溜息を吐いて、八雲紫はマウスを動かす。昨今は外の世界から科学や文明が流出し、いつの間にかネット環境まで整うようになっていた。良いことか悪いことか、賢者からすれば後者なのだが個人的には前者であって欲しいと願う。
「お疲れ様です、紫様」
「ありがとう、藍」
渡されたお茶は熱い。紫の作業が終わるまで、側でずっと待っていたのだろう。良くできた従者だ。かの紅魔館のメイド長にも勝ると自負していたが、そんな事を当人に言うはずもない。調子に乗るような器ではないが、どうにも照れるではないか。褒めるのは苦手だ。
そのくせ式の式には甘いのだから、我ながら歳を取ったものだと嫌になる。老人が孫に甘いのは、世界の宿命なのだろう。かつては鼻で笑っていただけに、実際自分がそうなるとショックも大きい。
もっとも、改めるつもりなど欠片もないが。可愛いものは可愛いのだ。
「疲れはしたけど楽しかったわ。こういうのを心地よい疲労と言うんでしょうね」
「……そのわりにレビューは私任せだったように思いますけど?」
「纏める役目があったんだから仕方ないじゃない。主催と参加者は別物よ。それに、あなただって楽しかったんでしょ」
「まぁ、それは確かに」
「なら結構」
外の世界のネットを巡り、ふと見つけた小説のお祭り。これを切っ掛けに幻想郷の皆が小説へ興味をもってくれないかと企み、適当な人妖達にレビューの依頼をお願いしてみた。断られるかとも思ったが、案外すんなり引き受けてくれたのは嬉しい誤算だ。
結果は大成功。ついさっき全てのレビューが出揃い、それを纏め終えた所だ。肩や腰に掛かる疲労も、今日だけは鬱陶しくない。
中には代理執筆などもあったようだが、概ね誰もが楽しんでいたようなので一安心である。せっかくのお祭り。苦痛を与えただけでは意味がない。宴会と同じだ。
「しかし、中にはレビューでない者もいますが。私情全開の奴とか」
「それもまた一つの楽しみ方よ」
「ネタバレも自重していませんし」
「そうね、なら最初に注意書きを入れておきましょう。ネタバレ注意、っと」
元来、自由奔放な幻想郷の住人達。迂闊に制約で縛れば、下手をすると仕事を投げ出す可能性だってあった。だからこそ全てを相手に任せ、紫は出されたものをそのまま纏める。幾つかカットした部分もあるけど、概ねは原稿のままだ。おかげで、さすがの紫も心臓が痛くなった回数は一回や二回では済まない。
本当は各自が作品に点数を入れられたら良いのだけれど、紫だのレミリアだのの名前がコメント欄にあったら何の悪戯かと疑われるのが関の山。自分たちに出来るのはレビューぐらいのものである。
「さて、これで完成かしら。後はこれを外の世界に託したら、私達の役目は終了ですわ」
「お疲れ様でした」
「労いの言葉なら充分に貰ったわよ。私よりもレビューをした連中や、参加していた人間。あるいは主催者に向けるべきじゃなくって?」
「それもそうですね」
誰もいない空間に向かって、丁寧に頭を下げる藍。こういう律儀な所は好感が持てるのだが、端から見ていると妖しい狐にしか見えない。現に通りかかった橙は、訝しげな顔をして去っていった。
藍に倣って紫の心の中で謝辞を述べ、再びマウスを動かす。
「それじゃあ、送信っと」
季節は過ぎる。祭りも終わる。
そうして皆は余韻に浸り、新しい祭りを待ち望むであった。
八雲紫もまた、そのうちの一人である。
《担当キャラクター》
課外授業ようこそ妖怪 鈴仙・優曇華院・イナバ
うらみっこ 四季映姫・ヤマザナドゥ
童祭 〜 Innocent Prayers 夢月
京都亡霊事件簿 上白沢慧音
こがさのここがさ ナズーリン
覚れば法世に陽は烈し 比那名居天子
ジャスティス・ヒロイン 星熊勇儀
ヒソウテンソク VS ウドンゲイン 紅美鈴
夢の終わりとロマンティック・ディストピア 稗田阿求
はれて世界の雨はやむ 多々良小傘
抱いて眠る少女達 西行寺幽々子
動きやすい大図書館 古明地さとり
コレクタブル・コレクトネス 射命丸文
魔法使いの恋物語 アリス・マーガトロイド
明日は明日の風が吹く 十六夜咲夜
幻想の守護者 〜the Guards of Fantasm〜 レティ・ホワイトロック
てのひらをたいように 永江衣玖
シトラスグリーンの約束 水橋パルスィ
こんふりくとしすたぁず! ルナサ・プリズムリバー
薔薇は咲くより、散るよりも レミリア・スカーレット
作品名→作品のタイトル
担当キャラ→担当するキャラクター
(☆☆☆)→☆〜☆☆☆☆☆の五段階評価
(☆)→ペンタゴン
作品名:課外授業ようこそ妖怪
担当キャラ:鈴仙・優曇華院・イナバ
子供の相手がどれだけ大変なのか、私にも痛いほど分かるわ。鈴仙・優曇華院・イナバよ。師匠の付き添いで里に何度行くのですけど、その度にスカートを捲られ、耳を引っ張られ、そのくせ師匠には何もしない嗅覚の良さ。まるでてゐが一杯がいるみたい。もっともてゐの悪戯は子供と比べものにならないほど老獪で巧みなんだけど、やってることは子供達と同じなのよねえ。何とかならないかな、もう。
・ストーリー(☆☆)
ほのぼのとして、心温まる話でした。紅魔館の連中はおっかない奴らばっかりだと思ってたけど、これなら親しみが持てそうね。外面を良くしようとしていただけかもしれないけど。
どのパートにも共通する事ですけど、起承転結が弱かったように思えます。物語とは即ち克服こそが肝だと師匠は仰っていましたし、私もそう思います。然るに、この物語の乗り越えるべき壁はあまりにも低すぎる。壁を打ち壊したところで、感情を動かされるものがありません。そこの部分が引っかかりましたね。
・キャラクター(☆☆☆)
オリジナルキャラクターが年齢通りの動きをしており、子供らしさがよく出ていたと思います。特にあの子憎たらしさはてゐのようで、読みながら腹立たしくなりました。それだけ現実の子供と似ているキャラクターだったということです。
・構成(☆)
各パートが完全に独立し、最後の終章で締めくくる。三つの短編を読んでいたように思えます。各パートにもっとインパクトか盛り上がりがあれば、一つに纏まったところで達成感か満足感が生まれるんだと思います。
・表現(☆☆☆)
特に論ずるほど問題があったようには思えませんでした。物語を打ち壊すことなく、際だたせる文章でした。
・総合(☆☆)
全体的に見ると、少々纏まりが悪かったかと。各パートもぶつ切りですし、どうにも違和感を覚えながら読み終わりました。もっと各パートの繋がりを重視して書けば、この違和感も解消されるかもしれないけど。子供に振り回される紅魔館の連中、という題材はしっかり書けていたように思えるわ。
なんだか私も頑張ろうって気になってくるわね。だけど、てゐの悪戯だけは勘弁。
作品名:うらみっこ
担当キャラ:四季映姫・ヤマザナドゥ
四季映姫・ヤマザナドゥ。本作品の担当です。私は曖昧な感想が苦手なので、全て一つ星か五つ星を付けます。面白いものは面白い、つまらないものはつまらない。元来であればそれだけの言葉で済むのですが、閻魔も人も芸術というものには目がないので。ついつい自分の持てる言語を駆使して感想を述べたくなるものです。私もその一人ではありますから、偉そうな事は言えないのですけど。
・ストーリー(☆☆☆☆☆)
前後編にした意味があるのかはさておき、見事な話でした。異変は博麗が解決するものという常識を覆し、尚かつその博麗が背負ってきた歴史を暴く。楽園とて光だけではなく影もあり、影の裏にはやはり光があるものです。表裏一体。片側からの観測でそれを全ての事実だと思いこまないこと。閻魔でも勘違いは容易に起こりうる事態ですが、いつだってそれは取り返しのつかない結果を招くものです。本作もそれは同様。しかしたとえ全ての真実を知ったところで、紗霧が納得して人柱になったとは思えませんが。この異変は起こるべくして起こり、そして解決すべき人間によって解決したのだと私は思います。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
オリジナルキャラクターである紗霧は言うに及びませんが、その他の幻想郷に生きる方々も見事に描ききっていました。愉快でありながら真剣で、それでいてどこか仲間思いの彼女たち。下手をしたら何だって楽しめてしまう連中からすれば、今回の騒動も心のどこかでは楽しんでいたのかもしれませんね。当人達は大変だったでしょうけど、それはそれで紗霧も浮かばれるのかもしれません。涙で送られるのを喜ぶ者もいれば、笑顔を望む者だっているのですから。
・構成(☆☆☆☆☆)
現在と過去、その絡み合いが簡単に解けるような構成でした。謎は謎として残しておきながら、さりとて重要な場面では回想を使って丁寧に説明。非常に好感が持てる構造です。分かりやすいですし。
・表現(☆☆☆☆☆)
読みやすさに重点を置いたのでしょうか、あっさりとした文体でした。ただ時折読みにくかったり詰まったりする部分はありましたし、単調な表現が連続する場合も見られました。悩みはしましたが、全体的に見ればすんなり読めたわけですし、五つ星を付けさせて貰いました。
・総合(☆☆☆☆☆)
ここまで全て最高評価にしておきながら、総合だけ一つ星というわけもありません。堂々の五つ星です。単純な善悪ではなく、双方向から見た異変という形。裁判官という職業柄、こういった考えさせる話には弱いのです。娯楽的な要素も踏まえつつ、しっかりと自分の意見は通す。こういう閻魔に私もなりたいものです。
なるほど、小町がはまっていた理由も少しだけ理解しました。しかしいくら面白い物語であろうと、サボる口実には成りません。非番か休息の時に読めばいいだけなのですから、やはりあの子にお仕置きが必要ですね。それでは、これで。私には用事ができましたから。
作品名:童祭 〜 Innocent Prayers
担当キャラ:夢月
姉さんにもレビューしようよって誘ったんだけど、マウスをクリックしすぎて壊したから拗ねて寝ちゃったみたい。夢月です、初めましての方は初めまして。あまり表舞台には立たないから知らない人も多いんじゃないかしら。よよよ。だけど、これを切っ掛けにしてもっと私達姉妹も活躍していこうと思うのよ。うん、努力しないと。
・ストーリー(☆☆☆)
