Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

[壊れた誓い]

2005/02/24 11:16:00
最終更新
サイズ
6.62KB
ページ数
1



  ダーク分が含まれております。
  そういうのが苦手な方は回避して下さい。

  注:このお話は創想話の「想いの集う場所」の3から始まります。
    それなので「想いの集う場所」は読んでおいてください。














  -3-

  そして、今日は運命の日
      やはり満月なのは、偶然なのか
  
  いや、違うのだろう。これは私が潜在的に仕組んでしまった、偶然
             そう、これは必然

  私がこの部屋をアトリエにし、上海と蓬莱を創ったときにこうなることは決まっていたのかもしれない。


  その日の夜、いつもなら既に眠りについている時間。
  私は、アトリエの前の廊下に立っていた。
  以前、私が来たときにはもう遅かった。でも今回は絶対。

  ゆっくりとノブを廻し扉を開ける。

  窓からの満月の光が照らすこの部屋は、何度見ても幻想的だ。
  でも、やっぱり少し明るすぎるようね。

  私は部屋に入り、床にある三つの影にゆっくりと近づく。
  その内の二つが私に気付いたのか、顔をこちらに向けてきた。

  「あ、アリス。どっどうしよう。この子が、この子が。」
  上海が今にも涙を流しそうになりながら言ってきた。
  綻びは大きくなり、魔力がそこから流れ出してしまっている。
  こうなってしまったら、もう長くはないだろう。

  「…………」
  私は何も言わずに、床に倒れたままの新しい命に近づいていく。

  そして、二人が何をしているのかに気付いた。
  「止めなさい!そんなことをしても、もうこの子は助からないわ。」

  流れ出した魔力を補うために二人は自分の魔力を送っているのだ。
  だが綻びた部分を直さない限り、魔力の流出は止まらない。
  今していることは穴の開いたバケツに水を入れているようなものだ。意味がない。

  「聞こえているでしょ。止めなさい。…っつ、これは命令よ。」
  あの日から今まで一つもしなかった、命令を私はだした。

  しかし、上海と蓬莱はこちらを向いて、首を横に振るだけで魔力の供給を止めようとしない。
  まさか、この子たちが私の言うこと聞かないなんて。しかもこんなときに限って。
  「駄目よ。魔力をそんなに大量に放出したら、あなた達まで死んでしまうわ。だから、お願い、やめて。」
  もう、命令ではなく、それは懇願になっていた。それでも、二人は止めようとしない。

  私が止めさせようとしている間にも、二人の魔力はどんどん減っていく。
  そんな……駄目…よ。





  …私の説得も虚しく宙に溶け、上海と蓬莱はついに動かぬただの人形になってしまった。


  「そんな、なんで?あはは……いやあーーーーーーーーーーー!」

  これは…違うでしょ。だって変じゃない。ふふ、おかしいわよ。
  ありえない!

  「ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう」
  もういや!なんでこうるのよ。なにがわるかったの。わからない。

  頭が痛い。頭痛がする。全然考えがまとまらない。一体何が起きたと言うの?

  「はぁ、はぁ。…ふふ、そうよ。全て人形がいけないのよ。人形さえいなければ上海と蓬莱が死ぬこともなかった。」
  こんな人形さえなければ、辛いことにもならなかった…


  …憎しみの行方は決まった。  さぁ始めよう、「人形裁判」を

  私は、机から小振りなナイフを取り出して、棚に綺麗に並べられている人形の前に立った。
  そして、一番端の人形にナイフを突き立てる。
  「ふふふ、有罪。」
  突き刺したナイフに一気に魔力を込める。すると人形は風船のように爆ぜ割れる。

  あはははははははは。

  罪人は裁かれなければならない。私から二人を奪ったこの咎人たちは、当然…死刑。
  有罪…爆発    私が
  有罪…爆発    判決を下すたびに
  有罪…爆発    人形が砕け散る。

