京都亡霊事件簿

作品集: 最新 投稿日時: 2010/06/14 03:00:08 更新日時: 2010/07/31 22:21:34 評価: 29/75 POINT: 4050 Rate: 10.72
「ねえ、知ってるメリー? 最近京都に幽霊が出るらしいわよ」
「此処は京都よ。霊ぐらい珍しくないわ」
「それが蝶を率いる一風変わった霊らしいのよ。近頃、暑いし調べる価値はあるでしょう」
「暑いならエアコンがあるじゃない」
「風情がないわねぇ」

 女が夜道を息を切らしながら走っていた。
 足音と荒げた息以外何も聞こえない静かな夜。
 吸い込まれそうな程暗い背後の闇を何度も何度も振り返る。
 そこには何もない。
 なのに、女は顔が引きつる。
 まるで見えない誰かが追ってきてる様に。
 女には聞こえている、ヒタヒタと離れない足音が。
 月明かりさえ無い冷たい道で、後ろから見えない誰かの足音が何時までも消えない。
 女は泣きそうだった。声を上げて助けを呼びたかった。
 だけど、周りには人気なんてない。
 声を上げれば後ろから声が帰ってくる気がして助けを呼ぶなんて出来ない。
 どのくらい走っただろうか。毎日歩いてるこの道はこれ程長かっただろうか。
 幾ら走っても終わりが見えない。
 ふと、気づけば少し先に人がいる。
 女は立ち止まった。
 先にいる誰かは女の方へ歩き出す。
 歩いてくる人は綺麗な蝶の柄が入った着物を着ている。
 無意識の内に一歩下がった。
 着物の女は扇子で口を隠しながら言う。

「こんばんわ。こんな夜に鬼ごっこかしら?」

 女は息を整えながら、相手を観察した。

「それとも、かくれんぼ?月の神さえ見てないこんな晩に」

 いきなり近づいてきたと思ったら意味の分からない事を喋りだす着物の女。
 だが女は安堵した。誰かが居るだけで現実に戻れた気がした。
 後ろから響いていた足音はもうしない。
 女はようやく息を整え終わり、着物の女に返事をしようとした。

「捕まえた」

 後ろから声がした。
 背後から手を回されぎゅっと抱きしめられる。
 回された手は冷たい。まるで死人の手だ。
 背から首が伸びてきた。
 女の顔を覗き込んでくる、その顔は目の前にいる着物の女の顔だった。
 悲鳴をあげる女。
 笑う着物の女。
 女は意識が閉ざされる前に蝶に包まれた気がした。

「ひっさつ、分身の術」

 倒れた女を着物姿の亡霊が抱き抱えた。
 道の脇に寝かせると、すーっと消えていった。
 また、何処から身を搾るような悲鳴が聞こえては消えていく。



「で此処が噂の心霊スポットよ」

「いつから秘封倶楽部は霊を暴くようになったのよ?」

「元々、オカルトサークルでしょ」

 京都の一角。霊が出ると噂され、人が立ち寄らなくなった道。
 最初は興味本位で幾らかの人が来ていたが、次々と襲われたため今ではもう誰もいない。
 そんなオカルティックな場所を見て蓮子は楽しそうである。
 蓮子を見てため息をつくメリー。
 メリーの様子に構わずに蓮子は噂の道を捜査する。

 道は何の変哲もない一本道。街灯が等間隔で並び左右には壁が走っている。
 霊が居そうな柳の木も魔よけのお札も貼ってない。

「メリー何か見えない?」

 メリーは黙って首を振った。
 そもそも太陽が燦々と照りつける中で霊を探す方が間違ってるとメリーは思う。
 何処からか蝉の鳴き声まで聞こえてきそうだ。
 そんなメリーを尻目に蓮子は熱心に道を調べている。
 ジリジリと光が皮膚を焼いていく。
 汗ばんだ顔をメリーは帽子で仰いだ。

