「構内の境界探しなんて、無謀かつネタ切れだとは思わない?」
諸事情で余分な机などを片づけて物置と化している講義室に、既に足を踏み入れてからそういうのも遅いかとは思うけれど、それでも私は蓮子に愚痴をこぼした。
「原点回帰と言って欲しいわね。ここ最近近場の境界の揺らぎが見つからないもんだから、灯台もと暗しを期待してこうして探してるんじゃない」
「探すのは主に私なんだけど」
「じゃあ探し当てられないメリーの責任ね。最近の我が部の停滞加減は」
大層な言いがかりである。私の能力は境界を見る、それ以上でもそれ以下でもない。特別体調などに影響されるわけでもないし、異常があれば注意力が散漫でも大概気づく。境界が見つからないのは単に運の問題だろう。
「停滞といえるほど真面目に活動してないじゃない。活動方針は蓮子の気まぐれで決まるんだから、鈍ってるのはむしろ蓮子の方よ」
「聞き捨てならないわね。私の明晰な頭脳が物理学のように錆びついているとでも言いたいわけ?」
「そーいうひねくれた解釈する暇があったら、物事への計画性にブドウ糖使いなさいよ」
自然と声が荒げてくるが、私は冷静だった。ある意味でこれはいつものことだから。
蓮子とは長いつきあいかどうかはわからないが、一日のかなりの時間を一緒に過ごしているわけで、決して浅い仲とは言えないだろう。だから時に喧嘩もする。心理学的に人づきあいの理屈を並べてもいいが、ようは長く一緒にいるほど喧嘩は起きうるものなのだ。
こういったとき、吹っ掛けるのは大概私の方だ。いつも蓮子に振り回されているわけだから、ストレスも溜まるというというもの。意識しないうちにガス抜きのように火種を投げつけるのだ。それが燃え上がるのは必然過ぎるほど必然。
面白い――といっていいのかはわからないが、蓮子はそう言ったあからさまな不満やらを受け取らないと喧嘩を売られていると気づかない節がある。まるで連星が消失してようやく星系の周回軌道の異変に気づく太陽のようだ。結局のところ、「鈍っている」というのは正確ではなく、「元から鈍い」のだ。少なくとも、私の目には彼女はそう映る。
「もう、酷いわねメリー。まるでさっき食べたベリータルトの栄養が胸にしかいってないような言いぐさじゃない。それは失礼というものよ。ちゃんと今私の頭を心地よい安らぎの境地に向かわせるべく有効活用されてるわ。おかげで眠い眠い」
――ちなみに、補足説明となるが、喧嘩の終わりも私によってもたらされる。こういう風に、呆れてしまって喧嘩する気が折れるからだ。さらに付け加えると、胸のサイズもカップも私の方が大きい。私>蓮子という図式は昔から変化がない。どうでもいいことだけど。
――キンッ
その時だ、境界を察知した際に襲ってくる、頭痛に似た意識のぶれ。
「大体胸にばかり栄養いってるのはメリーの……」
「蓮子、境界が見えた」
蓮子のたわ言を遮って、私はある一点に目をこらしていた。
実は言い忘れたけどこの部屋、というか大学の窓ガラスの大半は通電のオンオフで透明度の調整が出来る半導体製だ。電気が通ってないときは完全に不透明になるので、物置として扱われてるこの講義室は、扉からの控えめな光が差し込んでいるところ以外闇に包まれている。
そんな暗闇の中にあって、空間の一部分が、闇とは別の何かによって音もなく裂け始めていた。
「え? ほんとに? もうメリーったらやればできるじゃない。まぁ私は最初から信じてたけどね」
……後で個人的にたっぷりと泣かせてやろうと心に決めながら、私はどんどん広がっていく裂け目を注意深く観察する。
今まで私達は、既にそこにある結界なんかを探し当てるのが主だった。このため、今目の前で境界が生まれようとしている状況に出くわすのは、もしかしたら初めてかもしれない。
しかし、今までたいした結界の見つかった試しもない、霊地とも言えない学校でこのようなものが出てくるなんて……一体コレは何なのだろう。
「蓮子、照明の位置わかる? すぐ明かりをつけて」
「OK、多分もう一方の扉の近くよ」
もしなにか危険なものが飛び出してこようとしたら逃げるのは簡単だが、せっかく出てきたものの正体を確かめなかったら活動の意味がない。
いったん外に出て蓮子がもう一方の扉へ回り込んだのが気配と足音でわかる。その間にも裂け目はいよいよ厳戒下という感じに開ききろうとしていた。
「つけるわよ、メリー」
「いいわよ、蓮子」
速やかな返答の後、一瞬で部屋は光に満たされた。
同時に空間の裂け目は、ついにこの世界と向こう側とを繋ぐ門へと変わる――
ドサドサドサ!
