Coolier - 新生・東方創想話

幻想戦争抄

2020/09/30 21:42:40
最終更新
サイズ
9.71KB
ページ数
2
閲覧数
248
評価数
2/4
POINT
240
Rate
10.60

分類タグ

《プロローグ》



「紫様? ゆかりさまー?」

マヨヒガにて。
八雲藍はいつも通り夕飯の支度を終えて、主である八雲紫を呼んでいた。
せっかく温かいご飯なのにすぐ食べに来ないからガチでキレそう――などと思いながらあの風来坊を探し回る、そこまでが日課であった。

「紫様ー! どこにいらっしゃるんですかー? ……おかしいな、いつもならそろそろ出てこられるんだが……」

一方その頃、紫は究極のプライベート・スキマ空間にて、いたって真剣な賢者の眼差しで画面を見ていた。その手は興奮にわなわなと震えている。

「……これだわ!!」

マヨヒガ全体に突如として響き渡る主の声に、藍と橙は4つの耳を頑張って押さえる。
お茶の間に二つの赤いリボンが現れると、それを両端とした線分が広がって紫が現れた。

「藍!」
「はい?! 何でしょうか?」
「明日の朝いちばんに、幻想郷中に式を飛ばすわよ! 早起きなさいね!」
「ええ……」

藍は嫌な予感を覚えたが、紫がこうまではしゃいでいるのを見て、止めようにも止められなかったのだった……

    ◇

ぴぃぃぃぃぃーっと、けたたましい音が境内に鳴り響いた。
爆音は障子を突き抜け鼓膜を突き抜け、少女の脳にダイレクトで響いた。

「うっさいわね!!!」

反射的に投擲された札が音源を切り裂く。
博麗霊夢は激おこだった。せっかく夢の中で田尾亮の賽銭をもらっていい気分になっていたというのに……
しかもこんな紙の式神を飛ばしてくるなんてのはあの胡散臭い女以外にいまい。

「ごきげんよう。幻想郷中の人妖の皆さん。この度、異変を起こさせていただくこととなった八雲紫です」

式神はいたるところに配置され、天界から妖怪の山、迷いの竹林まで幻想郷中の至る所で爆音のアナウンスを開始していた。

「なんだなんだ?」

毎朝の1日1マスタースパークを済ませた霧雨魔理沙の住む魔法の森にも。

「今回の異変では、スペルカードの使用ができないように幻想郷の結界の仕組みをいじらせていただきました♪」
「何しとんじゃバ〇ア!!!」

霊夢の口からも反射的にそんな言葉が飛ぶ。

「その代わり、異変解決のためであれば旧制度同様の決闘を許可したいと思います。ただし、決闘は人里以外で行われ、人間に危害の及ばない場所でのみ行うものとします」

天界では、捕まえて握りしめていた式神からの声を聴いている者が一人……

「この異変は通常のものとは異なるルールで開催されるため、幻想郷への被害を鑑みて以下の人物の参加を禁止します。八意永琳、西行寺幽々子、霊烏路空、八坂神奈子、スカーレット姉妹……」
「あら、私はだめなのねぇ……せっかく面白そうなのに」

白玉楼では、西行寺幽々子が残念そうにしていた。そしてもちろん、自分が参加できないとなれば……

「じゃあ、妖夢ちゃん行ってきなさい!」
「みょっ……みょおおおおおん(泣)」

「詳しいルールは博麗神社にて、夜7時から説明と異変のエントリーを開始します。賞品は『願い事を何でも一つ叶える』です。奮ってご参加ください。では」

式神はくたりとして地面に落ちた。
紅魔館では、寝間着姿のレミリアが咲夜に出動を命じたようだ。
永遠亭からは鈴仙も。
そして何が起こるのか、怖いもの見たさで集まる妖怪がが参加を考え始めていた。

「ゆーかーりーっ! 出てきなさい!」
「お呼びかしら?」

霊夢が呼び出すと紫はすぐに出てきた。
痛い目を見させてやろうと、すかさず霊夢はカードを抜いて宣言する。

「『夢想封印』!!」

……あれ?

「言ったじゃない、スペルは使えないように境界をいじったわよ」
「あんたのそのデタラメな能力ホント腹立つわね」

紫は不敵な笑みを浮かべたままで裂け目に鎮座している。

「何が目的で異変なんて起こしたの? そもそもアイデンティティが崩れないあんたは異変なんて必要ないはずでしょう」
「まあね。異変なんて言ってるのも適当だし。集まってきやすいかなーと思っただけよ」

霊夢はムッとする。
異変と銘打たれたからには、どんなに面倒なことであろうと、博麗の巫女として参加せざるを得ないのだ。

「まあ……正直な所、最近異変もなくて暇だったし」
「あんたど畜生ね」
「うふふ、ありがとう」
「1寸も褒めてないわよ」

ストレスで目の下をヒクつかせながら、霊夢はため息をこぼしたのであった。

コメントは最後のページに表示されます。