「蓮子。霊で納涼を取るのもいいけど、お茶でもしない。暑いのよ」

「メリーは軟弱ね。まあ、そろそろ休憩にしますか」

 蓮子とメリーは辺りを見渡すとやや寂れた感じの喫茶店を見つけた。
 看板のペンキが剥がれているのが遠目でも分かる。

「あそこにしましょ」

「仕方ないわね。他にないし」

 蓮子とメリーは喫茶店に入った。
 ギーっと耳障りな音を立てながら、扉が開く。
 中には店員らしき人以外いない。

 適当なテーブルに腰掛、注文を頼んだ。

「まだ、続けるの霊探し?そんなに会いたいなら墓場に行けば居るわよ」

「私が会いたいのは蝶を操る優雅な霊よ。」

「でも、先の場所には影も形もなかったんでしょ?」

「霊に影も形もないわ、メリー。この霊は神出鬼没なんだから何処にだって出てくる当てなら嘘のようにあるのよ」

 ことりとアイスとジュースがテーブルに置かれた。
 店員は目礼をすると、下がった。
 アイスを食べながらメリーは聞いた。

「その霊、他に特徴ないの?見上げることが出来ないくらい大きとか」

「うーん、昔の貴族が着るような高そうな着物らしいわよ」

「死人なんてだいたい着物を着るものよ。此処は日本よ」

「後、食べ歩きしてるとか」

「霊じゃなくて餓鬼じゃないの?まあ、今は美味しい物が多いから分からなくもないけど」

「今のは所詮合成食品よ。天然物に勝てるかしら」

メリーは小首をかしげた。

「あら、合成のほうが美味しいから天然は無くなったのよ」




 その夜、幽々子の前に出された膳は異彩を放っていた。
 ご飯茶碗に山々と盛られた白米。重厚な漆器に入れられた蜆の味噌汁。
 磁器に鎮座する一夜干しの岩魚。野沢菜の漬物。筍の煮物と大根のなます。
 ここまでは普段通りなのだが、ポリエチレンテレフタレート製の容器、
 外の世界で俗にペットボトルと呼ばれるものに満たされた得体の知れない液体が全てをぶち壊していた。

「……妖夢、これは何?」
「外の世界の飲み物です」

 聞きたいのはそこじゃないわよ、と幽々子は声に出さずため息をついてから、
 細かな傷が目立つペットボトルに視線を落とした。
 中身の正体や気になる成分表を記したラベルも剥がれ落ちていて、
 白玉楼へ至る旅路の険しさを物語っていた。当然、賞味期限の表示も薄れて判読不能となっている。

「ああ、顕界までお使いに行く途中で寄った香霖堂で買ってきたんです。けっこう値が張ったんですよ」
「そうなの」
「はいっ」

 幽々子の不満、あるいは不安を察したのか妖夢は説明を付け足すが、
まだまだ合格点には届かない。赤点さえかすらならない高度を絶賛飛行中である。
 液体は玉露よりもきつい緑色で、細かな気泡が大量に発生している。
 紫がたまに差し入れてくれる炭酸飲料だと信じたいが、発酵もとい腐敗している可能性も否定できない。
 なにせ外の世界の商品は見た目で判断できない場合が多いからだ。

「さあさあ飲んでください。きっと美味しいですよ」

 きっと。きっと美味しいのね。幽々子は天を仰いで行方知れずの妖夢の師匠を怨んだ。
 もう少し、もう少しだけ長く妖夢を教育してくれていたら、と。
 主の悩みなど露知らず、妖夢は楼観剣でペットボトルの口を切ると、
 幽々子愛用の湯飲みに注ぎ始めた。途端に野性味あふれる青臭い何かが立ち込める。

「これは……しその香りね。香霖堂の店主はどんな飲み物なのか言ってなかった?」
「彼の能力ではこれが飲料水だということしか分からないそうです。
でも、外の世界の飲み物だから美味しいはずです!」
「せめて試飲してから店頭に並べて欲しいわねぇ」

