※注意事項。オマケについては、ご指摘があれば削除する可能性が大です。もしかすると、期間限定?かも。
雲一つ無い、青空が広がる幻想郷。そんな空にオレンジ色が一点。
「んにゃ~……」
快晴とは正反対な暗い声を上げ、凶兆の黒猫『橙』が眉を八の字にし、腕を組んで空を漂っています。
「藍様と紫様、何を贈ったら喜んでくれるかなぁ……う~ん……」
再び、考え事に没頭する橙の耳に、二つの声が聞こえてきました。
「魔理沙、待ちなさいっ!!今日こそ、許さないわよっ!」
全身をボロボロにした『アリス・マーガトロイド』が、膨大な魔力を帯びながら、叫び声を上げている。
「何をそんなに、怒ってるんだアリス?ただ実験に失敗しただけじゃないか」
アリスの前には、アリスと同様に全身ボロボロにした『霧雨 魔理沙』が、箒に乗って飛んでいる。
「その失敗のせいで、私の家が全壊したのよ!?」
「まぁ、そう怒るな。カドミウムが足りないんじゃないか?」
「それを言うなら、カルシウムよっ!!もういいわっ!魔理沙、死になさい……『魔符 アーティフルサクリファイス』」
「ちっ、いきなりそれかよっ!マジギレしてるな。なら、一発か飛ばしてさっさと逃げるぜっ!……『恋符 マスタースパーク』」
二つのスペルがぶつかり合い、空を白く染め上げる。不幸にも、近くを飛んでいた橙に被害を及ぼす。
「にゃっ!?」
考え事に夢中になり過ぎて、反応が遅れてしまった橙の目の前が白く染まる。橙は避けきれないと本能で悟り、目を瞑って身を縮めた。
「………………」
しかし、いくら経っても、体に衝撃が襲うことは無かった。恐る恐る、目を開くと、遠くで魔理沙とアリスが弾幕ごっこをしているのが見えた。
「…………?」
橙が、不思議そうに小首を傾げていると、後ろから声を掛けられた。
「まったく、弾幕ごっこしている所に無防備に近づくなんて、あなた自殺志願者?」
「うにゃ!?」
驚いて、後ろを振り返る橙。そこには、紅魔館のメイド長『十六夜 咲夜』が、袋を抱えていた。
「助けてあげたのに、その反応。ちょっと、傷つくわね。元の場所に戻してこようかしら……」
「にゃっ!?それは、嫌ぁ~」
半泣きしながら、弱々しい声を上げる橙。それを見て微笑む咲夜。
「ふふっ、冗談よ。でも、お礼くらい言っても、良いんじゃないかしら?」
「あっ、ありがとう。くさや……サクッ……に゛ゃっ!!」
橙の帽子からナイフが生えていました。幸い、帽子だけにナイフが命中していました。
「咲夜よ。やっぱり、戻してこようかしら……」
「ありがとう、咲夜っ!!咲夜は、わたしの命の恩人だよ」
「……なんか、取って付けたような言い方ね。まぁ、良いわ。それで、どうして弾幕の中に飛び込んでいったのよ?もしかして、あなたマゾ?」
「マゾ?……何それ、おいしいの?」
首を傾げ尋ね返す橙に、咲夜は胸中で思った。
(……なんだろう。自分が、酷く汚れているような感じがするわ)
「今の言葉は、忘れなさい」
「えっ、でも……」
「美鈴以外で、ダーツをするのは久しぶりだわ」
ナイフをチラつかせ、笑みを浮かべる咲夜。
「解ったよ。咲夜、わたし何も聞いてない」
「私、お利口な子は好きよ……話を戻すわね。どうして、あんな危険地帯に、飛び込んで行ったの?」
「飛び込んで行ったんじゃないよ。考え事をしてたら、巻き込まれたの」
「考え事?詳しく聞きたいわね」
「え~、嫌だ~……言う、言うからナイフ仕舞ってよぉ」
それから橙は、咲夜に事の事情を話した。
魔法の森上空では、互いにスペルカードを使い切った魔理沙とアリスが、激しい肉弾戦を繰り広げていた。そんな二人を気にも留めず、橙と咲夜の会話が続く。
「成程。普段、自分の事を世話してくれる主に、感謝の気持ちを込めて何かプレゼントしたいと。だけど、何をプレゼントしたら喜ばれるのか悩んでいたら、弾幕ごっこに巻き込まれていた……という事ね」
