Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

メイド見習い~橙~ご主人様へのプレゼント(中編)

2006/09/06 08:45:29
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※あれぇ、おかしいな。本編主人公の橙より目立ってる人?がいるぞぉ。



 澄んだ空気が心地良い、早朝のマヨヒガの玄関にて……


「それじゃ、藍様。行ってきますっ」

「あぁ。橙、気をつけて行って来るんだぞ」

「はいっ、わかりました、藍様。いってきま~す」

「晩ご飯の前には、帰ってくるんだぞ~」


 藍の見送りに、橙は手を振り答えて、空を飛んだ。朝日の光を背に受けて、橙は紅魔館に向かって速度を上げる。


「よ~し、頑張るぞ~っ!」



 ここからはわたし、橙がちょっと説明するよっ!



 昨日、咲夜……さんに付いて回って、紅魔館ではどういう仕事をするのか教えてもらっ……いました。咲夜、さんの言ってた通り、基本的には家事全般をこなす事でした。その後、二人で藍様に許可を貰いに行きました。でも、プレゼントの事は秘密なので、咲夜さんが「人手が足りないから、あなたの式、貸してくれないかしら?」と、ストレートに言いました。

 わたしは、断られそうな気がしたんだけど、藍様は「困った時は、お互い様だ。それにパチュリー殿には、薬の借りもあるからな……橙、お前自身はどう思ってるんだ?」と尻尾を撫でながら、わたしに聞いてきました。


(あぁ、尻尾の円形脱毛症が無くなったのは、そういう事だったんですね。永遠亭の薬師さんのは効力が強すぎて、ハリネズミのような状態でしたね)


 わたしは「やってみたいですっ!」と言うと、すんなりと紅魔館でのメイド見習いになる事を許してくれました。



 説明終了だよっ!敬語って、難しいにゃ~



 紅魔館に臨む大きな門の前に、橙は静かに降り立った。そして、辺りをキョロキョロと窺う。


「あれ~?門番がいるって聞いてたけど、いないじゃん」

「あら、時間ぴったりね。感心、感心」

「にゃっ!」


 橙は反射的に後ろに飛び退き、正面を見据える。そこには美しい銀髪に、整った顔立ち、吸い込まれそうな蒼い瞳で、橙を見つめる咲夜が腕を組んで笑っていた。


「フーッ!!!……なんだ、咲夜か……トスッ……ひにゃっ!」

「咲夜さん、でしょ?」

「はいっ!咲夜さん、おはようございます」

「ふふっ、元気ねぇ。おはよう、橙。早速だけど、メイド服に着替えて仕事をして貰うわよ」

「わかりましたっ」

「よろしくね、橙」


 咲夜が橙に手を差し伸べる。


「はい、よろしくお願いします。咲夜さん」


 橙は咲夜の手を握った。



 メイド服に着替えた橙は、メイドの仕事をこなしていった。仕事といっても、普段から藍の家事を手伝っているので、仕事としての実感は橙には無かったし、初仕事ということもあり、咲夜の後を付いて行き、咲夜が指示した通りに動くという単調な仕事内容だった。


 ともあれ、仕事も一段落。咲夜と橙は、昼食も食べ終えて、二人で紅茶を飲んでいた。紅茶を目の前に、始めは不思議そうな顔をしていた橙も、今は砂糖を三杯入れて飲んでいた。


 そんな橙を横に座っていた咲夜は、紅茶を飲みながら見ていた。


(……この子、すごい手際が良かったわね。それに素直で、細かなところにも気がつく……この子、メイドの素質十分ね)


 咲夜が胸中で呟くと、橙と目が合った。


「へへぇ~」


 橙が、咲夜を見てニコニコ笑った。その笑顔は太陽のように晴れやかで、可愛らしかった。そんな笑顔をされると、こちらも自然と笑顔になる。


「……何、人の顔見て笑ってるのよ。私の顔に、何か付いてるかしら?」

「違うよ。ただ、似てるなぁって思ったの。藍様と咲夜、さん」

「今は二人だけだから、咲夜でいいわ。それにしても、助かったわ。あなたが手伝ってくれたから、ブレイクタイムも楽しめるし」

「わたし、役に立った?」

「えぇ、十分。ありがとう、橙」


 咲夜が橙の頭を撫でると、橙は気持ち良さそうに顔を綻ばせた。



 ドゴォォォォォンッッッ!!!!!