 妖夢は意地悪をしているわけではない。性格はきわめて真面目であり、
主である幽々子に対して絶対の忠誠を誓っている。
幽々子の喜びを己の喜びと考えているほどであるが、
最大の欠点は崇高な志に実力が追いついていないことであろう。
それゆえにせっかくの忠誠心が空回りして幽々子を困惑させてしまうのだ。
 外の世界のものイコールいいもの。紫の気まぐれに支えられた自信の危うさに、
妖夢は気がついていない。幽々子はもう一度ため息をついてから、ニコニコと微笑む未熟者に説教を始めた。

「聞きなさい、妖夢。確かに紫が持ってきてくれる食べ物はどれも美味しいわ。
けどね、それは一本の木を見て森全体を判断しているようなものじゃない? 
現にこの飲み物は不気味な色をして、形容しがたい……」
「飲んで、くださらないんですか?」

 遠回しに拒絶されて妖夢の顔が斜めに傾き、眉が不安そうに揺れた。うるんだ瞳は芸術的ですらある。
決して妖夢は計算して愛らしいポーズをとっているわけではない。
幻想郷でそのようなポーズを計算してとれる従者は咲夜くらいであろう。
つまり、妖夢は天然の主人殺しなのである。
 寵愛する家来のために主人はときとして命をかけねばならぬことを、
幽々子は本能的に悟った。理性は粛清されたのだ。

「もちろん飲むわよ! そりゃっ!」
「やったあ!」
「ゴヒャーッ!!」
「ゆっ、幽々子さまー!?」

 幽々子と妖夢の間に緑色にきらめく架け橋が生まれた。
炭酸に慣れていない亡霊が一気飲みするには、この飲料水の味と炭酸はいささか強すぎたのだった。
 七転八倒して苦しむ幽々子を大慌てで駆け寄った妖夢が背中をさすったが、
入ってはいけない場所に浸入して暴れまわる液体の前には効果などないに等しかった。

「げほっ……うう……」
「しっかりしてください! ああっ、息をしてない!?」

 そもそも、死んでいる幽々子に呼吸も食事も無用なはずである。

「炭酸と人口甘味料の合わせ技……見事だわ……」

 しばらく妖夢に抱きかかえられていると、
必死の念が伝わったのか幽々子の身体から痛みが引いてきて、
独語する余裕も出てきた。しかし、体力を消耗してしまったためか、
まぶたが急速に重さを増しているのも感じ取れた。
 心待ちにしていた夕食を食べる前にとんでもない目に会ってしまったものの、
幽々子の中に怒りやといった感情が芽生えることはなかった。
妖夢に悪気がないことは重々承知していたし、何よりも目じりに涙をため、
心配そうにのぞき込む大切な従者の顔を見たら、そのような感情が芽生えるはずもないからだ。

「ふふっ、失敗を繰り返すのは、私が甘やかしてるせいでもあるわね」
「え?」
「ううん、何でもないわ〜」
「ひゃっ!? く、くすぐったいれしゅ……」

 幽々子は穏やかに笑いながら目の前にあった妖夢のほっぺをつまんだ。
妖夢の身体は女としてもまだまだ未熟だが、同時に未成熟の魅力を備えているのだった。
特にほっぺなどその最もたる部分だと幽々子は考えている。
 煩悩を満たすささやかな復讐を終えると、手をさらに伸ばして切りそろえられた髪の上に置いた。
今度は主人としての役目を果たすときだった。

「申し訳ありません。私があんなものを買ってきてしまったばかりに」
「気にしないで、妖夢。飲むと決めたのは私なんだから。
次からは自分で飲んでみてから私の前に出して欲しいけどね」
「はいっ、必ずや!」
「もっとも、次があればの話だけど……はあ、なんだか眠くなってきちゃったわ。
妖夢、後始末を頼んだわよ……」
「幽々子さま?」

 幽々子の手が妖夢の頭を離れ、続いてゆっくりとまぶたが閉じた。
単に眠りについただけなのだが、色の薄い幽々子から力が抜けていく様子は儚く、
まるで二度と目を覚ますことがないようにすら思える。
幽々子よりも前に寝ようとせず、その寝姿を見慣れているはずの妖夢さえもぞっとさせるに十分だった。
 亡霊、西行寺幽々子の意識は従者の声の届かぬ場所へと落ちていった。