秘封倶楽部の二人が、文化祭というお祭りに参加して楽しむお話ね。私も外の世界には興味津々なお年頃なので、出来れば参加したかったんだけどね。どうにも選ばなくて残念無念よ。まぁ、姉さんが参加してたら祭自体が成立してなかったでしょうけど。あの人、お祭りになるとテンションが上がる悪魔だから。校舎を破壊して回る姿が目に浮かぶわ。
お祭り気分で素敵な話だけど、終わり方には首を傾げるわね。良い意味でも、悪い意味でも。全てを説明しきるのではなく、幾つか謎を残して終わる話も世の中には多数あるわ。そして、得てしてそういう話ほど人々の印象に残りやすいものよ。この話にしたって、しばらくは解釈しようと頭が占拠されることは間違いないし。霊夢が本編に出てなかったから、蓮子が霊夢なのかな。当たってるかどうか分からないけど。メリー関連の方はさっぱりね。何個か推測は出来るんだけど、うーん、どれも当たってる気がしないわ。
オールスターというのは盛り上がるし、誰にだって楽しめる物語になるけれど。そのせいでちょっと冗長になってた感は否めないわね。お祭りを長く楽しみたいという気持ちはあるけれど、長すぎると疲れるし。難しいものだわ、本当。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
冗長とは言ったけど、やっぱり全キャラの活躍が見てみたいと願うのは人の性かしら。そういった意味では文化祭というお祭りはピッタリだったわね。どのキャラにも出番があるし、誰もがはっちゃけていたし。さすがは宴会好きの幻想郷。こういうのは得意なのね。どうしてこの世界に幻想郷のキャラクターがいるのかは謎だけど。そもそもこの世界が何なのか、八雲紫の言葉を信じたくない私には疑問の塊ね。
それにしても、秘封倶楽部ってのは凄い二人組ね。どんなキャラクターとも見事に掛け合いをしていくんですもの。あの気難しい覚り妖怪や、幽香さんも相手にしてしまうとは。恐ろしいポテンシャルを秘めているとしか言えないわ。まったく。
・構成(☆☆☆)
小説としてみれば☆一つだけど、ゲームとしてみれば☆五つ。平均したら☆三つね。
姉さんがマウスを壊したように、何度も同じシーンを通過しなくてはいけないのが短所なのだけど必要な短所なのよねえ。完全な一本道だったら小説でいいわけだし、こういう面倒くささがゲームの面白さを引き立たせるのよ。小説だったら面倒くさいの一言で切り捨てられるけど。
・表現(☆☆☆☆)
合間合間に挟まれる小ネタ。そして小粋なギャグ。根本的な部分にあるのはシリアスな設定なのに、それらのおかげで全体的に愉快な雰囲気が演出されているのよねえ。空回りしたら滑稽の一言だけど、少なくとも私は充分に楽しめたし笑ったし。蓮子の軽いツッコミが素敵だったわね。
・総合(☆☆☆☆)
楽しめる者は楽しめる。楽しめない者は楽しめない。これほど人を選ぶ話は無いと思うわね。現に私は楽しかったようだけど、姉さんは楽しめなかったようだし。こればっかりは技術でどうなるものでもないから、諦めるしかないわね。迂闊に弄ろうものなら、今度は楽しめていた人達が楽しめなくなるし。このままお祭り気分の話であって欲しいというのが素直な気持ち。
だけど、やっぱり最後の終わり方はどうなのかしら。いえ、正しくは蓮子と紫のシーンね。あそこで全部ばらすのも無粋だけど、やっぱりある程度は真実が欲しいと思ってしまうのよねえ。ペラペラと説明されるのも興ざめだけど、何も分からないのも腹立たしい。仄かに真実を匂わせながら、読者に想像させるのが一番ってことかしら。ううむ、読解力と推察力に欠ける脳みそが恨めしい。
ちなみに、次は私や姉さんが登場する話にして欲しいわ。神綺とか魅魔とか、あの辺りも総登場させて。幽香さんはパジャマね、当然。そしてタイトルは『旧・童祭』。主役は秘封倶楽部に変わりまして、私と姉さんの夢幻姉妹。これは大ヒットするわよ……。
えっ、なに姉さん。そんなの誰も読まないって? ははは、そんな馬鹿な……。
作品名:京都亡霊事件簿
担当キャラ:上白沢慧音
京都とはまた懐かしい響きですね。幻想郷に来る前のことですが、何度か訪れたことがあります。スペルカードの名前も幾つか拝借させて貰いましたし。
申し遅れました、この話を担当させて頂く上白沢慧音です。人間の里では教師の真似事などしておりますので、迂闊なことは書けませんね。
・ストーリー(☆)
大作を強引に縮めたような印象を受けました。起承転結で言うなら転と結が早足だったように思えます。事件を解決したのは唐突に現れた八雲紫ですし、どうしてあんな夢を急に見てしまったのか原因も不明です。詳しい説明は無粋かもしれませんが、もっと分かりやすい話の方が私は好きですね。
秘封倶楽部ももっと話に搦めてあれば、必要性があったのですけど。今のままではただの傍観者でしかありません。もっとも、彼女達の活動は傍観者ですから正しい役割ではあるのですけどね。
・キャラクター(☆)
西行寺の亡霊は知った仲ではありませんけど、こんな暴走をするような方には思えませんでした。妖ですから心中では何を思っているのか知れたものではありませんけど、もう少し彼女の心情を描いて貰いたかったです。それにしても、あそこの従者は随分と可愛らしい方のようですね。一度、お会いしたいものです。
・構成(☆☆)
序盤に、残念ながら人を惹きつけるだけの魅力がありません。外の世界へ西行寺の亡霊が現れるという題材は素敵なのですから、それをもっと引き立たせる工夫が必要だったのではないでしょうか。いっそ西行寺の心情を全く描かず、秘封倶楽部と妖夢の視点だけで謎めかせた風に話を進める形式も面白いのではないかと思います。
・表現(☆☆)
京の街を見事に描写していました。何度か訪れた程度の私でも、しっかり目蓋に光景を思い浮かばせることができましたし。ただ、どことなく文章が単調なようにも思えました。急に段落が代わり、混乱する部分もありましたし。一層の努力に期待します。
・総合(☆)
私の率直な意見を伝えるならば、惜しいの一言です。西行寺幽々子が京の街に現れ、人々に死を与えていく。それを追いかける秘封倶楽部。食材はとても美味しそうなのですが、いかんせん調理が単純すぎたかと。刺身というのも粋な料理ではありますが、せっかくの高級食材。ここは調理人の腕を振るい、最高の料理を味わってみたいと思うのは食べる側の我が儘でしょうか。
あるいは、もっと時間をかけて執筆すれば質も格段に上がったのかもしれません。推敲や校正が不十分だった部分も見受けられますし。
などと筆の勢いに任せて書いてみたのですが、この文章も他人から見ればどうなのやら。教師という職業柄、どうしても他人のあら探しをしてしまうのは悪い癖だと思いつつも(以下、自分と教育に対する愚痴)
作品名:こがさのここがさ
担当キャラ:ナズーリン
やれやれ。本来はご主人様がこの話を担当するはずだったんだけど、レビューは苦手だと駄々をこねるから私が担当することになったよ。まぁ、読書は嫌いじゃないから良いんだけど。あまり私を便利屋のように使わないで貰いたいんだがね。ナズーリンだ。よろしく。
・ストーリー(☆☆☆☆)
妖力の弱った多々良小傘が守矢神社に居候する。そこで神々から驚かし方を教わり、最終的にはあの東風谷早苗からも技術を教わるという恐ろしい話だ。守矢の神には祟り神もいると聞く。なるほど、人選としてはこの上なく的確だ。おまけにあそこの巫女は……うん、的確だ。
序盤は多生インパクトが弱いかと思ったけれど、読んでみれば杞憂だと分かったよ。特に最後のオチは予想外だったね。私に子供がいるならともかく、あの傘妖怪に子供がいたら誰だって驚くだろう。父親が神様というのも無理がない解釈だ。
小傘が早苗に出会うシーンも良かったね。事情を知ってる読者からすれば、あそこは早く出会え早く出会って驚けと念を送りたくなった部分だろう。私も送った。誰だってそうする。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
どのキャラも実に魅力的だったと纏めるのは、些か適当すぎるかな。無駄のないキャラの配置はお見事の一言に尽きるんだが。遊びがないと言えば堅苦しく思えるけれど、必要最小限のキャラクターだけで話を纏めるのは凄い技術だと私は思うよ。
主人公の小傘が可愛らしく書けているのは好印象だね。やはり主人公が魅力的だと話自体も面白くなる。
・構成(☆☆☆☆)
早苗が小傘風の傘を買っていた。その事に対する伏線が一つぐらいは欲しかったかな。買い物に行く描写ぐらいのレベルで良いんだが。
伏線という話をすれば、早苗と出会う前に小傘が自分は消えてしまうのではないかと不安になるシーン。あれは素晴らしかったよ。あれがあるおかげで後半の意図せぬドッキリが成立しているわけだし。あそこで傘がポツンとあれば、読者も勘違いしてしまうだろう。
残念ながら私は、あの不安になるシーンで先が読めてしまったけれど。気付くのは私のようなひねくれ者だけさ。
・表現(☆☆☆)
可もなく不可もなく、と言ったところだろうかね。もっとも、この話は文章よりも構成とキャラクターで魅せる話だと思っているから奇をてらった表現は逆効果だと思うし。さして改善する必要はないだろうと思う。
小傘の不安はしっかり書き込まれていたけどね。一人称ならばもっとしっかり小傘の不安も描けたんだろうけど、それでは小傘の葛藤だけが主軸になってしまうし。神様サイドも描くうえでは、三人称というのは的確だったと私は思うよ。
・総合(☆☆☆☆☆)
☆が三つだった部分もあるけれど、総合という視点から見れば充分に☆五つと太鼓判を押せるだけの作品だったね。ご主人様から押し付けられた仕事だったけれど、むしろ楽しくレビューすることが出来たよ。だからといってご主人様に感謝するつもりはないけれど。
長さも程よく、キャラクターも魅力的。あるいは大きな欠点が隠されている可能性もあるものの、少なくとも私の目には見えなかったよ。もっとも、夢中になっているネズミの目が節穴になっているのかもしれないけど。
さて、せっかくだからご主人様にもこの話を読んで貰おうか。きっとあの人ことだ。黒い魔法使い以上に、最後のオチで驚いてくれることだろう。ついでに私も言ってみようか。子供が出来ました、って。
