Coolier - 新生・東方創想話

この道を行きかふたびかさなるを思ふに

2020/10/05 20:24:07
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結界の存在がリークされた

「この情報は確かなのかしら蓮子?」
金髪のお人形の様な容姿をした少女が大和美人というべき茶髪の蓮子と呼ばれる女性に対して問いかける。
「勿論よ。結界省幹部からのリークよ?嘘なわけがないじゃない、御丁寧に写真まで送ってきてくれてるんだから」
蓮子と呼ばれた少女が見せびらかしている写真は出雲大社の写真だ、その写真は我々の知る写真と異なりどこか歪んでいる。まるでなにか我々の知らない力によってねじ曲げられたように。
「ふぅん……?それでどうしたいの?私に出雲大社についてきて欲しいわけ?」
金髪の少女は呆れる様にそう言いながら写真をひったくる様に奪い取る。
「ん〜〜〜……まぁかいつまんで言えばそうね。秘封倶楽部のもう1人の会員たるマエリベリー・ハーンさんには私の結界暴きについてきて欲しいの。」
「蓮子がそういうのも珍しいわね。仕方ないわ、ついてきてあげる。これは貸しだからね。」



 かくして私たちは島根県へと向かうこととなった。この科学世紀に於いて地方は衰退しているが神道ゆかりの地は廃れるどころかますます発展している。諏訪がいい例であり、出雲もその例に漏れない。出雲は酉京都から真庭を通り米子、松戸、出雲と繋ぐ高速鉄道が開通し、産業や人が増え続ける理想的な発展を成し遂げている。
「着いたわよメリーさん。」
「意外と早かったわね蓮子。三時間はかかると思っていたのに二時間で着くなんて。」
「この車両は以前東海道で使われていた型落ちの広重だからね。広重36号ほどじゃないにしてもそこそこ早いわよ。」
そう言いながら私とメリーは列車からピョンっと降り立つ。出雲駅ホームは高さ48mに位置するがが故にピューと気持ちいい風が吹き続けている。
「いい風ね」
風に対してメリーは感嘆の意を隠さない。
「そうね、いい風だわ。風の神社という言葉にふさわしい場所ね。」
「あら、貴方がそんなに文学的な表現ができるとは思ってなかったわ。」
「お褒めの言葉として受け取っておくわ。そろそろ出雲大社へ向かいましょうか。」
私たちは改札を出て出雲駅名物の48m、200段の大階段を下る。
そうして下った先は戦国時代の城下町の様な賑わいを見せている。
「ねぇ蓮子、お腹が空いたわ。朝ごはんをうっかり食べ忘れちゃってね。」
そう言いながらメリーのお腹はぎゅるぎゅると鳴っている。今の時間は朝十時、朝ごはんを食べずにきたのならお腹が空いてもおかしくない頃合いだ。
「じゃあ何か食べましょうか、貴方は何が食べたいの?」
「う〜〜ん。なんかすぐ食べれるものがいいわ。確か今は出雲大社でお祭りがやっているでしょう?そこで何かを食べたいわ。」
「はいはい、じゃあ大社まで行きましょうね。」
そうして私たちは駅から出雲大社の境内まで向かう。メリーの言った通りで今日は祭りが開催されている。この祭りはかつて流行ったコロナという名前の疫病の頃から数十年の間途絶えたがここ数年で有志の手によって復活したらしい。若人が皆を指揮し、縁日や神輿を担いでいる。そしてメリーはいつの間にか縁日で焼きとうもろこしを2人分買ってそのうちの1つにかじりついている。
「はふはふはふはふはふ、はふはふはふ?(この天然物のとうもろこし美味しいわよ、あなたの分も買ってきたけど食べる?)」
「もう、御行儀が悪いんだから。でもせっかくだし一個もらっておくわ。」
そう言いながらメリーが差し出している焼きとうもろこしを受け取り齧り付く。
確かに美味しい。天然物のとうもろこしに塗った醤油と天然物らしいとうもろこしの風味がこれ以上ないほどに活かされている。
 そうして私も夢中になってとうもろこしを食べ、メリーも食べ終わった。
「美味しかったわねメリー。」
「もうお腹いっぱいよ蓮子。」
「じゃあ結界の場所を探しましょうか。貴女の目がないと見つけられないからね。」
「はーい。」
そうして私とメリーは昼食を終え結界の探索へと向かう。
しかし表の場所に結界があるわけもない。あの奇妙なオカルトボールの在庫ももうない。

