Coolier - 新生・東方創想話

東方宴会談

2021/03/13 12:55:30
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沢山の人妖たちが騒いでいた。




それは、賑やかな宴会の夜だった。


何だか、ガラの悪いやつに絡まれた。

「おーら、半人アンタも飲めよ」

「いえ……私お酒、弱いんで」

妖夢は宴席の隅っこで、誰にも気づかれないように、1人でひっそりと座っていたのだが、運悪く、この2人の視界に入ってしまったらしい。
そう、この2人。星熊勇儀に、伊吹萃香。
最悪な鬼2人。しかも、宴会の真っ只中で見つかるとは。本当に運が悪い。

「あたしらの酒が飲めねぇのかい?」

「そ……そんな訳では……」

逃げようにも、がっしりと肩を組まれてしまっているので、逃げられない。
どちらも鬼だけあって、力もそれなりにある。
どちらか1人でさえ、太刀打ちできないのに、二方向から肩を組まれてしまっては、たまったもんじゃない。

御手洗いを理由に逃げると言う手もあるが、そんなものが鬼に通用するとも思えない。
つまり、詰みだった。

「こーなったら、力ずくで飲ませるしかないねぇ」

「そーだな」

そう言うと、勇儀が酒を注いだコップを、妖夢の口にぐいっと持ってきた。
突然の強行突破に、妖夢は思わずたじろぐ。

「ちょ……あの、私は…………」

「こら」

後ろから、そう、落ち着いた声が飛んできたかと思えば、勇儀の持っていたコップが何者かによって、ひょいと取り上げられた。
妖夢はびっくりして、思わず後ろを振り返った。
妖夢たちの後ろで、呆れたような眼差しで見ていたのは、上白沢慧音だった。

「嫌がっているのに無理やり飲ませるとは、何事だ」

慧音は、2人のことをじろっと見た。
妖夢がほっとしていると、ついでに自分もじろりと視線を向けられたので、思わずビクッとなった。

「ほら、散った散った。酒が飲める奴なら、他にもいっぱい居るだろう」

慧音がそう言いながら、しっしっと手を振るので、勇儀と萃香は不服そうな顔をしながら、しぶしぶ散っていった。

助かった。妖夢が心の底から慧音に感謝していると、「よっこらせ」と言いながら、慧音が横に座り出した。
そして、妖夢のことを呆れたように見た。
思わず、妖夢の背筋がピンと伸びた。

「お前も、もっとはっきり断れ。あんなのでは、鬼はそう簡単に引き下がらないぞ」

「はい…ごめんなさい……でも、折角お誘いを受けたのに、それを無下にしてしまうのは申し訳なくて…………」

「申し訳ない…………か、なら、あれを見てみろ」

慧音が前方を指さした。
そこには、三魔女と鬼2人が居た。
正しくいえば、鬼2人が三魔女に酒を催促していた。ちなみに、三魔女とは魔理沙、アリス、パチュリーの3人のことだ。

「もう、次の相手に絡んでいるだろう」

「……止めなくて良いんですか」

「あの3人だからな、心配はない」

そう言うと、慧音は妖夢の方を見た。
そして、

「お前が思うほど、相手は気にしちゃいない。お前が断ったら、次の相手を探しに行くだけだ。」

と言った。

「あんまり、深く考えすぎるなよ」

そう言い残し、慧音は席を立った。
妖夢は、笑顔で「はいっ!」とだけ答えた。
そして、自分も慧音のように強く生きていきたいな、と、心の中で密かに思うのだった。










それは、賑やかな宴会の夜だった。


ジャカジャカと、煩いくらいに賑やかだった演奏が終わり、ルナサ、メルラン、リリカの3人は、とても楽しそうにしていた。
「素晴らしい演奏だった」「流石プリズムリバー三姉妹」と、周りの人妖たちから褒められ、とても嬉しそうに笑っていた。