作品名:覚れば法世に陽は烈し
担当キャラ:比那名居天子
あー、せっかくのお祭り。どうせだったら私も参加する側でいたかったんだけど。書くよりも読む方が楽で愉しいし、これだって参加してることに変わりはないもの。やっぱり祭事は愉しんでこそ、というものね。他の連中も結構やってるようだし、負けないよう私も頑張りましょうか。
・ストーリー(☆☆☆☆)
過ちを改めざるこれを過ちという。狂うというよりはムキになっていたようにしか見えなかったわよ。あるいはヤケクソ。失敗することは分かっていたでしょうに、過去を顧みないのは美徳ではなく暴徳よ。だけど現代に生きていた聖の方が、幾分かは人間くさく見えたわね。個人的には回想の尼の方が恐ろしかったもの。村を丸ごと実験場にされたら権力者は面白くないでしょうし、そういった意味では成長したのかしら。聖白蓮。
終わり方に不満を持つ人も多いでしょう。人間は幸福を求める生き物だから、ついつい幸せな結末を望みたがるもの。あれはあれでハッピーエンドなんだろうけど、端から見ていたら哀れでならないわね。覚りに振られて悟りを開くとは、何とも皮肉な話だこと。
そういえば命蓮寺の連中はどうしてたんだろ。大切な白蓮の一大決心、絶対に関わってくると思ったんだけど。ナズーリンの存在を仄めかした描写があったぐらいかしら。そこが気になったところね。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
聖白蓮の言動には随分と苛々させられたものだけど、それは結局作者の手のひらなのよね。あれで迂闊に白蓮へ正当性や合理性を持たせようものなら、悪いのは理解しない者達であり、不遇の尼公は封印され、最後には完全に壊れてしまっという悲譚になるもの。かといって強かにすれば知謀策謀が渦を巻くドロドロとした策略の戦いになってしまうし。理想だけを追い求め、現実を忘れた聖白蓮。この話で動かすとしたら、これだけ適当なキャラクターもいないわよ。
過ちを観て斯に仁を知る。古明地さとりだけは、冷静に全てを見通していたようだけど。一番成長したのは彼女ということなのかしら。あの烏は主がいるから大丈夫なんでしょうけど、あるいは本当に隣人が必要だったのは聖白蓮なのかもしれないわね。
・構成(☆☆☆)
過去と現代の繰り返し。忙しいったら無かったけど、上手い具合に機能していたわ。謎かけと答え合わせのタイミングも良かったし、ただ一人称と三人称がごちゃ混ぜになっていたのは辛かったわね。最後の方になれば慣れて気にならなかったけど、最初はやっぱり混乱するもの。一人称と三人称、現代と過去。これを同時にやられたら、慣れないと辛いわ。やっぱり。
・表現(☆☆☆)
背後関係や現状を詳しく教えてくれたのは便利で分かりやすかったわね。白蓮以外の事情が分かるからこそ、さとりの台詞も映えるわけだし。『これは、誰を恨めばいい。こいしをあんな目に遭わせたことへの怒りを、どこへ向ければいいのだ。自分の知る限り、皆が皆最善を目指して突き進んだだけじゃないか。悪人なんて、どこにもいないじゃないか』。ある意味では聖白蓮の望んだ世界だったわけね。誰もが等しく愚かで、誰もが等しく自分に素直だったと。
・総合(☆☆☆☆)
悲しいというより不憫。誰もが救われず、誰もが傷ついた。得をしている人が一人もいない話なんて本来なら面白いわけないのにね。主人公すら利を得ないというのは賛否両論あってもおかしくないわ。もっともだからこそ私は、☆を四つ付けたわけだけど。聖白蓮が望んだ平等に救われるお話よりも、こんな感じの誰も救われない話の方が好きだし。腹は立つけど、得も言われぬ後味はあるんじゃないかしら。それがまた最高なわけ。
人は利に生きる存在。利を追い求めるのなら、得てしてこういう結末が訪れるもの。聖白蓮は平等や共存という利を追いかけ、他の連中は変わらない平和を欲しただけのこと。それが後世にどう評価されるのはさておき、いつの世も革命的な人間は理解されないものなのよ。
辞は達せんのみ。長々と語ってきたけど、要するにこの話は面白かったってこと。それだけ。
作品名:ジャスティス・ヒロイン
担当キャラ:星熊勇儀
この話を担当することになった星熊勇儀だよ。読書ってのは苦手なんだけど、まぁ私なりに頑張るからよろしく頼むよ。しかし普通に読んだんじゃあ面白くない。だから杯を片手に酒を零さず読もうとしたんだけどね、いつのまにか飲み干してたよ。ははは、本も酒のツマミになるんだね。勉強になったよ。
・ストーリー(☆☆☆)
紅魔館ってのは楽しいどこだね。こんなこと、毎日のようにやってるんだろ? 地下にも陽気な奴らはいるけどさ、これぐらい馬鹿やってくれる奴はそうそういない。宴と戦闘は馬鹿が相手に限る。これはまぁ、私の持論なんだけどさ。
それにしてもマスクドチャイナ。なかなかに根性のある奴じゃないか。気に入ったよ。今度地上に行った時、是非とも戦おうじゃないか。その時は全力で相手してやるよ。これだけタフネスなんだから、一撃でやられてくれるなよ。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
マスクドチャイナの正体があの門番のドッペルだったとは。さすがの私も予想できなかったよ。思わず酒を零しそうになって、慌てて飲んだものさ。ああ、あそこで飲み干したのか。なるほど。
他の連中も強そうだけど、やっぱり一番気に入ったのはマスクドチャイナだよ。主人公ってのはこうでなくちゃ。悪役でもいいから戦ってみたいねえ。私だったらそうさね、マスクドスターってところか。ああ、スターは魔法使いが名乗りそうだから……マスクドアルコールかね。
・構成(☆☆☆)
実はヒーローものとか好きでね。外の世界か流れ込んできたものも見たりしてるんだけど、これはまさに古き良き戦隊ものって感じがするねえ。まぁ、私も四天王の一人だからそう思うのかもしれないけど。やっぱりさ、四天王とか○○集ってのに痺れるんだよ。互いの全力を出し切った殴り合いとかも、同じぐらいに最高だ。
・表現(☆☆)
小悪魔の頑張りに涙したよ。紅魔館ってのはあれぐらいやらないといけないのかい。なんともまぁ、恐ろしい場所だね。
・総合(☆☆☆☆☆)
喧嘩はいいもんさ。野蛮だって避ける連中はいるけれど、言葉よりも拳の方がよっぽど語れるってことを知らないんだろうね。最近は骨のない奴らばっかりで、手加減しないとマトモな勝負にならないけどさ。こういうマスクドチャイナみたいな奴らもっと増えればいいと思ってるよ。
おや、あとがきもあったのかい。まだ読んでなかったよ。
…………夢オチ?
作品名:ヒソウテンソク VS ウドンゲイン
担当キャラ:紅美鈴
紅美鈴です。漫画はよく読みますけど小説にはあまり手が伸びず、こういう機会でもなければ、あるいは一生読まなかったかもしれません。パチュリー様は呆れて何も言いませんし、お嬢様は読書のスタイルにケチを付けるような真似はしませんし。出来れば私も読書の幅を広げたいとは思っていたんですが、いやはや新しい物には食指が伸びないもので。ですが今後はもっと小説の世界にも足を踏み入れていこうと思っています。
自分語りはここまでにして、以下が私の感想です。
・ストーリー(☆)
巨大ロボットのギャグものですか、火星ロボを思い出しますね。むむむ、こういう話には何と言ったものか。普通の理論は通じませんし、面白ければ正義という気もするんですが。残念ながら私には笑いが空回りしているような印象を受けました。真面目なロボットものを書いていたのなら勘違いですけど、ギャグにしては設定が重たすぎたかと。もっとバカバカしかったら気軽に笑えるんですけどね。ニニンがシノブ伝みたいに。
・キャラクター(☆☆)
キャラクターがもっと自由に動いていれば、話全体が面白くなったと思います。今のままではどうにもストーリーの為に動かされている気がして、純粋に楽しむことができませんでした。
・構成(☆☆☆)
やっぱり構成はシンプルな方が分かりやすくて良いですね。往年の少年漫画やギャグ漫画もシンプルでしたし、その方が受け入れてくれる人も多いんでしょう。
・表現(☆☆)
所々リズムが悪かったように思えます。ロボットものなのだから詳しい描写が必要なのは分かっていますけど、どうしても素人には詰まりながら読むことになる部分もあるので、そこら辺で立ち止まってしまいました。勢いで読ませる話ですから、リズムが崩れるとどうにも違和感があるんですよね。
・総合(☆☆)
真面目に訳の分からないことをやる。すごいよ!!マサルさんさん辺りを連想させますが、その手のギャグは感想を言うのも難しいわけで。簡潔に纏めてしまった部分もありますけど、個人的な意見を言わせて貰えるのなら残念ながらあまり楽しむことはできませんでした。あるいは、もう少し構成だけでなくストーリーも表現もシンプルにしてみれば楽しめたのかもしれません。個人差はやっぱり、あると思いますけど。
作品名:夢の終わりとロマンティック・ディストピア
担当キャラ:稗田阿求
幻想郷縁起を編纂してからしばらく経つが、もう時代遅れになったのかと時の流れに呆れてしまう。あれから幾度も異変が起こり、新しい住人が表の舞台に登場した。地下の妖怪達との交流はまだ活発ではないものの、守矢神社と命蓮寺の出現は記憶に新しい。中でも守矢神社は精力的に幻想郷と関わる意志を見せ、時には八雲紫と衝突することもしばしばだ。神々の行動力は表に裏にと活動的であり、その原動力が守矢の巫女であることは門外漢の私にだって想像がつく。
・ストーリー(☆☆☆☆)
東風谷早苗。本作はその彼女を主軸に置いた物語であり、成長した兎や胡散臭い天狗や年相応の巫女が周りに添えられている。残念ながら神々は頼りなくも、それでも大事な巫女の為に下げたくもない頭を下げている。矜持の高い神々ゆえに、どれほど早苗が大切に思われているのかが窺えた。
幻想郷の早苗にだけ注目したのでは、本作を楽しめたとは言い難いだろう。だが現実側の早苗にしても、頼れる友人がいるのは心強い。しかし彼女たちでは真に解決が出来るわけもなく、かの賢者は博麗霊夢を遣わせた。幻想郷ではお目にかかれない物や情景に、心を奪われた霊夢の可愛さたるや想像するだけで顔がにやける。出来れば私も外の世界を見てみたいものだが、その資格も機会も永遠にあるまいて。羨ましい話である。