「あいたたた……」
「ご、ご主人様……また太っぎゃふ!」
「う、ううむ……跳躍トンネルの断面積を絞りすぎましたかね」
まさか。
現れたのは三人の人間だった。いずれもが女性で、それぞれ違う髪の色で服装には統一性がない。うめき声から察するに、日本語が話せるらしい。
何もない空間から人間が落ちてきた。冥界(と思われる場所)に足を踏み入れたことのある私達でも、こんな事態に遭遇するのは初めてだ。
思わず目を合わせる私と蓮子。蓮子の表情は驚きと好奇心と警戒心が入り交じっていて、きっとその瞳に映る私の顔も同じような感じになって居るんじゃないだろうか。
異訪者立ちはもんどりうって落下したせいか、未だ痛みに答えて倒れたままだ。再び視線を交わした私と蓮子は、ゆっくり歩み寄る。
「こ、こんにちは」
「う、うう……こん、にちは、は?」
顔を上げた女性――原色に近い赤毛に、髪と同じ色で統一した服装――は、しかめた表情を一転、ポカンと口を開けて固まった。
声に気づいたのか、赤毛の女性の下敷きになっている、こっちは金髪に海兵隊みたいな白い帽子とセーラー服の女の子とその隣の黒い長髪に眼鏡と白衣な女性(三人の中で一番年上かしら?)は、そろって顔を上げた。
私達二人と、彼女たち三人の視線が向かい合って数秒。
来訪者達は、一様に驚愕に顔を引きつらせた。
「う、うっそ! なんでどうして人がいるのよ! 下調べばっちりで座標も正確だったはず!」
「んなこといわれても明らかにここ山奥じゃなくて建物の中じゃんか、飛ぶとこ思いっきり間違ったとしか考えられないぜ!」
「ああどうしましょう! ファーストコンタクトで思いっきり怪しさ大爆発じゃないですか私達!」
なにやら、控えめに見ても相当にやっかいな状況であるらしい。にしてもいい加減立ち上がらないのだろうか、この人達は。
騒ぐ勢いに押された私に変わって、私も何となく思い当たった、彼女たちの狼狽の原因を蓮子が口に出してみた。
「あー、もしかして貴女方、未来からの来訪者とかそんなので、正体知られちゃいけないのにいきなりバレちゃってどうしょうー、て感じ?」
突拍子ないけど、とてもしっくりくる推測ね。未来の部分を異星人でも異世界人にしても違和感なさそう。
「そ、そーなのよ! 身分を隠して適当に学府に潜り込んでこの世界で魔力を研究してウハウハ! とか考えてたのに、なんて事!」
「わざわざ蛇足を言うなよ! ただでさえ時空技術のない世界への航行は規制されてんだから、むちゃくちゃやばいぜ!」
どーもこの人たちは異世界の人たちのようだ。先ほど見えた空間のひずみの様子を思い返すに、以前足を踏み入れた冥界とは多分違う場所だとは思うけれど。もしかしたら、月の人だったりして?
「あーもー、早いとこ口封じなりなんなりしないと足がつくかもだぜ? 仕方ないから小さくても必殺の武器を……」
「「いい!?」」
私と蓮子は思わず立ちすくむ。
想定の範囲内だったが、まずい状況になってきたかもしれない。セーラーの少女が倒れた状態からズバッとこちらに突きつけてきたのは、形状こそ見たことはないものだが、私達の想像通りの代物だろう。
「ま、まって! 話せばわかるわ!」
「すまん、話してもどうにもならんこともあるんだ。この場は大人しく投降するなりしてもらうぜ。今なら軽い記憶障害で済むからお得だぜ」
「ちゆり、その言い回しはどうかと思いますわ」
「い、一応加減はしなさいよ! 規制違反しただけでなく現地人に傷害を与えたなんてことがばれたら執行猶予付かなくなるんだから!」
むこうはかなりやる気らしい。それほどのっぴきならない事態なんだろうなぁと納得しながらも、しかしここで納得しちゃったら私達の人生の方がオーバーになるかもしれない。マエリベリー・ハーン、何の因果か一世一代の大勝負というやつなのかしら……。
「落ち着いてください。私達は貴女達がここにくることは予測済みでした」
「「「「……????」」」」
まずは牽制。しかし最重要の手とも言える。これで相手の敵意を霧散させるのだ。
私の声はちゃんと届いたようで、騒いでいた彼女たちは声を止め、不可解な顔つきで私の方に注目した。同時に蓮子も怪訝そうに私を見るが、これは予測の範疇。だがこの次の手で彼女も丸め込まなくてはならない。こういうときまで鈍いのは勘弁よ、蓮子。
「私の名前はマエリベリー・ハーン。空間の歪みを感じ取るという特別な力があります。貴方達がこの世界にやってくるための――なんといっていいでしょうか――扉のようなものを空間の歪みとして察知し、探り当てたところここにたどり着き、貴方達と遭遇することになったのです」
