Coolier - 新生・東方創想話

八意永琳、家出する

2022/09/10 08:07:20
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 私は今、忙しい。輝夜の手も借りたい程。そんな中、私を呼ぶ声が永遠亭に響く。
「えーーりん!」
「えーりん、お茶持ってきて。8秒で」
「...輝夜、分かっていると思うけど、この時間は忙しいから、自分でお茶を汲んできて。」
「えー、面倒くさーい」
「駄々をこねるんじゃありません。」
「はーい」
 これで終わるのなら良かったのだ。しかし、輝夜は再び私を呼んだ。
「ぎゃー!えーーりん、助けてー!」
「どうしたの?輝夜。」
「か、か...」
「か?」
「蚊に刺されたの。」
「...輝夜、蚊に刺されても私達は蓬莱人だから、感染症等の心配は必要ないのですよ。」
「で、でも...」
「でも?」
「痒い。」
「それなら、薬箱に痒み止めが入っているから、それを使って。」
「持ってきて」
「忙しいので無理です。」
「なんで」
「だから、忙しいので無理です。」
「えー、お願い。持ってきて」
「無理です。」
「お・ね・が・い♡」
「...しょうがないですね。」
「ありがとう。えーりんって便利だな」
「便利?私は道具ということですか。」
「いや、そうじゃなくて...」
「そうじゃなくて何ですか。」
「その...」
「私はお茶を汲んでくる道具なので、痒み止めを持ってくる道具なので、いなくなっても大丈夫ですよね。ということで、出て行きます。別に困りませんよね。どーせ、私なんて道具ですから。」
「えーりん、怒らないで。私が悪かったから。待って。」
 輝夜は私を引き止めたが、そんなことは構わずに部屋から出て行った。
 そして〝家出します。探さないでください。八意永琳〟と置き手紙を残して永遠亭から出て行った。

 勢いにまかせて、飛び出してきてしまったが、行く当てがない。
 そうだ。人里には色々な店があるから暇潰しになるはずだ。

 久しぶりに竹林を歩いたから、道に迷ってしまったが、なんとか人里にたどり着くことができた。
「こんにちは。今、取材してもよろしいですか?」
 突然、背後から声をかけられたので振り返るとブン屋がいた。
「はい。いいですよ」
「では早速。今日はどうして人里に来たのですか?」
「ちょっと、ショッピングに」
「そういえば、毎日がフリーダムな方や妖怪兎達は留守番ですか?」
「まあ、そんな感じね」
「そうすると、永遠亭の仕事はちゃんと廻ってるか心配ですね。」
「そうね。」
「ということで、永遠亭を取材してもよろしいでしょうか。」
「心配から、どう結びついて取材になったのかは分からないけど、いいわよ」
「ありがとうございます。では、取材に行かせていただきます。また、今度!」
「ええ、さようなら」
 そう言って、ブン屋はビュンと飛んで行った。

 しばらく人里を彷徨っていると貸本屋が目に止まった。そういえば、新薬の開発に必要な資料が足りていない。だから、ここで本を借りていこう。
 店に入ると、小柄なお嬢さんが店番をしていた。
「いらっしゃいませ。」
 店内を見渡した。かなりの量の本がある。これでは、目当ての本を探し出すまで日が暮れてしまうだろう。
「すみません、医療関係の本はどこらへんにありますか?」
「外来本はこちらに、幻想郷で作られたものはあちらにございます。」
「ありがとう。この本、借りるわ」
「はい。お値段、計算いたしますので少々お待ち下さい。」

「ありがとうございました。」
 貸本屋を出ると、その向かいにある甘味処が目に入った。
 そういえば、この前、優曇華が御手洗団子を食べたいと言っていたから、お土産に買っていくのはどうだろう。
 いや、私は家出したんだ。もう、家のことを考えるのはやめよう。
 私は、自由なのだ。時間が余る程あるのだ。なのになぜ、スッキリしないのだろう。こんなに、家が恋しいのだろう。
 そんなことを考えながら適当に歩いていると、針のように鋭い雨が視界を覆った。にわか雨だ。
 私は慌てて、近くにあった店に入った。

