかなかった。恐怖すら覚えたかもしれない。
どういう感覚で、どういう神経でこのような異業を平然とこなせるのか。
私の頭には――というより私達一同の頭には、シンクロニシティを持ち出すまでもなくとても陳腐でどうしようもないくらいしょうもない単語が浮かんだ。
ポンッと私はフランドールの頭に手を置いてわしわしと撫でてやる。
「フラン」
「なあにお姉様」
「ここしばらくパズル遊びばかりで体が鈍ってるでしょう。散歩しにいかない?」
フランは、一も二もなく喜んですぐさま咲夜に外出の支度をせがんだ。仰せのままに、と咲夜が準備のために姿を消すのをきっかけとして、他の面々もそれぞれ散り散りに元の場所へと戻っていった。
……
数日前に戯れ言のように口ずさんだ思い違いとは、このことだったのだろうか。というか戯れ言が真実だったのか。
気が触れていてはできないことなのか、気が触れているからできることなのか。
歯止めがきかないという程度。天才と天災の線引き。あの子の才能はどう転んでも埒外の事象を引き起こす。
それは――それも運命なのか、はたまた運命に逆らうのか。
なんにせよ、もうあの子を縛り付けるつもりはさらさらないが、パズル遊びは少し距離を置いてもらおう。このまま続いたら館をパズルにしてしまいかねないからね。
うむ!その通り。
魔理沙がパズルのピースにされない事を祈る。
タイトルで納得+少しにやけました。
特にルービックキューブは時々ガチで砕きたくなる。
うぎぎ
格好つけてるヘタレミリアもw
サヴァンの人に、この世はどう見えているのだろう。
忘れる事によって救われる事もあるというのに。
同じ過ちを繰り返す人を嘲笑うのか、それとも羨ましいと思うのか。
昨日の晩飯すら忘れてしまう俺には、想像もつきませんw
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