彼女たちの発言の断片から得られた推測と直感で、言葉を並べていく。この場は、とにかく私を特異な存在と認識させて彼女たちの興味を引きつける。未知の相手に迂闊に情報を提供するのは危険といえば危険だが、今回に限っては逆にそれが有利に働く、私の当てになるかどうか保証できない直感はそう告げた。
ちゆりと呼ばれた金髪の少女と眼鏡の女性が戸惑ったように顔を見合わせる中、本当にようやく赤毛の女性が神妙な顔つきで立ち上がった。ただし金髪の少女の上からは降りずにそのままその背中に、だが。絶対バランス悪いと思うんだけど。あ、ぐえって泣いた。かわいそうに
「貴女――空間の歪みがわかるといったわよね」
「ええ」
「私達が用いたワープアウト方法は、空間の歪みを最小限に抑え人一人が通れるくらいの穴を作るピンポイントタイプのもの。おかげで、せいぜいワープアウト地点から数メートル範囲にまで近づかなければ目視での確認すら不可能――私達の世界の探知技術でもそれが限界よ」
私どころか蓮子にもピンとこないような内容の話だけど、どうやら私の目論見はうまくいっているようだ。
「もう少し詳しく話を聞かせてもらってもいいかしら? いきなり正体がばれてしまったのは想定外だけど、私達は元々害をもたらすためにこの世界に飛んできたわけではないわ」
「ええ、こちらとしても話し合いが出来るのならばそれに越したことはありません。それに、貴女達の正体にも興味がありますし」
この人はリーダー格のようなのだ。この感触なら、最悪の事態は回避できそうである。
「教授、よろしいのですか?」
立ち上がりながら、眼鏡の女性は赤毛の女性に問いかける。……教授? この人こんな若いのに先生なんかしてるのだろうか? 私達と大して年はかわらなそうなのに。
「どのみち現地人とのパイプは作らなければいけないのだから、発想を逆転させるのよ。幸先のいい出会いだとね」
「……まぁ、ご主人様がそういうなら文句はないが……いや今現在他に文句があるといえばありありなんだけど」
「私の名前は岡崎夢美。こんな辛気くさいところで立ち話もどうかと思うから、どこかゆっくりできるところで続きをしましょう」
「助手の朝倉理香子です」
「同じく、北白河ちゆりだぜ」
ふうっ、と私は溜息をつきながら、肩の力を抜いた。ひとまずこの場は話が収まって良かった。あとはまぁ、なんとかなるんじゃないだろうか。
「改めまして、マエリベリー・ハーンです。こちらは私の友人の宇佐見蓮子」
「え? あ、宇佐見蓮子です。よろしく……」
そーいえば、結局蓮子は何も役にも立たなかったわね。まぁ迂闊に口を滑らせて墓穴掘るようなことしなかっただけ、マシとはいえるけど。
「今の時間なら学校のカフェテラスがいいんじゃないでしょうか。人目に付きにくい席もあるので」
「わかったわ。それじゃあ案内をお願いするわね、ちゆり、理香子、行くわよ」
「だから早く私の上からどいてくれご主人様」
「了解です」
三人を尻目に、蓮子は私に耳打ちした。
「やるじゃないメリー、銃突きつけられたときはどうしようかと思ったけど、ナイスだわ」
「そうね。というわけでカフェでの飲み物とケーキ代は全部蓮子のおごりってことで」
シュパ、と私は有無を言わさず蓮子のポケットから財布を抜き去った。
「ちょ、メリー!?」
「私が交渉を成立させたんだから、貴女はお膳立て係。それくらい罰は当たらないでしょ」
「いえまぁ筋が通ってなくもないけど――今月思ったよりピンチだからえーとその」
「それじゃ皆さん、私に付いてきてください」
「ええ」
「OK~」
「はい」
「ああ! まってよメリー!」
先行する私に、蓮子がわたわたと財布を取り返すべく駆け寄ってくるが、そうそう取りかえされるわけにはいかない。
こういうときたまには私の方が主導権を握ってもいいじゃない。ちょっぴり子供じみた優越感に浸りながら、私達はカフェテラスに足を向けたのであった。
「――というわけで、これが私達の交換できる情報の全て、といったところね」
私が既に四杯目の紅茶を飲み干そうとしたところで、話に一区切りが付いた。それぞれに自己紹介、私達の世界についての説明と、夢美さん達が本来住む世界の説明、夢美さん達がこの世界にやってきた理由、などだ。
今更かもしれないけれど、改めて突拍子のない話だと思ったのがこれまでの感想だった。夢美さん達の世界は私達の住む世界に大変似通ってはいるもの、文明レベルやあれこれの常識は全く違うものだった。それもこれも、彼女たちが異世界からこっちにやってくる瞬間を目撃したからなんとか認められるようになったといったところだ。あの接触がなかったら、多分私は彼女たちの話を妄言としか思えなかっただろう。
ただ、妄言としか思えないという原因が、彼女たちが異世界の住人であるということ以上に夢美さん自身にあることなのだが。