 生暖かい風に頬をなでられて、幽々子は目を覚ました。
 視界に入ってきた空はまだ暗く、三日月がぼんやりと浮かんでいた。
心なしか目に突き刺さる月光は弱々しく感じられ、手で傘を作る必要もない。
再び眠りにつこうとしたとき、幽々子の意識が覚醒した。

「あら?」

 なぜ起きて一番に夜空が見えるのだろう。
主の振る舞いに呆れた妖夢によって白玉楼から追い出されてしまったのだろうか。
 答えを求めて幽々子が上半身を起こした瞬間、光の濁流に襲われた。星空が地上に現れたような、
それどころか幻想郷の夜でさえ見られないような光の海原が眼下に広がっていたのだ。
まぶしくて、思わず目を細めてしまうほどの。
 木やレンガとは明らかに異なる素材で作られた巨大な塔。
至る所に張り巡らされた灰色の道。その道を走る不思議な乗り物。そこかしこから光があふれ出ていたのだ。

「あらあらまあまあ……」

 外の世界。
 真っ先に思い浮かんだ言葉だった。そして、直感でそれは正しいと確信した。
巨大な塔はビル。道路が灰色なのはアスファルトのせい。
不思議な乗り物とは自動車。目を焼かんばかりに輝き続ける光の源は電気なのだろう。
紫が話してくれた内容と全て一致するではないか。
 親友から伝え聞いて想像を膨らませるだけだった世界が手の届くところに広がっている。
そう考えただけで身体の奥から何かがこみ上げてきた。
だが、同時に妙な既視感も一緒に浮かんでくるではないか。
 奇妙な焦りに突き動かされて視線をさまよわせた先に、
ビルがひしめく中で取り残されたような五重塔がたたずんでいた。

「……あの五重塔は、東寺?」

 京都を守護するために建立された東寺。
対となっていた西寺は歴史の波間に消えてしまったが、
東寺は再建を繰り返しつつ千年以上の時が経過しても都を守り続けていた。

「ちょっと違う気がするけど、あれは東寺だわ。じゃあ、ここは京の町なの……?」

 慌てて周りを見回せば、ビルの谷間で埋もれるようにして残る寺社がいくつも見つかった。
 記憶に残る大裏内や貴族の邸宅の姿はないが、
規模こそ小さくなっているものの神泉苑が健在だった。昼間なら美しい庭園も見えただろう。
東山の山麓にも八坂神社や清水寺らしき建物がライトアップされている。
足を伸ばせば平等院も見られるかもしれない。

「やだ、どうして覚えているのかしら。京都には行ったことなどないのに」

 だって私は冥界の亡霊だから。
 懐かしさと違和感が手を取り合って踊り、頭が痛くなった。
ふらりとよろめいた先に足場はなく、幽々子は落ちた。
 宙を切り裂き、落下する途中で幽々子は自分が白亜の塔の上に立っていたことを知った。
展望台にいる人間は誰一人として落ちていく亡霊に気づかない。






 幽々子はもう覚えていないが、彼女は京都と縁がある。
後に歌人として歴史に名を残す西行の娘として、幽々子は京都で生まれ育ったのだ。
 父親の死によって妖怪化した西行妖を封印するために幽々子は自害したが、
しばらく経ってから亡霊となり冥界で幽霊の管理を任されることになる。
この際、生前の記憶は失われてしまったはずだったが、
数百年ぶりに故郷の空気に触れて、わずかに残っていた断片が蠢動したのだろうか。






 目を開くと、お馴染みの木目が迎えてくれた。
白玉楼、幽々子の寝室の天井である。外に面した障子は暗く、
さらさらと雨の音が聞こえてくる。今日は梅雨らしい天気のようであった。
 きちんと布団がかけられていて、隣にはかわいい妖夢の寝顔。
心配して寝ずの番をしてくれたようだが、睡魔という強敵と闘って負けてしまったらしい。

