Coolier - 新生・東方創想話

デリシャス·デリシャス·デンジャラス

2020/10/10 18:23:41
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 外の世界には、作っている酒に青酸カリを入れるという手法があるらしい。なんでも、舌が痺れるような強烈な味になるんだとか。
 化け狸からそれを聞いた私は、その青酸カリ入りのお酒にひどく興味がわいた。もし美味しかったら看板メニューにできるのではないか、あわよくば大ヒットしないかと。さて、早速そのお酒を作ろうとしたのだが、すぐに大きな壁に阻まれた。
「青酸カリって、何?」
 たしか、薬品の類だと言っていた。それならば、餅は餅屋。永遠亭まで飛んでいこう。今日の屋台はお休みだ。

──

「で、来たわけ」
「来たのよ」
 薬売りの兎といくら話しても埒があかなかったので、女医を呼んでもらった。やる気がなさそうに出てきた女医だったが、青酸カリというワードをだすと、顔つきを変え何やら考え始めた。
「何に使うつもり?」
「お酒にいれようかなーって」
 率直にそう言うと、さらに顔つきは険しくなった。何なら私を睨んでいる。
「此処には、妖怪を裁く法はない。誰かを殺したからといって、妖怪を被告にはできない」
「?」
 小難しい単語が出てきたが、何の話だろうか。とっとと青酸カリを渡してほしいのだが。
「ただし、罪の意識は持ちなさい。じゃないと、貴女自身が持たないわよ」
「...はーい」
 思わず適当に返事をしてしまったが、結局何の話だったのだろうか。だが考える間もなく、私は奥の方に案内された。

───

 案内された部屋は、薬棚で壁が見えなかった。しかも、全ての棚に所狭しと瓶が置かれており、部屋の灯りを乱反射している。これだけの薬品が本当に必要なのだろうか。
「これがシアン化カリウム」
 ごとり、と重い音を立てて机に置かれたのは、茶色い瓶。中には白い粉が入っている。
「えーと、私は青酸カリが欲しいのだけど」
「青酸カリというのは、シアン化カリウムのことよ」
 そうなのか。つまり、この瓶の中に大量にあるのが青酸カリか。
「じゃあコレ、貰っていいのね?」
「構わないわ。どうせ使う気もなかったし」
 やっぱり、全部は使わないのか。こうして、私は青酸カリを手に入れた。