  ナイフの突き刺さる音、人形の爆発する音、私の笑い声が部屋に響く。
  なんて心地いい音色だろう。私が魔力を込めるたびに、人形の叫びが聞こえてくるみたい。

  (なんで?)と

  決まっている、私から二人を奪ったからだ。
  しかし、それを教えることすら惜しい。
  この罪人は自身の罪も知らず、己の無知だけを呪えばいい。

  私は、またナイフを突き立てる…………



  棚の人形を全て破壊した私は、最後に床に倒れたままの一体に目が止まる。
  私は残骸を踏みにじりながら、人形に歩み寄る。
  左手で拾い上げるとまだ生きていることが分かり、多少安心した。
  「ふふ、これならまだ大丈夫そうね。」
  私は言うと同時に右手に握ったナイフを無造作に振り上げる。

  トスッ。
  軽い音がして、人形の左肩から先が床に落ちたことを知らせる。
  ナイフが動く。
  トスッ。
  右足が床に落ちる。
  ナイフが…
  右手が…
  …………動く
  ………落ちる

  私は首と体だけ残った人形を見つめる。
  なんて気持ちいいのだろう。
  今この瞬間、上海と蓬莱の仇をとっている。その事実が私を満たしてくれる。
  そして、最後の一振り。
  首が床に落ちる。
  「はは、はははっ、あははははははははははは」
  このぐらいで死ぬことはない。でもそれがいい。残りわずかの命を苦しむといい。
  そのぐらいの罪をこの人形は犯したのだ。



  いつのまにか、頭の痛みもなくなっていた。
  「ふふ、今日はいっしょに寝ましょ。上海、蓬莱。ここは少し汚れてしまったわ。」
  他の人形に興味を失った私は、二人を抱いてアトリエだった部屋を出る。
  「そうだ、今日からはいっしょに寝ましょう。毎日、ずっと、ずーっといっしょよ。」
  二人は喜んでいるのか私の腕の中で囁き合っている。

  これからはずーっと…







  -4-

  「おはよう、上海、蓬莱。ほら起きて、もう朝よ。」

  「そうそう。今日からは私も家事を手伝うわ。いつも二人に任せっきりだったからね。」

  「二人とも、洗濯するときは水に気をつけるのよ。あまり濡れないようにね。」

  「ちょっと、本を読んでるんだから静かにしなさい。」

  「今日の夕飯はどうしようかしら、上海は何かいい案はない?」

  「あれ、蓬莱は?ああ洗濯物を取り込んでいるのね。」

  「ふあー、眠い。二人ともおつかれ。そろそろ寝ましょう、もちろんいっしょにね。」

  「おやすみ。」


  ・   私たちは毎日三人で笑って。
  ・
  ・   いっしょに寝て。
  ・
  ・   とても充実しているわ。
  ・
  ・   そうだ、明日は二人の誕生日。せっかくだから、あっと驚くようなプレゼントがいいわね。
  


  「それじゃあ、出かけるわよー。」

  「何してるのよ、あなた達がいなくちゃ始まらないでしょ。」

  「当然でしょ。今日は<あの日>なのよ。」

  ・
  ・   私は二人を右手で抱き、左手には一冊の魔道書を持って魔法の森を奥へと入っていく。
  ・

  「ふふ、どう? びっくりしたでしょ。この森にこんな広場があるなんてちょっと思わないものね。」

  「少し前に、この場所を思い出してね。何かに使えないかと思っていたの。丁度今日が<あの日>だったからそれで使おうと思ったのよ。」

  「ふふふ、でもプレゼントはこれだけじゃないのよ。」

  ・
  ・   私は広場の中央まで進み魔道書を開く。
  ・

  「二人とも、運がいいわよ。私が本気を出すところなんてなかなか見られないんだから。」

  「この魔法が成功すれば私達は、永遠にいっしょにいられるわ。」

  「…たとえ死でさえも、わたし達を分かつことはできない。」

  「この魔法が、私からの誕生日プレゼント。」


















      上海、    蓬莱、                大好きよ





コメント



0. コメントなし