*はじめに。これは以前書いた「式神橙、街に行く」の藍様サイドの話です。どうぞご了承ください。
それにしても割烹着きた藍様サイコー!!もふもふ。
ここはマヨヒガ一番地。
素晴らしきかな桃源郷。
さあさ、貴方も一度はおいでと。
スキマ妖怪も笑ってる・・・・・・ 。
素晴らしい朝が来た。希望が有るかは知らないが。
マヨヒガの住人の住処から、朝餉の煙がモクモク上がる。
「味付けはこれでよし」
三角巾を頭に被り割烹着を着た、ある意味でマヨヒガの顔であり、大妖怪八雲 紫の式神でもある藍は一人つぶやく。
そして後ろを振り返る。
何時もなら、「おなかすいたよー」と飛びついて来る藍の式でもあり、自分の可愛い扶養家族の橙の姿はない。
自分の主人の命令で、橙は今、外の世界に出ている。
ふっくらとした藍の尻尾がだらりと下がる。
橙を外に出すのは絶対に反対です。
と抗議したものの、元はといえば自分の不始末が原因である為、押し通されてしまった。
「いいじゃない、橙にとって良い勉強になるわ。それに私は、冬眠するから寂しくないわ。うふふ」
いや寂しいのは自分ですから、と心の中で突っ込みを入れたが。
藍は、朴念仁そうな、橙が居候している男の顔を思い出す。
あの男なら、別に橙に変な事、あんな事やそんな事やどんな事はしなさそうだ。
外の世界には、『ぺど』とか『ろり』とか言う変態が跳梁跋扈していると聞くが、あの男なら酒のお相伴位が関の山だろう。
しかし。
「私から、橙を奪った事を孫の代まで後悔させてやる」
藍は、ぐふふふふふふふふふふふふふふぅ、と尻尾を逆立て高笑いする。
壁に張られた『復讐リスト』には、ここで書くとやばそうな文字がズラズラと書き込んであった。
下の方にはまだずいぶんと余白がある。
書棚には、『ヴワル大図書館』から正式に借りてきた『古今東西拷問術百科事典』が載っていた。こわやこわや。
「さてと、寂しい食事を取りますか」
三角巾を外し、割烹着を脱ぎ、朝食を済ませようとした藍の目に、見慣れた珍入者の姿が見えた。
「ごーはんだ、ごーはんだ、楽しいな」
いつのまにか、ちゃぶ台の上に自分の使っている食器を並べ、博麗神社の巫女が茶碗を箸で叩きながら歌っている。
はたから見れば親鳥に餌をねだる雛の様な、ほほえましい光景だ。
「いつからここは、神社の巫女の食堂になったんだろうな」
不平を言いながら藍は、あらかじめ予想していた様に二人分の食事を並べる。橙が外界に出て紫が冬眠してからというもの、この巫女は三食必ずたかりにくる様になった。
「昔から。それに、ここに来れば朝昼晩と、きちんと食事が取れるし、藍のご飯は美味しいし、いいお嫁さんになれるわよ。あなた」
ふう、とため息をつき藍は自分の席につく。
「褒められるのは悪い気はしないが、嫁に行く気は無いぞ。相手もいないしな」
御ひつから、炊き立てのご飯を霊夢の茶碗によそり、藍は答える。
「んー、中々旨いわ。これ、どこで手に入れたの」
「外界から来た、物好きな奴が置いていった。無洗米とか言う、とがなくてもいい米だ。環境にも優しい、お前みたいな自堕落な奴には正にもってこいな米だな」
霊夢は、そんな藍の言葉を半分聞き流しながら、目の前の食事をむさぼり食らう。
藍も静かに食事を取る。
藍は食後の一服にと、珍しく霊夢が差し入れと称して持ってきた茶葉を急須に入れお茶を入れる。
「美味しくなーれ、美味しくなーれ。飲めば喜び沸いてくる、そんな美味しいお茶になれ」
鼻歌を歌いながら急須をなで、藍は頃合を見計らってお茶を湯飲みに注ぐ。
「ほら、出来たぞ」
「ありがと、ずずずっ。うほっ、いいお茶。」
訳の分からない感想を、霊夢は述べつつ茶をすする。
朝日が昇る中、庭の木に止まる小鳥がのんびりとさえずっている。
風は無い。
見ているだけで気持ち良くなるような、青空がどこまでも広がっている。
特に会話も交えずに、二人の人妖は縁側から外を眺めている。
穏やかで静かな朝だ。
「じゃ、そろそろ帰るわ」
「ああ、私も自分の仕事があるからな」
そして、一呼吸置いて藍は霊夢に話しかける。
「すまない、一人より二人で食べる食事は旨かった。礼を言う」
「そんな事言ったら、もっと大勢連れてたかりに来るわよ。それと」
霊夢は、一瞬真剣な表情を作る。
「外界から来た物好き者の話だけど、もし、その人間に害を与える様な事があれば。わたしは本気であなたを払う。いいわね」
彼女の目を正面から受け止め、藍は答える。
「了解した。その時は、私も全力を尽くす」
ふっ、と笑いながら霊夢は宙に舞い上がる。
「お昼は肉じゃががいいわー。じゃあね」
そうリクエストして、博麗の巫女は、自分の家目指して帰って行った。
「肉じゃがねー、迷い豚でも探すかな」
そして、壁に貼り付けた『復讐リスト』を破り捨てる。
気持ちが晴れた。
春になり、橙が帰って来るのを指折り待とう。
藍は人身から本来の姿に転じる。
風に乗り、宙を舞い、九尾の狐は幻想郷の空を駆ける。
「終わりです」
他ではあまり見ないですけど。
私も藍様の尻尾があればこういう話が書けるのかな……
ありがとうございます。後半の二人の絡みは、永夜抄をイメージして書きました。藍様の尻尾は、霊験あらたか効果抜群です。テンコー様に天罰食らわないように、これからも頑張ります。謝々。
藍様と霊夢の二人の時間って穏やかに過ぎていきそw
ズギンガグヒンモタンギリビギデラグ
ガンバッデグザ ガギ!
謝々。私の好きな物書きの人に、野田知祐氏がいるのですが、その作品の中に「イエスが生まれた頃から、まったく変わらない光景が、ここには在る」というような話がありまして、種族は違えど、同じ時間を共有している感じが出せたらいいなと、書いた後に思いました。走り出してから考える阿呆なので。
では、響鬼さんの真似をして。
「沙門です。鍛えてます。これからも頑張ります。しゅっ!」
ヴワル魔法図書館では?
それとも誰も指摘しないと言うことはなにか元ネタがあるのでしょうか?
それとも誰も指摘しないと言うことはなにか元ネタがあるのでしょうか?
ご指摘ありがとうございます。元ネタは無いんですが、書いた当初は「藍はヴワル図書館の事をヴ悪図書館と呼んでいる」と勝手に設定したんです。今考えると、大変紛らわしい事ですので訂正します。それでは失礼いたします。