あらすじ
新婚
――最近の永遠亭は、騒がしい。
「姫、姫! どちらにおいでですか!」
――肩を怒らせ、大声で姫を呼びながら。
広大な廊下を、わざと大きな足音を立てて歩く。
「ひ、姫様、永琳さまが――」
「しっ! 早く逃げるのよ!」
――トタトタという可愛らしい足音と共に。
何人かが畳みの上を転がるように、逃げていく。
「姫! ここですね!」
「きゃあ!」
「「うさー!」」
――早足で追いつき、ピシャンと音を立ててふすまを開けば。
その向こうには、頭を抱えてしゃがみ込む姫と、数羽の兎たちの姿。
「姫。それにあなたたち」
――腕組みをしながら、私は出来るだけ怖い顔を作り。
つまみぐいの犯人たちを順番に、ゆっくりと睨みつける。
「つまみぐいはダメだとあれほど言ったでしょう!」
「「う、うさぁぁぁ~~!」」
――両手を腰に当てて叱りつけると、兎たちは目を瞑り。
ふるふるとその小さな体を震わせて、情けない声をあげる。
「まったく、懲りずに何度も何度も」
――私は、漏れそうになる笑みを必死で堪えながら。
厳しい顔のまま、もう少し、きついお灸を据えようとする。
「ま、待って、永琳」
「なんですか、姫?」
――と、怯える兎たちを見て、姫が立ち上がった。
私の視線に怯えながらも、パタパタと両手を動かし。
「わ、私が食べようって言い出したの」
「「ひ、姫さま~~」」
「この子たちは関係ないわ」
――身振り手振りで自分のせいだと主張して、兎たちを庇い始めた。
次に見える光景が予想出来たので、考えるフリをして目を瞑る。
「「姫さま~~」」
「そうよね? 皆?」
「違うウサ~」
「皆で一緒にやったウサ~」
「姫さまだけが悪いんじゃないウサ~」
「ちょ、ちょっと!」
「姫さま、バツを受けるのは一緒ウサ」
「「ウサ~~」」
――聞こえてくる声だけで、涙腺が緩んだ。
腕組みをしながら先ほどの数倍の努力で涙を押さえ込んで。
「では、全員同罪ですね。庭の木に吊るさせてもらいます」
――厳然と、私の役目を果たす。
粛々と吊るされる皆を見ながら、私は思い出す。
永遠亭が、まだ静かであった頃の、少し昔のことを。
『―――永琳』
『―――はい』
『―――静かね』
『―――はい』
『―――私たち二人だけだものね』
『―――お寂しいですか、姫?』
『―――少し、ね』
「ふぅ、やっと夕飯の時間だわ」
「もう木に吊るされるのはこりごりウサ…」
「でもちょっと楽しかったウサ」
「おなかへったウサ~」
「「ウサ~」」
――月の光を浴びて、静かに微笑んだ横顔。
「アンタたち、姫さまに迷惑かけちゃダメじゃない」
「てゐさまごめんウサ~」
「いいのよ、てゐ。私も同罪だもの」
「「姫さま~」」
――それが、今はこんなにも明るい。
『―――ごちそうさま』
『―――姫、もう宜しいのですか?』
『―――ええ。もう食べられないわ』
『―――ですが、もう少し召し上がられないと』
『―――いいの』
『―――承知しました』
――姫は、とても食の細い方だった。
「あ、鈴仙、もう少しごはんをよそって」
「え? でも姫さま、おやつを食べられたんじゃ?」
「平気よ。たくさん食べないと妹紅に勝てないわ」
「そういうものですか?」
「ごはんを食べた分だけ、リザレクションの回数が増えるの」
「なるほど、それじゃあ――」
――本当に、食の細い方だった。
『―――姫、外はよく晴れていますよ』
『―――そう』
『―――少し、日の光を浴びられてはいかがですか?』
『―――いいわ』
――私たちの残した禁薬、蓬莱の薬を口にした娘は言った。
「明日は晴れるのかしらね?」
「お出かけですか、姫さま?」
「ええ。川に遊びに行くの。てゐも来る?」
「私も行きたいウサ~」
「「私も~」」
「こら、私が聞かれたんだから!」
「あ、じゃあ私も~」
「もう、鈴仙までー!」
――嗚呼
『―――おはようございます、姫』
『―――おはよう、永琳』
『―――三日ぶりのお目覚めですね』
『―――日にちなんて』
『――― ………』
『―――日にちなんて、私たちには意味のないものよ』
『―――姫………』
『―――今日も、明日も、明後日も、変わらない日々が続くわ』
『―――お辛いですか?』
『―――いいえ、脅かされることのない、穏やかな毎日ですもの』
――嗚呼
「――明日が来るのが楽しみだわ」
―――嗚呼
「――永琳? 泣いてるの?」
「え? あ! し、師匠!」
「永琳さま! どうなさったんですか!」
「「え、永琳さま~~!!」」
――生きているってなんて素晴らしいんだろう
新婚
――最近の永遠亭は、騒がしい。
「姫、姫! どちらにおいでですか!」
――肩を怒らせ、大声で姫を呼びながら。
広大な廊下を、わざと大きな足音を立てて歩く。
「ひ、姫様、永琳さまが――」
「しっ! 早く逃げるのよ!」
――トタトタという可愛らしい足音と共に。
何人かが畳みの上を転がるように、逃げていく。
「姫! ここですね!」
「きゃあ!」
「「うさー!」」
――早足で追いつき、ピシャンと音を立ててふすまを開けば。
その向こうには、頭を抱えてしゃがみ込む姫と、数羽の兎たちの姿。