「というわけでこの四次元宇宙誕生以来初めてにして最終最後の超絶大天才、プロフェッサー岡崎夢美は腐敗と嘲笑渦巻く外道学会を見限り、いずれ連中を根底からちゃぶ台返して地べたにはいずり回させて私の真実の論文を奪い合うが如く勢いで往復びんたで叩き付けて読ませるべく、果てしない時空(ソラ)へと旅立ったのであった――」
おわかりいただけただろうか。説明の合間ごとにこういうパフォーマンス?をやるもんだからたまったものではない。そのたびちゆりさんはマイナスKのジト目とドライアイスの嘆息で嫌々ながら訂正し、理香子さんは明後日の方を向きながらコーヒーのお代わりを頼む。
「――えーと要するに、説得力に欠けた論文提出しちゃって今度こそ学会追放されてしまったから、その逆恨みを満たしたいと?」
おおよそ、私には夢美さんの行動原理をそのような要約で表現することしかできなかった。間違ってないと思う、私国語の成績はずっと優良判定もらってたし。国語力がなければ心理学も物理学もやってらんないじゃない。
「全く違う角度から見ればそういう風な言い方も出来るかしら。しかし私が求めるのはあくまでも真理の探求。それはそれは高尚で崇高な信念と熱意によって成し遂げられようとするものなの。わかるかしら?」
わかりません。
と、脊椎反射で答えても何にもならないくらい私にもわかる。しかし、ホントに目から炎が吹き出そうなくらいぎらぎらと亜空間の闘志をみなぎらせているこの人に何を言えばいいのだろうか。
「……なるほど」
そんな私を尻目に、この場でもう一人目を輝かせているのがいる。先ほどまで飲み物のお代わりがくるたびに奇声を上げていた蓮子だった。
「ええ、ええ。夢美さんの無念、そして煮えたぎるほどの情熱は痛いほどわかりました。私達秘封倶楽部も世間からは不良サークルのレッテルを貼られて予算も下りず、正当な評価をはね除けられては苦難の連続。真実の探求とはかくも茨の道なのですね」
へー、私達ってそんな向かい風に晒されてたんだっけ? 不良サークルってのは正しいけれど、厳密に言えばおしゃべり仲間程度にしか認識されてないんじゃない? 結界暴きしてるってのも公言してないし。というか蓮子、貴女キャラ変わりすぎてない? ……ああもうこの疑問符のスパイラルは良くないわ。
「共感して頂いてなによりですわ宇佐見さん。聞けば貴女方秘封倶楽部はこの世ならざる世界を覗く活動をしてらっしゃると……。まさに貴女達の求めるものと私達が求めるものは同一」
「ええ。メリーの幻視力、夢美さん達の知識と技術力、そして私のプランクに匹敵する頭脳があれば、この世界に不思議なものなど何もない!!」
「あの、えっと、その、色々予想付いちゃったから覚悟はしたんだけどさ、勝手に話を跳躍させるのはやめていただけないかしら」
「無理だぜ。あきらめようか」
「まさか教授とここまで化学反応できる逸材がいたとは……これもレポートにまとめるべきかしら?」
「いや、貴女達も抵抗する努力をしてください。お願いしますから」
いいながら、私も抵抗する気が失せていた。
ああ、もういいわ。諦めた。
そりゃ異世界からの住人だもんね。蓮子と波長がかみ合いすぎて世界の法則を乱すような人がいたって不思議じゃないわよね、異世界だし。
「夢美さん」
「蓮子さん」
ガシッ!
ガシッ!
「私達は!」
「今ここに!」
バッ!
ババッ!
「「『夢時空倶楽部』の設立を宣言する!!!」」
――
――
あー。どこぞの巻き込まれまくりの男子学生の救援要請みたいな名前にはしないんだ。そこんとこだけは一線踏みとどまったのかしら。とどまってどうにかなるかといわれたら何も言えないけど。
「ああなんてすがすがしい気分なのかしら! この出会いのために私はあの脳天気巫女に叩きのめされたといっても過言ではない!」
「あ、その話後でもっと詳しく聞かせてくれませんか? なんか色々と引っかかる点があるんですよ。もしかしたら、博麗神社の秘密が明かされるかも――」
「あーあいつらかぁ……今も生きてるのかどうかちょっとだけ気になるぜ」
「ああ、今更だけれど、あそこって私の故郷なのよね。すっかり忘れてたわ」
とまぁ。
気が付けば、私だけなんか取り残されてしまったようだ。
正直このまま取り残されて知らんぷりしたいところだけど、非常に頭の痛いことに、私の能力はもうあの人たちの行動に折り込まれ済みだろう。人の都合を考えず人を使うことを前提にしているなんて泣けてくるわ。
「さて、では早速秘封倶楽部体験ということで、結界暴きにいきましょう」
「楽しみね。あの世とこの世の境目とは一体どんなものでしょう」
かくして
異邦人岡崎夢美、北白河ちゆり、朝倉理香子を加えた秘封倶楽部改め夢時空倶楽部は、私にかつてない不安の幻視を抱かせる船出となったのだった……
え? これ続くの?
