Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

メイド見習い~橙~ご主人様へのプレゼント(後編)

2006/09/08 17:20:41
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※この作品を読むにあたって、『メイド見習い~橙~ご主人様へのプレゼント』(前編)、(中編)を先にお読み下さい。



 
 魔理沙襲撃も終焉した紅魔館。

 魔理沙は諦めずに逃亡を図ろうとしたが、運悪く館内でGペン携えたフランドールに見つかり強制連行された。今頃、修羅場ってるだろう。

 美鈴は晴れて紅魔館の門番復帰を果たしたが、現在は図書館修繕の肉体労働に勤めていた。

 パチュリーは「もってかないで~」と、図書館の自室で魘されている。

 小悪魔は、パチュリーの介抱をしている。

 レミリアは「新たなるブレンドを……」と呟いて、また部屋に篭った。



 そして紅魔館の門の前には、メイド服からいつもの服に着替えた橙と咲夜が向かい合っていた。

 
「今日は普段の被害より、大幅に抑えられたわ。あなたが活躍してくれたおかげでね。本当に助かったわ……ありがとう」

「えへへっ。そう言われると、何か照れるにゃ~」


 橙は、頬を掻いて微妙な表情を浮かべていた。それを見て咲夜は、思いついたような口調で橙に告げる。


「あぁ、そうそう橙。あなた、明日から来なくて良いから」

「にゃっ!?」


 橙の表情が途端に変わった。


「いや、別にクビという意味では無いわ。あなたは、目的の金額以上の働きをしてくれた。だから、ここで働く『契約』は解消になったのよ。そして、これがあなたの働きに見合った対価よ。日収で、これだけの金額は今まで無いわよ。……受け取りなさい」


 咲夜は、橙に封筒を差し出す。


「えっ!?こんなに良いの?」


 その封筒の厚さは、お金の知識の無い橙の目から見ても……分厚かった。


「あら、要らないなら……別に良いわよ?」

「にゃっ!?受け取る、受け取る」


 咲夜が封筒を引っ込める前に、橙は封筒を受け取った。


「ちなみに、内訳を言うとね。メイドとしての金額は、無いわよ。あなたは、メイド見習いだしね。だけど、『図書館の本を魔理沙から守った』というのが大きいわね。メイド見習いでも、一応は紅魔館の住人だった。その住人には、ヴワル図書館限定のボーナスがあるのよ……あなたはそのボーナスで、四番目に高い『パチュリー、小悪魔の許可が無い者の本の持ち出しを阻止』に認定されたのよ。まぁ今回、認定したのは私だけど……あら?」

