Coolier - 新生・東方創想話

Eternal sinner

2021/03/08 17:51:47
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私は姫様が大好きだ。

そりゃあ、姫様のことが好きな者なんて、月には数え切れないほど沢山居る。
だが、人によっては「好き」の意味も少し違ってくる。

地位や権力しか見えていない者。外見しか見ていない者。
そして、輝夜という存在そのものを愛している者。

この場合、私は後者だ。







月の都が創設されてから、どれほどの月日が経っただろうか。

私は、月の賢者のうちの一人。八意永琳。
月の頭脳などとも呼ばれている。

八意家の中でも、私の能力は随分と優れていたようで、頼ってくる者も沢山居た。
だが、あくまでもそれは、私の技術力や知能を求められているだけのこと。
私自身を見てくれる者など、そうそう居なかった。


此処は、月の中でも最大の大きさを持つ建物。
月を統べる主君である、『皇』の住まう場所。

「八意様、これは何処に置いておけばよろしいですか?」

「そこの棚に置いておいて」

私は、薬師の集団のトップに立つほどの才能と実績を誇り、こうして頼られることも多くあった。
だが、例えるならば、私はコンピュータの様な人間だ。
皆から能力を認められ、豊富な知能も持つが、その分感情というものが欠けているらしい。
涙を流したことなんて1度もないし、逆に笑った姿を他人に見せたことも殆どない。
この、冷徹な性格こそが、恐らく「月の頭脳」と呼ばれる理由のひとつだろう。

そうして、皆から畏れられ、皆から謙遜されてきた。

……だが



「永琳!」

私の名を呼ぶ、柔らかく鋭い声。
私は、くるりと振り返る。そこでは、まだ幼い少女が私のことを見上げていた。
何故か、息を上げている。走ってきたのだろうか。

「雪が降っているわ」

その少女、姫様は、嬉しそうに笑っていた。

月では、雪なんてもの滅多に降らない。
なるほど、珍しいもの好きな姫様が喜ぶ訳だ。

「待ってください、この時間は勉強中ではありませんでしたか?」

と、私が問いかけると、姫様はぷくーと頬を膨らませ、不満そうな顔をした。

「だって、雪なんてそうそう見れないから……」

子供はいつもこうだ。
こうやって拗ねて、我儘を押し通そうとする。

「また何年かすれば、また降りますよ」

と、私が言うと、姫様はじろっと私のことを見上げた。

「そんな無表情で言われても、説得力ないわ」

困った。私なりに、柔らかい表情を作ったつもりだったのだが。
こうなったら、無理やり連れ戻すしかない。

「ちょっと失礼しますね」
「ちょ、えいり…………きゃっ!?」

私は姫様の脇に手を忍ばせ、そのまま抱き抱えるようにして持ち上げた。
まだ幼いので、持ち上げるには軽い。

「さ、授業へ戻りますよ」

自分の仕事では無いが、私はじたばた暴れる姫様をそのまま部屋まで連れて行った。




姫様は、月の中でもかなり偉い立場のお方だ。
それもそのはず。なんと言っても皇の娘なのだから。

恐らく、姫様は大人になれば、女皇になられるだろう。
現に、今の皇帝が、次期の皇の役職を姫様に継がせる気満々なのだから、仕方ない。

だが




「えーりんっ!」

何故、そんな方がこんなにも私に興味を持つのだろうか。分からない。
姫様は今日も、私の研究室の扉を少し開け、その隙間から覗いていた。
なんて反応すれば良いかも分からない。
だから、

「こんにちは、姫様」

とだけ言っておく。
だが、その度に姫様は、不満そうな顔をする。

「表情が硬いわ」

そう言いながら、姫様はすたすたと此方に歩いてくる。
そして、私の目の前にたったと思えば、無遠慮に私の頬をぐにぐにと引っ張ってくるものだから、つい涙目になる。

「痛いです」

「そんな顔してるのがいけな............あっ」

何を思いついたのか、姫様の手が私の顔から離れる。

「それなら、私が可愛くしてあげるわ」

そう言うと、姫様は私の背後へ回りこんだ。
そして、私の髪を一本にまとめていた髪留めを、一気にほどいた。

「な、何を.........」

「じっとしてて頂戴」

そして、フンフンと鼻歌を歌いながら、私の髪に何かしら手を加えていく。
しばらくして、姫様は「できたわ」と言い、私の髪から、ぱっと手を離した。

私が自分の髪を触ってみると、何だかごわごわしているのが分かった。見てみると、そこには1本の大きな三つ編みが施されていた。
先は、リボン状になった髪留めで留められていた。

