Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

妖夢の水蜜桃

2006/09/04 08:38:35
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 ここは冥界、白玉楼。
 花見の季節は過ぎ、今は夏である。
 今年の幻想郷は猛暑に襲われ、またその影響は白玉楼までも及んでいた。
 白玉楼の主である、西行寺幽々子は、いつものように縁側に腰掛け午後の間食を取っていた。本日4度目の間食は、冷えた蕎麦茶と、水羊羹だ。
 幽々子はなんとも無しに、従者である半人半霊の妖夢に問いかける。

「どうして霊だらけの白玉楼がこんなにも暑いのでしょうね妖夢。普通はいつもヒヤリとしていてもよさそうなものだけれど」
「それは……分かりません」
「鬼火とか、涼しそうなのに」
「あれは本当に『火』ですから熱いじゃないですか。純粋な魂の熱ですよ」
「そう。ぷらずまかと思っていたわ」
「幽々子様、瞳の焦点が定まっていませんね」

 妖夢は庭の掃除をしながら答える。暑さのせいで、箒を動かす手もやや乱暴になっていた。

「恐れながら幽々子様」

 妖夢は、箒を休めることなく、なるべく幽々子の方を見ることなく、苦い表情で言った。

「『それ』はあまりにも無体ではないかと思うのですが……」
「だって涼しいのだもの」

 そう言ってにっこりと満足そうに微笑む幽々子の膝の上には。

「うぅぅぅ……あたい、あたいは汚されちまったよぉ。もうあの湖には帰れない……」

 服を剥ぎ取られ、厚手の布に包まれたチルノががっちりと幽々子に捕獲されていた。

「でもこの『氷』、冷たすぎるのよね。たまに痛くなっちゃうわ」
「だったら放してあげたらどうですか。さすがにずっと拘束していると可愛そうだと思ってしまいます。ちょっと溶けかかってるし」
「妖夢、この『氷』は貴方が連れてきたんじゃない。無責任な発言はお控えなさいな」
「幽々子様、それ以前に幽々子様がわたしに命じられたんじゃないですか。チルノを連れてきなさいって」
「でも連れてきたのは妖夢よ」
「そうですけど……」

「うぅ、ヒィ、ひ、ひぃっ。みんな、ごめんね。ごめんね。もしあの湖に帰れたらもう悪いことしないから。カエルさんも凍らせないからぁ……だから、だから、いやぁぁぁ……」

 チルノは、半ば正気を失いかけた表情で、自分の頭を両手で押さえていた。
 幽々子が『怖い思いをすればもっと冷たくなるかしら』と、自らの能力――死を操る能力をチルノの前で披露したのだ。
 妖夢はその時の光景を忘れることにした。
 二度と思い出したく無いほど恐ろしいもので。それはチルノの精神を犯すには十分だったからだ。

(それを戯れでやらないでほしい)

 かくして。恐怖の渦に巻き込まれたチルノは、現在チルノは、ご満悦な幽々子に抱きしめられている。
 チルノの心境を推し量らずとも、妖夢は彼女に同情してしまう。
 妖夢はなるべく、幽々子を見ないように、庭の掃除を続ける。

