その少女は暗闇に浮かんでいた。
その少女は青い髪を揺らし、ずっとずっと目を閉じてたたずむ。
暗い世界は心地よかった。暗い世界は落ち着いた。
けれどあるとき、夢を視た。自分が誰かと笑っている夢。
その夢の中で、少女は長い髪を一房結び、頭の上からちょこんと出していた。
誰かと笑う。それは楽しいのだろうか。
少女は疑問に思った。暗い世界は心地いい。
けれど。楽しいって、そんな世界じゃ判らない。
少女は初めて嘆いた。自分以外いない、暗い暗い世界で。
ぽろぽろと流す涙。きらきらと光る。
笑いたい。笑いあいたい。
どうすればいいの? どうすればわたしは――。
そのとき。きらきらの涙は、ころころの玉に変わって。少女の手のひらの中におさまる。
それは、夢の中の少女の髪留めに似ていて。
真似をすれば、もしかしたら、判るのかも。少女はそうおもった。
少女は長い綺麗な、さらさらの髪の毛を一房すくう。
頭の上で一結び。涙の髪留めをちょこんと留めた。
そうしたら――光があふれた。
暗い世界に海が生まれ、大地が生まれ、空が生まれた。
誰も居ない大地にはやがて人が生まれ、そこで暮らし始めた。
やがて、その人たちは空に浮かんだ少女を かみさま と呼び始めた。
少女は、願いが叶ったのが嬉しくて、そんなことはどうでもよかったのだった。
一番最初に生まれた、少女のお世話をする、と言ってきた子は、「もっと かみさま らしくしてください」とうるさかったけど。
少女は、誰かと話せて、笑えるだけで十分だったのだ。
ひろいひろいその世界は。不思議な力で溢れていたから、やがて 魔界 と呼ばれて。
その世界を創った少女は、やがて 神綺 と名乗るのだけど。
それはまた べつの おはなし。
だが た く ま し い な w