「変な夢……」

 幽々子はつぶやいたが、夢の一言で片付けるにはあまりに生々しかった。
光の濁流を瞳が覚えているし、生暖かい風は肌が覚えている。
幽々子は京都を見ている間、これが現実だと信じて疑わなかったし、夢だとは思いもしなかったのだ。
 まるで大陸の思想家、荘子が見た胡蝶の夢ではないか。
どちらが夢でどちらが現実なのか判別しがたい。
今、白玉楼にいることが現実であると言い切れないのだ。常人ならば恐怖して身震いするところである。

「世の中は夢かうつつか うつつとも夢とも知らずありてなければ」
「ふぇっ? あ……幽々子さま、どうしたんですか?」

 幽々子が思案にふけっていると、和歌に反応した妖夢が飛び起きた。
じかに畳で寝てしまったので、ほっぺに赤く跡がついてしまっている。
何となく触りたくなってしまうが、ここは我慢することにする。

「この世は現実なのか夢なのか、結局あるようでないものだ、という儚い歌よ。
まあ、夢でも現実でも楽しんだ人が勝ちね」
「はぁ……」

 唐突に言われても要領を得ない妖夢は首をかしげた。
幽々子としては親友のように従者と教養に富んだ言葉のキャッチボールを楽しみたいところだが、
半人生経験不足の妖夢と九尾の狐を比べるのは酷であろう。
それに、半人前従者というのも趣があるものなのだ。

「どんな時であれ、楽しむことが大事なのよ〜、妖夢」
「頬をつつかれていても、ですか?」

 少なくとも、幽々子は荘子よりものんびり屋であった。
 結局、煩悩に耐え切れなくなって妖夢の真っ赤なほっぺをつんつんしていると、
自分もかまって欲しくなったのか腹の虫が音を上げた。そういえば、昨晩は夕食を食べそこねていた。

「もちろん。でも、お腹がすいてしまったわ。今朝は湯豆腐を食べたい気分かな〜」
「え、まだ冬ではないですよ」
「梅雨は寒いでしょ? 寒いから湯豆腐を食べるべきなの」
「屁理屈に聞こえますが……」
「固いわねぇ。朝食の時に今日見た面白い夢の話をしてあげるから、ね、お願い」
「分かりました。しばらくお待ちください」

 豆腐と昆布があったかな、とつぶやきながら妖夢は寝室を出て行った。
大好きな幽々子にお願いされては、妖夢は断るすべを知らない。むしろ剣の腕が鳴るのだった。

「そう、本当に面白い夢だったのよ」

 雨音が大きくなり、気温が下がっていく中、幽々子は目を閉じながら夢の余韻を噛みしめていた。





「……不思議な出来事は続けて起きるものなのかしらねぇ」

 湯豆腐をたらふく食べた日の夜。いつものように布団へ入ったはずが、
気がついたら橋の上に立っていた。前回と違って太陽が空を支配しており、
橋の上を大勢の人々や自動車が行き来している。
 何か目印になるものはないかと対岸を見ると、家々の向こうにずっしりとそびえる山が目に映った。
これまた見覚えのある山ではないか。

「あそこの山は愛宕山かしら。すると、この橋は渡月橋? ずいぶん立派になったものねぇ」

 記憶にある渡月橋は牛車がやっと通れるような木造の橋で、
橋の架かる桂川が氾濫するたびに流されていた。
それが今はどうだろう、灰色のコンクリートでできていて、ちょっとやそっとのことで流されそうにない。
 愛宕山が前にあるのだから、くるりと振り返って見える山は嵐山だろう。となると思いつく地名は一つ。

「今日の旅先は嵯峨野ってわけね。できれば紅葉が燃えている時期に来たかったけど……
んん〜、贅沢は禁物。ここに来れただけでも幸運よね。せっかくの夢、楽しむことにしましょ」

 幽々子は一人納得すると、渡月橋を愛宕山の方へ向かって渡り始めた。
昔からの行楽地だけあって観光客の数は多かったが、のんびりと歩く亡霊に気づいた者は誰もいなかった。