諸事情で余分な机などを片づけて物置と化している講義室に、既に足を踏み入れてからそういうのも遅いかとは思うけれど、それでも私は蓮子に愚痴をこぼした。
「原点回帰と言って欲しいわね。ここ最近近場の境界の揺らぎが見つからないもんだから、灯台もと暗しを期待してこうして探してるんじゃない」
「探すのは主に私なんだけど」
「じゃあ探し当てられないメリーの責任ね。最近の我が部の停滞加減は」
大層な言いがかりである。私の能力は境界を見る、それ以上でもそれ以下でもない。特別体調などに影響されるわけでもないし、異常があれば注意力が散漫でも大概気づく。境界が見つからないのは単に運の問題だろう。
「停滞といえるほど真面目に活動してないじゃない。活動方針は蓮子の気まぐれで決まるんだから、鈍ってるのはむしろ蓮子の方よ」
「聞き捨てならないわね。私の明晰な頭脳が物理学のように錆びついているとでも言いたいわけ?」
「そーいうひねくれた解釈する暇があったら、物事への計画性にブドウ糖使いなさいよ」
自然と声が荒げてくるが、私は冷静だった。ある意味でこれはいつものことだから。
蓮子とは長いつきあいかどうかはわからないが、一日のかなりの時間を一緒に過ごしているわけで、決して浅い仲とは言えないだろう。だから時に喧嘩もする。心理学的に人づきあいの理屈を並べてもいいが、ようは長く一緒にいるほど喧嘩は起きうるものなのだ。
こういったとき、吹っ掛けるのは大概私の方だ。いつも蓮子に振り回されているわけだから、ストレスも溜まるというというもの。意識しないうちにガス抜きのように火種を投げつけるのだ。それが燃え上がるのは必然過ぎるほど必然。
面白い――といっていいのかはわからないが、蓮子はそう言ったあからさまな不満やらを受け取らないと喧嘩を売られていると気づかない節がある。まるで連星が消失してようやく星系の周回軌道の異変に気づく太陽のようだ。結局のところ、「鈍っている」というのは正確ではなく、「元から鈍い」のだ。少なくとも、私の目には彼女はそう映る。
「もう、酷いわねメリー。まるでさっき食べたベリータルトの栄養が胸にしかいってないような言いぐさじゃない。それは失礼というものよ。ちゃんと今私の頭を心地よい安らぎの境地に向かわせるべく有効活用されてるわ。おかげで眠い眠い」
――ちなみに、補足説明となるが、喧嘩の終わりも私によってもたらされる。こういう風に、呆れてしまって喧嘩する気が折れるからだ。さらに付け加えると、胸のサイズもカップも私の方が大きい。私>蓮子という図式は昔から変化がない。どうでもいいことだけど。
――キンッ
その時だ、境界を察知した際に襲ってくる、頭痛に似た意識のぶれ。
「大体胸にばかり栄養いってるのはメリーの……」
「蓮子、境界が見えた」
蓮子のたわ言を遮って、私はある一点に目をこらしていた。
実は言い忘れたけどこの部屋、というか大学の窓ガラスの大半は通電のオンオフで透明度の調整が出来る半導体製だ。電気が通ってないときは完全に不透明になるので、物置として扱われてるこの講義室は、扉からの控えめな光が差し込んでいるところ以外闇に包まれている。
そんな暗闇の中にあって、空間の一部分が、闇とは別の何かによって音もなく裂け始めていた。
「え? ほんとに? もうメリーったらやればできるじゃない。まぁ私は最初から信じてたけどね」
……後で個人的にたっぷりと泣かせてやろうと心に決めながら、私はどんどん広がっていく裂け目を注意深く観察する。
今まで私達は、既にそこにある結界なんかを探し当てるのが主だった。このため、今目の前で境界が生まれようとしている状況に出くわすのは、もしかしたら初めてかもしれない。
しかし、今までたいした結界の見つかった試しもない、霊地とも言えない学校でこのようなものが出てくるなんて……一体コレは何なのだろう。
「蓮子、照明の位置わかる? すぐ明かりをつけて」
「OK、多分もう一方の扉の近くよ」
もしなにか危険なものが飛び出してこようとしたら逃げるのは簡単だが、せっかく出てきたものの正体を確かめなかったら活動の意味がない。
いったん外に出て蓮子がもう一方の扉へ回り込んだのが気配と足音でわかる。その間にも裂け目はいよいよ厳戒下という感じに開ききろうとしていた。
「つけるわよ、メリー」
「いいわよ、蓮子」
速やかな返答の後、一瞬で部屋は光に満たされた。
同時に空間の裂け目は、ついにこの世界と向こう側とを繋ぐ門へと変わる――
ドサドサドサ!