「……う~ん。そうねぇ。中々涼しいけれど、よく考えたらこれじゃ冷えすぎてお腹壊しちゃいそうね」

 返してきて。
 そう言って、幽々子はポイとチルノを縁側に置いた。
 どうやら飽きたらしい。

「……分かりました」

 妖夢は縁側に上がり、部屋の中に散らかされていたチルノの服を拾うと、本人を抱え上げた。

「行くぞ」

 簡潔に行って、飛び立つ。
 しばらくして、この世とあの世の結界を抜けたあたりで、チルノの瞳に正気が戻りかけた。

「……え」

 チルノは信じられないといった表情をして、
「あたい……いいの……? 助かったの……?」

 そして大きな瞳から大きな涙がポロポロと零れ落ちる。

「うぅ、うわああーーーーん! 怖かったよぉぉぉー!」
「…………」

 妖夢はすまない、と言いかけたが、そもそもチルノを攫った実行犯は自分なので黙っていることにした。

「もう『面白いおもちゃあげるからわたしのお家まで来てみない?』なんて言葉に騙されないんだからーー! うわぁーーーん!」

 妖夢は紅魔館付近の湖で妖夢を降ろすと、白玉楼まで戻る。



 再び白玉楼。



「幽々子様……」

 こんなに暑いというのに。
 妖夢の主人は縁側で猫のように寝ていた。

「こんなに暑いからか……」

 すやすやと、少し笑みを浮かべながら眠る亡霊の君。
 夏の、熱気を孕んだ風が二百由旬の広大な庭を駆け抜けていく。

「少し、休憩するか」

 妖夢は主人の横で、縁側に座ったまま頭を垂れる。
 落ち着いて風を感じれば、なんだ、意外と涼しいじゃないか。
 妖夢はたちまち睡魔に誘われ夢の中へ――




 ごつん。


 そんな音で幽々子は目を覚ました。
 身体を起こして最初に見えたのが、純白だった。
 正確には、縁側に転がった妖夢のドロワーズだった。きっと座ったまま寝ていたら何かの拍子に転がってしまったのだろう。スカートがまくれ上がってドロワーズが丸見えだ。
 しょうがない庭師だ。だから可愛いのだけれど。
 さっき氷の妖精を膝の上に置いていた時もなかなか目を合わせてくれなかった。なんてヤキモチやきさんなんだろう。だから可愛いのだけれど。
 けれど、年頃の女の子が無防備のまま下着丸出しで寝ているのはよくない。
 幽々子は母親のように「しょうがないわねぇ」などと言いながら妖夢のスカートを下げようとして、うっかり妖夢のお尻に触ってしまった。
 
 ふにゅぅぅん。
 
「え、あら?」

 なんだ今の感触は。
 長年生きて(死んで)きたが、このような不思議な感触を今まで味わったことが無かった。
 柔らかく、そして少しヒヤッとしていて……
 否、言葉では語りつくせない。
 だからもう一度触ってみる。

 ふにゅぅぅぅうん☆

「い、いやいや! いやいや妖夢! これは中々どうして! 貴方、お尻の触り心地は十人前かもしれないわね」

 ふにゅぅぅぅうん♪

 気持ちいい。なんとも言えない感触。なんとも言えない冷たさ。
 幽々子は閃いた。
 そうよ。こんな素晴らしい物を私一人が独占していいのでしょうか。否、断じて否。これは幻想郷に広く知らしめなければならないわ! それが白玉楼の発展、私のカリスマ度アップに繋がるわ!
 日ごろそんなことを思いもしないのに、その時だけ妙な目的意識を持ってしまったのだ。
 こうなった幽々子は、誰にも止められなかった……




 う~ん。

 寝苦しい。                 「……なるほどねぇ」

 妖夢は、ぼんやりと覚醒する。       

 そうだ、そろそろ起きなきゃ。        「ほほぉ、これは確かに」

 ……違和感。                

 なんだ。                  「ね、いいでしょう?」

 なんだこの妙な感じ――

 ――なんだこれは。             「病み付きになりそうだぜ」

 お尻が……

 お尻が揉みしだかれているぅ!?       「確かに、これはスクープの予感ですね」



「なぁー!?」                「次あたし~……きゃあ!?」

 がば! と妖夢は飛び上がった。
 滞空中に二振り剣を抜刀――しようとして、剣が本来あるべき場所に無いことに気づく。

「え!?」
「あらあら妖夢。貴方のその行動は予想済みよ。既に刀は部屋の中!」

 幽々子の声だった。
 いきなり背後から羽交い絞めにされて、身動きが取れなくなる。

「ゆ、幽々子様!? それにお前たちは」

 霊夢や魔理沙、カラス天狗や夜雀といった宴会の常連たちが庭に溢れていたのだ。
 空は既に宵闇。
 かなりの時間寝ていたようだ。
 いや、今はそれどころじゃない。
 一体自分が寝ている間に何が!?