現実側が愉しげに進む一方、幻想側には重い空気が張りつめている。こちらでは東風谷早苗が倒れているのだから当然としても、やはり背後で影響しているのは天狗の組織だろう。腹黒集団との戦いに挑むのが薬師の弟子というのだから、役者が違うのではないのかと首を捻りたくなる。師匠である八意永琳ならともかくして、その弟子にどこまでの抵抗が出来るのか。結果として、この考えは間違えであった。今となっては彼女以上に適任はおらず、彼女だからこそ全て上手くやったのだと思えてしまう。何より腹黒の頂点である射命丸文を落とせた功績は大きい。逃げることを止めた兎はかくも恐ろしいものか、私も気を付けなければなるまい。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
外の世界ではMVPという制度があるそうだ。最も素晴らしい活躍をした人物に贈られる賞を、この欄では授与したいと考える。何でも取り込んでしまう日本人らしい特質に異を唱えていた私ではあるが、やはり素晴らしい物は共有すべきだろう。考え出した人物には悪いが、少しばかり拝借させて貰うことにした。
キャラクターの魅力という意味では、悔しながらヤニ好き天狗に勝る人妖はいなかった。良い意味でも悪い意味でも、彼女が一番話をかき回したのは事実だ。霊夢にしろ紫にしろウドンゲにしろ、物語という流れに沿って動いている。然るにあの天狗は己の欲求だけを至上とし、最終的には天狗すらも裏切る始末だ。自由人と言えば聞こえはいいが、要はやりたい事をやっているだけである。そのくせ、それが魅力的に見えるのだからタチが悪い。普段の霊夢でありながら、それでもどこか少女らしかった霊夢も捨てたがい。しかしここは涙を呑んで、あの天狗にMVPを贈るとしよう。そう言ったところで、鼻で笑われるのがオチだろうけど。
・構成(☆☆☆☆☆)
この話を語るうえで、構成の欄を飛ばすわけにはいかない。現実側と幻想側の応酬。下手をすればちぐはぐになり、二人の早苗が出会うシーンも台無しになってしまう。伝えるべき情報の差異。それが大きくなればなるほど構成は破綻する。それが長い物語であればあるほどに。
読み終えてから、私は感動したのは構成だった。違和感らしい違和感もなく、さして詰まるところなく最後まで淀みなく読めたのだ。奇をてらう構造も結構ではあるが、こういう単純ながらに凝った構造ほど一番難しいのだと私は思っている。ならばそれを見事に達成できたこの話には、星を五つ輝かせるしかあるまい。
ちなみに私は現実側を東風谷早苗の夢だと解釈していた。当然、最後まで読めば勘違いだと気付くのだが、得てして最初の閃きほど当てにならないものである。
・表現(☆☆☆☆)
視点が変われば印象も変わる。これを複数人で書いたのなら、なるほど上手くやったものだと膝を叩く。幻想側と現実側。描写が微妙に違っていても、それは見ている人間の違いだと言えば合点がいくからだ。
幻想側は現実的に書かれ、現実側は幻想的に書かれていたように思う。いや言葉の韻を優先させすぎたか。どちららも現実的、あるいは外の世界の生活により近い印象を与えるよう書かれていた。おそらく外の世界に生きる人々は、こちらを楽園だと思っているのだろう。本文中でも書かれていたが、ここはまさに『楽園に近づけようとそれぞれが出方を伺っている伏魔殿』なのだ。安易な楽園という言葉で括れるものではない。陰湿なやり取りもあれば、冷酷な打算だって渦巻いているのだ。
『からん、ころん』という表現が本作では何度も書かれている。鬱陶しいほど連続されれば、嫌でも読者の印象に残ってしまうだろう。東風谷早苗を呼ぶ音だとしたら、何度も連呼された理由も自ずと理解できる。
・総合(☆☆☆☆)
最後まで褒め言葉で埋め尽くすというのも芸がないし、これを楽しめなかった方々から稗田の目は節穴かと憤りの声が聞こえてきそうだから敢えて引っかかった部分をあげようと思う。重箱の隅に思えるかもしれないが、参考にして貰えるのなら私としても有り難い限りだ。
東風谷早苗は京都の大学に通っている設定であった。しかし、どうして京都なのだろう。地元の大学に通えなかった理由があるのか、はたまた京都の大学に何かしらの魅力を感じていたのか。外の世界の教育制度に精通しているわけではないのだから偉そうな事は言えないものの、どうして遠く離れた大学に行くこととなったのか。一言か二言でも理由が欲しかったと思う。
構成の欄でも書いたと思うが、私は現実側を東風谷早苗の夢か何かだと思っていた。そう思わせるのが目的ならば作者の思惑に填った形にはなるけれど、何故そう思ったかと言えば一番大きな理由が現実側のキャラクター達である。どこかで聞いたような名前に、幻想郷の誰かを思わせる描写。ミスリードを誘う材料だとしても、あまりにも酷似しすぎてはいないだろうか。それも一人や二人ではなく大勢なのだ。遊び心があると言えばあるけれど、そこまで幻想側のキャラクターと似せる意味があったのかと首を捻ってしまった。
以上の二点は我ながら些末な違和感だと思うのだが、最後の一つは最初から最後まで気になっていたことだ。私は結局この話を、どこか他人事のように読んでしまった。当然、これは他人事だ。稗田阿求には何の関係もないし、空想の世界で起きた出来事である。しかし、だからこそ小説は読者を自分の世界に引っ張らなければならない。然るにこの話で一番足りなかったものは、危機感であるように私は思う。
東風谷早苗が倒れた。神々が動揺している描写も極力抑えられ、周りの妖怪達は淡々と事を進める。ウドンゲが激高するシーンに差し掛かり、ようやく彼女たちの熱意が伝わってきた。出来ることなら、この熱意を最初から届けることができたのなら。東奔西走する彼女たちの言動を、もっと我が事のように思えたのかもしれない。
熱意が欠けていたのではなく、伝わってこなかったのだ。読解力不足だというお叱りの言葉もあるかもしれないが、私は私なりの印象をここに綴らせて貰った。ただ少なくとも、この話が面白かったことに変わりはない。ゴシップ天狗は腹立たしいほどに格好良かったし、博麗霊夢は驚くほどに可愛かったし、ウドンゲの成長には感動を覚えた。そして何よりも東風谷早苗の魅力を伝えることを出来たのが、何よりも素晴らしい点だった。
素敵な話をありがとうと、最後に作者へ伝えつつ、筆を置かせて貰うことにしよう。
作品名:はれて世界の雨はやむ
担当キャラ:多々良小傘
うらめしやー。どう、驚いた? まさか一行目から驚かしにかかるとは思ってなかったでしょ。今も心臓がドキドキいってるんじゃない? 小傘お姉さんは大人だから、素直に言っても笑いはしないよ。そこらの怪談を嘲笑している御仁だって、私の技術にゃ度肝を抜かれるって評判だしね。本当に。
大妖怪だって驚かせるわよ。だけど守矢の巫女は勘弁ね!
・ストーリー(☆☆☆)
私には姉妹がいないけど、いたらこんな風になったりするのかな。何だか悲しいけど、でも最後には大団円なわけだし。これはこれで素敵なのかもしれない。あ、でもやっぱり喧嘩するのは嫌だな。痛いの嫌いだし。
綺麗な姉妹愛がしっかり描かれていたけど、インパクトには欠けるわ。そう、この話はもっとインパクトを盛り込むべきなのよ。それこそ話が崩壊するほどのインパクトを。そうしたら読者も驚いてくれるでしょうね、きっと。やっぱり物語は驚きよ。なんだったら一行目にうらめしやー、と入れてもいいわね。驚くよ、みんな。
引っかかったのは、フランドールの行動ね。地下室に閉じこめられているという割りには案外出歩いているし、パチュリーの図書室にも入り浸っている。これじゃあせっかくの地下室から出すという目的も薄れちゃうね。パチュリーとの関係が無くなるけど、やっぱり過去の出来事が起こってから一歩も地下室を出ていないという方が、終盤の展開も盛り上がると思うよ。
後は最後の和解のシーン。何だかんだで許しちゃったレミリアだけど、あそこはちゃんと叱って欲しかったなあ。それで許したら感動的だったかも。誰からも叱られなかった妹に向かい、どれだけ傷ついても歩くのを止めない。そこまで妹を思っているのなら、やっぱり叱ってあげた方が良いと思うんだけどね。。
・キャラクター(☆☆☆)
美鈴が格好良かったし、メイド妖精達も生き生きしていた。フランドールの葛藤はちょっと分かりにくかったけど、大まかな感情は伝わってきたね。問題はレミリアかな。妹を大切に思うのは痛いほど理解できるけど、どうして400年も放っておいたのか。どう接していいのか分からず、ついつい後回しにして400年という解釈も出来るけど。それにしたって、どういう切っ掛けで400年後にフランドールを解放しようと思ったのか。それが全く分からなかった。
パチュリーの登場がレミリアの心情を変えたのかな。なんにせよ推測するしかないわけだけど。少なくとも美鈴じゃないことだけは確かだね。彼女にしたって何かしたかっただろうに、どうして400年も放っておいたのか。なんて、同じ疑問が浮かび上がるし。
でもレミリアが良いお姉さんなのは間違いないね。うん、あちきの勘がそう告げている。確かに時間は掛けたけど、ちゃんと仲直りできたし。めでたし、めでたしの終わり方がよく似合う姉妹だと思うよ。
・構成(☆☆☆)
序盤のシーン同士は繋ぎが悪く、ちょっと混乱する場面が幾つもあったかな。逆に終盤はパズルみたいに連結して、一気に終わりまで読んじゃった。序盤と終盤が同じぐらいの繋がりだったら凄かったんだけど、そこが残念と言えば残念。
・表現(☆☆)
序盤の冒頭に赤い絨毯と蝋燭の描写が連続するシーンがあって、あれがテンポを崩していたね。上手く機能すれば情景を印象づけることが出来たんだろうけど、今回はちょっと失敗だったかな。くどく感じたし。
終盤の心情描写は熱かったね。普通の姉妹ならこんな事にならないけど、あのスカーレット姉妹だから。ただ歩み寄るだけでこの迫力だもの。凄いなあ。
・総合(☆☆☆)
もっとインパクトを! 心が震えるような驚きを! 具体的にはうらめしやー、を!
