Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

「ヴワル工房 開店」

2005/05/27 15:30:01
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 素敵な紅い悪魔の館に、また一つ新しい部屋が出来ました。

 興味のある方は、どうぞ首を突っ込んでみてください。

 
 トラップ発動。『妖夢は首をはねられた』

 
 ちぎれた半霊を、よいしょよいしょと捏ね回しながら、妖夢は部屋の主に文句を言う。
 
 「酷いですよー、パチュリーさん。こんな物仕掛けてあったら、皆死んじゃいますよ」
 どこから手に入れたのか、入手経路がバリバリわかる、白衣に黒い眼帯とマスクを付けた、大図書館の魔女は平然と答える。

 「残念だけど、このトラップに引っ掛かったのは貴女が初めてよ。みんな私の事よく知ってるから。それからこの部屋の中では、私の事はDr.パチュと呼んでちょうだい。」
 ガクリと首をうなだれる妖夢を無視して、Dr.パチュは話を続ける。

 「今日、貴女を呼んだのはモルモ、じゃない、ある実験の手伝いをお願いしたいからなの。あ、この部屋、『わー度ナの護符』で結界張ってあるから逃げられないわよ」
 聞き捨てならない台詞を耳にして、妖夢は戦慄し自分の主に心の中で別れを告げる。
 お嬢様、もうお会い出来ないかもしれません。でも、もう半分死んでるから別に良いかも。
 気を取り直し、妖夢は魔女に質問する。

 「で、わたしは、何を手伝えば良いんですか」
 Dr.パチュはニッコリと目だけ微笑を浮かべ答えた。

 「ぶっちゃけ、試し切られ」
 結界が張ってある事も忘れ、妖夢は出口に向かって走る。


 トラップ発動。 『おおっと、テレポーター!! ・・・・・・石の中にいない』


 数分後、意識を取り戻した彼女の見た物は、怪しげな儀式にでも使われそうな、平らな台の上に拘束され、身動きできない自分の半霊だった。
 自分も、変な手の様な物がたくさん付いた椅子に体を固定されている。

 Dr.パチュは、いかにもノリノリで、妖夢に現状を説明する。

 「諦めなさい、貴女の尊い犠牲は、きっと幻想郷の為になるから安心して成仏してね。まず貴女の座っている椅子、『肩こり一発解消君・試作一号』だけど、門番使って実験したら暴走して、彼女悶絶しちゃったわ。よっぽど気持ち良かったのね」
 妖夢は、門番隊長の紅美鈴が、今日に限っていなかった理由を理解し、無駄な抵抗をするのを止めた。

 「聞き分けの良い子って好きよ。で本題、あの月の異変の解決後、私は、外の『科学』に魅了されたわ。それで、咲夜に頼んでこの部屋を作ってもらったの。」
 部屋の中には見渡す限り、怪しげな物体が所狭しと置いてある。

 「魔法の力を応用して、機械を動かす力を発生させる理論も確立したわ。多くの犠牲もあったけど」
 妖夢は、その実験の犠牲者達に同情した。

 「先日完成した、『ここ掘れワンワン君』はきちんと動いたから、咲夜にプレゼントしたわ。これで銀不足の問題も解消ね」
 成功例もあるようだ。
 
 「で、長くなっちゃったけど、今回は最近強力になってきた外敵、紅魔館は本当に敵が多いから、それに対抗する一般メイド用の対妖、対霊武器を作ったの。ある程度の魔力なら反射もできるすぐれ物よ」
 どこから出したのか分からないが、Dr.パチュは片手に日本刀の様な物を手にしている。

 「外界から手に入れた書物から、ヒントを得て作った、精霊の力を借りた高周波振動ブレード。名づけて『にひるなニヒル君』零号。そして貴女は、その実験台一号に選ばれた。ねっ、素敵でしょ」
 そんなの全然素敵じゃないやい。半べそをかく妖夢を無視して、Dr.パチュは細身の刀を振り上げた。刃の表面が静かに、だが細かく振動しているのが見える。
 Dr.パチュは、今まさに両断されようとしている妖夢の半霊に、恍惚の表情を浮かべ別れの言葉を告げる。

「心配しないでね、実験に失敗は付き物よ。運が良ければ助かるわ。じゃ、さ・よ・う・な・ら」

 Dr.パチュの頭上で、ギラリと光る『にひるなニヒル君』。
 妖夢はその光景から目を背ける。
 所詮、神なんていない。
 奇跡なんて起こらない。
 そんなのおとぎ話の中だけ。



 しかし、奇跡は起きた。



 「いざよいいいいぃー、卍キイイイイイイーック!!」

 扉を蹴り飛ばし、時を止め、数々のトラップを掻い潜り、蒼い旋風が魔女の体を吹き飛ばした。

 「ぐぐっ、素晴らしい性能だ。なんで・・・ごふっ」
 意味の分からない台詞を残し、Dr.パチュは倒れた。(爆発はしません)

 拘束された妖夢は、自分を救ってくれた者の姿に見とれていた。
 
 紅魔館の鬼のメイド長、十六夜咲夜の凛々しく立つ姿に、何故か心がときめいた。
 そんな妖夢の心も知らず、咲夜は、気絶している魔女に対して悪態を付く。

 「まったく、何が『ここ掘れワンワン君』よ、危うくレミリア様の臀部に突貫する所だったわ」
 そして、彼女は妖夢と半霊の拘束を解く。

 「あなたも災難だったわね。後でよーく懲らしめといてあげるからって、え? 」

 妖夢の、自分を見る目が尋常ではない事に気が付いた。そして。

 「お姉さま」

 嫌な単語が耳に入り、咲夜は耳をそばだてる。

 「おねいさま」

 咲夜は、自分の身に危機が近付いている事を認識し、妖夢から身を離す。
 しかし、目の前の相手は、じりじりと間合いを詰めてくる。
 そして、目をはあとマークにした妖夢は、咲夜に突進した。

 「わたしのおねいさまー!!」
 
 銀光一閃、眉間に一撃を食らい、妖夢も気絶した。

 「慕われるのは悪くないけど、私はレミリア様の物だから。あー、こりゃまた歴史食いの力を借りなきゃならないわねー」
 ため息をつくメイド長。管理職は何かと大変だ。

 数日後。

 「門番、今度はより改造した『全身モミモミ極楽君』が完成したわ。さあ、来なさい」

 スマキにされ、Dr.パチュに引きずられていく悲しき門番。

 「誰か、助けてー!! 」

 残念ながら、神は死んだふりをした。


 「おわります」

 
 
 
 
 
 
 
 沙門です。中学の頃、ファミコン版のウィザードリィに燃えてました。またマスターレベル目指して頑張ろう。それでは失礼します。

追加 「Drパチュ」に名称を変更したのみです。
沙門
コメント



1.シゲル削除
おぉ、こりゃ懐かしい物が♪(笑
知り合いがよくお金稼ぎしてたなぁ。。
2.沙門削除
 「あ」とか「A」とか適当な名前を付けて、私も同じ事やりました。蛇足ながらベニー松山氏の「隣り合わせの灰と青春」と「風よ。竜に届いているか」が、自分にとってのファンタジー小説への足がかりになりました。
 自分も今、試練場で奮闘中です。また作品が出来た時、読んでいただけると幸いです。謝々。