だが探索を続けてしばらく経った頃にメリーは何処かへといなくなった。一瞬神社の裏道であの目立つドアノブカバーが見えたから大方いつもどおりのマイペースが故に1人で結界を探しに行ったのだろう。だがいきなり行方不明になられるのは困る。彼女の気持ち悪い目がなければ結界を見つけることはできないのだから。そうして私は苦笑しながらもメリーを探した。
 結論から言うと彼女は見つからなかった。神祜殿を見ても国造りや国譲り関連の絵があるだけでメリーはいなく、副殿にも彼女の姿は影も形もなかった。
仕方なく神社の裏へと私は入り込む。そうすると進めば進むほど私の周りが徐々に、ゆっくりと暗く歪んでいき、周りを知覚することが困難になった。
「メリー、どこなの?意地悪してないで出てきてよ。」
そうずっと呼びかけても彼女は一回も返事をしない。スマホの位置情報共有サービスの存在を思い出してスマホを開いてみるもスマホは圏外になっている。

一歩歩けば 真っ暗に

二歩進めば 真っ白に

三歩踏めば 極彩色に

周りがより一層真っ暗に、それでいて異常な色彩に覆われる。極彩色の悍しくも美しい無色の何かに。
「一体なんなのよ……こんなおぞましいもの初めてだわ……これが結界だとでも言うの……?」
そう言うと極彩色の何かは色を変化させる、肯定の意だろうか。

そう考えていると極彩色の結界のようなものはさらに色を変化させる。人類が知り得ない五次元の色だろうか?そしてその色は、色と言っていいのか憚られる何かは目にも止まらぬ私へと覆いかぶさってくる。

色、Color、ぴかぴか、宇宙からの色、Color out of space、無色......

二十世紀の三流作家の殴り書きの内容が想起され、視界はどんどんまっくらになっていく。

私を見つけて走り出してきたメリーの存在を知覚し、手を伸ばそうとした瞬間に私の精神は電源を切られたパソコンの様に消失した。



そうして消失した意識は唐突に知覚を得た。
雲の様でいて硬い何かの上で私は知覚を得た。
「ここは……」
私は周りを見渡す。しかし何もない。
しかし何かがある。目には見えない何かが。

突然に何もない空間に霧が現れる。そしてその霧はあらゆる色を映し出す。
「またあの色……?」
そして色は一つの色に収束する。三つの色であらゆる色を表すテレビジョンの様に。テレビジョンの様な光は映像を映し出し始めた。
そうして写り出した光景は伊邪那美と伊奘諾の国作りだろうか、岩をかき混ぜ日の本の国を作り出したと言う伝承に従っている。
そしてスクリーンは黄泉平坂の伊奘諾、伊邪那美の夫婦喧嘩や天照大神の岩戸への隠遁などに移り変わり続け、最後には大国主神、つまりオオナムジノカミの因幡のウサギの伝承へと移り変わる。
その光景は科学世紀のおぼつかない合成映像などではない。質感、匂い、日差しまでもが本物そのものだ。
そうしているといつのまにか大国主命と少彦名命の国造りへと場面が変化している。紫色の衣を身につけた小人と恰幅の良い神達の国造りは見ていて心地が良い。
彼らが粘土をこね、生き物を作っている状況を見ていると彼らはいきなり後ろを見返す。体の向きを変えずに顔だけを回して。
「やぁ、そこの人。見てないで手伝ってくれないかい?」
大国主命がそう言い、私に対して手招きをする。
「ほら、これないのかい?ならこちらに引き込むまでだ。」
少彦名命は小さい体を色の先に近づけ、私をスクリーンからスクリーンの先へと引き摺り込む。ウィリー・ウォンカの転送チョコレートの様に。



私はそうして国造りの時へと引きずり込まれた。
周りを見回してみると大国主命と少彦名命が首を戻してニコニコと待っている。
「やぁ、国造りを手伝ってくれるかい?」
少彦名命がそう言う。
本当に神らしい。人の言葉を話している様で人の言葉を話していない。
その返答の間にも合成でない天然の鳥や花が咲き誇り、川辺からアリとあらゆるものが謳っている。
「どうしたんだい?国造りがわからないのかい?」
私が理解できず沈黙を保っていると少彦名命は素朴な疑問を持ったかのように私に問いかける。国造りを即時に理解できる人間などいるわけがない、狂えるアラブ人たるアルハザードでも無理だ。
「かのものは理解できてないのだよ少彦、彼女は可愛い可愛い人の子なのだからね。」
大国主命がそう言い、助け舟を出す。
「そうか!人の子だものねオオナムジ。じゃあ人の子よ、この打ち出の小槌を振ってくれないかい?」
少彦名命はそう言い懐から出した小槌を渡してくる。
そうして渡された私は小槌をよくわからないが故に幼稚に、ぎこちなく振る。
そうすると穀物や果物が滝の様に湧き出る。その光景を見て大国主命と少彦名命も笑顔で微笑む。
私はそのあとも様々なことを手伝った。