そうは言ったものの、世の中にはインパクトが必要のない作品もあるわけで。この話はそういうパターンだったかな。特出した何かがあるわけじゃないけど、読後感の爽やかさは心地良いし。スカーレット姉妹の喧嘩や仲直りは王道だけど、敢えて奇策に走らず正道をしっかりと書き上げたって感じだね。真正面から挑み掛かるってのが一番難しいって氷精が言ったけど、まぁ彼女だけは例外かなあ。安置だし、正面。
無邪気な少女も、やがて立派な吸血鬼になる。読書家だったフランドール。そう考えれば、地下室に引きこもったのは当然の選択肢だったのかもね。少なくとも誰とも会わなきゃ、誰も傷つけることがないし。二人の母親が言った壁ってのは、あるいはこれからなのかもしれない。
私も頑張らないといけないね。吸血鬼も驚かせるよう、驚かす技術に磨きをかけるわよ! ぎゃおー!
作品名:抱いて眠る少女達
担当キャラ:西行寺幽々子
はじめまして。この話を担当させて貰うことになった西行寺幽々子と申します。枕と言えば紫が担当するべきなんだけど、霊夢の抱き枕に夢中みたいだから。代わりに私がやってきました。どうぞ、よしなに。
・ストーリー(☆☆)
全体的に無駄がなく、シンプルでとても分かりやすいわ。幻想入りする人物は多々あれど、抱き枕が幻想入りという着眼点は面白いですし。三者三様の反応を描いたのも好印象ですわ。美味しいですものね、三色パン。ただシンプルすぎるがゆえに物語の起伏には乏しいから、インパクトや驚きを求める方々には合わないでしょう。
・キャラクター(☆☆☆)
天狗にしろ魔法使いにしろ覚り妖怪にしろ、まるで恋する乙女のような可愛らしさがあったわ。昔を思い出すようで、読みながら少しにやけてしまいましたもの。特にこいしのケースはお気に入りです。大好きな人に振り向いて貰えない辛さは、誰にだって過酷なものでしょう。例え、相手が抱き枕だったとしても。
・構成(☆)
三者の反応を描くという意図は、しっかりとこちらにも伝わってきたわ。ただ問題は順序かしら。こいしのケース。さとりが避けている理由は抱き枕だったわけだけど、三番目の話だったから序盤ですぐにオチが読めてしまったの。あれではこいしが間抜けに思えてしまって、さとりの相手が抱き枕であることを隠そうとするのなら一番目に持ってきた方が良かったかもしれないわ。
・表現(☆☆☆)
文とこいしは心情が中心。霊夢の場合は淡々と話が進んでいたわね。文のケースは三人称だったわけだけそ、少し視点が変わりすぎかしら。椛寄りかと思えば文寄りになって、あまりコロコロと視点を変えると読者が心情をイメージする妨げにもなりかねないわ。こいしのケースは一人称が上手く機能していたわね。『大事な妹が、たった一人の妹が。あなたを想って、泣いていますよ―――?』このくだりには胸をうたれるものがあったわ。
・総合(☆☆)
三者三様の反応ともなれば、どれも同じように描くわけにはいかない。それぞれのパートがそれぞれの魅力を出そうとしていて、見事に独立していたわ。個人的には各パートが微妙に影響しあっている話も見てみたいけれど、それは我が儘かしら。
文のケースでは抱き枕を持っている側、霊夢の場合は傍観者、こいしの場合は抱き枕に嫉妬する側と中心になる人物の立場が違っていたのも面白かったわね。もしも此処にもう一つ加えるとしたら、抱き枕の視点のかしら。付喪神でも宿らなければ、そんな話はあり得ないんでしょうけど。
ちなみに私はこいしのケースが一番お気に入りよ〜。
作品名:動きやすい大図書館
担当キャラ:古明地さとり
普通の魔女には他人の心が見えない。どれだけ魔法を極めようと、赤子の覚りにも勝てないということ。弾幕ごっこで負けることはあっても、情報戦や頭脳戦で負けるつもりはありません。本作品とは一切関係の無いことですが、思いついたので何となく書いてみました。
古明地さとり。こいしの姉です。あの魔女とは遠からぬ関係ですから、今回の依頼を喜んでお引き受けしました。だけど本当に喜んでいるのかどうか、あなたは確かめることもできない。クスクス、覚りじゃないってのは本当に不便なんですね。
・ストーリー(☆☆☆☆)
パチュリー・ノーレッジが嫌々ながら移動図書館の司書をする。纏めてしまえば単純な話ですね。しかしこれだけ単純な本筋を、あれだけカラフルに彩ったのはお見事の一言でしょう。シーンとシーンの関連性が若干薄い気もしましたが、終わってみれば清々しい話を一本読みきった気分で一杯です。魔女が自ら望んでやらなかったことも、ストーリーをより面白くした要素の一つですね。まぁ、あの魔女が嬉々として人前に出るとは思えませんけど。
タイトルは変わった魔女に対して付けられた物なのか。それとも単に移動図書館をそう呼んでいるのか。会えば作者の意図も分かるのですけど、小説はそれが出来ないから稀に腹立たしい気分になります。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
軽妙な会話に、どこか巫山戯たようなやり取り。紅魔館というのは実に愉快な所ですね。テレビカメラに収めて毎週放送したくなります。吸血鬼と従者、魔女と悪魔。二人いるだけで漫才が始まるというのは、何とも希有な場所だと思いますよ。
キャラクターが生きているというのは、こういう話のことなんでしょうか。若干斜め上の方へ向かってる方々もいましたけど、それはそれで味があるという表現で収めておきましょうか。素敵なことです。
・構成(☆☆☆)
移動図書館終了のお知らせ。そこからもう一波乱欲しかったですね。蛇足で冗長になるかもしれませんが、多少は魔女が心変わりしたようなシーンをエピローグの前に持ってきたら良かったのかもしれません。あくまで匂わす程度の伏線で良いんですが。
そうすることで、最後の小悪魔の独白が映えると思います。
・表現(☆☆☆☆)
ああ、あの独白は素晴らしかったですね。直接的な表現ではなく、扉の音でパチュリーの外出を示している。そうすると自然にパチュリーが変わっていることも分かり、あの大図書館での日々は決して無駄ではなかったんだと知る。たった一言でそこまで効果を秘めているとは、いやはや凄いの一言です。
・総合(☆☆☆☆☆)
誰も彼もが他人の気持ちを理解しようとしない。黒い魔法使いは自分勝手だし、里の守護者は正しき行いが全てを凌駕すると信じて疑わない。魔女は面倒くさがり、悪魔はそんな彼女を楽しそうに見つめる。誰か一人でも分かり合おうとすれば、きっとこの話は成立しなかったでしょう。
守護者が魔女に気を遣い、移動図書館の申し出を引き下げたら。親友の気持ちを酌んで、紅魔館の主が移動図書館をオブジェとして置かしてくれたら。そう仮定すれば、周りにいたのが分からず屋だったからこそパチュリー・ノーレッジは変われたのかもしれません。出会う人ですら、誰もパチュリーを助けてくれようとはしませんし。
そこで段々と妥協していき、最後には自らが成り代わるように動く大図書館となったのですね。動きやすいとは言えませんけど、それでもきっと悪魔は笑っているのでしょう。橋姫じゃありませんけど、何とも妬ましい話でした。覚りの私にとっては、特に。
作品名:コレクタブル・コレクトネス
担当キャラ:射命丸文
どうも、清く正しい射命丸です。烏繋がりということで、この話は私が担当することになりました。これが評判なようでしたら、いっそ文々。新聞に新しいコーナーを設けるかもしれません。最近はめっきりと事件も減りましたから、こういう時事に影響されない企画が必要になってくるんですよ。世知辛い世の中ですね、まったく。
・ストーリー(☆☆)
烏の習性を上手く利用した話に仕上がっていました。私もよく椛や他の天狗から怒られるんですよ。そんなキラキラ光るだけの物とか集めて何になるのかと。いやはや、烏にとって光り物は役に立つアイテムじゃないんです。つまり集めることが手段ではなく目的なのであって、この話のお空さんには人並み以上に感情移入してしまいました。
しかしながら、前半部にあった掃除のシーン。全体の半分以上を占めているわけですが、この長さは些か冗長な気もします。喧嘩から仲直りのシーンは綺麗に纏められていたんですけど、前半が長かっただけに物足りない気分にもなってしまいました。バランスを考えるのなら前半を短く纏めるか、あるいは仲直りまでのシーンをもっと増やすしかありません。後者は話自体が冗長になる可能性もあるので、あまりお勧めしませんけど。
・キャラクター(☆☆)
お空さんの気持ちは痛いほど分かります。同じ烏という要素を差し引くとしても、彼女の感情は登場シーンの少なさとは裏腹にしっかりと描かれていました。お燐さんも問題なかったですし、こいしさんは理解しようとするだけ無駄でしょう。
気になったのはさとりさん。残念ながら彼女だけは何を考えているのかまったく分かりませんでした。おかげで仲直りするシーンも、彼女の台詞だけはどうにも違和感がベッタリで。お空さんを大切に思っているのは間違いないんでしょうけど、だったら何でわざわざ宝物と言い直したりしたのか。冷たく突き放すことで彼女の目を覚まそうとしていたと解釈すれば、その後のシーンで酷くショックを受けている理由が説明できませんし。
出来ればさとりさんはお空をどうしたかったのか。一本筋の通ったキャラにして貰いたかったです。
・構成(☆☆☆)
前半の長さ。指摘するとしたらそれぐらいでしょう。
原因から喧嘩、そして仲直り。非の打ち所がないくらい王道な構成でした。
・表現(☆☆☆)
出だしのシーンが不思議でしたね。あれを読んだ人の殆どは、淡く不可思議な物語が始まるかと思ったでしょうに。気が付いたらドタバタのコメディになっていました。意表を突くという意味では大成功でしょうけど、あのままの調子で続く話というのも読んでみたいですね。
・総合(☆☆☆)
さとりさんがお空をどう思っているのか。そして前半と後半のバランス。これらに気を付ければ、もっと話が引き締まって面白さも増したはずです。後はそうですね、題名をもっとセンセーショナルにした方が人の目をひくでしょう。
