*あらすじ 月の異変の解決後、科学に興味を持ち、余り溢れる無駄知識を総動員して、独自の『魔導機械理論』を、多くの尊い犠牲の上に確立した図書館の魔女、パチュリー・ノーレッジは、自らを『Drパチュ』と称し、小悪魔をこき使い、日夜発明に没頭していました。今日の犠牲者は・・・・・・。バレバレですね。
梅雨入り前の幻想郷。
朝から降り続ける雨の為、しとどに紅く濡れる魔の館。
館の住人達のほとんどが不平をもらすなか、天気に関係なくマイペースで研究に没頭する者もいた。
図書館の魔女様は、今日も嬉々としてソファーに座り、どこかの暗黒騎士の様な、紫色の仮面を被り、コーホーと言いながら、ぶ厚い百科事典に目を通している。
ここは、ヴワル図書館の中に作られた一室『ヴワル工房』。
最初は普通の研究室だったが、所有者の悪乗りでドンドン進化し、今やどっかの秘密組織の施設の様になっていた。ちなみに完全無菌室なので体にも優しい。
ちなみに助手の小悪魔は、主から「語尾に必ず『イーッ』を付けろ」と命じられ、ささやかな反抗を試みたものの、『こりこり解消万歳君・参号機』に半日括り付けられ、天国から地獄まで、何回もイッタリキタリした挙句、おとなしく従う事にした。
そして本日、工房の中央、まるで拷問台の様な手術台の上に拘束されているのは、紅魔館の看板娘、もとい門番? の紅美鈴だった。
天井から眩しい光に照らされながら、美鈴は魔女にたずねる。
「あんまり聞きたく無いですが、今日はいったい何の実験なのでしょうか? 」
ちなみに先日は、その無駄に大きい胸を武器にしてやるとかで、危うく胸から大弾が発射される体にされかけた。
その時は寸前で、メイド長が止めに入ってくれたのだが。
魔女の代わりにいつ現れたのか、手術台の側で、メイド長の十六夜咲夜が、白衣とマスクを付け両手にナイフを持ち、目を爛々と光らせながら答えた。
「ぶっちゃけ、豊胸手術の訓練。イーッ!!」
美鈴は蒼冷める。
なんで、どうして、いつもなら御仕置き代わりのナイフと共に、自分を助けてくれるメイド長がどういう事?
「パチュリー様、まさか咲夜さんに一服もって・・・ごふぅ!!」
魔女が手にしていた百科事典が、美鈴の顔面を直撃する。地味に痛い。と言うか魔女様はなんか変な薬飲んでますか?肉体改造してますか?今片手でヒョイと投げましたよね。魔女は、なんだか何時もより二オクターブほど高い声でシューシューと言いながら答えた。
「何回も言ってるけど、まずこの部屋の中では、私の事をDrパチュと呼びなさい。でないと魔理沙にプレゼントする予定の『マジョホーキ・体験版』に乗せるわよ。あくまで『体験版』だから不完全なのよね。核分裂反応起こして飛ぶから、何時何処でドカーンといくか、考えただけでもドキドキしてチェルノブだわ、チェフチェフ」
不気味なマスクを両手で抱え込み、意味不明の言葉を口にするDrパチュ。完全に仮面の中は、乙女チックモードに突入だ。
鼻血を流し痛みに耐え、美鈴は質問を続ける。
「Drパチュ、咲夜さんに何をしたんですか?」
指をパチンと鳴らすDrパチュ。
次の瞬間、手術台の上の、照明代わりのシャンデリアが轟音を上げ落下する。
「我ながら、スプラッターな仕掛けを作った自分が恐ろしいわ。ちなみにダメージは、はあとが一個減るくらいだから、軽いわよ、ジェニファァァ」
そして美鈴の質問に答える。本人は聞こえているか怪しいが。
「咲夜には、いつもいつも邪魔をされて、私ツマンナイ、プシュー」
「ならば自分の手の内に入れるのが、手っ取り早いでしょう、コーホー」
「レミィの昔の記録を餌に、サブリミナル効果?を仕掛けたのゲフンゲフン。詳しい事は自分で調べてね」
「今や咲夜は、私の操り人形。優秀なアシスタント二号も手に入って、正に一石二鳥。いや、咲夜にも実験台になってもらって、トウフな事や、アリアハンな事もしようかしら。イヤッ、ふしだらな女じゃ魔理沙に嫌われちゃう、シュハァァァァァーーー」
だが門番はまだ生きていた。そして、シャンデリアに潰されて、拘束具が壊れた事を悟られない様に、慎重にDrパチュに質問を続ける。
「な、なんて恐ろしい事を・・・・・・。Drパチュ、観念しました。ところで何故、豊胸手術などに興味を持ったんですか?」
Drパチュはソファーから立ち上がる。
「何故ですって、それは無駄に胸にお肉の付いているあなたには、永遠に理解出来ない事、フゴー」
Drパチュは、美鈴にゆっくりと歩み寄る。
「外界では美容エステとか言う物が大流行中よ。それに幻想郷は、需要の高そうな連中が揃ってるし、ペェター」
Drパチュは美鈴の顔を覗き込む。
「だから、まずシリコンとか言う物が、体に無害かあなたの体で実験させてもらうわ。その大きな胸をくり抜いてね、グフー」
その瞬間、機を逃さずに美鈴は、上体をそらし、Drパチュに対して掌底から気を放つ。
だが。
「大甘のお馬鹿さん、あなたの考えなんてお見通しよって、え? モフー」
後方に飛び下がるDrパチュの目に映るのは、側に立つ咲夜に向けて気を放つ美鈴の姿。
Drパチュを攻撃するふりを見せたのは注意をそらせる事、本命はこちらだった。
NGワードスペル発動。
イグニッション!!
