初めて見た、その動く人間は、羽も無いのに空を飛んでいて、紅と白で彩られていた。
面白いなと思った。興味深いと思った。良い玩具になるって思った。
でもどうせ、スグに コワレル ト オモッテタ。
けれど、どんなに弾を放っても彼女は壊れなかった。神の国を火の海にしたというレーヴァテインでさえ、彼女の身に煤一つ付けられやしなかった。
遊びだったはずなのに。
私は翼を持っていて、空を飛んでいるはずなのに。
人間など、地べたを這いずり回り、我等に捕食される為だけに生きているはずなのに。
その人間は、私よりも遙か高くに居た。
「どう、これが神に仕える者の力よ」
声色は高く、澄んで。吸血鬼の闇など軽く拭い去る。
ようやく見つけた。壊れない遊び相手。でも、その人はとっても遠くて、高くて、届かないなぁって思った。
我侭な私の相手なんて、してくれることなんて無いんだろうな、遊び「道具」だ何て言ったから、きっと怒ってるだろうし、私はいきなり殺そうと襲い掛かったようなものだ、だから今は、逆に私を殺そうとしているだろうって、そう思った。
でも、そんなの嫌で。
死ぬの何て怖くない。十字架も怖くない。闇夜に光る銀光だって耐えられる。
この人は、そんなものよりもずっと怖くて、魅力的だった。
だから、私は気が付いたとき、数え切れぬほどの弾と珠を撃ち込まれ、ぼろぼろになった体で、弱々しかっただろうけれど、必死になって手を伸ばしていた。
欲しいと思った。初めて、心から欲しいと思った。
「まだまだ、これからよ」
声など、ただの強がりで、力も満足に入らない身体で精一杯の痩せ我慢をして。
「もう、そんな余裕も無いクセに」
嘲るでもなく、見下すでもなく、神に仕えるその巫女は、ただ微笑した。
もしかしたら、本当は怒っていたのかも知れない。私が、表情からそれを読み取れなかっただけなのかも知れない。
でも私にとって、それは初めて知り得た感情だった。
優しさ。
馬鹿だ。何の役にも立たない。人間は、そんな要らない感情を未だに後生大事に抱えて生きている。だから、私達に捕食されるんだ。
でも、その人間が馬鹿だって言うのなら、
「もう、ムリ。煙も出ない…」
そんな言葉と一緒に、瞳から雫を零した私は大馬鹿だ。
「貴女が来てくれるのなら 私はいつだって此処に居る」
けれど同時に、絶対に届くことなどないのだろうという確信もあった。
期待はしていなかった。意図せず発した言葉だ、それが届くなんて、世間知らずの私だって思ってはいない。
人間は弱くて、愚かで、ずるくて、でも狡猾だ。その点に置いてだけ、私達吸血鬼と似通っている。
だから、私の言葉なんて、蛆虫でも潰すかのように、軽く踏み潰されるか、蹴飛ばされると思った。吸血鬼でなく、人間だってそうするのが当然だと、本を読んで知っていた。優しさなんてのは、上辺だけだ。人は本心なんて語らない。
強きに媚びへつらい、弱きを挫き、その身を肥やしとして生きていく。強き者には、身を守る為の嘘をいい、弱者には力で持って言葉を捻じ曲げる。本当の事を言うのは、強きものが弱きものに接した時だけ。そこに優しさなんて無い。
傲慢で、醜くて、滅ぶべきだと思っていた。捕食されて当然どころか、されてしかるべきだと思っていた。
なのに、彼女は、博麗霊夢は、泣きじゃくる私に、弱者に対し、優しく微笑んで言った―
「いつでも 遊びに来てあげるから」
壊れたのは、ワタシの 何かヲ キメツケテ イ タ チッポケナ コ コ ロ
ダッタ―
貴女が来てくれるのなら 私はいつだって此処に居る―
だから
また 遊んでくれる?
フランドール・スカーレット
She is in there for a long long time...
分かりずらい感想ですいません。
へぼシューターの私にはご尊顔を拝する事も出来ませんがw