───

 さて、長い説明を聞き終えて帰ってきた私だが、流石に酒を作るのは躊躇した。まさか、青酸カリが毒だと誰が思う。狸め、この私を嵌めたのか。
 いやしかし、毒だって上手く使えば薬にもなる。そういう事ができる人形だっているわけだし。同じ原理で、これを隠し味にする事も可能なはずだ。知らんけど。
 とりあえず、私は毒見用として妖精たちを呼んだ。
「夜雀、すっごく美味しいお酒をわけてくれるって本当?」
 これはサニーミルク。疑いながらもついてくるあたり、酒の魅力が知れる。もしくは妖精の頭が知れる。
「貴女、そんなに気前よかったかしら?」
 これはルナチャイルド。だから、疑うならついて来るなって。騙した私が心配になる。
「まぁまぁ二人とも、ご相伴にあずかりましょうよ」
 これはスターサファイア。なんだかんだで一番お酒を楽しみにしてる奴。
 毒見するのは三人。さすがに全滅はしないだろうと、根拠もなく考える。実際、隠し味として使うのだったら死ぬ程の量にはならないはずだ。
「はい、これが雀酒でーす」
「わぁ...!」
 甕にたぷたぷと入っているのが、私特製の雀酒。本当はこれだけでも充分に美味しいのだが。
「今回はねぇ、隠し味があるのよ。コレがそう」
「...隠してないじゃない」
 ルナチャイルドの突っ込みは無視。私は瓶の蓋を開けた。
「...うっ」
 妙な臭いがぷん、と漂ってくる。なるほど、毒物というだけはある。まずは小匙にこんもりと掬って、酒に入れた。甕いっぱいに酒があるわけだし、二往復させた。そして、均一になるように混ぜる。
「おまたせ。これで出来上がりよ」
「それじゃあ、頂きます」
 見た目には何の変化もない。怪しむ様子もなく、スターサファイアが柄杓でグビリといった。
 固唾を呑んで見守る。はたして、適切な量か否か。
「美味しい...けど、何か変な感じ」
「変な感じ?」
 続けて、ルナチャイルドが飲んだ。スターサファイアは特段なんともないようだが、どうなるか。
「うーん、たしかに変な味」
 これは、青酸カリを入れすぎたのか。それとも雀酒が舌に合ってないだけなのか。判断に苦しむ。
「もう少し入れてみるわね」
 青酸カリを小匙一杯分追加。もしかしたら、これでベストなバランスになるかもしれない。
「それじゃ、私もいただきまーす!」
 サニーミルクも飲んだ。さっきより量を多くした訳だが、果たして。飲むと同時に、顔が歪んだ。
「うー、私は好きじゃないわコレ」
「あら、貴女たちには合わなかったみたいね」
 反応からして、青酸カリを入れすぎたのだろう。でなければ、私の作った雀酒がこんなに評価が悪いわけがない。
 後で雀酒を足して薄めよう、と考えていた矢先、サニーミルクが倒れた。大きな音だったので、かなりびっくりした。
「どうしたの!?大丈夫!?」
「...頭、痛い」
 頭を押さえながら、苦しそうにサニーミルクが言う。まさか、青酸カリのせいか。
「私も、頭痛いわ...」
「痛い...」
 まさか、三人全員に症状がでるとは予想していなかった。ここまで強い毒性を持っていたのか。
「うーん...」
 サニーミルクは目を閉じて、体を動かさなくなった。そして、体が粒子になって消えていく。
「一回休み...」
 ピチュる判定なのか。つまり、死ぬ程の毒性という事だ。
「ねぇ、これってあの隠し味のせいじゃないの...?」
 ルナチャイルドがそう推理した。だがまさか毒物だとは言えない。まして知った上でやったとは、絶対に。
「もしかしたら、そうかも...」
 私はいかにも慌てているようにそう言った。いや、本当に慌てているのだが。
「とりあえず、お水持ってくるね!」
 台所まで行き、水を枡いっぱいに注ぐ。こんなもの、何の助けにもならないと知っているが。
「はい、持ってきた...」
 戻ったら、誰もいなかった。ただ、沢山の粒子が宙を舞っているだけだ。
「...まぁ、妖精なら一回休みで済むし」
 そういう意味で、毒見に最適だったから妖精を選んだんだし。
 私は他の甕を持ってきて、件の毒酒を中和させた。それなりの量入れたし、毒も薄まっただろう。柄杓で掬って、飲んでみた。
「え?」
 がくっと、膝が折れる。何だか、身体に力が入らない。しかも、頭が痛くなってきた。これでは、まるで──
「うぐ...」
 私は、置いていた茶色い瓶を手に取る。中身は、見事に空っぽだった。
「...あいつ等~...」
 びくびくと身体が震えている。なんだか、視界もぼやけてきた。息も出来なくなってきてるし、もう目を閉じたら意識堕ちちゃいそうだし。まさに死ぬ寸前。
「売ってたら、えらい事になってたわね、コレ...」
 次こそうまくやろうと決心して、私は意識を手放した。
ギャグ物です。
酒作りの中で青酸カリを入れる、というのは本当にあります(勿論、完成した酒に入れればただの毒ですが)。
転箸 笑
df7bc2ced7uwle2w23yw@softbank.ne.jp
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コメント



0.10簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
実に楽しい妖精虐殺でしたね
2.100終身削除
メニューに研究熱心なミスティアもどう聞いてもおかしいとしか思えないような申し出にもちゃんと言葉で説教してくれる永琳も泣き寝入りなんて絶対しなさそうな妖精たちもみんなキャラが立ってたと思います
3.100サク_ウマ削除
製法的には確か甕に一滴ぐらいじゃなかったかしら(うろ覚え)辛味に似たピリッとした刺激が云々って聞いた気がします。まあでもどう考えても最初から入れすぎ……
命の価値があまりに軽くて草でした。次のみすちーはきっとうまくやってくれることでしょう。
4.80大豆まめ削除
なんとも刺激の強いギャグ(毒的な意味で)
青酸カリを入れる酒、というのもなんとも怖い話ですが、毒キノコを毒性をなくすギリギリのところまで煮て(ゆでて)なんとか食べようという話もあったり毒と食への探究心は切っても切れないものなんでしょうか。
あ、私は普通の雀酒でお願いしますね。