Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

マヨヒガに眠る幸運を掠め取れ!

2006/09/09 09:50:11
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 人と妖が擦れ違い入り乱れ、それでも共に生き続ける楽園――幻想郷。
 大概は、安穏とした空気に包まれた――時折、気紛れのように強大な異変も起きるが――至って平和な、閉ざされた郷だ。

 それ故か。或いは、常人より幾分か傾斜した嗜好を持つ変わり者が多い為か。
 愚かな事に此処には、自分からその平和な空気を打ち砕く輩が、少なからず存在する。俗に言う、トラブルメーカーと呼ばれる者だ。

 トラブルメーカー。
 幻想郷に住まう変わり者の少女達ほとんどに、当て嵌まるであろうこの言葉。
 仮に、張本人である彼女達に向かって『トラブルメーカーとは誰か?』と問い掛けたならば。恐らく大抵の者が、こう答えるだろう。

 霧雨魔理沙、と。





「さっくり貰ってくぜ」

 それは、日常へと溶け込んでしまった、図々しい略奪。未来永劫続くと思われる、不毛で物騒な昼下がり。
 しかし人間と云う生き物は、唐突に日常を変化させたくなる者だ。

「……本ばっかりも、ちょっと飽きたなぁ」

 切欠は、何気無い一言だった。

「今回は少し、趣向を変えてみるか」

 黒白の魔法使いは、乙女色の瞳の奥に狩人としての本能を燃やし始める。
 心決まれば、後は早い。霧雨魔理沙の行動理念は〝考えるより行動派〟なのだから。





「……私の、力?」
「ああ、お前の力が必要なのさ、ウドンゲ」
「ウドンゲ言うな」

 美脚一閃。
 鈴仙のハイキックは白い軌道をすらっと画き、黒白の顎を見事に捉える。
 かる~い脳震盪と共にドロワーズ丸出しで可愛らしく転げる魔理沙だったが、それを為した容疑者の視線は冷たい物だった。

「み、見事だぜ……是非とも、その力を貸してほしいんだ」
「……まあいいわ。で、理由は?」
「なあに、簡単な事だよ」

 帽子を整え、魔理沙はワザとらしい気障な笑みを浮かべた。

「面白そうだからだ……好きなんだろう? 派手な荒事?」
「…………ふ~ん、よく分かっているじゃない」

 兎の耳の形状に酷似した、人工細胞で構築される戦略性器官。それが、主の感情に呼応するかのようにピコピコと蠢く。
 月の技術の結晶――試験管ベビー、鈴仙・優曇華院・イナバは好戦的な笑みで頷いた。

「その話、乗ったわ」





「で、今度は私? 随分と珍しい人選ね」
「銃とくれば、次は刀。お約束だろ?」
「……本当?」
「本当だぜ、幽々子にも聞いてみな」

 庭師は難しい顔でしばらく考えた後に、屋敷へと入ってしまった。真面目な彼女の事だ。恐らく本当に、主へと問い掛けに行ったに違いない。
 やがて、得意気に待ち続ける魔理沙の前へと現れた魂魄妖夢の顔は、渋々とした難しい表情をしていた。

「未だに納得出来ないけど……幽々子様が行けって言ったから、付いて行くわ」
「そりゃ助かる。で、幽々子は何て言ってた?」

 相変わらずの、ワザとらしい気障な笑み。しかしその顔は、妖夢の口から飛び出てきた言葉によって若干引き攣ってしまう。

「泥棒に銃使い。そして実直な侍と、裏で全てを巧みに扱うグラマラスは必要でしょ。と、言ってたけど……まさかそれって――」
「流石だな、幽々子の奴」

 庭師の言葉を、黒白は最後まで聞かなかった。苦虫を噛み潰したような声色で、呻くように呟く。

「美味しい所だけ持っていかれないように、注意しよっと」





 かくして、三人――もとい四人は、思惑も様々に手を取り合う。

「今回、借りようと思う物は――ずばり、これだぜ」

 マヨヒガの、幸運をもたらす数々の調度品。これこそが、今回の得物だった。





 幸か不幸か。
 偶然は幸せも呼び、不幸せも呼び込む。
 彼女達が、幻想郷屈指のトラブルメーカーを筆頭とする四人組みがターゲットに定めた、内と外の境界――マヨヒガ。

 水面下で蠢く陰謀が、或いは彼女達を呼び寄せたのかもしれない。
 隠せば隠そうとする程、強大であれば強大である程、世界はそれを放置しない……のかもしれない。

 マヨヒガは今、欲望渦巻く万魔殿(パンデモニウム)と化していた。





 彼女達が巻き込まれたのは、最早、必然だったのかもしれない。





「貴方が何故、此処に居る……答えてください! お師匠!」

 銀髪の少女は、悲痛な響きをほんの少しだけ孕ませた、慟哭のような声で眼前の人影へと呼び掛ける。
 しかし、呼び掛けられた影――厳しい面で佇む老年の男は、無慈悲な程に、静かに呟いただけだ。