「ふにゃ~?」


 橙が頭から、プシュ~と煙を出していた。


「……難しかったわね。とにかく、あなたは自分の主とその主にプレゼントを買いに行きなさい。まだ、時間的には余裕があるでしょう。」

「うんっ!!……でも、どこに行ったら買えるの?」

「そうね……今の時間を考慮しても、里までは無理がある……か。なら、『香霖堂』に行きなさい」

「香霖堂?」

「えぇ、地図をあげるわ。まぁ、魔法の森の近くまで行けば、わかると思うけど」


 突然、咲夜の手に地図の書かれた紙があった。それも受け取った橙は、しばし地図と睨めっこした。


「……わかったよっ!咲夜さん、ありがとうっ!」

「咲夜でいいわ。それと橙、また困ったら紅魔館に来なさい。即採用候補にして置くから」

「にゃははっ……お手柔らかに、お願いします」

「あとこれは、私個人の意見……今度、遊びに来なさい。歓迎するわよ」

「考えとくね!咲夜、門番と仲良くねっ!」

「……なっ、ちょっ、橙!……まったく、一言多いのよ」


 橙は、夕暮れの空を翔けて行った。それを見る咲夜の顔は、少し赤らんでいた。

 それは、夕日だからかそれとも……。





 空はすっかり闇に暮れ、三日月が嗤っている。


「藍様!ただいまっ!」


 暗いイメージを吹き飛ばすが如く、元気に玄関を開ける橙。


「あら、お帰りなさい。相変わらず橙は元気ね~」


 癖のある口調で出迎えたのは、八雲 紫だった。


「あっ、紫様!ただいまです。起きたんですね」

「えぇ、ついさっきね。何か良い事が、在りそうな気がしたから……ところで橙、その箱は何かしら~」


 紫が扇子で、橙の小脇に抱えた二つの箱を差した。


「あっ!こ、これは……」


 橙は慌てて包装された箱を後ろに隠そうとするが、既に遅かった。


「別に、隠す事ないじゃない~」

「あっ!」


 橙が箱の重みが無くなった事に気づくと、持っていた二つの箱が紫の手に渡っていた。


「え~と、中身は何かしら~」


 鼻歌交じりに、紫は上の箱の包装を剥がそうとする。


「にゃ~、止めて下さい紫様ぁ~。それは、藍様のなんですぅ~」


 懇願する橙。


「あら、藍のなの~?」

「はい。紫様のは、下の箱です」

「なら、先に言いなさいな」


 紫は上の箱を床に置き、下の箱を持って包装を剥がそうとする。


「玄関で何やってるんですか、紫様ぁ?」


 紫の後ろから声が聞こえてきた。その口調は、大分ご立腹のようだ。


「えぇ~と、ニャンニャン?」


 ポコッ


「イタッ!お玉で叩くのは止めなさい。藍」

「なら玄関で、橙に変な事をしないで下さいっ」

「変じゃないわよ~。橙に少女から女へ変わる為の、大切な知識を……」


 ポコッ、ポコッ


「イタッ!イタタッ!!もう人の頭を何だと思ってるの~」

「紫様は、人ではなく妖怪です。それにその知識は、玄関で教えるものではありません……はぁ~。とにかく、晩ご飯の用意ができましたよ」

「わぁ~い!ご・は・ん♪ご・は・ん♪ら~んのご・は・ん♪」


 紫は持っていた箱を床に置き、小躍りしながら食卓へと向かっていった。


「……まったく、あの御方は……大丈夫か、橙?」

「はい、大丈夫です。藍様、ありがとうございます」

「別に構わないさ。それより、この箱は何だ?」


 二つの箱を交互に見比べる藍。


「あっ、その箱は、その……ちゃんと言いますから!今は……黙っていてくれませんか?」


 上目遣いで藍を見つめる橙。



(なっ、橙っ!!なんという顔をするんだ!?そんな可愛い顔で見られたら、(ドーン)とか(ドカーン)したくなるじゃないかっ!!!!!)



「……そうか、解った。今は聞かないでおこう」

「ありがとうございますっ!藍様」



(後で、(バキューン)の中で(ダダダダダッ)して聞こうか?)



「おっと、言い忘れるところだったよ。……おかえり、橙」

「ただいま、藍様っ!」



 晩ご飯を食べ終え、片付けも済んだ後、橙は今日あった出来事を話した。それを藍と紫は微笑ましく聞き入った。そして橙は、紅魔館で働いた本当の理由と持ってきた箱のことも打ち明けた。


「はいっ!藍様、紫様!いつも、ありがとうございます。これは、わたしからの気持ちですっ!」


 橙は、薄い青色の包装箱を藍に、艶やかな桜色の包装箱を紫に手渡した。


「「ありがとう、橙。開けてもいい」」 「か?」 「かしら?」

「はいっ!どうぞっ」


 二人は、包装紙を剥がし箱を開ける。



「これは……」

「えぇと、藍様には『穴あき包丁セット』っていうのです。最近、「包丁の切れが悪い」って言ってたから」

「あぁ、ありがとう。大事に使うよ」


 藍に頭を撫でられ、笑顔になる橙。



「橙、これは?」

「紫様には、『お経目覚まし時計』っていうのです。どんな人でも、目覚ましが鳴る前に起きるとか。これで紫様といる時間が長くなるかなぁって思ったから……ダメ、でしたか?」