『驚愕!!』とか『戦慄!!』などが私のお薦めです。兎にも角にも見出しにはインパクトが無いといけません。だから多少の誇張は許容範囲内ですよ。読ませてしまえばこっちのものですから。小説も新聞も同じです。それで文句を言うようならば、こちらとしても弾幕ごっこで応じるしかありません。ご不快になった方や不満を抱いた方は是非とも妖怪の山までお越し下さい。私の大親友でもある犬走椛があなたのお相手をしてくれることでしょう。当人には無許可ですけど。
作品名:魔法使いの恋物語
担当キャラ:アリス・マーガトロイド
人形使いとしての本能かしら。小説や演劇を見るとき、私が注目しているのは構成の部分。緻密な伏線を見事に回収しているストーリーなんて、まるで精巧な操り人形が動いているように思えるわ。だからあらかじめ言っておくけれど、私はストーリー性やキャラクターよりも構成の方を重要視している。だからといって他の欄を適当にするつもりもないわ。ただ一番重要なのが構成というだけで。
アリス・マーガトロイド。何の因果か魔理沙の話を担当することになった人形使いよ。人形劇のように飽きさせないのが好ましいけど。どうかしら。
・ストーリー(☆☆)
結局のところ、プロローグは何だったのかしら。幼少期の魔理沙が妖怪になったことがあり、それを霊夢を止めたとか? 霊夢らしき人間を女の子と称していることからも、少なくとも過去話であるのは間違いないはず。一度妖怪になったら人間であることに拘るのか、それとも単なる勘違いなのか。
前者だった場合、最後に言った霊夢の台詞が納得できないわね。妖怪になってしまったのなら、それは果たして魔理沙自身の力なのかしら。様子を見る限りでは心も妖怪になってしまったようだし、そんな力を霊夢が認めるとは思えないわね。あくまで私の推測だけど、結局答えはあやふやなまま。明確な答えを出せとは言わないけれど、すっきりしないストーリーだったことは間違いないわ。
・キャラクター(☆☆)
魔理沙の人間臭さが痛いほど伝わってきたわ。だとしたら聖からは人間臭さを取り除くべきなんだけど、私には人間同士が弾幕ごっこをしているようにしか思えなかったわね。もっと二人の違いを極端にした方が分かりやすかったんじゃないかしら。
もう一つの問題は聖の白蓮の立ち位置ですね。彼女はただ魔理沙と戦いたかったのか、それともお節介が目的で魔理沙と家族を仲直りさせたかったのか。いずれにせよ戦う目的が曖昧だったせいで、聖白蓮というキャラクターの立ち位置がよく分からなかったの。自分を全否定されているのに、そこまで強く反応しなかったし。まるで魔理沙の怒りをぶつける為だけに登場したキャラクターのように思えるわ。
・構成(☆☆☆☆)
真実は見えてこなかったものの、最初にあのシーンを挟んだのは面白い演出だったわ。理解できないシーンをプロローグにして読者の好奇心を誘う。本文がプロローグを連想させないものであるなら、ますます好奇心は募るでしょうね。どうやって、ここからあのプロローグに繋がるのかと。エピローグを読まない限り、こう思う人が多いでしょう。あれは聖白蓮との戦いに敗北し、霧雨魔理沙が選んでしまったバッドエンドなのだと。だからハッピーエンドに向かいつつある展開が信じられない。どうやって話を繋ぐのか、とりあえずでも最後まで読みたくなる。常套手段ではあるけれど、それが上手く機能していたわね。
エピローグの相手が霊夢というのも優れた演出意図だったように思えるわ。プロローグと同じ相手なだけに、読者は勘違いに気付くことができる。そして、そこから思考が回り始めるのよ。ひょっとしたら、あれは過去の話じゃなかったのかしらって。気になってプロローグを読み返してくれたら、作者としては大成功ってとこなのかしら。まぁ、あくまであれが過去話だったの前提が必要だけど。
敢えて問題をあげるとすればバトルの長さね。いえ、ずっとバトルシーンだった事と言い換えましょうか。息もつかせぬ激しい戦い、手に汗握る立ち回り。上手くバトルシーンが書けたとしても、ある程度の量が続くと息切れを起こしてしまうわ。一気に読める人もいるでしょうけど、やっぱりワンシーンぐらい休憩を挟んだ方が良かったわね。例えそれが数行だとしても、一息つけるシーンがあるだけでバトルが全体的に引き締まるはずよ。
よくあるじゃない。解説役が試合について語るシーン。あれも一種の休息ね。最初から最後までただひたすらにバトルというのは疲れる人も多いでしょうし。もっとも、バトルシーンが大好きな人から見れば余計なお世話になるかもしれないのよねえ。まぁ、一長一短。後は作者の判断かしら。
・表現(☆☆)
所々で文章がおかしかったり、誤字が目立つのはマイナス要素ね。だけど大問題という程じゃない。多少は気になるレベルの話だったわ。
それよりも注目したいのは、どうしてこの話は魔理沙の一人称じゃなかったのか。プロローグの勢いで一人称を書いても良かったでしょうに。その辺が不思議だったから、☆の数は二つにさせて貰ったの。
・総合(☆☆☆)
決して構成にインパクトがあったわけではない。古くから使われている技法だけど現代でも充分に通用する技ではあったわ。メジャーなだけに扱いも難しいし、そういった意味では☆三つというのは辛すぎたかしら。だけど全体的にインパクト不足だったのは否めないし、そこが問題点ね。いっそ魔理沙を妖怪になんて考えてはしたけど、それだとバトルシーンでの台詞を全否定してしまうことになるし。そもそも話が成立しなくなるわ。
この話を魔理沙が書いたなら、と仮定するのも面白いわね。まぁ、あの子のことだから気付いたら霊夢も倒してるぐらいのストーリーになるんでしょうけど。それはそれで興味深いかしら。
作品名:明日は明日の風が吹く
担当キャラ:十六夜咲夜
完全で瀟洒な従者こと十六夜咲夜ですわ。お嬢様を差し置いての担当というのは甚だ心苦しいですけど、構わないからやってみなさいとのお墨付きも出ましたし、思う存分に言いたいことを言って帰らせて貰います。さほどお時間はとらせませんよ。時間の大切さは、誰よりもしっかり理解しているつもりですから。
・ストーリー(☆☆)
読み終わってから真っ先に気になったのは、この話のメインはどこだったかということ。聖を思う村紗の心情だったのか、それとも河童と聖の絆だったのか。はたまた命蓮寺と聖の関係性なのか。三匹の兎を追いすぎて、結局どれも仕留めきれなかった印象ね。仮に聖と河童の絆をメインにするとしたら、前半の騒動が回想へ行く為だけのように思えてせっかくの和解シーンが安っぽく思えてしまうわ。やっぱり聖と命蓮寺の関係をメインにした方が良いと思うけど、その場合はまた新たな問題が生まれてくるわね。それはまぁ、構成の欄で語りましょう。
もう一つ気になったのは、聖が魔界をどの程度に苦手としていたか。言葉ではかなり苦手にしたようだけど、実際はあっさりと行ってしまったわけだし。読んでるこちら側からすれば、何だその程度のものだったのかと思ってしまうわ。もう少し聖の葛藤があれば、最後の出航シーンも感動的になったはずよ。出来ればお嬢様も彼女のように苦手なものを克服して欲しいのだけれど、種族としての弱点だから難しいでしょうね。
・キャラクター(☆☆☆☆)
河童が人間を友好的に思う理由。それが聖の行いにあったというのは、とても面白くて斬新な設定だと思ったわ。過去の話がしっかりしていると、自然とキャラクター達も生き生きとしてくるように思うのは私の気のせいかしら。一輪も面倒くさそうな性格をしていたけど、ああいう子も和の仲にいないと何かと不便なものですし。
決して一枚岩ではないけれど、聖が関わると一致団結。まるで紅魔館を見ているようで人ごととは思えなかったわね。
・構成(☆)
結論から言えば、村紗達と聖が和解するシーン。それを挟む位置がおかしかったわ。私だったら、河童達との回想の後で入れるでしょうね。河童達の作った物だから直せる。同じように私達の絆だって修復できるはずだとか。……失礼、今の台詞は忘れてちょうだい。ちょっと余計なことを言い過ぎたわ。
何にせよ、回想シーンの前で和解してしまったら後は惰性で読んでいるような感じになってしまったわね。何というか、長いエピローグを見ているようだったわ。要するにクライマックスが物語の中盤にあってしまったのよ。もっと最後の方に持ってくれば劇的になったでしょう。
・表現(☆☆)
キャラクターの内面を()で現すのはよく使われる技法ね。だけど、ちょっとこれを便利に使い過ぎた感があるかしら。視点が移り変わり、各キャラクターの内面を()で表現していくのは、たまに混乱してしまう事もしばしばあったわね。これは誰の気持ちなんだろう、って。
・総合(☆☆☆)
構成がもしも違っていれば、☆を四つ付けていたでしょう。色々と粗はあったけれど、キャラクター達がしっかりと生きていれば充分に話は面白くなりますし。仲違いしたまま終わるよりも、やっぱり和解して笑顔で締めたいものです。こういう話は。
ちなみに似たような事が紅魔館で起これば、お嬢様はひたすらに隠して、妹様がそれに怒って、パチュリー様が我関せずと本を読み、美鈴と小悪魔がおたおたして、私に全部のツケが回ってくるんでしょう。……仲良いのかしら、ウチ。
作品名:幻想の守護者 〜the Guards of Fantasm〜
担当キャラ:レティ・ホワイトロック
夏よりも冬が好きなレティ・ホワイトロック。同じように熱血な話よりも冷酷な話の方が好きね。勿論、例外はあるけれど。雪女の昔話なんか、その典型例ね。私達はどこまでも残酷になれる一方で、心のどこかでは温かさを求めている。だからチルノを羨ましく思っているのかしら。あの子、熱い冒険譚とか大好きだから。
・ストーリー(☆☆☆)
好き嫌いにおける例外。まさか担当する話がそれに当たるとは思わなかったわ。外の世界から流入した破滅という概念。博麗の巫女が機能しなくなった状況で、人妖達は外の世界への引っ越しを決意する。終末を題材にした話なら、ここから先は外の世界でどうなっていくのかを描くんでしょうね。洩矢諏訪子が画策したような、ドロドロの話が展開していたはずよ。しかし巫女も紫も幻想郷を見捨てず、人妖達も破滅に立ち向かう。八雲紫は破滅の元を見つけ出し、かくして幻想郷に平和が戻った。
王道中の王道。これが上手く機能したものだから、人形から聞こえる人妖達の声に鳥肌が止まらなかったわよ。かくも愛された幻想郷、それを作った八雲紫というのは幸せ者ね。まぁ、私もいざとなったら季節なんて無視して現れるかもしれないけど。