「――言葉は不要」

 打刀と短刀。
 独特の構えを、妖夢が見間違える筈が無い。魂魄流――扱える者は恐らく、この世にも冥界にも二人しか存在しないであろう、幻の剣術。
 魂魄妖夢の剣の師にして、実の祖父――魂魄妖忌が放つ殺気は、間違い無く本気のそれだった。

「往くぞ、妖夢」
「!?」

 たった、それだけの言葉が耳朶を打った、刹那。旋風のような剣の鬼は、既に妖夢の眼前へと肉薄していた。





 因幡てゐ。
 行動派の彼女は目を離せば、いつも何処かへと出掛けている。
 だから、目の前にそのてゐが佇んでいる事自体は、鈴仙にとって別段、驚くべき事ではない。

「……いくらなんでも、それはちょっと物騒過ぎやしない?」

 その白い手に握られた、無骨で凶悪な鉄塊――回転式機関銃を除いたならば、だったのだが。

「ふふっ……〝カラミティ・ジェーン〟も真っ青な代物でしょう?」

 慣れた手付きで巨大な得物を、これ見よがしに大仰に構えて見せる、てゐ。
 やんわりとその顔に浮かべているのは、まさに無垢と呼ぶに相応しい、真っ白な笑み。
 しかし鈴仙は知っている。彼女は詐欺の常習犯であり、ポーカーフェイスに掛けては、トラブルメイカー揃いの少女達の中でも屈指の実力者だと云う事を。

「……悪いけど、結構本気で行くわよ?」

 だから、だからこそ。鈴仙は鋭く、威嚇するかのように言い放つ。
 対する因幡の言葉は、自信と覇気に満ち溢れた物だった。

「ふふっ……上等さァァァァ! れぇぇぇぇいぃっせぇぇぇぇんんんんっ!」

 獣の咆哮を思わせる、連続した凶悪な銃声が、辺り一帯に轟いた。





 仄かな茶の香りが、その部屋にゆったりと漂う。
 西行寺幽々子と八雲紫は、湯飲みを手にし卓袱台を挟んだ状態で、静かに対峙していた。

「……紫。今回は一体、何を企んでいるの」
「あら、何の事かしら?」
「とぼけないで」

 二人の顔に揃って浮かぶのは、美しいまでに緩やかな微笑みだ。頬も、瞳も、全てが笑みへと傾いた状態で尚も語り合う。

「式とその式。魂魄妖忌。もう一人の妖怪因幡。それに、あの人間……何を考えているのかしらねぇ、本当に」
「何でもないわ、ただの気紛れよ」

 艶かしく、それでいてあどけなくも映る紫の笑みは、悪戯を思い付いた童女のそれとよく似ていた。

「そう……何でもないのよ、本当にね」





 いつの間にか、共に追われる羽目となった二人の少女。

「そういえば、自己紹介がまだだったな」

 黒白の魔法使いは、根拠も無く湧き立つ自信を漲らせながら言葉を紡ぐ。

「私は、霧雨魔理沙って言うんだ、よろしく」

 太陽のように図々しく、そして明るい笑み。
 魔理沙が差し出した手の動きは、本当に自然な物だった。

「――稗田、阿求です」

 柔らかい手で、握手を交わす。
 少女――阿求の微笑みは、花開く蕾を思わせた。





「これ以上、あの鼠達の好きにはさせない」

 紫尽くしの、半眼病弱魔女。

「あの隙間妖怪の企みは、この際、後回しよ……今日は喘息の調子も良いし、とっておきを見せてあげる」

 魔女の周囲に光の粒子が出現、そのまま収束し、やがて宙を画く魔方陣へと変化する。
 形成された術式を満足気に見やりながら、パチュリー・ノーレッジは分厚い魔法書を開いた。

「覚悟なさい、霧雨魔理沙。今度こそ、引導を渡してやるわ」

 炎が渦巻き風が波打ち、土は蠢く。そして金は瞬き輝き、水は流れて轟いた。
 今宵。彼女の五行に、死角は無い。





「やがて、全ての役者が一同に揃う時」

 神社の境内から、巫女は空を見上げる。

「私の願いは、見事に成就する」

 厳かなまでに、静かで重厚な宣言。それと同時に、巫女の身体が滑らかに浮かぶ。
 博麗霊夢は上空を見上げたまま、何処かへと飛び去って行った。




 タイトルは、下記URL先で脳内補強して頂けたなら幸いです。

 ttp://intermezzo.cool.ne.jp/report/Lupin/R3_temp.swf?inputStr=%83%7D%83%88%83q%83K%82%C9%96%B0%82%E9%8DK%89%5E%82%F0%97%A9%82%DF%8E%E6%82%EA%81I

 ちなみに続きません。
 時間的に乗り遅れてしまったのが、とても悔やまれます。
爪影
[email protected]
http://yaplog.jp/garaku2002/
コメント



1.名無し妖怪削除
あっきゅんktkr

・・・ところで銭形役はだれ?w
2.名無し妖怪削除
私の名は霧雨魔理沙。名高き普通の魔法使いだ。
幻想郷中の物持ちが私に血眼。ところがこれが捕まらないんだなぁ。
ま、自分で言うのはなんだけど、狙った本はかならず奪う、
神出鬼没の魔法使いだぜ。