「これは.........」
「どう?可愛いでしょう」

今まで、こんな洒落た髪型なんてしたことがなかったためか、何だか私は落ち着かなかった。
だが、たまにはこんなのも良いかも知れない。
私の頬が自然と緩む。姫様は、にこにこしていた。




その翌日から、私はその髪型で過ごすようになった。
別に、姫様の為という訳では無い。三つ編みが好きという訳でもない。
ただ、何故かこの髪型が気に入ったのだ。

姫様は、その様子を嬉しそうに見ていたようだった。




「家庭教師......?」

本当に、唐突な話だった。
私は、姫様専属の家庭教師を任されたのだ。

それが同僚や、下っ端からのお願いだったなら、まだ良かった。
だが、依頼主は皇帝だったのだ。
どうにも、「賢い八意様に是非頼みたい」との事。

集団のトップとはいえ、私は只のしがない薬師に過ぎない。そのため、皇からの依頼を断れる訳がない。



その日から私は、姫様の家庭教師になった。


「嬉しいわ、永琳が勉強を教えてくれるなんて」などと、最初は喜んでいた姫様だったが、そのうち「永琳の授業は難しくて分かり辛いわ」と言うようになっていた。
だが、私とて、皇からの頼みなので、引き下がる訳にもいかない。

日に日に姫様の考えることも、少しずつ分かるようになり、姫様からの文句も少なくなっていた。

「姫様、分からないところはありますか?」

と、私が問いかけた時。
それは、不意打ちの一言だった。

「永琳、最近何だか明るくなったわね」

思わず私はその場で固まる。

「あなたって、本当に笑顔がよく似合うのね」




嬉しかった。
初めて、自分が人として、認められたような気がした。
生まれてからの長い間、私は心の底から嬉しいと感じたことなんて、殆どなかった。
平和だからこそ、退屈な日々。

そんな中で、姫様の何気ない一言は、私の心を大きく動かした。

ああ、どうしよう。
動揺が抑えきれない。

夜中の研究室で、私は1人で昼のことを考えていた。
本当は考えるつもりなんて微塵もない。
だが、他のことを考えようとしても、どうしてもあの一言に邪魔されてしまうのだ。

───笑顔がよく似合う

この言葉で、今までの自分が報われたような気がした。
救われたような気がした。




「永琳、おはよう」

「おはようございます、姫様」

「うん、いい顔」

そう言われ、私はドキッとした。それを見て、姫様がにっこりと笑った。
自分では特別意識したつもりはなかったのだが、今の私は自然と笑っていたらしい。
自分でも驚きだった。




「永琳、死ってなあに?」

その質問は、あまりにも唐突すぎた。
私は思わず、言葉を失ってしまった。

「死の意味くらい分かっているわ。ただ、自分が死ぬって、どういうことなんだろうって...」

「私にも、よく分かりません」

私がこう言うと、姫様はにこりと笑った。

「ごめんなさい、貴女もまだ生きているものね」

その笑顔は、どこか悲しそうで。
私は、そのまま優しく姫様を抱きしめた。

「永......琳............?」

「大丈夫です、此処に居る限りは、遠い未来の話ですから」

私がそう言うと、姫様は今度は安心したように笑みを見せた。

「そうね、ありがとう」




それから、数年の時が流れた。

あれからも、しばらくは、姫様は私の所へ暇つぶしに来てくれた。
私も、勉強を教えるために、姫様の所へと通い続けた。
だが、そんなぬるま湯に浸かったような暖かい時間は、そう長く続くものではなかった。

皇から、姫様の教育係は他の者に任せると告げられたのだ。
だが、決して私が気に入らなかった訳ではない。
ただ、長い間、姫様の為に授業を開いていた私を労わってくれたのだ。

私は、叶うのならばずっと姫様と一緒に居たかった。
だが、皇という存在からの命令には、ただ、「御意」と答えるしかなかった。

やがて姫様は研究室に来なくなった。
何故なら、姫様だって1人の月人だ。大人になっていくにつれ、やることも増えてくる為、自由な時間も少しずつ減っていくのだ。
姫であれば尚更のこと。