 そんな穏やかな時を突如、轟音が切り裂いた。



「白黒が、図書館に侵入っ!!!!!繰り返す、白黒が図書館に侵入っ!!!現存するメイド隊は、直ちに図書館へと急行せよっ!繰り返す……」



「にゃ~、どうしよう咲夜ぁ~」


 橙が怯えた目で、咲夜を見つめていた。しかし、咲夜は落ち着いた口調で、橙に告げる。


「行きましょう、橙。お嬢様の事は、心配要らないわ」


 咲夜は橙の襟を掴み、ズルズル引き摺って行く。


「そっちの、心配じゃないよぉ~」


 そして、二人はヴワル図書館へと向かった。





 魔理沙は、焦っていた。


(……おいおい、何なんだよっ!?どうして、橙が紅魔館にいる!?いや、それよりも、どうして、私が橙に追い込まれているっ!)


 図書館へやって来た魔理沙は、パチュリーごと壁を吹き飛ばして本を借り(本人談)、立ち去ろうとした所に咲夜と橙が現れた。魔理沙が橙に対して疑問を聞く前に、橙が速攻の攻撃してきた。すかさず、逃亡を図ろうとする魔理沙だが、入ってきた場所には既に咲夜が立っていた。


 他の退路を探すために、本棚を掻き分けながら箒を飛ばす。幻想郷トップクラスのスピードを誇る魔理沙だが、橙に追いつかれる。それは、小悪魔の提案した本棚の配置が関係していた。魔理沙が、トップスピードに乗る前に、本棚の壁が聳え立った。


 なので、自然と魔理沙のスピードが格段に落ちる。なので、瞬発力に分がある橙に、すぐに追い着かれてしまうのだ。そこに、咲夜も参戦し状況は悪化。それに、もう一つ。魔理沙が追い込まれる理由があった。


(……目の前にいるのは、橙っ!!!橙、なんだっ!なのに、どうして、なんで、レミリアと被るんだっ!)


 橙の攻撃は、自分の爪を伸ばした連撃。その攻撃は、レミリアの接近戦と酷似していた。だが、レミリアよりも貧弱で、遅い。魔理沙が、スペルカードを使用するタイミングも何度もあった。しかし、スペルカードを取り出すと、橙は瞬時に反応し、後ろに飛ぶ。その隙間を縫うようにナイフが飛んでくる。ナイフを避けるのに専念すると、距離を詰めた橙の連撃。咲夜とレミリアを一緒に相手をしているかのように、錯覚させる程の抜群のコンビネーションを発揮しながら、二人は魔理沙を追い込んでいった。


(くそっ、これじゃジリ貧だっ!……こうなったらっ!)

 魔理沙は橙の連撃を箒で受け止め、橙の腹部を蹴り上げる。間を置かずに箒の持ち手を変え、振り払う。橙は本棚へ激突して、落ちてきた本に埋没した。


 そして魔理沙は、スペルカードを発動させた。


『彗星 「ブレイジングスター」』


「いっくぜぇぇぇぇぇっ!!!!!」


 咲夜に狙いを定めて、爆発的に速度を上げる。咲夜は、時を止めようとするが、魔理沙のスピードが若干、凌駕した。



 咲夜の目に広がるのは、巨大な魔力の彗星。その彗星は、自分に一直線に向かってくる。しかし、そこに一つの影が降り立った。その影は、どこかの民族衣装を身に纏い、紅く長い髪を揺らしていた。



ドガァァァァァンッ!!!!!



