紅魔館の門前で紅美鈴は番をしていた。
それ自体になんら不満はない。自分の職務は門番なのだから。
よく分からない奴といわれるのもまあいい。自分の種族自体不明なのだから。
だから自分も自分はよく分からん奴だと思っている。
名前で呼ばれないのも…まあ許そう。来客がわざわざ門衛の名前を覚えるとは思えない。
中の人間から名前で無く愛称で呼ばれるのは、親しまれている証拠だ。
むしろ喜ぶべきだろう。
だからといっていくらか改まった場で愛称を遣うのは勘弁して欲しいが。
しかしなぜ自分が紅魔館主催の宴会に参加できないのか!
宴会。いわゆるパーティー。
内勤メイドは言うに及ばず外勤メイド、つまりは買出し部隊に外に設けられているブドウ等の直営畑の管理部隊、
美鈴と同じ門衛や見回り隊も参加している。
博麗の巫女や薬師ご一行というのも来ている。
もはや蔵書盗みが趣味だろう憎き黒白魔法使いも、七色だかのやたら派手な魔法使いも来ている。
果てはチルノまで来ている。
だのになぜ自分が参加できないのか!!
……じゃんけんで負けたからか…。
ああ、何故あそこでチョキを出してしまったのか!
悔やんでも悔やみきれない。正直地面に体を投げ出してじたばたと悔悟のポーズをしたい気分だが、
そんなことをすればナイフが飛んできそうなのでそれもできない。非常にもどかしい。
いや、いくらあの理不尽なメイド長でも、と思うがやっぱりやめておこう。ここは慎重になるべきだ。
ああお肉…私のお肉が…あの中で盛大に消費されているのね…。
ここにいなければ、あの中にいれば半分ぐらいは余裕で私の胃袋に納まったであろう、私のお肉が。
紅美鈴は、私の体に野菜の入る胃袋などない! と豪語するほどの肉食獣である。
反対にメイド長の十六夜咲夜はあまり肉を好まず、野菜や豆、魚などを好んで食べる。
胸が大きい人はたいてい肉食って話があったなあうふふだから咲夜さんはあんなにむグサ
ナイフが飛んできた。
急いで辺りを見回すも人影はない。それどころか虫の声ひとつ聞こえない。
心のうちを読むとはッ! なんて理不尽なスキルをッ! と思うが実はそれほど驚いてもいない。
なにせ働いているのは吸血鬼の館である。
吸血鬼といえば理不尽な存在の代名詞。
故郷の土を入れた棺桶で一日ぐっすり眠れば、お肌つるつる、日焼けの跡もまっさら、という実にうらやま…じゃなかった、
理不尽な能力の持ち主である。
自分も回復力は存外に高いほうだがあれほどまでには高くない。
というか、肌ダメージだの日焼けだのには自分の回復力は一向に反応してくれない。
日焼けも一応火傷よねえ、と思いながら将来シミができないように化粧水やら乳液を塗りたくって祈る毎日である。
子供の肌って再生力高いのよねえそういえハッ!
不意に悪寒を感じ横へ飛ぶと、今まで立っていた所に槍が突き立った。
危ない危ない。これはお嬢様ね。
と思っていると、槍の柄が穂先に、穂先が柄に変わりこちらに向かって突っ込んでくる。
そういえばグングニルって一発必中の槍だっけ、と思い出しながら為す術なく腹を撃たれた。
空きっ腹に沁みる…いいもん持ってんじゃねーかあの娘、と思いながら地面に倒れる。
体に痺れはあるが立てないほどでもないのですぐに立ち上がる。
骨折しているだろうがそんなものはすぐに治る。問題は服に空いた穴だ、と思ったら穴は開いていなかった。
打撃のみで刺突効果はなかったらしい。ありがたい。
ありがたいにはありがたいのだが、きらりきらりとナイフの煌めきが見える。
第二波かー、と思いながらも痺れた体ではナイフの群れから満足に逃げる事叶わず、結果ほとんどを背中で受け止めた。
「たいちょーなにか異常ありましたかー?
ぺたしぺたしという間の抜けた足音とともにやはり間の抜けた声がする。
同じ門番隊の貧乏籤組だ。じゃんけんで負けた者もいれば、先任者に譲った者もいる。
先輩後輩意識の低い隊ではあるが、それでもやはり上下関係というのは厳然と存在するのである。
「特になーし。
美鈴も返事をする。背中にナイフの刺さったままで。
それを見た同僚は特に驚いたそぶりも見せず抜こうともせずに世間話に移ろうとする。
もはや慣れっこになってしまったらしい。
「バスンッ、って音がしてましたけど何の音ですか?
「槍が着弾しただけよ。それよりそれ何?
美鈴はどうやら手に持った白い陶器の上に乗った、いいにおいのする、茶色の固体に興味を持ったようだった。
「ねえ、なんでローストチキンなんて持ってるのよう!
「うひゃあ。持ってきてくれたんですよ、参加できないのはつらいだろ、って言って。
「何で私の分は無いの!