私も、仕事に追われていた。
だが、精神を削るほどではない。ただ、今までと何も変わらない生活。
ただ、姫様が来なくなっただけ。それ以外は何も変わらない。

だが、やはり何か足りない。

私をここまで変えてくれたのは、紛れもなく姫様なのだ。

私は、姫様と一緒に居たかった。


私は、姫様に恋していた。






「永琳」

あれから何年経っただろうか。
既に私のことは忘れられているだろうと思っていた頃、姫様は、再び私の研究室を訪れた。

私は驚きを隠しきれず、つい勢いよく立ち上がった。椅子がガタンと鳴った。

姫様は、最後に会った時と比べると、確実に成長していた。

背中ほどまでの長さだった髪は、すっかり伸びて、くるぶし辺りまで来ていた。
私の背丈の半分ほどだった身長も、すっかり伸びていた。
愛らしかった、あの丸っこい目は、端が少し釣り上がり、キリッとした眼差しへと変化していた。

なにより、数年ぶりとはいえ、姫様に会えたことがとにかく嬉しかった。

「久しぶりですね、姫様」

高ぶる感情を抑え、私は慎ましやかに挨拶をする。
すると、姫様はにこりと笑った。その顔に、前までの無邪気さは無かった。
ただ、その笑顔は凄く美しかった。
もうあと数年もすれば、月で1番の美人さんになるだろう。

「それにしても姫様、ここに居て大丈夫なのですか?お忙しいと伺っていますが」

「久しぶりに長い休憩時間ができたから、来たの。ずっと会いたかったわ」

姫様の言葉に、思わず動揺する。
会いたかった。私も、ずっと姫様に会いたかった。

「……あのね、永琳」

姫様が遠慮がちに、私の名を呼ぶ。

「その…………不老不死の薬って、作れないかしら」




今、姫様はとんでもないことを言ってしまった。
そう、本当にとんでもないこと。

不老不死になる薬……その名も、「蓬莱の薬」なるものは確かに存在する。
だが、その薬は、飲んだ者を不老不死にするのは勿論、穢れさえも纏わせてしまうのだ。
そう、穢れなき月の都では、蓬莱の薬の服用は、最も重い罪となる。

姫様は、それを分かって言っているのだろうか。

「姫様、その薬をどうするおつもりですか」

私は静かに、冷たく、姫様にそう問いかけた。
今まで姫様を甘やかし、いろんなことを許してきたが、流石にこれを聞き流すことは許されない。
だが、姫様は一切の恐れも見せず、真っ直ぐに私を見つめてきた。
その目には、強い意志が宿っていた。

「飲むのよ」

今、姫様ははっきり言い切った。
「蓬莱の薬を飲む」と。
自ら重罪を犯すと。

その意思は、紛れもなく本物だった。






私は馬鹿者だ。大馬鹿者だ。
今、月の都は騒然としている。何故なら、皇帝の後継ぎがほぼ確定していた、あの姫様が「蓬莱の薬」を服用してしまったから。

遂に、姫様は不老不死になってしまったのだ。
姫様は、穢れてしまったのだ。

なぜ私は、あの時、蓬莱の薬を作ってしまったのだろう。
何故、姫様にもっと強く言えなかったのだろう。
これ程までに自分を恨んだ日は無かった。



姫様は、処刑された。だが、当然死ななかった。
数々の方法で殺され続けた。だが、首を切り離しても、心臓を貫いても、姫様が死ぬことはなかった。
そして、ある日姫様の刑が決まった。

それは、地上への流刑だった。




「何故ですか!」

私は声を荒らげた。相手が皇帝なのにも関わらず。

「あの薬を作ったのは私です!どうして、姫様だけが罰を受けるのですか!!」

普通、これだけ皇帝にもの申せば、首のひとつくらいは飛ぶだろう。
だが、姫様の為ならば、この命ひとつ捧げる覚悟くらいはあった。
だが

「八意殿……いい加減罪人の肩を持つのは止めて頂きたい」

その一言で、私は黙り込んでしまった。
確かに、私は蓬莱の薬を服用していないため、罪人とはならない。姫様の肩を持っているのも事実。
だが、姫様の服用目的であることを知っていながら、薬を作ってしまった自分にも、非があって当然ではないだろうか。
そんな私情など、認められるわけが無い。それが月のルール。