「うん、そういう事」
「美しい主従愛ね。でも、あなたの世話をしてるのって、あなたの主だけでしょ?あなたの主の主は寝てばかりだと思うけど?」
「紫様を悪く言うなぁ!紫様は確かに寝てばかりだけど、起きてる時はわたしと、マタタビやねこじゃらしで遊んでくれるんだから」
橙が頬を膨らませ、怒った口調で咲夜を睨む。
(……それは、あなた“と”遊んでくれてるんじゃなくて、あなた“で”遊んでいるのよ)
「気を悪くしたのなら、謝るわ。ごめんなさい。でも、あなたの気持ちが入っていれば、何をプレゼントしようと喜ぶと思うけど?」
「でもぉ~、プレゼントするなら実用性がある物が良いと思うし……」
「あら、意外と考えてるのね。でも、あなたお金持ってるの?」
「お金?……持って無いよ」
(この子、プレゼントを自作するつもりかしら?一体、そんな事してたら何日掛かるのよ)
咲夜は少し考え、橙にある相談を持ちかけた。
「……ねぇ、あなた朝は強い方かしら?」
「朝?藍様が起こしてくれるから。強い方だと思うけど」
「なら、私の所で働かない?丁度、早朝から夕方のメイドが足りないのよ。働き様によっては、はずむわよ」
「でも宴会に来てる、腋巫女大好き吸血鬼や紫もやしの魔女、ちょっと狂った妹と役立たずの門番、最近人気が上昇してきてる司書『こぁ』っていうのもいるんだよね?それに、紫様が「紅魔館は、神社や永遠亭と並ぶくらいにお金が無い」って、言ってたよ」
(あのスキマめ。余計な事を……)
「……大丈夫よ。お嬢様は最近、血液の黄金比を極めようと部屋から出てこないわ。妹様は普段地下にいるし、パチュリー様は無駄知識を蓄えるために、小悪魔と引き篭もってる。美鈴は……それに、言ったでしょ。お金は、働きようによってだって」
「今、なんか間が空いたよ?それに、一人説明してない」
「気のせいよ。それで、どうするの?」
「う~ん。メイドさんかぁ。どういう事するの?」
「具体的には、炊事と洗濯と掃除ね」
「やるっ!!全部、わたし得意だよ!それに、藍様が「橙は、メイド服も似合うなぁ」って言ってくれたんだ」
(……何をやってるのよ。あのテンコーは……)
咲夜は、鼻血を垂らしながら橙のメイド姿を見て、親指を突き立てている狐を幻視した。
「そ、そう。なら早速、行きましょう。実際にどういう事をするのか、見た方が解りやすいでしょう?それに、今から私の事は『メイド長』か『咲夜さん』って呼ぶこと」
「うんっ!!わかったよ、咲夜さん」
「よろしい」
橙と咲夜は、紅魔館へと向かって速度を上げた。後ろでは、魔理沙とアリスが華麗なクロスカウンター決め、二人は森へと落ちていった。
オマケ
紅魔館の近くにある湖の端にある切り株に、二つの姿があった。一人は赤い髪に民族衣装を身に纏い、帽子には『龍』の文字が輝いていた。もう一人は、緑の髪を片方に結って、透き通るような羽を生やしていた。
「ねぇ、美鈴さん。昼間からこんな所で何してるんですか?」
「ん~?それはね、大妖精さん。門番をクビになっちゃったからだよ」
「どうして、クビになっちゃったの?」
「それはね。一時の酔ったテンションに身を任せて、上司の下着を頭に被って、ブレイクダンスをしたからだよ。大妖精さんも、一時のテンションに身を任せちゃダメだよ。これからが、長いんだから」
「てめーに、言われたくねぇよ。この負組みがっ!……行くよぉ~、チルノちゃん」
「うんっ!」
「じゃ~な~、“ま”るで“だ”めな“も”と門番。略して『まだも』」
そう言い残して、大妖精とチルノは去って行った。
「……あれ、おかしいな。どうして私、泣いてるんだろう?涙が、止まらないよぉ~」
雲一つ無い、青空が広がる幻想郷。そんな空にオレンジ色が一点。