「姫。それにあなたたち」
――腕組みをしながら、私は出来るだけ怖い顔を作り。
つまみぐいの犯人たちを順番に、ゆっくりと睨みつける。
「つまみぐいはダメだとあれほど言ったでしょう!」
「「う、うさぁぁぁ~~!」」
――両手を腰に当てて叱りつけると、兎たちは目を瞑り。
ふるふるとその小さな体を震わせて、情けない声をあげる。
「まったく、懲りずに何度も何度も」
――私は、漏れそうになる笑みを必死で堪えながら。
厳しい顔のまま、もう少し、きついお灸を据えようとする。
「ま、待って、永琳」
「なんですか、姫?」
――と、怯える兎たちを見て、姫が立ち上がった。
私の視線に怯えながらも、パタパタと両手を動かし。
「わ、私が食べようって言い出したの」
「「ひ、姫さま~~」」
「この子たちは関係ないわ」
――身振り手振りで自分のせいだと主張して、兎たちを庇い始めた。
次に見える光景が予想出来たので、考えるフリをして目を瞑る。
「「姫さま~~」」
「そうよね? 皆?」
「違うウサ~」
「皆で一緒にやったウサ~」
「姫さまだけが悪いんじゃないウサ~」
「ちょ、ちょっと!」
「姫さま、バツを受けるのは一緒ウサ」
「「ウサ~~」」
――聞こえてくる声だけで、涙腺が緩んだ。
腕組みをしながら先ほどの数倍の努力で涙を押さえ込んで。
「では、全員同罪ですね。庭の木に吊るさせてもらいます」
――厳然と、私の役目を果たす。
粛々と吊るされる皆を見ながら、私は思い出す。
永遠亭が、まだ静かであった頃の、少し昔のことを。
『―――永琳』
『―――はい』
『―――静かね』
『―――はい』
『―――私たち二人だけだものね』
『―――お寂しいですか、姫?』
『―――少し、ね』
「ふぅ、やっと夕飯の時間だわ」
「もう木に吊るされるのはこりごりウサ…」
「でもちょっと楽しかったウサ」
「おなかへったウサ~」
「「ウサ~」」
――月の光を浴びて、静かに微笑んだ横顔。
「アンタたち、姫さまに迷惑かけちゃダメじゃない」
「てゐさまごめんウサ~」
「いいのよ、てゐ。私も同罪だもの」
「「姫さま~」」
――それが、今はこんなにも明るい。
『―――ごちそうさま』
『―――姫、もう宜しいのですか?』
『―――ええ。もう食べられないわ』
『―――ですが、もう少し召し上がられないと』
『―――いいの』
『―――承知しました』
――姫は、とても食の細い方だった。
「あ、鈴仙、もう少しごはんをよそって」
「え? でも姫さま、おやつを食べられたんじゃ?」
「平気よ。たくさん食べないと妹紅に勝てないわ」
「そういうものですか?」
「ごはんを食べた分だけ、リザレクションの回数が増えるの」
「なるほど、それじゃあ――」
――本当に、食の細い方だった。
『―――姫、外はよく晴れていますよ』
『―――そう』
『―――少し、日の光を浴びられてはいかがですか?』
『―――いいわ』
――私たちの残した禁薬、蓬莱の薬を口にした娘は言った。
「明日は晴れるのかしらね?」
「お出かけですか、姫さま?」
「ええ。川に遊びに行くの。てゐも来る?」
「私も行きたいウサ~」
「「私も~」」
「こら、私が聞かれたんだから!」
「あ、じゃあ私も~」
「もう、鈴仙までー!」
――嗚呼
『―――おはようございます、姫』
『―――おはよう、永琳』
『―――三日ぶりのお目覚めですね』
『―――日にちなんて』
『――― ………』
『―――日にちなんて、私たちには意味のないものよ』
『―――姫………』
『―――今日も、明日も、明後日も、変わらない日々が続くわ』
『―――お辛いですか?』
『―――いいえ、脅かされることのない、穏やかな毎日ですもの』
――嗚呼
「――明日が来るのが楽しみだわ」
―――嗚呼
「――永琳? 泣いてるの?」
「え? あ! し、師匠!」
「永琳さま! どうなさったんですか!」
「「え、永琳さま~~!!」」
――生きているってなんて素晴らしいんだろう
そして輝夜と兎たち可愛いなぁ(´∇`*)
してやられた やってくれた喃
途中、感情の表現をせず台詞だけでいろんなものを表して
最後で「――生きて~」はぎゅうっときます
じょにーず氏は悶えさせる作品も泣かせる作品も上手ですねぇ
じょにーず氏のあらすじ部分は前回のネタのあらすじだったりw
現に一番最初の作品にはあらすじがついてない…
2話以降前回の内容を一言で要約(?)したものをかいてあるんです
くぅ!目の前が滲んでなにも見えねぇぜ!!
再確認しました、さんきゅーじょにーずさん。
どういう方向から切り込んでもドラマになる永遠亭は最高だ!
輝夜姫は雇われ姫だったような記憶があるけどそれは二次創作だっけ?
二人だけっていうところに違和感を感じたので揮発脳ですまそ
「輝夜たちとてゐの出会い」「誰が永遠亭を作ったか?」は謎のままのようです。
姫も、永琳も、鈴仙も、てゐも、うさぎ達も、みんなみんな永遠亭にいてよかったなぁと。
ホント、生きているってすばらしいですね。
生きているって素晴らしい……。
なんて生きているって素晴らしいのだろう・・・
素晴らしい。
素晴らしい。