「あいたたた……」
「ご、ご主人様……また太っぎゃふ!」
「う、ううむ……跳躍トンネルの断面積を絞りすぎましたかね」
まさか。
現れたのは三人の人間だった。いずれもが女性で、それぞれ違う髪の色で服装には統一性がない。うめき声から察するに、日本語が話せるらしい。
何もない空間から人間が落ちてきた。冥界(と思われる場所)に足を踏み入れたことのある私達でも、こんな事態に遭遇するのは初めてだ。
思わず目を合わせる私と蓮子。蓮子の表情は驚きと好奇心と警戒心が入り交じっていて、きっとその瞳に映る私の顔も同じような感じになって居るんじゃないだろうか。
異訪者立ちはもんどりうって落下したせいか、未だ痛みに答えて倒れたままだ。再び視線を交わした私と蓮子は、ゆっくり歩み寄る。
「こ、こんにちは」
「う、うう……こん、にちは、は?」
顔を上げた女性――原色に近い赤毛に、髪と同じ色で統一した服装――は、しかめた表情を一転、ポカンと口を開けて固まった。
声に気づいたのか、赤毛の女性の下敷きになっている、こっちは金髪に海兵隊みたいな白い帽子とセーラー服の女の子とその隣の黒い長髪に眼鏡と白衣な女性(三人の中で一番年上かしら?)は、そろって顔を上げた。
私達二人と、彼女たち三人の視線が向かい合って数秒。
来訪者達は、一様に驚愕に顔を引きつらせた。
「う、うっそ! なんでどうして人がいるのよ! 下調べばっちりで座標も正確だったはず!」
「んなこといわれても明らかにここ山奥じゃなくて建物の中じゃんか、飛ぶとこ思いっきり間違ったとしか考えられないぜ!」
「ああどうしましょう! ファーストコンタクトで思いっきり怪しさ大爆発じゃないですか私達!」
なにやら、控えめに見ても相当にやっかいな状況であるらしい。にしてもいい加減立ち上がらないのだろうか、この人達は。
騒ぐ勢いに押された私に変わって、私も何となく思い当たった、彼女たちの狼狽の原因を蓮子が口に出してみた。
「あー、もしかして貴女方、未来からの来訪者とかそんなので、正体知られちゃいけないのにいきなりバレちゃってどうしょうー、て感じ?」
突拍子ないけど、とてもしっくりくる推測ね。未来の部分を異星人でも異世界人にしても違和感なさそう。
「そ、そーなのよ! 身分を隠して適当に学府に潜り込んでこの世界で魔力を研究してウハウハ! とか考えてたのに、なんて事!」
「わざわざ蛇足を言うなよ! ただでさえ時空技術のない世界への航行は規制されてんだから、むちゃくちゃやばいぜ!」
どーもこの人たちは異世界の人たちのようだ。先ほど見えた空間のひずみの様子を思い返すに、以前足を踏み入れた冥界とは多分違う場所だとは思うけれど。もしかしたら、月の人だったりして?
「あーもー、早いとこ口封じなりなんなりしないと足がつくかもだぜ? 仕方ないから小さくても必殺の武器を……」
「「いい!?」」
私と蓮子は思わず立ちすくむ。
想定の範囲内だったが、まずい状況になってきたかもしれない。セーラーの少女が倒れた状態からズバッとこちらに突きつけてきたのは、形状こそ見たことはないものだが、私達の想像通りの代物だろう。
「ま、まって! 話せばわかるわ!」
「すまん、話してもどうにもならんこともあるんだ。この場は大人しく投降するなりしてもらうぜ。今なら軽い記憶障害で済むからお得だぜ」
「ちゆり、その言い回しはどうかと思いますわ」
「い、一応加減はしなさいよ! 規制違反しただけでなく現地人に傷害を与えたなんてことがばれたら執行猶予付かなくなるんだから!」
むこうはかなりやる気らしい。それほどのっぴきならない事態なんだろうなぁと納得しながらも、しかしここで納得しちゃったら私達の人生の方がオーバーになるかもしれない。マエリベリー・ハーン、何の因果か一世一代の大勝負というやつなのかしら……。
「落ち着いてください。私達は貴女達がここにくることは予測済みでした」
「「「「……????」」」」
まずは牽制。しかし最重要の手とも言える。これで相手の敵意を霧散させるのだ。
私の声はちゃんと届いたようで、騒いでいた彼女たちは声を止め、不可解な顔つきで私の方に注目した。同時に蓮子も怪訝そうに私を見るが、これは予測の範疇。だがこの次の手で彼女も丸め込まなくてはならない。こういうときまで鈍いのは勘弁よ、蓮子。
「私の名前はマエリベリー・ハーン。空間の歪みを感じ取るという特別な力があります。貴方達がこの世界にやってくるための――なんといっていいでしょうか――扉のようなものを空間の歪みとして察知し、探り当てたところここにたどり着き、貴方達と遭遇することになったのです」
彼女たちの発言の断片から得られた推測と直感で、言葉を並べていく。この場は、とにかく私を特異な存在と認識させて彼女たちの興味を引きつける。未知の相手に迂闊に情報を提供するのは危険といえば危険だが、今回に限っては逆にそれが有利に働く、私の当てになるかどうか保証できない直感はそう告げた。