 どうやら、その店は蕎麦屋らしい。店内は賑わっていた。そんな中、見慣れた者が一人。輝夜がいた。なぜここに?、そんな疑問が頭に浮かぶ。
 私は、無意識に衝動的に輝夜のそばへ行った。
「輝夜?」
「!」
 輝夜は金魚のように口をあんぐり開いて私を真っ直ぐ見つめた。
「永琳?どうしてここに?」
「それはこっちのセリフよ。」
「私は...永琳を探しているうちに雨が降ってきちゃったから、ここで雨宿りしていたの...」
「そう。」
 ぷつんと会話が途切れてしまった。私は気まずかったが、今、仲直りする気にはならなかった。
 一頻り、沈黙した後、その重い空気を一掃するように、輝夜が口を開いた。
「あのさ、永琳、ごめんね。」
「え?」
「...ごめんなさい。」
 これは、仲直りしようということだろうか。まさか、輝夜から謝ってくるなんて思ってもみなかったから、少し動揺してしまった。
 しかし、冷静に落ち着いて考えると、仲直りしたい。
「こちらこそ、忙しくて輝夜に八つ当たりしてしまったわ。ごめんなさい。」
 口に出して言うのは、思ったより簡単だった。ごめんなさい。仲直りできる魔法の言葉。これまで私は意地になりすぎていたのかもしれない。

 それから、会話をして、蕎麦を食べて、帰路についた。

「そういえば、どうして私が人里にいるって分かったの?」
「ブン屋から聞いた。話が変わるんだけどさ、永琳、私ね、今日からお手伝いしようと思うの。皿洗いとか掃除とか」
「じゃあ、家に帰ったら、鈴仙の仕事を手伝ってやってくださいな」
「うん。あと、自立したいなって思っているの」
「いいんじゃない?でも、困ったことがあったら、いつでも、頼って欲しい。いい?」
「うん。わかった」
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
前に頂いたアドバイスをもとに作りました。改善点などがありましたらコメントして下さると、ありがたいです。
まとまとめ
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コメント



0.50簡易評価
2.70東ノ目削除
起承転結を意識されたようで、前作までと比べれば物語としての完成度が随分と上がったと思います。強いて言えば承の部分、永琳が一人で過ごすシーンのボリュームがもう少しあるとなお良かったと思います
個人的には起承転結という骨組みのそれぞれを膨らませる表現という肉付けが次の課題だと思いますが、ここに関してあまり気の利いたことが言えないですね……すみません
3.90奇声を発する程度の能力削除
良かったです
4.100名前が無い程度の能力削除
一度は喧嘩しても仲良しに落ち着くの良いですね
5.90ヘンプ削除
面白かったです。永琳が家出して、仲直りするまで良かったです。
6.100南条削除
面白かったです
二人が仲直り出来てよかったです
解決するところまで書ききっているところがいいと思いました
7.無評価夏後冬前削除
手っ取り早く上手になるためには、文章・ストーリー・キャラの3つの観点で考えると良いです。

文章:作者の頭の中のお話を、読者に過不足なく伝えられる文章になっているか?
→今回の作品については文章量が足りないな、と思いました。会話のやり取りだけでなく、話している人物がどのような行動・表情を取っているのかなど、書き手のイメージをできる限り読み手に伝わる形に成型すると、文章ならではの面白さの味を出せるように思います。

ストーリー:読者を引き付けられるような物語になっているか?
→今回のお話は、1.永琳が輝夜にひどいことを言われ、家出を決意→2.出先で偶然再会した輝夜と仲直り。という流れかと思います。事件発生→解決の展開は王道ですが、ちょっぴり薄味に感じます。長年輝夜を見てきた永琳が、輝夜に本気で怒るほどの出来事とはどんなものか? それを言ってしまった輝夜がどんな必死な思い・あるいは感情をもって永琳を探しに来たのか? というディテールを意識して物語を膨らませるor永琳・輝夜以外の登場人物を、永琳の家出という事件に介在させるなど、物語を魅力的に膨らませる方法はたくさんあるはずです。

キャラ:読者が好きになるようなキャラクタ造形が出来ているか?
→行動や発言、考え方や哲学など、読者にキャラクタの良さを伝えるための手段はたくさんあります。(例:可愛い、かっこいい、憧れる、頭がいいと感心する)
加えてここは東方二次創作が多く集まるところですので、読み手は出てくる東方キャラをある程度知っている=それなりにキャラへの理解・解釈があるので、そこに訴えかけるようなキャラ造形ができると良いと思います。

頑張ってください。