「知りませんよお。メイド長が持っていくだろうから止めたんじゃないんですか。
「来てないよう。咲夜さんなんて来てないよう。
半泣きで訴える美鈴。これはヤバイと急いで肉を胃袋に納めにかかる同僚。
お~~に~~く~~~
美鈴の悲痛な訴えが湖上に響く。
宴はまだ始まったばかりである。
それ自体になんら不満はない。自分の職務は門番なのだから。
よく分からない奴といわれるのもまあいい。自分の種族自体不明なのだから。
だから自分も自分はよく分からん奴だと思っている。
名前で呼ばれないのも…まあ許そう。来客がわざわざ門衛の名前を覚えるとは思えない。
中の人間から名前で無く愛称で呼ばれるのは、親しまれている証拠だ。
むしろ喜ぶべきだろう。
だからといっていくらか改まった場で愛称を遣うのは勘弁して欲しいが。
しかしなぜ自分が紅魔館主催の宴会に参加できないのか!
宴会。いわゆるパーティー。
内勤メイドは言うに及ばず外勤メイド、つまりは買出し部隊に外に設けられているブドウ等の直営畑の管理部隊、
美鈴と同じ門衛や見回り隊も参加している。
博麗の巫女や薬師ご一行というのも来ている。
もはや蔵書盗みが趣味だろう憎き黒白魔法使いも、七色だかのやたら派手な魔法使いも来ている。
果てはチルノまで来ている。
だのになぜ自分が参加できないのか!!
……じゃんけんで負けたからか…。
ああ、何故あそこでチョキを出してしまったのか!
悔やんでも悔やみきれない。正直地面に体を投げ出してじたばたと悔悟のポーズをしたい気分だが、
そんなことをすればナイフが飛んできそうなのでそれもできない。非常にもどかしい。
いや、いくらあの理不尽なメイド長でも、と思うがやっぱりやめておこう。ここは慎重になるべきだ。
ああお肉…私のお肉が…あの中で盛大に消費されているのね…。
ここにいなければ、あの中にいれば半分ぐらいは余裕で私の胃袋に納まったであろう、私のお肉が。
紅美鈴は、私の体に野菜の入る胃袋などない! と豪語するほどの肉食獣である。
反対にメイド長の十六夜咲夜はあまり肉を好まず、野菜や豆、魚などを好んで食べる。
胸が大きい人はたいてい肉食って話があったなあうふふだから咲夜さんはあんなにむグサ
ナイフが飛んできた。
急いで辺りを見回すも人影はない。それどころか虫の声ひとつ聞こえない。
心のうちを読むとはッ! なんて理不尽なスキルをッ! と思うが実はそれほど驚いてもいない。
なにせ働いているのは吸血鬼の館である。
吸血鬼といえば理不尽な存在の代名詞。
故郷の土を入れた棺桶で一日ぐっすり眠れば、お肌つるつる、日焼けの跡もまっさら、という実にうらやま…じゃなかった、
理不尽な能力の持ち主である。
自分も回復力は存外に高いほうだがあれほどまでには高くない。
というか、肌ダメージだの日焼けだのには自分の回復力は一向に反応してくれない。
日焼けも一応火傷よねえ、と思いながら将来シミができないように化粧水やら乳液を塗りたくって祈る毎日である。
子供の肌って再生力高いのよねえそういえハッ!
不意に悪寒を感じ横へ飛ぶと、今まで立っていた所に槍が突き立った。
危ない危ない。これはお嬢様ね。
と思っていると、槍の柄が穂先に、穂先が柄に変わりこちらに向かって突っ込んでくる。
そういえばグングニルって一発必中の槍だっけ、と思い出しながら為す術なく腹を撃たれた。
空きっ腹に沁みる…いいもん持ってんじゃねーかあの娘、と思いながら地面に倒れる。
体に痺れはあるが立てないほどでもないのですぐに立ち上がる。
骨折しているだろうがそんなものはすぐに治る。問題は服に空いた穴だ、と思ったら穴は開いていなかった。
打撃のみで刺突効果はなかったらしい。ありがたい。
ありがたいにはありがたいのだが、きらりきらりとナイフの煌めきが見える。
第二波かー、と思いながらも痺れた体ではナイフの群れから満足に逃げる事叶わず、結果ほとんどを背中で受け止めた。
「たいちょーなにか異常ありましたかー?
ぺたしぺたしという間の抜けた足音とともにやはり間の抜けた声がする。
同じ門番隊の貧乏籤組だ。じゃんけんで負けた者もいれば、先任者に譲った者もいる。
先輩後輩意識の低い隊ではあるが、それでもやはり上下関係というのは厳然と存在するのである。
「特になーし。
美鈴も返事をする。背中にナイフの刺さったままで。
それを見た同僚は特に驚いたそぶりも見せず抜こうともせずに世間話に移ろうとする。
もはや慣れっこになってしまったらしい。
「バスンッ、って音がしてましたけど何の音ですか?
「槍が着弾しただけよ。それよりそれ何?
美鈴はどうやら手に持った白い陶器の上に乗った、いいにおいのする、茶色の固体に興味を持ったようだった。
「ねえ、なんでローストチキンなんて持ってるのよう!
「うひゃあ。持ってきてくれたんですよ、参加できないのはつらいだろ、って言って。
「何で私の分は無いの!
「知りませんよお。メイド長が持っていくだろうから止めたんじゃないんですか。
「来てないよう。咲夜さんなんて来てないよう。
半泣きで訴える美鈴。これはヤバイと急いで肉を胃袋に納めにかかる同僚。
お~~に~~く~~~
美鈴の悲痛な訴えが湖上に響く。
宴はまだ始まったばかりである。
……正直萌えた。