「い、いえ、嬉しいわよ~!ありがとう、橙」

「喜んで貰えて、良かったですっ!」


 その夜、八雲家の明かりが消えたのは日が昇った後でした。





オマケ

 八雲 紫は自室に戻り、押入れを開けた。意外にも整理された押入れに、橙から貰ったプレゼントを置く。その横から、古く汚れた箱を取り出すと、箱から中身を取り出した。


「まったく、家の式は似たもの同士ね~」


 箱の中からは、針の止まった時計が姿を現した。時計の裏には、平仮名で「ゆかりさまへ らんより」と書かれていた。その字を指でなぞり、目を閉じて懐かしむ表情を浮かべる紫。



 ……橙。あなたは、解ってないでしょけど……

 今回あなたがプレゼントを贈ろうと思ったのは、あなたの意思だけではなく、私の意志も含まれていたのよ。

 藍には、私も感謝しているのよ。 言葉や物じゃ足りない位にね。

 でも今更、恥ずかしいじゃない? だから、あなたを少し『利用』というのは言葉は悪いけど……そうさせて貰ったの。 ごめんなさいね。

 藍がすんなり紅魔館のメイドとして、働く事を許可したのも私の仕業よ。

 あなたには、マヨヒガや白玉楼以外の場所を体験して欲しかったの。

 労働を知り、労働で生じる対価も得ることができたでしょ?

 その経験を忘れないで、大事になさい。

 でもね……全てが私の思惑通りでは無かったわ。

 それは、あなたが私にもプレゼントをくれたこと。

 私が創造したシナリオには、それは存在しなかった。

 ……橙、あなたの成長が楽しみよ。
                                  


 紫は時計を箱に入れ直し、押入れを静かに閉めた。





 マヨヒガの『物』を持ってくると『幸せ』になれるというが、それは違うかもしれない。

 マヨヒガに住む一家の『無形の幸せ』を、『有形の物』として分けて貰うから『幸せが連鎖』していく……のかもしれない。
はぃ、皆さん。御機嫌よう、葉月 天獅です。まず、ここまで読んで下さった読者様。本当に、ありがとうございます。多数の感想も大変嬉しかったです。

さて作品中には『香霖堂』で、橙がプレゼントを選ぶシーンが含まれておりません。理由は、変態こーりんが現れたからです。なので、全部削除しちゃいました♪

あと今回は、次回(仮)予告はありません。担当者が、次の作品に出演の為です。誤字や脱字、感想は随時お待ちしています。ではでは~。



(ここからは反省会。興味の無い人は、スルーしましょう)

 今回の作品は、橙が主人公なのに活かしきれなかった。これが一番の反省点ですね。自分の創作力の乏しさが、著しく出てしまった。でも良い勉強にもなり、メイド姿の橙をもう一回書きたくなりましたし、描きたくもなりました。……猫は良いなぁ。ニャーニャー

 欲望丸出しの葉月 天獅でした、もゅ~。

※九月九日。誤字、加筆修正。ご感想ありがとうございます。
葉月 天獅
コメント



1.名無し妖怪(B)削除
最後の紫さまカリスマ溢れてますね~
似たもの同士の式と式の式、幸せの連鎖……
なんだかホロリときちゃいました

変体こーりん削除は残念なような英断なようなw

今回も楽しませて頂きました!
次回作は秘封倶楽部ということですね?超期待します!
これからも頑張って下さい!
2.名無し妖怪削除
 優しいお話ですねぇ。今までは八雲一家にはあまり興味がなかったのですが、このお話を読んでちょっと好きになりました。
 次回作は秘封だそうでいつも以上に楽しみにお待ちしています。
3.名無し妖怪削除
ストーリーはとても良かったんですが、全体を通して読点が非常に読みづらいところにあったように思います。(「咲夜、さん」みたいに橙がたどたどしく話してる部分は別にしても)一度、音読か脳内音読をしてみてはどうでしょうか。