私は相変わらず、薬師として働いていた。
特に忙しい訳でもなく、かといって暇な訳でもない。

姫様は今、地上で苦しんでいるのではないだろうか。
一人寂しい思いはしていないだろうか。
悪い奴に拐われたりしていないだろうか。

仕事中でも、そんなことがぐるぐると、頭を駆け巡った。

そんな中だった。



姫様が地上に追放されてから数年後。
ついに、彼女の罪は赦された。




姫様のことを迎えに行くために、月では、何名かの使者を地上へ送ることになった。
当然、私は皇に、「一緒に迎えに行きたい」と頼み込んだ。
本来なら、皇帝に頼み事など許されることでは無いのだが、奇跡的に私は、地位や実力のお陰でそれが許された。
以前、姫様の家庭教師を務めていたことも、ためになったらしい。


私は、数人の使者と共に、地上へ降りることになった。

その前に、姫様と共に作った、蓬莱の薬を持っていくことも忘れない。




ああ、地上の大地を踏んだのは、何億年ぶりだろう。
長い長い時間、消え去っていたかのように思えた、懐かしい記憶が、ひしひしと蘇ってきた。

姫様は、とある竹林の中でひっそりと生き延びていた。


私たちは休憩の為、竹林で少し休んでいた。
早朝あたりの時間帯に出発し、夕暮れ時までずっと姫様のことを捜索していたのだから、無理もない。
使者たちは皆、岩に座り込んだり、竹にもたれかかったりして、ぐったりしていた。相当疲れが溜まったのだろう。
律儀なことに、姫様がどこかへ行ってしまわないように、私を監視役として見張らせておくなんて、相当偉くなったものだと思う。

だが、私も姫様の近くにいられるのなら、そんな役を任されても文句などなかった。
ただ、姫様が私のことをどう思っているのかを知るのが、怖くて仕方がなかった。

私と姫様は、近くの小さな岩に、並んで腰掛けた。

「……久しぶりね、永琳」

「お久しぶりですね……姫様」

以前の様な活気はまるで消え失せたかの如く、私たちは話し始める。
まず、私には聞きたいことが沢山あった。


「何故、竹林で生き延びようと思ったのですか?」

「……そうね、此処には人間が居なかったから、と言ったところかしら」

そうだ、寿命ある地上の人間たちが、不老不死の生き物を恐れないはずがない。
姫様が、人里や人間の集落で暮らしていれば、追い出されていたところだろう。もしくは、追われていたか。