「藤原定家さまの山荘がこの当たりにあったはずだけど……もう残ってないのかしら。ショックだわ〜」

 古都京都といえども、幽々子の生きた平安時代から存在する寺社はそう多くない。
まして幾多の戦乱や災害を潜り抜け、当時の姿を残している建造物はさらに少ない。
現代の人々が珍しがったり懐かしがったりする古い建物でも、
幽々子からしてみれば未来のものだったりする場合がほとんどだ。
 幽々子の記憶をくすぐるのは、むしろ灰色の塔に埋もれがちな目立たないものの方だ。

「でも、京を囲む山々は変わらないし、この竹林だって、何で覚えているのか不思議だけど……
ふふっ、駄目ね。難しいことは考えないで、楽しまないと」

 幽々子は竹林の中の小道を行く。
 聞こえてくるのは鳥の歌声と、風に揺れる竹の音だけ。
あれほど騒がしかった観光客もいない、時間が静止したような道だった。

「こんな場所を歩いてると、歌でも詠みたくなってくるわね。竹の葉に風吹きよわる……」
「早く早く!」
「ま、待ってよー!」

 元気な掛け声と共に駆けてくるのは四人の子供たち。
みんなおそろいの制服を着ていて、どうやら幻想郷に馴染みのない修学旅行生のようだった。
慌てているところを見ると、集合時間に遅れているのかもしれない。
 子供たちは幽々子の正面から走ってきてが、すれ違いざまに何かを落としていった。
カメラだ。天狗の新聞屋が持っているものとは違っていても、分かりやすい形をしている。
幽々子はそれを拾うと、決して大きくはないが、澄んだよく通る声で子供たちに呼びかけた。

「カメラ落としたわよー!」

 反応はなかった。子供たちはそのまま小道の角を曲がり、竹林を出てしまった。
 幽々子は再び一人になり、頬をかいた。
これほど静かなのだ、いくら一生懸命走っていても声が届かなかったことはないだろう。
カメラを持ったまま幽々子は考え、やがて答えにたどり着いた。

「そういえば私って亡霊だったわね」

 また頬をかく。
 いつだったか、紫が外の世界の人間は妖怪が見えなくなってしまった、とぼやいていた。
どうも見えなくなったのは妖怪だけでなく、亡霊や幽霊の類も含まれるらしい。
 幻想郷と外の世界の最も異なる部分をまざまざと見せつけられた気分だ。

「これ、どうしようかしら」

 少し悩んでから、カメラは道の真ん中に置くことにした。これなら分かりやすい。
もし戻ってこなかったら、そのときはそのときだ。
長い間忘れられたままでいて、付喪神と化して幻想郷に流れ着くのも面白い。

「あーあ、気分がそがれちゃったわ〜」

 さまよう亡霊は歌を詠むこともなく、ふらりふらりと竹林の奥へと消えていった。





「最近、元気がないですね」

 幽々子が白玉楼の縁側に座り、しとしとと降り続ける雨を眺めていたら、
妖夢が饅頭とお茶を盆に載せて持ってきてくれた。
 妖夢はお茶を幽々子に渡すと、そのまま隣に座ってしまった。幽々子のことが気になるようだ。

「ありがとう。けど、どうして元気がないと思うの?」
「だって、近頃ぼんやりとしてばかりで……ん、これだと普段と変わらないか。
ご飯を食べる量が多くなって……これは違う…………お風呂の時間も長く……あう……」

 あれこれ理由を挙げてみるが、何となく元気がないように見える、といった具合らしい。
これといった決定打を挙げることができなくて、妖夢はうなだれてしまった。
 元気をなくしてしまった妖夢の頭を、幽々子は優しくなでてあげた。
従者とは主人の変化を何となく感じ取ってくれるくらいがちょうど良い。
その方が見えない絆でつながっているようでかっこいいと幽々子は考えている。
あと、饅頭をつかんだ手でなでていることは黙っておいてあげた。