だがそんな中、堀川雷鼓は部屋の片隅で、ぽつりとうずくまっていた。

ルナサ、メルラン、リリカの3人は、各自いろんな人妖たちから声を掛けられ、とても嬉しそうにしている。
それなのに、一緒に演奏していたはずの雷鼓には、一声もかからない。
ルナサのバイオリンに、メルランのトランペットは、曲の主旋律を見事に美しく奏でていた。リリカのキーボードは、副旋律とはいえ、良きアクセントになっていた。

だが、やはり実績を誇れるのは、音程を持つ楽器だけなのだろうか。
雷鼓の愛用の太鼓も、盛り上げるには十分な役割を持っていたはずなのだが、何故、こうにも評価して貰えないのか。何故、自分はこんなに影が薄いのか。

雷鼓は落ち込んでいた。
自分だけが仲間はずれになってしまっているのが、哀れで、醜くて仕方がなかった。
もういっそ、この宴会会場である博麗神社から、出ていってしまおうかとも考えた。

そんな時だった。

「お姉さん、かっこよかったわよ」

うつむいていた雷鼓にも、その声が自分に対して掛けられたものだ、ということは分かった。
雷鼓はゆっくり顔を上げた。
そこに居たのは、氷精チルノだった。
冷気を帯び、宴会の中でも涼しそうな雰囲気を見せる妖精。

雷鼓は、ぽかんとしていた。

「あんなに楽しそうに太鼓を叩く人、初めて見た」

チルノにとっては何気ない言葉だったかもしれない。
だが、その一言は、雷鼓の心を大きく動かした。

「私……楽しそうにしてた?」

「うん」

そして、チルノはニコッと笑った。
雷鼓は嬉しさで、泣きそうだった。だが、一度チルノに問いかけてみる。

「私は太鼓より、トランペットやバイオリンのお姉さんの方が良かったと思うけど?」

勿論、そんなこと思っていない。
いつだって、自分の楽器が一番だ。それは、騒霊もみんな同じはずだ。
雷鼓は、あえてチルノにそんな質問を投げかけた。

チルノから返ってきたのは、意外な答えだった。

「確かに、トランペットとバイオリンは一番迫力があって良かったわね」

ああ、やっぱりだ。
そりゃあ、主旋律が褒められるのは当然だろう。キーボードはちょっと違うが、それでも音程というものを持っている為、太鼓より褒められてもおかしくない。

チルノの言葉は、まだ終わりではなかった。

「でもね、頑張っていたのは、4人とも同じでしょ?ただ、楽器が違うだけで」

チルノの言葉は、まだまだ続いていく。

「お姉さんも頑張ってたのに、誰も何も言ってあげないから、アタイが来てあげたの。これで、あの3人と同じになるでしょ?」

付喪神である雷鼓が、妖精に心を動かされるなんて、滅多にない話だ。
だが、チルノの言葉はあまりにも純粋で、他意が感じられなくて。

「それに、かっこよかったってうのも本当だしね!」

チルノがニッコリ笑った。
雷鼓も、にっこり笑った。

「ありがとう、妖精さん。元気が出たわ」

皆を平等に評価する。
チルノは、そんな、優しい心を持った妖精だった。










それは、賑やかな宴会の夜だった。


フランドールは、部屋の隅っこで皆のことを見ていた。
姉、レミリアがあまりにも楽しそうに身支度をするものだから、好奇心でついて来てみたら、こんな風だ。
よくよく考えてみれば、自分には話せる人は紅魔館以外ではあまりいなかったんだ……と、今更後悔する。