どちらにせよ、竹林で生き延びることを選んだ姫様の判断は正しかっただろう。

まだまだ聞きたいことはある。
だが、予想外にも、姫様は私が質問しようとした瞬間に、質問を被せてきた。

「永琳は、私のこと……嫌い?」

その質問に、一体どんな意味が込められているのか。
私は瞬時に理解できなかったが、どんな理由があろうとも、絶対にその答えは変わらない。

「大好きですよ」

私は、自分でも驚くくらい、にこっとした。
姫様も、一瞬驚いた顔を見せたが、だんだん嬉しそうに頬を緩ませているのが分かった。

「良かった」

姫様は、ほっと胸を撫で下ろす。

「私の我儘のせいで、永琳にもこんなに迷惑かけちゃって、嫌われてたらどうしよう……って、ずっと思ってた」

姫様は、再び顔を上げ、安心したような笑みを零す。

「自分の意思で薬を作ったのは私なのに、姫様を嫌うも何もありません」

私も、にっこり笑ってみせる。
使者たちが疲れて眠っている中、私たちの間にはとても暖かい空気が流れていた。
とても幸せな時間だった。

だが、姫様は少し気まずそうに顔を下げると、

「………私、月に帰りたくないわ」

と言い出した。

確かに、姫様の気持ちは分かる。
ちやほやされていた空気が一変し、国から何度も処刑され、優しくしてくれた群衆の民たちからも酷いことを言われ。

今から帰ったところで、姫様の穢れが消える訳では無い。
姫様が不老不死でなくなる訳でもない。
姫様へ向けられる、民たちの軽蔑の眼差しも消える訳では無い。

だが、私たちは迎えに来た身。
自分達だけで帰る訳にも行かない。

なら、残された手段は一つ。



今から、同行していた使者たちを殺す。







ぽたぽたと、矢先から落ちる、血の雫。
それが、この中のどの屍のモノなのか、もう分からなかった。

私は眠っている同胞たちの頭部を、確実に射抜いた。

確実に全員仕留めた。
圧倒的な実力差のおかげで、そこまで時間はかからなかった。


私は今、許されない大罪を犯した。


口封じの為だけに、沢山の命を奪った。
やりたいこともあっただろうし、帰りを待ってくれる人も居たかもしれない。

そんな事情を問わず、私は同胞を皆殺しにした。




姫様が、さっきまで寝ていたはずの、変わり果てた使者たちを見下ろしていた。
笑うことも、驚くこともせず、ただ見つめていた。

私は、なんと声を掛ければいいのか分からず、それ以上は黙っていた。

沈黙の、長い長い時間が流れていった。

そんな時だった。



茂みから、白い耳のうさきが、姿を現したのは。










あれから、千年ほど経っただろうか。

私は、元月の姫様、蓬莱山輝夜と一緒に、月を眺めていた。
だが、私たちが見上げていたのは、紛れもなく偽満月だった。

「今、博麗の巫女と、スキマ妖怪が永遠亭の中に攻め込んで来ているみたいね」

「そうね、でも大丈夫よ。うどんげとてゐが、足止めをしてくれているわ」

「それは心強いわね」

そう言うと、輝夜はふふっと笑った。
あの、空に浮かぶ月を偽物とすり替えたのは、私たちだ。
何故かといえば、月の追っ手から逃れる為である。

結局あの後、私は蓬莱の薬を服用した。
そして、輝夜の従者となり、永遠に守り続けていくことを誓った。

「……ところで輝夜」

「なあに?」

私は、千年以上も前からずっと気になっていた、知りたかったことを聞いた。

「どうして、あの時蓬莱人になることを望んだの?」

心臓がドクン、ドクンと鳴っていた。
長い間、知りたかったこと。誰も知らなかったこと。
本当は聞いてはいけないのかも知れない。だが、どうしても知りたくなってしまったのだ。
私は、高鳴る鼓動を抑え、輝夜の返答を待つ。

「この世界のことを、もっと知りたかったからよ」

私は思わず耳を疑った。
輝夜は、構わず続けていく。

「小さい頃から、窮屈な場所で暮らしてきたから、この世界のもっと広い場所で、もっといろんなことを知りたかったの。それに……」

「それに?」

輝夜は少し、恥ずかしそうに俯いた。

「永琳と、もっと一緒に居たかったから」

突然の言葉に、私は動揺した。
まさか、輝夜がそんなふうに思っていてくれてたなんて。
嬉しくて、つい頬が緩んだ。輝夜も、それを見て嬉しそうに笑っていた。

「……あら」

「どうしたの?」

「扉が外から開いたわ………うどんげがやられたのね」

私がそう言うと、輝夜は「あちゃー」と言い、額に手を当てた。
私はすっと立ち上がり、輝夜のことを見た。そして、ニコッと笑顔を作る。

「行ってくるわ」

「……行ってらっしゃい」







「こいつを倒せば万事解決?」

「そんなだから馬鹿って言われるのよ。でも大正解。」

巫女と、スキマ妖怪がなにやら話している。
私の術中の空間で。随分と余裕そうだ。

「さあ紫、こんな奴さっさと倒して、地上に帰るわよ」

巫女が大幣を突き出してきた。
恐らく、戦闘開始の合図だろう。


「さあ、幻想郷の世明けはもう目の前にある!」


私は、弓矢を持った右手を、上に振り上げた。





永琳(輝夜)の過去話です。
輝夜目線か、永琳目線かで迷いましたが、永琳が心を動かされるお話にしたいなと思い、書いてみました。

語彙力がなくて、文がおかしい所があるかも……。

誤字脱字等がございましたら、ご指摘よろしくお願いします。

読んでくださり、ありがとうございました。

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コメント



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2.90奇声を発する程度の能力削除
面白く楽しめました
6.100南条削除
面白かったです
輝夜に心を溶かされてから急に感情が表に出るようになった永琳が素敵でした