「んにゃ~……」
快晴とは正反対な暗い声を上げ、凶兆の黒猫『橙』が眉を八の字にし、腕を組んで空を漂っています。
「藍様と紫様、何を贈ったら喜んでくれるかなぁ……う~ん……」
再び、考え事に没頭する橙の耳に、二つの声が聞こえてきました。
「魔理沙、待ちなさいっ!!今日こそ、許さないわよっ!」
全身をボロボロにした『アリス・マーガトロイド』が、膨大な魔力を帯びながら、叫び声を上げている。
「何をそんなに、怒ってるんだアリス?ただ実験に失敗しただけじゃないか」
アリスの前には、アリスと同様に全身ボロボロにした『霧雨 魔理沙』が、箒に乗って飛んでいる。
「その失敗のせいで、私の家が全壊したのよ!?」
「まぁ、そう怒るな。カドミウムが足りないんじゃないか?」
「それを言うなら、カルシウムよっ!!もういいわっ!魔理沙、死になさい……『魔符 アーティフルサクリファイス』」
「ちっ、いきなりそれかよっ!マジギレしてるな。なら、一発か飛ばしてさっさと逃げるぜっ!……『恋符 マスタースパーク』」
二つのスペルがぶつかり合い、空を白く染め上げる。不幸にも、近くを飛んでいた橙に被害を及ぼす。
「にゃっ!?」
考え事に夢中になり過ぎて、反応が遅れてしまった橙の目の前が白く染まる。橙は避けきれないと本能で悟り、目を瞑って身を縮めた。
「………………」
しかし、いくら経っても、体に衝撃が襲うことは無かった。恐る恐る、目を開くと、遠くで魔理沙とアリスが弾幕ごっこをしているのが見えた。
「…………?」
橙が、不思議そうに小首を傾げていると、後ろから声を掛けられた。
「まったく、弾幕ごっこしている所に無防備に近づくなんて、あなた自殺志願者?」
「うにゃ!?」
驚いて、後ろを振り返る橙。そこには、紅魔館のメイド長『十六夜 咲夜』が、袋を抱えていた。
「助けてあげたのに、その反応。ちょっと、傷つくわね。元の場所に戻してこようかしら……」
「にゃっ!?それは、嫌ぁ~」
半泣きしながら、弱々しい声を上げる橙。それを見て微笑む咲夜。
「ふふっ、冗談よ。でも、お礼くらい言っても、良いんじゃないかしら?」
「あっ、ありがとう。くさや……サクッ……に゛ゃっ!!」
橙の帽子からナイフが生えていました。幸い、帽子だけにナイフが命中していました。
「咲夜よ。やっぱり、戻してこようかしら……」
「ありがとう、咲夜っ!!咲夜は、わたしの命の恩人だよ」
「……なんか、取って付けたような言い方ね。まぁ、良いわ。それで、どうして弾幕の中に飛び込んでいったのよ?もしかして、あなたマゾ?」
「マゾ?……何それ、おいしいの?」
首を傾げ尋ね返す橙に、咲夜は胸中で思った。
(……なんだろう。自分が、酷く汚れているような感じがするわ)
「今の言葉は、忘れなさい」
「えっ、でも……」
「美鈴以外で、ダーツをするのは久しぶりだわ」
ナイフをチラつかせ、笑みを浮かべる咲夜。
「解ったよ。咲夜、わたし何も聞いてない」
「私、お利口な子は好きよ……話を戻すわね。どうして、あんな危険地帯に、飛び込んで行ったの?」
「飛び込んで行ったんじゃないよ。考え事をしてたら、巻き込まれたの」
「考え事?詳しく聞きたいわね」
「え~、嫌だ~……言う、言うからナイフ仕舞ってよぉ」
それから橙は、咲夜に事の事情を話した。
魔法の森上空では、互いにスペルカードを使い切った魔理沙とアリスが、激しい肉弾戦を繰り広げていた。そんな二人を気にも留めず、橙と咲夜の会話が続く。
「成程。普段、自分の事を世話してくれる主に、感謝の気持ちを込めて何かプレゼントしたいと。だけど、何をプレゼントしたら喜ばれるのか悩んでいたら、弾幕ごっこに巻き込まれていた……という事ね」
「うん、そういう事」