幻想郷の住民の名前や、顔くらいなら大分覚えている。
ただ、仲良くする人がいない。それだけだ。

フランは、机に置いてあった紙皿に目をやった。
そこには、見慣れない菓子が並んでいた。

いつもティータイムの時のお菓子は、ケーキや、クッキーなどの甘いものがメインだ。
だから、塩味やしょうゆ味のお菓子なんて、見たことも聞いたことも無い。

ふと、好奇心から、目の前にあった、小さめの煎餅に手を伸ばす。
そして、手に取ったそれをじろじろと見ると、恐る恐る口の中に運んだ。

可もなく不可もない味。
それに、こんなに硬いお菓子を食べたのはいつぶりだろう。
金平糖あたりなら、食べたことはあるが……。

「フーラーンさんっ」

唐突に声をかけられ、驚く暇も与えられず、隣に何かが座った。
横を見ると、そこに居たのは射命丸文。幻想郷の新聞記者だ。
同時に烏天狗でもあり、かなりの齢を生きているため、大分強いのだと、この前レミリアが言っていたのを、フランは思い出した。

「みんなと話さないの〜?」

文が簡単に言ってくれる。
フランは、少し不機嫌そうに顔を背け、

「一緒に話す人なんて、私には居ないわ」

と言った。
普段、幻想郷中を飛び回り、多くの人妖たちと深い関わりを持っている、この烏天狗からしたら、今のフランはどう見えただろうか。
そんなモヤモヤした空気を吹き飛ばすかの如く、文はにこっと笑顔を見せた。

「じゃあ一緒に話そうか!」

フランがぱちくりと瞬きをした。
だが、すぐ、またさっきの顔に戻った。

そして、愚痴を零すかのように、フランは話し出した。

「私ね、このお菓子初めて見たの。今、初めて知ったの」

「そうなんだ!
これは、『せんべい』っていってね、お餅を揚げてできたお菓子なんですよ〜」

「せん……べい?よく分からないけど、すごくおいしい」

フランはそう言うと、今度は塩煎餅を口に運んだ。
そして、オレンジジュースでそれを流し込むと、文のことを改めてじっと見つめた。

「私、ずっと地下室にいたから、外の世界のこと、よく知らないの」

フランがしんみりとそう言うので、文は黙って聞いていた。

「それでね、幻想郷中を飛び回るあなたに憧れるわ」

「私……ですか」

フランは憧れていた。
幻想郷中を飛び回り、住民たちに色々なことを伝え、沢山の人妖たちと深い関わりを持っている新聞記者、射命丸文という存在に。
箱入りな自分とは、まるで訳が違うと。

「そうですね、私は幻想郷中を飛び回っています。
そして、皆さんに沢山の情報をお伝えしているんです。本当に楽しいですよ!」

「そうなのね、羨ましいわ」

「じゃあフランさん、明日から、夜になったらお部屋のテラスで待っていて貰えますか?」

唐突な提案だった。
フランが何故なのか聞くと、文はこう答えた。

「私、本当は新聞に書ききれないほどの情報を持っているんですよ。
だから書ききれなかった分、フランさんにだけ特別に教えてあげます。この世界は面白いことがいっぱいだってことを、沢山教えてあげますよ」

文は、にこっと笑った。
フランは、ぽかんとしていた。だが、すぐに嬉しそうに笑った。

「ありがとう、あや!」

宴会の中、会場の片隅で交わされた、小さな約束だった。










それは、賑やかな宴会の夜だった。


霊夢は、半ば強引に呼び出された永琳と一緒に飲んでいた。

なんといっても宴会なので、酔いつぶれは当然大量に現れる。
その為、医者であるのをいいことに、永琳はこうして毎度毎度呼び出されるのだ。全く、彼女としてもいい迷惑だろう。

そして、酔いつぶれ共は、いつもいつも霊夢の元へやってくる。
ちゃんと医者が居るというのに、何度言っても主催者である霊夢の元へとやって来るのだ。
自分も、喧嘩を止めたり、飲み物を追加してきたりと、やることが多くて忙しいのに、迷惑と言ったらありゃしない。
そこで霊夢は、宴会中は永琳とくっついていれば良いのではという考えに至った。そうすれば、自分の所に酔いつぶれがやって来ても、すぐに対応してもらうことが出来る。