 彗星と化した魔理沙を両手で受け止める。紅い髪が逆立ち、スリットから美脚が覗く。咲夜は、影に問う。


「美鈴っ!どうして、あなたが……あなたは、私がクビにした筈でしょ!」

「うぐっ!!さ、咲夜さん!確かにっ、私はクビになりましたっ!……ぐっ、だけど、それは紅魔館の門番ですっ!?私は……うぅっ……私は、大事な咲夜さんの門番まで辞めたつもりはありませんっ!!!!!……ダァァァァァ!!!!!」


 咆哮を上げ、さらに力を込める美鈴。すると……魔理沙の帯びた光が弱まって行く。


シュゥゥゥゥゥ……


 魔理沙のスペルの効果が切れた、魔理沙と美鈴は同時に倒れ込んだ。


「くっそ~。やっぱり昨日の、魔力の消耗が仇になったぜぇ」


 軽く舌打ちをして、魔理沙がぼやいた。



 咲夜は美鈴に駆け寄り、体を抱き起こす。


「怪我はありませんか?咲夜さん」

「えぇ。大丈夫よ。あなたのおかげでね」

「良かった」


 美鈴は、安堵した表情を浮かべて笑った。



「良くない……」

「へ?」

「良くないっ!美鈴、あなたボロボロじゃないのっ!それに、あんな無茶な……」

「咲夜さん、泣いてるんですか?」

「……泣いてないわよっ!」



 その傍の本の山からは、弱々しそうに……


「にゃ~……」


 という、鳴き声が聞こえた。





 バタンッ!



 突如、ヴワル図書館の扉が勢いよく開いた。皆が揃ってそちらを向く。


「ついに、できたわよっ!究極の黄金比率の血液『レミリアちゃん☆ブラッドゴールデンブレンド』がっ!…………うー?」


 少し、空気の読めない吸血鬼が現れました。



オマケ



「アリース オキテ」

「アサーダヨ アリース」

「んっ……ふわぁ……上海、蓬莱、おはよう」

「オハヨウ アリース」

「アリース オハヨウ」

「あれ、魔理沙は?」


 アリスは昨日、魔理沙の家に泊めて貰ったのだ。


「マリーサ ナラ デカケタヨ」

「テガミ オイテッタ」


 上海人形と蓬莱人形が二体で、置手紙を広げた。


「なになに……ちょっと、出かけてくるぜ……か。簡潔すぎるわね。……なら、二度寝しましょう」


 数分後には、アリスの寝息が聞こえてきた。その両隣では、上海人形と蓬莱人形も一緒に添い寝をしていた。
はぃ、皆さん。御機嫌よう、葉月 天獅です。橙が主人公ですよっ!本当ですよ!自分で言うのもなんですが、今回の話は、全体的にギャグ薄めだと思います。多分、後編しだいかな。誤字や脱字、感想は随時お待ちしています。ではでは~。

お約束……

次回(仮)予告
 蓮子「予想外の魔理沙襲撃により、橙のメイドとしての仕事は終了しましたっ!」
 メリー「それは、魔理沙襲撃に対して、大きく貢献したためである」
 蓮子「プレゼントを購入できる額を貰った橙は、香霖堂へと向かいますっ!」
 メリー「そこで、橙の選んだプレゼントとは?」
 蓮子「次回、『メイド見習い~橙~ご主人様へのプレゼント(後編)』……お楽しみにっ!」
 メリー「お楽しみにぃ~」

※九月六日。誤字発見、修正。ご感想ありがとうございます。もう少しで、後編が書き上がりますので、しばしお待ちを。
葉月 天獅
コメント



1.名無し妖怪削除
レミリア空気嫁wwwwww
2.CACAO100%削除
レミリアラストだけれみりゃ化してもダメダヨ
3.名無し妖怪削除
お嬢様のマイペースっぷりは流石だな!
だがそこがいい!!
4.名無し妖怪(B)削除
お嬢様空気読めぇぇぇぇぇ!!www
しかし美鈴がここまでカッコよく登場するとは
前編からは全く予想できませんでした。感動した!!
……しかし橙目立ってないな……ちゃんと活躍してるのに……。

ところで魔理沙の魔力の消耗の原因をkwsk(マスタースパーク
5.名無し妖怪削除
ゆうべはおたのしみでしたねってことかー!
それにしても「レミリアちゃん☆ブラッドゴールデンブレンド」が血だと判っていても飲んでみたくなる不思議な魅力。
6.思想の狼削除
チェーーーン!
7.名無し妖怪削除
橙、頑張ったのに美味しい所美鈴に持ってかれた!!
小悪魔も何気にけっこう貢献してるのね