「美しい主従愛ね。でも、あなたの世話をしてるのって、あなたの主だけでしょ?あなたの主の主は寝てばかりだと思うけど?」
「紫様を悪く言うなぁ!紫様は確かに寝てばかりだけど、起きてる時はわたしと、マタタビやねこじゃらしで遊んでくれるんだから」
橙が頬を膨らませ、怒った口調で咲夜を睨む。
(……それは、あなた“と”遊んでくれてるんじゃなくて、あなた“で”遊んでいるのよ)
「気を悪くしたのなら、謝るわ。ごめんなさい。でも、あなたの気持ちが入っていれば、何をプレゼントしようと喜ぶと思うけど?」
「でもぉ~、プレゼントするなら実用性がある物が良いと思うし……」
「あら、意外と考えてるのね。でも、あなたお金持ってるの?」
「お金?……持って無いよ」
(この子、プレゼントを自作するつもりかしら?一体、そんな事してたら何日掛かるのよ)
咲夜は少し考え、橙にある相談を持ちかけた。
「……ねぇ、あなた朝は強い方かしら?」
「朝?藍様が起こしてくれるから。強い方だと思うけど」
「なら、私の所で働かない?丁度、早朝から夕方のメイドが足りないのよ。働き様によっては、はずむわよ」
「でも宴会に来てる、腋巫女大好き吸血鬼や紫もやしの魔女、ちょっと狂った妹と役立たずの門番、最近人気が上昇してきてる司書『こぁ』っていうのもいるんだよね?それに、紫様が「紅魔館は、神社や永遠亭と並ぶくらいにお金が無い」って、言ってたよ」
(あのスキマめ。余計な事を……)
「……大丈夫よ。お嬢様は最近、血液の黄金比を極めようと部屋から出てこないわ。妹様は普段地下にいるし、パチュリー様は無駄知識を蓄えるために、小悪魔と引き篭もってる。美鈴は……それに、言ったでしょ。お金は、働きようによってだって」
「今、なんか間が空いたよ?それに、一人説明してない」
「気のせいよ。それで、どうするの?」
「う~ん。メイドさんかぁ。どういう事するの?」
「具体的には、炊事と洗濯と掃除ね」
「やるっ!!全部、わたし得意だよ!それに、藍様が「橙は、メイド服も似合うなぁ」って言ってくれたんだ」
(……何をやってるのよ。あのテンコーは……)
咲夜は、鼻血を垂らしながら橙のメイド姿を見て、親指を突き立てている狐を幻視した。
「そ、そう。なら早速、行きましょう。実際にどういう事をするのか、見た方が解りやすいでしょう?それに、今から私の事は『メイド長』か『咲夜さん』って呼ぶこと」
「うんっ!!わかったよ、咲夜さん」
「よろしい」
橙と咲夜は、紅魔館へと向かって速度を上げた。後ろでは、魔理沙とアリスが華麗なクロスカウンター決め、二人は森へと落ちていった。
オマケ
紅魔館の近くにある湖の端にある切り株に、二つの姿があった。一人は赤い髪に民族衣装を身に纏い、帽子には『龍』の文字が輝いていた。もう一人は、緑の髪を片方に結って、透き通るような羽を生やしていた。
「ねぇ、美鈴さん。昼間からこんな所で何してるんですか?」
「ん~?それはね、大妖精さん。門番をクビになっちゃったからだよ」
「どうして、クビになっちゃったの?」
「それはね。一時の酔ったテンションに身を任せて、上司の下着を頭に被って、ブレイクダンスをしたからだよ。大妖精さんも、一時のテンションに身を任せちゃダメだよ。これからが、長いんだから」
「てめーに、言われたくねぇよ。この負組みがっ!……行くよぉ~、チルノちゃん」
「うんっ!」
「じゃ~な~、“ま”るで“だ”めな“も”と門番。略して『まだも』」
そう言い残して、大妖精とチルノは去って行った。
「……あれ、おかしいな。どうして私、泣いてるんだろう?涙が、止まらないよぉ~」
続編!続編!
だ が よ く や っ た
それにしても紫は毒舌だけど極めて的確に紅魔館を分析してますね
っていうか美鈴クビになったのかよ!?
何はともあれ続きを楽しみにしています