宴が始まってから数時間の時が流れた頃。
最初の酔いつぶれがやって来た。

「霊夢〜」

霊夢たちの元にやってきたのは、ぐぅぐぅ眠る魔理沙を引きずっているアリスと、パチュリーだった。

「魔理沙ったら、まだ全然飲んでないのにもうダウンしちゃって」

「悪いけど、頼んだわよ霊夢」

「あーもう!」

霊夢は、バンッ、と、机を叩いた。
そして、永琳の方を指さし、

「私じゃなくて、こいつに頼んでくれるかしら?」

と言い放った。
突然の丸投げに、永琳は思わず硬直する。アリスもパチュリーも、固まっていた。

「じゃあ……頼めるかしら、永琳」

「ええ…………分かったわ」


魔理沙は永琳の膝で、スヤスヤと眠っていた。
永琳が、寝ている魔理沙に、なんとか水を飲ませようとしているのを、霊夢はじーっと見つめていた。魔理沙の口に、コップの水が少しずつ流し込まれていく。

「永琳……酔いつぶれは、頭を上にしない方がいいって、聞いたことがあるけど」

霊夢は、遠慮気味にそう言った。
すると永琳は、意外なことを口にした。

「この子、ただの寝不足だから大丈夫よ」

霊夢がぽかーんとしていると、永琳はつらつらと話し始めた。

「この子、酔ってなんていないわ。
さっきの魔法使いも『全然飲んでない』って言っていたし、顔もさほど赤くない」

言われてみれば確かに。と、霊夢は思う。
だが、どうしてそのことを知っているのだろう。魔理沙が寝不足だなんて、誰も言っていないのに。

「どうして寝不足だなんて分かるの?」

気づいたら、霊夢の口から言葉が漏れていた。

「射命丸の情報網は凄いのよ」

永琳の言葉に、霊夢は驚くほどすんなり納得した。いや、恐らく幻想郷の誰もが簡単に納得するだろう。
その時、寝ている魔理沙が急に笑いだした。

「へへ……へへへへっ」

一体どんな夢を見ているのだろうか。
笑い方が何とも気持ち悪いが、普通に可愛いので、霊夢は許すことにした。

「全く、よく毎回こーゆーのの世話なんか出来るわね……」

呼び出している張本人が、とても偉そうなことを言うので、永琳は少し半眼で見つめる。

「ねえ、永琳はどうして医者になろうと思ったの?」

それは、唐突な質問だった。
永琳は、少しだけ考え込んでから、こう言った。

「月でいろいろと究めてきたから……っていうのが一番かしらね。それに……」

永琳は、にこりと笑った。

「長い長い、退屈な人生の中だと、患者さんの笑顔が割と、生きがいだったりするの」

それは、不死者故の言葉だった。
自分とは比にならないほどの、長い長い時間を生きてきた者が発した一言は、霊夢の心を大きく動かすのに、十分だった。
自分の言葉とは、重みが違う。長い年月の知識や経験、そして苦労などの、沢山のものが込められた、その一つの言葉は、永琳にしか生み出せないものであった。

「そう……」

霊夢は、空になったコップに、近くにあったりんごジュースを注いだ。
永琳が微笑みながら、魔理沙の頭を優しく撫でると、魔理沙はくすぐったそうに笑った。
その時、部屋のど真ん中で、ドォンと、物凄い音が響いた。周りの人妖たちが、一斉に振り返る。

「今日こそ決着をつけようかぃ、萃香ぁ……」

「ああ、望むところだ……勇儀」

またか……。霊夢は思わず頭を抱えた。
宴会が行われると、この2人の喧嘩は必ず起こる。毎度毎度、本当に止めるのが大変なのだ。
だが、今日は違う。

「いくぞ!ミッシングp……おわっ!?」

「はいはーい、そこまでね」

必殺技をかまそうとした萃香を、霊夢が背後から、両手で抱えあげた。
そして、受け止める気満々だった勇儀は、永琳に背後から両腕を、抱えあげるように、羽交い締めされていた。