ちゆりと呼ばれた金髪の少女と眼鏡の女性が戸惑ったように顔を見合わせる中、本当にようやく赤毛の女性が神妙な顔つきで立ち上がった。ただし金髪の少女の上からは降りずにそのままその背中に、だが。絶対バランス悪いと思うんだけど。あ、ぐえって泣いた。かわいそうに
「貴女――空間の歪みがわかるといったわよね」
「ええ」
「私達が用いたワープアウト方法は、空間の歪みを最小限に抑え人一人が通れるくらいの穴を作るピンポイントタイプのもの。おかげで、せいぜいワープアウト地点から数メートル範囲にまで近づかなければ目視での確認すら不可能――私達の世界の探知技術でもそれが限界よ」
私どころか蓮子にもピンとこないような内容の話だけど、どうやら私の目論見はうまくいっているようだ。
「もう少し詳しく話を聞かせてもらってもいいかしら? いきなり正体がばれてしまったのは想定外だけど、私達は元々害をもたらすためにこの世界に飛んできたわけではないわ」
「ええ、こちらとしても話し合いが出来るのならばそれに越したことはありません。それに、貴女達の正体にも興味がありますし」
この人はリーダー格のようなのだ。この感触なら、最悪の事態は回避できそうである。
「教授、よろしいのですか?」
立ち上がりながら、眼鏡の女性は赤毛の女性に問いかける。……教授? この人こんな若いのに先生なんかしてるのだろうか? 私達と大して年はかわらなそうなのに。
「どのみち現地人とのパイプは作らなければいけないのだから、発想を逆転させるのよ。幸先のいい出会いだとね」
「……まぁ、ご主人様がそういうなら文句はないが……いや今現在他に文句があるといえばありありなんだけど」
「私の名前は岡崎夢美。こんな辛気くさいところで立ち話もどうかと思うから、どこかゆっくりできるところで続きをしましょう」
「助手の朝倉理香子です」
「同じく、北白河ちゆりだぜ」
ふうっ、と私は溜息をつきながら、肩の力を抜いた。ひとまずこの場は話が収まって良かった。あとはまぁ、なんとかなるんじゃないだろうか。
「改めまして、マエリベリー・ハーンです。こちらは私の友人の宇佐見蓮子」
「え? あ、宇佐見蓮子です。よろしく……」
そーいえば、結局蓮子は何も役にも立たなかったわね。まぁ迂闊に口を滑らせて墓穴掘るようなことしなかっただけ、マシとはいえるけど。
「今の時間なら学校のカフェテラスがいいんじゃないでしょうか。人目に付きにくい席もあるので」
「わかったわ。それじゃあ案内をお願いするわね、ちゆり、理香子、行くわよ」
「だから早く私の上からどいてくれご主人様」
「了解です」
三人を尻目に、蓮子は私に耳打ちした。
「やるじゃないメリー、銃突きつけられたときはどうしようかと思ったけど、ナイスだわ」
「そうね。というわけでカフェでの飲み物とケーキ代は全部蓮子のおごりってことで」
シュパ、と私は有無を言わさず蓮子のポケットから財布を抜き去った。
「ちょ、メリー!?」
「私が交渉を成立させたんだから、貴女はお膳立て係。それくらい罰は当たらないでしょ」
「いえまぁ筋が通ってなくもないけど――今月思ったよりピンチだからえーとその」
「それじゃ皆さん、私に付いてきてください」
「ええ」
「OK~」
「はい」
「ああ! まってよメリー!」
先行する私に、蓮子がわたわたと財布を取り返すべく駆け寄ってくるが、そうそう取りかえされるわけにはいかない。
こういうときたまには私の方が主導権を握ってもいいじゃない。ちょっぴり子供じみた優越感に浸りながら、私達はカフェテラスに足を向けたのであった。
「――というわけで、これが私達の交換できる情報の全て、といったところね」
私が既に四杯目の紅茶を飲み干そうとしたところで、話に一区切りが付いた。それぞれに自己紹介、私達の世界についての説明と、夢美さん達が本来住む世界の説明、夢美さん達がこの世界にやってきた理由、などだ。
今更かもしれないけれど、改めて突拍子のない話だと思ったのがこれまでの感想だった。夢美さん達の世界は私達の住む世界に大変似通ってはいるもの、文明レベルやあれこれの常識は全く違うものだった。それもこれも、彼女たちが異世界からこっちにやってくる瞬間を目撃したからなんとか認められるようになったといったところだ。あの接触がなかったら、多分私は彼女たちの話を妄言としか思えなかっただろう。
ただ、妄言としか思えないという原因が、彼女たちが異世界の住人であるということ以上に夢美さん自身にあることなのだが。
「というわけでこの四次元宇宙誕生以来初めてにして最終最後の超絶大天才、プロフェッサー岡崎夢美は腐敗と嘲笑渦巻く外道学会を見限り、いずれ連中を根底からちゃぶ台返して地べたにはいずり回させて私の真実の論文を奪い合うが如く勢いで往復びんたで叩き付けて読ませるべく、果てしない時空(ソラ)へと旅立ったのであった――」
