雨
そろそろ梅雨にでもなる所為か、霧の様な雨が殆どの音を消してくれる、静かな日だ。
そんな時は縁側で将棋を打つ。定番と言われようがそれがまた良い。
「王手」
相手は妹紅、私が攻める。
「ぬう・・・じゃあこっちに逃げて」
「王手」
「ならばこっちに」
「王手」
「しからば此方に」
「王手・・・虚しくないか」
盤上にはもう駒が二枚しかない。
無論私の王将と妹紅の玉将だ。
「いやいや、良いじゃない?」
「何が良いんだ・・・」
私の傍らには飛車、角行、桂馬等々のいわゆる際物
妹紅の傍らには歩、歩、歩、時々銀とか
「渋い・・・」
「何が?」
「お前」
「ありがと」
「褒めてない・・・堅実と言えばそうなんだけどな」
「?・・・ああこっちか」
傍らの牌をつまみ上げしげしげと眺める妹紅、歩だ。
「これは解りやすいよね、歩兵」
「ああ、進むことしか知らない、勇敢な駒だ」
「でもさ・・・」
くるりと裏返して裏の面を突きつける妹紅
「何これ、ふ って」
「ふ」
「しかも動きは金と同じなんだよね・・・成金って事は成り上がりなの?」
「かもな」
もうそろそろ決着を付けたい・・・
私はそこで張った。
「この卑怯者!」
「え!?」
「将軍は単騎駆けが基本だろ!」
「いやいやいや・・・護衛ぐらい欲しい」
「おのれ・・・桂馬か」
桂馬
走る桂馬は戻れないと誰かが言ってたような気がする。
戻ることを知らない、そして成り上がれば歩と同じ
「こいつも成り上がりじゃない」
「いいじゃないか・・・役に立てば」
「じゃあこれ」
今度は妹紅が張った。単騎駆けは何処行ったこの呆け
「香車か」
「切り込み隊長赤!どんなもんだい!」
「何じゃそりゃ」
ならば桂馬は捨てよう、そして玉を狙うのは
「こいつだ、王手ではないが」
「ギンギラ銀にさりげなく~そいつがけ~ねのやり方~」
「五月蠅い早くしろっていうか何だその歌」
「じゃあこれ」
銀の射程外、真後ろに金が来た。
「持ってたのか・・・全部確保したかと思ってたが・・・」
「隠し玉って奴?みられんの嫌だから板の下に」
「それは違反だ」
「ま、ま、気づかない貴様が悪いって事で・・・ていうか金と銀ってさあ」
私はしばし思考に入り、妹紅は再び牌を取り上げ、眺める。
「これって宝石って言うか鉱物じゃん・・・」
「いや金と銀『将』だからな、その上がないだろう?つまり最上級の兵であることを表しているんだと思うが」
「ふ~ん、じゃ、金剛とか白金ってのは・・・金か」
「そういう事だ、だから皆、金を目指すのさ、歩も馬も」
「成る程・・・」
感心している間にトドメを張った。
「王手、金取り」
「慧音・・・金取りって何かエロ」
「掘るぞ」
「すいません・・・じゃあ逃げる」
「また張る、しかも角行」
「うおおおお・・・」
今度こそ取れるだろう、いい加減終わらせたい・・・
「著井町・・・いやちょい待ち」
「待ったなし、制限時間はないが」
「あのさ・・・飛車ってなんで成ると龍王になるんだっけ?」
・・・・・・・・・
「龍王?」
「ほれ、飛車の裏」
成る程確かに龍王だ。
「なんで?」
「む~・・・わからん、飛ぶ車というのが何かつながる物があるんだろう」
「じゃあ角は?」
「・・・わからん、それより早くしろ王手だ」
「・・・これは挑戦だな?ならばこの弾幕・・・抜けて見せる!」
「幕・・・?」
再び、盤上の戦いの火蓋が切って落とされ・・・
少女熱戦中・・・
「此処までだな・・・」
早めにケリが付いた。
とは言っても盤上にはまた、二枚の王将と玉将が向かい合っている。
「ぬううううう・・・リ・・・リザレクション!」
「無い」
「蓬莱の薬を使用した!玉将は無敵になった!」
「ならん」
「無敵スター!!」
「それはイタリヤ人の髭の配管工以外無意味だ・・・此処までだな」
手番は私
自分の王将をつまみ上げ、
「あっ・・・と」
落とした。板の上に、同じ升に、
「これは・・・」
「無効、動けないね慧音・・・」
「・・・」
「いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいやあああああああああああああああああああああっっほおおうううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!」
キチガイ姫(Lunatic Princess)も吃驚な奇声を上げつつ、妹紅は喜々として私の王将をかっさらった。
「でひゃひゃひゃひゃ!こいつはいいや、玉が勝ったぜ下克上!慧音に勝った慧音に勝ったYO!」
「ぐぬぬぬぬ・・・・・・」
「勝負有りッ!!!」
何だろう、たかが将棋なのに、ものすごく腹が立つ・・・たかが将棋の勝負なのに
「たかが将棋・・・?」
改めて自分の駒を眺める。
一つ一つの駒、だがそれらには意味があり、目指す物があり。
そしてそれらが戦う。そんな戦い将棋という物は幾度と無く繰り返している。
そして結果が出ればやはり私と同じように悔しいだろう。
どんな時でも、どんな場所でも、打つ者がいる限り戦いは続く。
たかが将棋、されど将棋、確かに此処には戦いがあった。
「成る程・・・な・・・そういう事か・・・」
私は敗残の将となった王を盤上に静かにおいて、
「済まなかったな、次は勝つ」
軽く頭を下げた。
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さて
「妹紅」
「なあに?負け犬は黙って飯の支度を」
「掘るぞ」
「え?」
未だ絶頂の高見にある妹紅の襟首を掴み、寝室へと向かう。
「え?いや、いやちょっと慧音、駄目だってアレやると痔とか色々大変なんだってホントに止めいやああああああああああああああああああん!!」
この日の勝負
五百六十手目にして玉の勝利
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その頃永遠亭にて
「ねえ永琳、将棋打たない?」
「良いですよ、お相手しましょう」
>だから皆、金を目指すのさ、歩も馬も
たとえばこれ。
しかし、マリオってロシア人じゃなかったか・・・? うろ覚えなんでイタリアかもしれませんが。
それと、
>でひゃひゃひゃひゃ!こいつはいいや、玉が勝ったぜ下克上!慧音に勝った慧音に勝ったYO!
弾けすぎだぜもこたん。
>アレやると痔とか色々大変なんだって
・・・がんばれ、不老不死・・・。
マリオという名前がイタリア人なのでそう思いました
確か映画でイタリアだった気が、、、
将棋は殆どやったことないです、軍人以外、、、
64のときにマンマミーヤ(お母さん)って叫ぶし
そして最後はやっぱり座や
でもホンと、なんで飛車と角は「龍」に成るんでしょうね?
ギンギラ銀にさりげなく~さりげなく~生きるだけさ~♪←にもウケました(笑
とても薄くそして深い…まさに将棋!!