「あら? 一体自分が寝ている間に何があったか知りたい様子ね妖夢」

 きっちりと心の中を読んでくるように、幽々子は言った。

「実はね妖夢。私は発見してしまったのよ」

 耳元で囁かれる吐息と声とに、目眩がする。
 幽々子はゆっくりと背後から妖夢に重みを掛けてきた。

「うぅ、な、なにをでしょうか」

 妖夢は背後から押しつぶされるような形で縁側に膝をついてしまった。
 完全に妖夢の動きを奪った体制のまま、幽々子は自信満々に言い放った。


「妖夢のお尻は幻想郷の避暑地だわ」


「はぁ!?」

 いきなり何を言い出すんだこのご主人様は!?

「妖夢。貴方のお尻はすごいのよ。あらゆる意味で未熟故の適度な柔さ、半人半霊が故の適度な冷たさ。それを兼ね備えたお尻はまさに幻想郷の避暑地に相応しい。私はこれを『桃』と命名したわ」
「勝手に人のお尻に名をつけないでくださいよぉ!」
「まぁまぁ細かいことは気にしないのよ妖夢。さぁさぁ、後がつかえているわ。お待たせしたわね次の方~」
「はーい」

 夜雀だった。

「八目鰻3串でいい?」
「2分許可します。頬擦りはオプションでプラス2串よ」
「うーん、じゃあオプションも」
「毎度!」
「あんたそれか!? 結局食い物が目的ですか! この商売上手!」
「私の役に立てて嬉しいでしょ妖夢 私、今とっても幸せ!」
「あ、卑怯な!?」

 そんな幸せそうな顔されたら……! 怒るに怒れないじゃ――

「すりすりー!」
 ふにゅにゅぅぅぅうんっ。ふにゅぅぅぅうんっ。

「ひゃきゃあああああああああああ!?」

 お尻に頬擦りされて悲鳴をあげる妖夢。

「あぁ本当に気持ちがいいわ~。これで鰻5串はお買い得ね」
「でしょう~? さぁ妖夢! 先は長いわよ。頑張ってね!」
「ムリです! ムリです! なんか、なんかムリです幽々子様! わたし壊れちゃいます!」
「大丈夫大丈夫。私は美味しいわ」
「意思の疎通ができてない気がします!」
「おーい幽々子。アリスが幻の竜のから揚げを持ってきたみたいなんだが特別オプションは何かあるかって言ってるぜ」

 魔理沙の声が幽々子にかかる。妖夢のお尻のことなのに、幽々子に相談されている。

「あらぁ! それは素晴らしいわ! そんな素晴らしいものには相応の対応をとらなくちゃ……」

 そうねぇ、と思案して、幽々子はポンと手を叩く。

「そうだ。じゃあ『素桃』で」

 ……素桃……?
 まさか。

「幽々子サマ!? 幽々子サマ!?」
「かっらあっげー。かっらあっげー」

 幽々子の手が妖夢のドロワーズに掛けられた!

「幽々子さまーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 幻想郷の熱帯夜。
 妖夢の悲鳴が迸る。
 明日も明後日も、まだまだ暑い日は終わりそうに無かった。


 ふんふにゅぅぅぅうん!




はじめまして。おおとりと申します。楽しんでいただければ光栄です。
妖夢とチルノが好きです。好きなのにこんなになってしまいました。
ところで幽々子様は色々と忘れっぽい人だと思います。
でわ。

ご指摘の件修正。
おおとり
コメント



1.名無し妖怪削除
では私はマンモスの焼肉で
ルパーンダーイb(待宵反射衛星斬
2.名無し妖怪削除
これはイイ!実にイイ!!
だが妖夢は、身体の相性が99%の俺のもんだ!
3.名無し妖怪削除
ちょっと幻の竜のから揚げ探してくる!!
それはそうと幻想卿じゃなくて幻想郷ですよ。
4.名無し妖怪削除
>妖夢は紅魔館付近の湖で妖夢を下ろすと
チルノを降ろしたんですよね?
5.名無し妖怪削除
いただきます
6.変身D削除
チルノが哀れ過ぎます……でも妖夢の尻は素敵ですn(斬