そうして少彦名命も満足したのだろう。ニコニコとしながら私に話しかけてきた。
「お疲れ様。メリーと言う子が君を呼んでいるし三千年後の世界へ送ってあげよう。私もこれで常世国へと帰るからね、大国主には悪いが多年神も読んでおいたし大丈夫だろう。」
どこまでも穏やかな笑顔で少彦名命は微笑む。
「さようなら宇佐見蓮子、愛おしき人の子よ。いずれまた会うこともあろう。」
私の意識はその瞬間に純白の光に包まれ再び消失した。



そして再び私が知覚を得た場所は出雲大社の職務室の中であった。
「あら目を覚ましたのね蓮子。」
聞き覚えのある声だ。私のかけがえのない相棒であり盾であるマエリベリー・ハーン、その人の声だ。
「大変だったのよ?貴女が目の前で倒れたから宮司さんを呼んでここまで引っ張ってくるのは。」
メリーは呆れ半分、私が意識を取り戻したことに対する嬉しさ半分で私に対してそう言う。そう言う彼女の顔は涙の跡がある。
「ごめんなさい。」
私がそう言うとメリーは驚く。
「プランクの再来様が素直に謝るなんて珍しい。いいのよ、ぷらりとどこかに行った私も悪いんだから。」
「いや、今回は私も悪かったわ。もっと早く電話をしておけばこんなことにならなかったもの。」
そう言いながら私は立ち上がる。
「それじゃあそろそろ行きましょう、メリー。お世話になりました。」
そう言い私は宮司さんに頭を下げメリーと共に職務室を後にする。
そうして職務室を後にした私とメリーは本殿へと向かう。
「蓮子、なんで本殿なんかに行くの?」
その問いも無視して私は本殿へと進む。
「見ればわかるわよ。」
蓮子は本殿に着いた瞬間にメリーにそう言う。
そうして軽い足取りで歩き出し、神祜殿に飾られている絵に目を向け、倒れる前に流し見た国造りの絵を探す。
「あった……。」
私は国造りの絵を見つけ出した、倒れる前はなんてことがなかった絵を。
「どうしたのよ蓮子、そんなに絵を眺めて……貴女にはそんなじじくさい趣味はないでしょ……
そう言い終える前にメリーは喋るのをやめた。
「この絵に描かれているのって……」
蓮子が見ていた絵は前までは大国主命と少彦名命の国造りが描かれているはずがそこに1人の帽子を被った少女も足されていたからだ。
「ねぇ蓮子、これってどういうことなの……?」
そう問いを投げかけても蓮子は答えを返さない。
「ねぇ蓮子ってば!」
こう言うと蓮子はようやく問いに対して答える。
「神のみぞ知るってね……!」
相変わらず要領を得ない発言だがこれが答えなのだろう。
彼女はひみつをみたのだろう。

「なるほどね、神のみぞひみつを知るってわけなのね。」
「あら、よくわかってるじゃないのメリー。じゃあ次の結界を探しましょう!」
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コメント



0.50簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白い秘封でした
2.100終身削除
とうもろこしをほおばって何言ってるのか分からなくなってるメリー可愛いですね 不思議なことに巻き込まれても翻弄されるだけじゃなくてきっと何かしら掴んで帰ってきて2人の間に本当にあったこととして共有されていくんだなと思いました
3.80名前が無い程度の能力削除
シーンひとつに対する情報量が適切ではないと感じましたが
非常に秘封らしいお話だったと思います
5.90名前が無い程度の能力削除
良い秘封でした
6.90転箸 笑削除
雰囲気好きです
7.80めそふらん削除
発想が面白かったなと思いました。
国造りの時代まで遡り、過去が変わる、不思議な話でした。
8.100Actadust削除
いい秘封でした。国造りに勤しむ蓮子の情景が思い浮かぶようでした。
9.100サク_ウマ削除
後半から惹き込まれました。置いてけぼりな感じが神様らしくて良いなあとか、現実改変的なタイムトラベルは秘封らしいよなあとか、大国主の下でやったことがはしょられてるの勿体ないなあとか思うところは多々ありますが、とにかく面白かったです。すき。