おわかりいただけただろうか。説明の合間ごとにこういうパフォーマンス?をやるもんだからたまったものではない。そのたびちゆりさんはマイナスKのジト目とドライアイスの嘆息で嫌々ながら訂正し、理香子さんは明後日の方を向きながらコーヒーのお代わりを頼む。
「――えーと要するに、説得力に欠けた論文提出しちゃって今度こそ学会追放されてしまったから、その逆恨みを満たしたいと?」
おおよそ、私には夢美さんの行動原理をそのような要約で表現することしかできなかった。間違ってないと思う、私国語の成績はずっと優良判定もらってたし。国語力がなければ心理学も物理学もやってらんないじゃない。
「全く違う角度から見ればそういう風な言い方も出来るかしら。しかし私が求めるのはあくまでも真理の探求。それはそれは高尚で崇高な信念と熱意によって成し遂げられようとするものなの。わかるかしら?」
わかりません。
と、脊椎反射で答えても何にもならないくらい私にもわかる。しかし、ホントに目から炎が吹き出そうなくらいぎらぎらと亜空間の闘志をみなぎらせているこの人に何を言えばいいのだろうか。
「……なるほど」
そんな私を尻目に、この場でもう一人目を輝かせているのがいる。先ほどまで飲み物のお代わりがくるたびに奇声を上げていた蓮子だった。
「ええ、ええ。夢美さんの無念、そして煮えたぎるほどの情熱は痛いほどわかりました。私達秘封倶楽部も世間からは不良サークルのレッテルを貼られて予算も下りず、正当な評価をはね除けられては苦難の連続。真実の探求とはかくも茨の道なのですね」
へー、私達ってそんな向かい風に晒されてたんだっけ? 不良サークルってのは正しいけれど、厳密に言えばおしゃべり仲間程度にしか認識されてないんじゃない? 結界暴きしてるってのも公言してないし。というか蓮子、貴女キャラ変わりすぎてない? ……ああもうこの疑問符のスパイラルは良くないわ。
「共感して頂いてなによりですわ宇佐見さん。聞けば貴女方秘封倶楽部はこの世ならざる世界を覗く活動をしてらっしゃると……。まさに貴女達の求めるものと私達が求めるものは同一」
「ええ。メリーの幻視力、夢美さん達の知識と技術力、そして私のプランクに匹敵する頭脳があれば、この世界に不思議なものなど何もない!!」
「あの、えっと、その、色々予想付いちゃったから覚悟はしたんだけどさ、勝手に話を跳躍させるのはやめていただけないかしら」
「無理だぜ。あきらめようか」
「まさか教授とここまで化学反応できる逸材がいたとは……これもレポートにまとめるべきかしら?」
「いや、貴女達も抵抗する努力をしてください。お願いしますから」
いいながら、私も抵抗する気が失せていた。
ああ、もういいわ。諦めた。
そりゃ異世界からの住人だもんね。蓮子と波長がかみ合いすぎて世界の法則を乱すような人がいたって不思議じゃないわよね、異世界だし。
「夢美さん」
「蓮子さん」
ガシッ!
ガシッ!
「私達は!」
「今ここに!」
バッ!
ババッ!
「「『夢時空倶楽部』の設立を宣言する!!!」」
――
――
あー。どこぞの巻き込まれまくりの男子学生の救援要請みたいな名前にはしないんだ。そこんとこだけは一線踏みとどまったのかしら。とどまってどうにかなるかといわれたら何も言えないけど。
「ああなんてすがすがしい気分なのかしら! この出会いのために私はあの脳天気巫女に叩きのめされたといっても過言ではない!」
「あ、その話後でもっと詳しく聞かせてくれませんか? なんか色々と引っかかる点があるんですよ。もしかしたら、博麗神社の秘密が明かされるかも――」
「あーあいつらかぁ……今も生きてるのかどうかちょっとだけ気になるぜ」
「ああ、今更だけれど、あそこって私の故郷なのよね。すっかり忘れてたわ」
とまぁ。
気が付けば、私だけなんか取り残されてしまったようだ。
正直このまま取り残されて知らんぷりしたいところだけど、非常に頭の痛いことに、私の能力はもうあの人たちの行動に折り込まれ済みだろう。人の都合を考えず人を使うことを前提にしているなんて泣けてくるわ。
「さて、では早速秘封倶楽部体験ということで、結界暴きにいきましょう」
「楽しみね。あの世とこの世の境目とは一体どんなものでしょう」
かくして
異邦人岡崎夢美、北白河ちゆり、朝倉理香子を加えた秘封倶楽部改め夢時空倶楽部は、私にかつてない不安の幻視を抱かせる船出となったのだった……
え? これ続くの?
とりあえずここらへんkwsk。
あと続きにwktk。
結果的に更なる巻き込まれスパイラルに嵌っていくあたり
まさに某巻き込まれ体質の一般人高校生ですねメリーw
そして夢美と蓮子って確かに波長合いそうな気がします。
流れからいくと次は蓮台野夜行になりそうですね。
全力でwktkしてます。
マジ続いてくれ