熱い展開もあった反面、違和感を覚えた部分もあった。肝心の八雲紫が破滅の元を見つけ出すシーン。理屈は納得できるんだけれど、どうしてもっと早くから探さなかったのかしら。時間が掛かるのは70万もいた場合なのだから、数が少ないうちに探しておけばすぐに見つかったのかもしれない。数が多くなければいけない理由が必要だったのなら、そういう描写が欲しかったわね。
・キャラクター(☆☆☆☆☆)
誰もが幻想郷を愛し、命を省みず破滅に立ち向かう。彼ら彼女の美しさときたら、雪の結晶もかくやという感じ。こんなにも美し生きているキャラクター達に、文句や不満なんてあるはずもないわ。共通の敵がいれば一致団結という概念も、幻想入りしたのかしらね。
・構成(☆☆☆)
気になったのはエピローグの物足りなさ。あれだけ熱く、重厚な戦闘シーン。各地で奮闘する人妖の描写。終盤の盛り上がりが良かっただけに、エピローグがあっさり終わると肩透かしを喰らったような印象を受けるわ。乾杯の音頭で終わるのは美しいけれど、もう少しボリュームというか密度を増しても良かったでしょうね。
各地の戦場を描写したシーンを、あるいは冗長だと言う人も中にはいるかもしれないわ。私としてはあのシーンこそが終盤の肝だと思うし、どの場面にしたって削ぐ必要はないと思うけど。そういう声もあるかもしれない、ぐらいは頭の片隅に置いた方が良いのかもしれないわ。
・表現(☆☆☆☆)
淡々とした文章が物語と上手く組み合わせっていたわね。戦闘シーンにしろ非戦闘シーンにしろ、すんなりと情景や動作が頭の中に入ってきたわ。最小限だけど最大限の効果がある文章。あまり装飾が多すぎると、せっかくの物語を台無しにしてしまうし。まぁ、これも場合によるんでしょうけど。少なくとも、この話にはこの文章が適切だったと思うわ。
・総合(☆☆☆☆)
雪女が溶けるほどの熱い展開。それを纏めきれなかったエピローグに難点はあるものの、一つの物語として見ればこれほど熱い小説もないでしょう。ただ全体を通した時、どうして霊夢は心変わりをしたのだろう気にもなるわね。いえ、心変わりというのは表現がおかしいわ。博麗の巫女は元々から異変に立ち向かう存在だし、どうして異変の元凶が分からないぐらいで諦めた風になっていたのかと言い直すべきかしら。でも倒すべき敵が全く分からないのなら、ああなるのも頷けるし。要するに落ち込んでいた霊夢が、どうして急に異変と立ち向かう気になったのかということだけど。それはきっと博麗で、霊夢なんだからでしょうね。
さて、今年の冬に渡す良いお土産が出来たわ。写してチルノに見せてあげましょう。興奮しすぎて溶けなきゃいいけど。溶けたら溶けたで、彼女なりの褒め言葉なんでしょう。きっと。
作品名:てのひらをたいように
担当キャラ:永江衣玖
永江衣玖です。総領娘様が海を題材にしたのなら魚介類のあなたが相応しいと勝手に私を担当に決めたそうです。確かに深海魚も魚介類ですが物事には言い方というものがあります。総領娘様もいずれは立場ある御方になられるのですから言葉遣いには一層気を付けて貰いたいものです。私は怒っていませんから。本当。まったく。
・ストーリー(☆☆☆)
幻想郷に海を作るため、霊夢と戦う霧雨魔理沙。確かに彼女は変わった人間ですし、幻想郷に海を作るという目的も魅力的ですし、何よりあの博麗霊夢に一泡吹かせるというのは痛快なことでしょう。妖怪達が魔理沙に協力したのも頷ける話です。
全勢力を出そうとしたせいか無理に本筋へ絡めようとした部分もありましたね。妹紅などは完全に蛇足だと思ったのですけどお祭り騒ぎという意味では必要だったのかもしれません。計画が順調にいきすぎるのも読者からしてみれば退屈ですし。障害という要素があるのなら妹紅さんの乱入にも納得できます。
ただ魔理沙さんと霊夢さんの戦闘に関しては思うところもありました。つまり戦う必要があったのかという事です。本文中では『問題は、ここに至るまでの準備を異変と認識した博麗の巫女が必ず邪魔をしに来るということだけだった。博麗霊夢は異変を解決するために必ず霧雨魔理沙の前に現れる。逃げても隠れても無駄』と書いてありますが、要は霊夢さんが来るよりも早く計画を実行してしまえば良かったのではないかと思ってしまいます。霊夢さんとの戦いが時間稼ぎである可能性もありますが。その場合はもっと焦った描写を増やして頂ければ分かりやすかったかと。
・キャラクター(☆☆☆)
さすがは幻想郷の方々です。お祭り騒ぎともなれば、誰も彼もが目を輝かせていました。賑やかなのが大好きな人達ですから無理からぬ話ですけど。独自解釈による様々な妖怪達の関係性も魅了的ではありましたが、出来れば一つか二つぐらいの伏線を張っていて欲しかったものです。例えば輝夜さんとにとりさんの関係、あるいはにとりさんと妹紅さんの関係など。あらかじめ仄めかす程度でも説明されていたら納得できるのですが。
それにしてもこういうお祭り騒ぎに興味を示さないとは。総領娘様も成長されたんでしょうか。ひょっとしたら海が嫌いなだけかもしれませんね。カナヅチですし、あの方。
・構成(☆☆☆)
私も幻想郷に生きる者だからでしょうか。せっかくのお祭り騒ぎ。もっと盛り上げて行こうという気持ちがあります。ストーリーの欄で妹紅さんが乱入する必然性が不明瞭だと申し上げましたが、どうせならもっと小競り合いのあった方が面白かったかもしれません。魔理沙さんや霊夢さんの戦いを引き立たせる程度の。幻想郷VS霊夢という構図は面白いですけど多少は霊夢さんサイドのキャラクターがいても良かったのではと私は思いました。
バトルものとしてはお手本のような構成でした。まずは戦いを盛り上げる序盤があり、そして実際の戦闘がある。それが終われば纏めに入る。手を加える余地はないのですが面白さという観点から見ると、出だしで提示された謎があまりにもあっさり解決されたので驚きました。失踪する神や河童。消える水。多少はもったいぶって霊夢さんが謎に挑むシーンがあっても良いように思えましたが、会議の次でいきなり海の話ですから。せっかくの謎が勿体なかったのではないかと思います。
・表現(☆☆☆)
霊夢さんに海という幻想を見せてやりたい。その気持ちは痛いほど伝わってきました。しかし残念なことに、霊夢さんサイドの心情描写が甘かったかと。構成の欄でも言いましたが、この話は全体的に霊夢さんサイドの話が欠けているように思えました。だから最後の『お前らもだ! 手を貸したのに負けたのよ!?』と怒鳴るシーンに違和感を覚えてしまったんでしょう。魔理沙が主人公のような話ですけど霊夢さんなりの心情がもっと多ければ戦闘も映えたのではないでしょうか。
肝心の戦闘については門外漢ですけど、先が早く読みたくなるほどテンポの良い戦いでした。それなりの分量はありましたが気にならなかったです。幻想郷らしい立体的な戦いでしたし神や妖怪の力を借りたとはいえ、魔理沙さんらしい戦い方でした。他人の力を借りてでも戦いたいというのは、人間独特の欲求だと思います。妖怪達はプライドが高いですから極端に頼み事を嫌いますし。
・総合(☆☆☆)
前半後半共に多少の粗はありますがメインのバトルがしっかりしていますから。それほど気にはならないでしょう。霊夢さんサイドの話が足りない点は影響がありましたけど。それでも全体的に見れば一本筋の通った骨太な話だと思いました。最後に宴会というのも幻想郷ならではの終わり方ですし。宴は人々の心を癒します。
あの博麗も多少は変わってくれると楽なんですが変わらないから博麗なんでしょう。それでも今回の異変で彼女が何かを感じてくれたのなら魔理沙さんも戦った甲斐があるというもの。そういった意味では魔理沙さんの人徳というより霊夢さんの人徳なのかもしれません。これだけの多くの妖怪や神様が関わるだなんて滅多にあることじゃありませんから。
なんだか私も宴会を開きたくなってきました。総領娘様でも拐かして宴の準備でも始めましょうか。
作品名:シトラスグリーンの約束
担当キャラ:水橋パルスィ
なんで恋愛モノの担当が私なのかしら。これはひょっとして当てつけなの? 橋姫に恋愛劇とか、選んだ奴は頭がおかしいとしか思えないわね。どうなっても知らないわよ。私だって自分を抑えきれる自信なんて無いんだから。ああ、どうも水橋パルスィよ。それじゃ妬ましい恋愛劇のレビューでも始めようかしら。
・ストーリー(☆)
物語はごく普通の恋愛ものよ。恋する乙女と鈍感な男。二人の間には障害があって、最後はそれを越えてのハッピーエンド。ああ本当、現実だったらこんな事ありえないのに。愚痴りながら幸せそうな二人が妬ましいわ。
シンプルで分かりやすくはあるけれど、それだけという印象が強いわね。もっとドラマチックにしろとは言わないけど、慧音の葛藤はもっと掘り下げても良かったんじゃないかしら。ドロドロとした展開の方が私は好きだし、それが解決した時のカタルシスは感動にも繋がるそうよ。そのまま恋破れて別れるのが最良の展開なんだけど。妬ましいから星は一つよ。
・キャラクター(☆☆)
お堅い先生も、恋をしてるとただの女の子になるのね。これだから恋愛は恐ろしい。奴らは魔物よ。迂闊に隙を見せると喰い殺される。私だって冷静になってれば、あんな真似なんかしなかったのに……。
男が鈍感なのは王道だけど、現実でも割とそうだものね。いや、女の方が鋭すぎるのかしら。どっちにしろ破局してくれるのなら最高なんだけど。
・構成(☆☆)
言い方は悪いけど、教科書通りの恋愛劇ね。上手く調理できれば極上なのだけど、ちょっと工夫が足りなかったかしら。ラストのもう一つぐらいどんでん返しがあって欲しかったけど、このままでも好きな人は充分に楽しめるでしょうね。
・表現(☆☆)
所々で物語の印象が変わるのは書いてる人が違うからかしら。統一しろとは言わないけど、多少の戸惑いは覚えてしまったわよ。
・総合(☆)
普通の人なら星を二つか三つ以上は付けるんでしょうね。だけど恋愛劇と言うだけで、私の評価は星一つよ。何が楽しくて他人が仲良くなる様を見なければいけないのかしら。恋する慧音なんて、本当もう見てるこっちが恥ずかしかったわよ! あの鈍感な男を殴りつけてやろうかと何度も思うぐらいに!