「アンタらに暴れられると、うちの神社が被害に遭うの!悪いけど、ここまでにしといてくれるかしら」

霊夢が一喝。
またまた怒られ、鬼2人はがっくりと肩を落とし、散っていった。

そそくさとさっきの席に戻り、魔理沙の頭を再度膝にのせる永琳と、部屋の中央で仁王立ちする霊夢を見ながら、周りの人妖たちは「このコンビ、最強なのでは」と心の中で拍手するのだった。










それは、賑やかな宴会の夜だった。


何やら可愛いのが、こちらを物凄い見てくるので、幽香は思わず声をかけた。

「どうしたの?地底の妖怪さん」

「妬ましい……」

パルスィは、物凄い上目遣いで、幽香のことをじろじろと睨んでいた。
その背景には、「パルパルパル……」と、謎の効果音が浮かび上がっていた。

幽香は思わず、クスッと笑う。

「妬ましいの?私が?」

「妬ましいわ……」

「そう、妬ましいのね」

幽香は、突き放すようにそう言った。
すると、パルスィは、さっきよりもものすごい剣幕で、幽香のことを睨みつけた。

「さらさらな髪が妬ましい……」

「私も、あなたのふわふわな髪が妬ましいわ」

幽香の言い返しように、パルスィは思わず固まる。
だが、負けてられないとばかりに、言い返した。

「綺麗な顔立ちが妬ましい……」

「私も、あなたの可愛い顔が妬ましいわ」

「色気のある声が妬ましい…………」

「私も、あなたの澄んだ、涼しい声が妬ましいわ」

「もうっ!!」と、パルスィは机をバン、と叩いた。
そして、幽香のことを再び睨みつけた。

「何でアンタはそんなに言い返してくるのよ!
私が誰のことを妬もうと、私の勝手でしょ!!」

「そうね」

幽香の落ち着きぶりに、パルスィは「うぐ」……と、言葉に詰まる。
幽香はそんなパルスィを見ながら、ふふんと笑って見せた。

「あなたにも、私にはない魅力が沢山あるってことなのよ。
もっと、自信を持ちなさい?」

幽香は、凛とした表情で、そう言った。

「言い負かす力が妬ましい…………」

パルスィは赤面しながら、その場で項垂れた。










それは、賑やかな宴会の夜だった。

だが、スキマ妖怪八雲紫は、会場である博麗神社の屋根の上で、ひとり、月を見上げていた。
優しい夜風が、大木を微かに揺らす。
下から聞こえてくる、騒がしい声が、心地良い。
特に皆と群れることもなく、ひとりで月を見上げる。宴会が行われる度、そうだ。
元々、人混みに混ざるのはあまり好きではない。

「そんなとこで何やってんの?」

途端、左側から声がした。
紫がそちらに目をやると、そこにはお酒を持った霊夢が居た。

「別に何もしていないけど」

紫はそっと目を伏せ、再び前方を向いた。
すると、霊夢は紫の方へと歩み寄った。そして、紫の隣に腰をおろした。

「はぁー、涼しいわ。酔い覚ましには丁度良い風ね」

そう言い、霊夢は盃に酒を注ぎ始めた。
そして、それを半ば強引に、紫に渡した。

「アンタも飲みなさい。これ、そこまでアルコール強くないから」

そう言い、霊夢は自分の分も注ぎ始めた。
思わず、紫はくすっと笑った。

「良いのかしら。博麗の巫女が、宴会ほったらかしにして」

「良いのよ、永琳が居るから。
あいつ、酔いつぶれの対応だけじゃなくて、無駄に力も強いから喧嘩も止めてくれるのよ」

霊夢は得意気に笑った。
紫も、「永琳もいい迷惑ね」と言いながら、くすくす笑った。

「紫は、何で宴会に入ってこないの?」

霊夢があまりにも真剣に、そう聞いてくるものだから、紫は

「大妖怪である私が、人妖たちの輪の中に入れる訳がないわ」

と言った。
あながち間違いではない。だが、それを言ってしまったら、幽香などの妖怪が宴会に参加していることの説明がつかない。
霊夢は、半眼で紫を見つめた。

「本当のところは?」

「酔っ払いに絡まれたくないから、かしらね」

「やっぱり」と、霊夢はせせら笑った。
本当にそうだ。酔っ払い達に絡まれると、いくら大妖怪と言えど、かなり面倒くさい。
いつもいつも絡まれている妖夢も、大変だな……と、霊夢はくすっと笑った。
つられて、紫も笑った。