「咲夜さん、目を覚ましてください。レミリア様がお・よ・め・にいっちゃいますよー!!!」
美鈴の気を受け、鬼のメイド長は正気を取り戻す。
「なんだとおぉぉぉぉぉぉ、私の目の黒いうちにはぁ、レミリア様にまとわり付く害虫は全て駆除してやる。おまえかっ!! 」
そしてメイド長は、Drパチュを睨み付けた。
まだ正気には、少し遠い所にいるらしい。
「おおぉ、愛憎の空より来たりて、正しき忠義を胸に、私は邪を断つ拳を取るっ!! 」
雄雄しく拳を握り締めるメイド長の姿に、美鈴は心を奪われた。
「邪なる物よ、我が怒りを思い知るがいい。くあっ!! 」
メイド長の右拳が、良い感じに光り輝き、魔女を打ち抜く。
Drパチュは、壁に人型の穴を開け、そのまま紅魔館の外壁もぶち破り、お空の星になりました。残されたのは、主を失った紫色の仮面のみ。
「ああ、助かった。咲夜さん素敵です。愛してます」
安堵感から、ついコクってしまった美鈴。
かああっと顔が火照るのが分かる。
恐る恐る、彼女はメイド長の顔を見る。そして、戦慄した。
「お・ま・え・も・か」
鬼だ。
鬼がいる。
オウガが私を喰べに来る。
「消えろおぉぉぉぉぉぉぉ!! 十六夜流、次元斬・滅! 」
美鈴の想いは届かず、彼女もどこかに消えました。(ステータス・ロスト)
めでたし、めでたし。
蛇足 マヨヒガの紫様の食事の上に、美鈴が落下したのは、三日後の事。
幻想郷の子供「おっかあ、お山が燃えてるぞ」
その母親 「八雲様が怒っているんだわ。ナンマンダブ」
哀しき妖怪の悲鳴が響く。
「なんでこんなに念入りにー、イヤー・・・・・・」
「おわれ」
でもどいつもこいつもしっかり面白いからさすがだぜ。
この調子でがんがんいってくんな。 がんがん。
なんて読むんでしょう・・・? かんばんいた? 看板娘の誤植?
>「ぶっちゃけ、豊胸手術の訓練。イーッ!!」
涙無しには見れません・・・。
>愛憎の空より来たりて、正しき忠義を胸に~
それは本当に正しい忠義なんですかと素で突っ込んでみたり。子狐インパクト!(意味無し)
>咲夜には、いつもいつも邪魔をされて、私ツマンナイ。ならば自分の手の内に入れるのが~
こんなに長い台詞を言っても咳き込まないあなたは偽者ですね!? あ、元よりDrパチェか^^
>オウガが私を食べにくる
薄幸の発酵娘、カチュア姉さんのほうが怖いと思います。シャヘルなんかよりよっぽど。
>紫様の食事の上に、美鈴が落下したのは、三日後の事
ゆゆ様の食事じゃなくて良かったですね。もしそうだったら代わりに食されて王大人死亡確認ですよ。
は!? 王大人死亡確認だったら結局生きてるじゃん!?
れ、レ○リア・インパクト!咲夜さんがどこぞの人間社会の最底辺をひた走っている赤貧へっぽこ三流ロリペド探偵な必殺技を使えるとは!流石完全で瀟洒なメイド!!そこにしびれる、あこがれる~。ってぜんぜんほめてねーな、おい。
>この調子でがんがんいってくんな。 がんがん。
謝々。何というか、リビドーって奴ですか。話を作るのが面白くてたまらない状態です。アクセル全開で爆走し続けます。ではまた。
>なんて読むんでしょう・・・? かんばんいた? 看板娘の誤植?
謝々。かんばんいた、で当たりです。ちゅうごくいたの方が良かったかも。門番としての仕事を果たしていないようなので、幻想郷名所案内に『中国っぽい人が立っていたらそこは紅魔館です。門番よりも中の住人達の方が危険です』と書かれていそう。
>涙無しには見れません・・・。
整形手術はエライ金が掛かるとTVでやってました。体の悩みは、個人の最大の問題なのでしょうね。
>それは本当に正しい忠義なんですかと素で突っ込んでみたり。
咲夜さんにとっては、『正しい忠義』なのでしょう。たぶん。
>こんなに長い台詞を言っても咳き込まないあなたは偽者ですね!? あ、元よりDrパチェか^^
それを読んでちょいと書き足しする事にしました。悪乗り方面で。ありがとうございます。
>薄幸の発酵娘、カチュア姉さんのほうが怖いと思います。シャヘルなんかよりよっぽど。
タクオウのカチュア姉さんでしょうか? あの人は怖いです。ガクブル。
>は!? 王大人死亡確認だったら結局生きてるじゃん!?
そうです、たぶん被り物をして再登場するんです。ホンコンマスクとかで。
それではまた。
>ってぜんぜんほめてねーな、おい。
いやいや、ある種の人間には最高の賛辞です。種族は『変態』と言いますが。
今回の話は、お楽しみできたでしょうか?
日々精進して頑張ります。デモンベインの新作も楽しみです。
ではまた。