平凡ではあったけど、私もこんな恋をしてみたいとは思うわ。だからこそ、カップル共は破局しろ。ああ、妬ましい妬ましい。
作品名:こんふりくとしすたぁず!
担当キャラ:ルナサ
姉妹ネタなのにお呼ばれしなかったプリズムリバー家の長女、ルナサ・プリズムリバーよ。いやまぁ、分かってはいたけどね。こんな根暗で陰気な私が呼ばれたところで立ち直ることなくエピローグまでウジウジするだけだから参加できるわけないって。だけど割り切れないからこそ、呼ばれなかったわけで。ああ、死にたい……。
・ストーリー(☆)
コンフリクトは衝突という意味かな。各姉妹の衝突と苦悩がメインのテーマなんでしょうね。私達姉妹もよく衝突するから、その苦しみは痛いほど分かるわよ。ただ秋姉妹がちょっと浮き気味だったわね。忠告役は物語から一歩高い位置にいるから、自然とそうなるのは理解できるんだけど。古明地姉妹に見せつけてやったのは何故なのかな。単に踊っていた場所にいただけなのか、それとも他の意図があるのか。紅姉妹と戦った理由も不明ね。招待されて無理矢理にフランドールと戦わせられたのなら、ご愁傷様としか言えないけど。
・キャラクター(☆☆☆)
ストーリーでも書いたけど、ここでも秋姉妹が浮き気味ね。はっきりとした目的もないし、どうにも最後まで悪い意味で捕らえどころのない姉妹だったわ。まるでリリカやメルランのように。本当、あの二人は何を考えてるのか分からないし……。
古明地姉妹と紅姉妹の方はしっかりとキャラが動いていたわ。特にこいしは無意識ゆえの自由奔放さがしっかり伝わってきたし、ああいう子が妹だったら……それはそれで嫌ね。連れ回されるのは苦手だし。
・構成(☆)
一人称が頻繁に変わる荒技は、上手くやらないと読者を混乱させてしまうのよ。おかげで、これはどういう場面なんだろうかとか、この台詞は誰なんだろうと確認しなければ先に進めなかったわ。それに各場面の繋がりが、どうにもチグハグな感じがしたし。そう、まるで私達姉妹のように。ああ、和解するのはいつの日かしら……
・表現(☆☆)
所々に妖しい文章はあったけど、大まかな部分では問題はなかったね。ただどうでも良いことだけど、紅葉を椛と書いていたから天狗と勘違いしてしまう瞬間があったわね。いやまぁ、紅葉でも椛でも意味は同じなんだけど。
・総合(☆☆)
秋姉妹がもっとストーリーに溶け込んでいれば、もっと良い物語になったでしょうね。それだけに惜しいなあ。仲違いしていたりすれ違っている姉妹の仲を良くしているとか、馬鹿らしくても良いから目的が欲しかったわね。何となく呼ばれて、何となく戦って、秋が終わるから踊っていたという印象しかなかったわ。それはそれで神様らしくて良いのだけど、個人的には何かの為に動いて欲しかったわ。
姉妹のすれ違いってネタは在り来たりだけど、各姉妹を描いて、それぞれの微妙に違う葛藤を描いたのは素敵だったわ。ラストの秋姉妹のシーン、一見すると仲が良さそうに見えてもどこか儚い姉妹愛には鎮魂歌を聴いているような印象も受けたし。前半が明るかっただけに、あそこのシーンは一際輝いていたわね。
考えてみれば、私達姉妹の出番なんて初めから無かったのね。出たら出たで騒ぐだけ騒いで、話を台無しにするだけでしょうし。はぁ、本当に死にたい。
作品名:薔薇は咲くより、散るよりも
担当キャラ:レミリア・スカーレット
この話の担当が私とは、運命は随分と性格が悪くなったみたいね。まるで当てつけみたいだわ。確かにお世辞にも良好と言えないけど、うちの姉妹関係も。そもそもすれ違うほど距離が近くないのだから、少なくともこの話は私達の参考にはならないでしょうね。うん、多分。
・ストーリー(☆☆☆☆)
インパクトは無いけれど、胸にくるものはあったわね。私の親友様も長らく病を患っているようだけど、かなり苦しそうにしている時もあるし。そういう時って本人だけじゃなく、周りも案外苦しいのよね。どうしたら良いのか分からなくて。
この話は病人も周りの人間も、上手い具合にライトスポットが当たって、尚かつ立ち位置から心情に至るまで丁寧に説明してあったわ。例外の子が一人いるけれど、彼女はいわばさとりの目標。変に心情を描写するよりも、これぐらいの扱いがベストね。
さて、結局のところプロローグとエピローグの時間軸でこいしはどうなったのか。含みのある展開は嫌いじゃないし、それを明かさない終わり方にも好感がもてる。こういう謎を考え、同士達と語り合うのも一つの愉しみ方ですもの。早速、パチェに読ませて討論の開始よ。まぁ、おそらくは生きてるんでしょうけどね。古明地こいしの方は。
・キャラクター(☆☆☆☆)
こいしの第三の眼を開眼させる。それが目的なのだから、古明地さとりという妖怪のしたたかさには呆れるどころか喝采を送りたいぐらいよ。どうしてそういう考えに至ったのか、詳しい描写はないわね。だけど、最後まで読めばある程度の推測はつく。そもそも肉親なのだから、の一言で納得してしまうわ。私のところは、どうだか知らないけど。
・構成(☆☆☆)
現在、過去、未来、現在。プロローグとエピローグの現在が未来よりも先の未来であるのは間違いないはず。実はこいしが料理を振る舞っていた時間軸と同じだったという展開もあり得るけれど、そこまで意表を突く必要はないものね。微妙に辻褄も合わなくなるし。
いわば壮大な回想シーンだったわけだけど、不思議と退屈はしなかったわ。やっぱり最初にある程度の謎をちりばめておくと、興味をそそられて読んでしまうものなのね。
・表現(☆☆☆☆☆)
心理描写にしろ、地の文にしろ。物語に適切なリズムであり、尚かつ読みやすいものであったわ。うんうん。これだけ視点が別れていると混乱する恐れもあるのに、最後まで違和感なく読めたのがその証拠よ。
・総合(☆☆☆☆)
さて、困った。褒めた欄もあるのだけれど、全体という意味では☆は四つなのよ。何かが足りないことは分かっているんだけれど、それが出てこないのは歳のせいかしら。いやだね、年寄りは。
説明のない部分もあるけれど、それは不快感もなく、むしろ儚さを際だたせる演出のように思えるし。ううむ、どうしたものか。
………………。なるほど、プロローグとエピローグがお燐になっている。だからこそ読者はどうしてもお燐が中心寄りの印象を持ってしまうわけだ。だけど実際はお燐も視点の一つ。上手く分散させただけに、それが仇となってしまったのが原因かしら。まぁ、取り立てて直すような部分ではないけれど、私の違和感は解消されたわね。
ありがとう、パチェ。あなたも読んでいたなら話は早いわ。さあ、それじゃあ話し合いましょうか。あの最後のシーンについて。
- 作品情報
- 作品集:
- 最新
- 投稿日時:
- 2010/08/01 21:02:31
- 更新日時:
- 2010/08/01 21:02:31
- 評価:
- 0/0
- POINT:
- 0
- Rate:
- 5.00
このれびゅう読んでからまたラグナロク読みかえすのもまた一興。
そういえばウチの猫のせいで気がついたら毛玉で(ミ'∀'ミ)モサモサなんですがどうしたらいいですかね?
一粒で三度おいしいラグナロクですね。
ところで一つ、悩み事があるのです。
フランちゃんの髪をもっさもっさ食べたい衝動に駆られるのですが、実際に食べると髪って喉に張り付くじゃないですか。どうやったら上手く飲み込めるようにできると思いますか。
そうか、レビューをSSにするとこうなるのか、面白い
ところで東方シリーズでルナティックどころかハードさえクリア出来ないのですが、いったいどうすればクリア出来ますかね?
ところで創想話には教授SSが少ないと思うのですが
どなたか補給してくださいませんか(チラッチラッ
つまらないといわれてる作品は短いのな。てか企画でも嫌々レビューした感があるのがいくつかあるやね
無理やりやる必要なかったんじゃない?
サテところで、僕の部屋で妖怪リモコン隠しの暗躍がこのほど激しくなっているのですが、どうにかできませんでしょうか。
SSでレビューする形を各キャラにやられるというのも面白い発想でした。
ところで紅魔館という館で門番をしている子がいるんですが、どうやったら紅魔館までいけますでしょうか。
私らの作品に関しましてもしっかりとしたレビューありがとうございます!
作品についての疑問については後書きで書いた方がいいかな・・・
このレビューの人選は意図があるのであろうか・・・
ところで、幻想郷に行きたいです。どうしたらいいでしょうか?
自分の作品をレビューして貰うのは、やはりむず痒いものですね。仰る通りのご指摘の数々。次回は精進いたします。
それから、私たちの作品の批評が旧作キャラという点がとても嬉し……いやいや、旧作好きなんて言いませんけどね。
ところで、教授の復活はいつになると思いますか?
首を長くして待っているのになかなか姿を現してくれなくて、大層困っているのですがどうしたらいいでしょうか。
好きなキャラクターでもある映姫様にオール☆5をもらって有頂天になっております。
個人的にはスパーゲッティについての批評も読みたかったところですが……w
まぁそれはそれとして、このレビューSSも立派な大作だと思いますよ。
ところで、藍様の尻尾をお土産に一つ持って帰りたいのですが、何か条約に引っかかったりしますかね?