途端に、下から物凄い音がした。
そして、その直後に、勇儀と萃香だと思われる、怒号の声が聞こえてきた。
さっき自分たちが止めたはずなのに、懲りずにまた喧嘩を再開したらしい。

だが、そこに再び、物凄い音が響く。
鬼2人の声が完全に止む。だが、その代わりに永琳と思われる、「いい加減にしなさい!」という、怒声が聞こえてきた。
そこで霊夢たちは、力ずくで止めに入ったんだな……と悟る。

「ふふっ」

騒がしい人妖たちを他所に、紫は笑った。
こんなに賑やかなのも悪くない、と。

霊夢もそんな紫を見て、微笑んだ。
そして、こんな時間がずっと続けばいいのに、と、心の中で密かに願うのだった。
















それは、宴会後の静かな夜だった。


先程まで騒がしかった神社内は、完全に静まり返っていた。
騒ぎ疲れた人妖たちは、完全に眠りに落ちていた。

それぞれの机に突っ伏して寝ている、妖夢やフラン。

壁にもたれ掛かり、手を繋ぎながら寝ている、チルノと雷鼓。

騒ぎ疲れ、床に仰向けで寝ている、勇儀や萃香。

壁にもたれ掛かり、魔理沙を膝にのせたまま寝ている、永琳。

ひんやりした床に、うつ伏せて寝ている、慧音やパルスィ。

そして、何故か背中合わせで寝ている、幽香と文。

静まり返った神社内は、誰が消したのか、先程までついていた明かりが消えていた。
だが、疲れて眠りこけている彼女たちを、全開になった襖から差し込む月光が、明るく照らしていた。
それでも、疲れきった彼女たちは、そんな明るさでも起きることはない。


神社の屋根の上。
下の人妖たちと同様、そこには眠っているふたつの影があった。

片腕をお腹の上にのせ、仰向けに眠っている紫。
そして、そんな紫にくっつくように、体を横に向け、眠っている霊夢。
どちらも、満足そうに、幸せそうに、眠っている。






それは、美しい幻想の夜だった。
いろんなキャラを組み合わせて、珍しいカップリングいっぱい作りたい!

……という思いから生まれたのがこのお話。


宴会ならいろんな人妖たちを組み合わせられるかな……と思い。

慧音×妖夢
雷鼓×チルノ
フラン×文
霊夢×永琳
幽香×パルスィ
そして最後は定番のゆかれいむ。

雷チルとか本当に新鮮だし、永琳と霊夢なんて組んだらもう幻想郷最強じゃないですか(?)


各々が思いを寄せ合う宴会。



読んでいただき、ありがとうございました!
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コメント



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1.90奇声を発する程度の能力削除
雰囲気も良く面白かったです
2.100名前が無い程度の能力削除
ゆかれいむ最高です。他の組み合わせも珍しい感じ、良きでした。
4.90夏後冬前削除
サクサク口当たり軽くひとつひとつの小話を読んでいけた感覚がちょうどよく感じて素敵でした。
5.100Actadust削除
宴会の、どこか取っ散らかった賑やかさみたいなのが出ていていいですね。お決まりのキャラ同士じゃなくて珍しい取り合わせだからこそ、その賑やかさが一層引き立っているように思えます。楽しませて頂きました。
6.100南条削除
面白かったです
とても賑やかな宴会でした
読んでいるこちらまで楽しくなってきてしまいました
とてもよかったです
8.80名前が無い程度の能力削除
宴会の空気がよく出てて良かったです