「心配してくれてありがとう、妖夢」
「うう、幽々子さまは元気がないことを自覚していらっしゃるのですか?」
「そうねぇ。ちょっぴり元気がないかも」
「もしかして変な夢を見始めてから……?」
「言われてみればそうね〜」

 幽々子はおどけて見せたが、妖夢の目に真剣な光が宿る。

「夢を見ることは別の世界へ行く手段とも言います。どうか夢の京都に囚われないよう気をつけてください」
「あら、どうやって気をつけるのかしら?」

 幽々子は扇を取り出し、いたずらっぽく微笑む口元を隠した。
夢のことまで生真面目に心配してくれる妖夢は頼もしいが、同時に真っ直ぐすぎてからかってみたくなる。

「あまり夢を見ないようにするとか」
「具体的には?」
「永遠亭に行けばそういう薬を処方してもらえるかと……」
「亡霊用の薬はあるかしらねぇ?」
「それは……あの薬師なら処方できるはずです……きっと……」
「きっとじゃ心もとないわ〜」
「……みょん」

 さすがに千年近く冥界のお嬢さまをやっているだけのことはあり、他人を翻弄することなど朝飯前だ。
特に根が素直な妖夢を翻弄するのは、赤子の手をひねるようなもの。
 再び妖夢は今日の天気のように落ち込んでしまう。幽々子は扇をあおいで勝利を宣言した。

「まだまだ修行が足らんぞ〜」
「むー、おちょくらないでくださいよー」

 ついに妖夢はすねてしまった。目の端に小さな雫がついているのは、
雨が降っているせいではないだろう。
 ちょっとからかい過ぎかな、と苦笑いしてから、幽々子は妖夢の小柄な身体を抱きしめた。
白玉楼にまだ妖夢の師匠がいた頃、妖夢が今よりもずっと幼かった頃から好きだった体勢だ。
褒めてもらうたびにこれをやってとせがんでいた。

「ごめんなさい。妖夢が可愛くってつい、ね」
「私は本気で心配してるんですよ」
「うふふ、私を誰だと思っているの? 死を操る天下の大亡霊よ。
たかが夢ごときに負けると思って?」
「……思いません」

 妖夢の頭の上にあごを乗せたまま、幽々子はしたり顔でささやく。

「でしょ? 私は大丈夫、妖夢は心配し過ぎなのよ。
もし、妖夢がどうしても私を説得したいと思うなら、私よりも強くなりなさい。
せめて妖忌くらいには」

 斬れるようになるには三十年かかるといわれる雨粒を見つめ、妖夢は黙ってうなずく。
妖夢の行く道は長く険しいが、大好きな主人に頼られるためには前へ進むしかない。
 妖夢を抱いたまま、幽々子はもう一度つぶやく。
しかし、その言葉は妖夢に送ったものなのか、自分に送ったものなのかは本人にも分からなかった。

「私は大丈夫だから」





 起きている間いくら気をつけていても、夢は人の意思とは関係なく見てしまうものである。
妖夢に心配された日から幾日か過ぎたが、幽々子は毎晩のように京都を歩いていた。
 この日は祇園を歩いていた。
 風情のある木造の家が多いが、鉄筋コンクリートでできた灰色の塔も目につく場所だった。
もっとも、平安時代の街並みしか知らない幽々子にとっては、
どちらの建物を見ても時間の流れを感じさせるものではあったが。

「ふう、人が多いと疲れるものなのね」

 相変わらず京都は人が多い。
その上、ほとんどが観光客でどこか浮ついた感じが伝わってきて気が滅入る。
亡霊である幽々子の姿が見えていないと分かっていてもだ。
 ふと立ち止まると、あまりに古めかし過ぎて客が寄りついていない茶屋があった。
いかにも幽霊が出そうな店である。

「あら、良いお店。ちょっと休ませてもらおうかしら」

 幽々子は吸い込まれるようにして店の中に入っていった。
 案の定、薄暗い店内には客を待つ店員の姿もない。
これ幸いと置かれていた縁台に座って一息ついた。

「お茶を……」

 お茶をもらえないかしら?
 気が緩んでしまったのか、ついいつもの癖で声をかけそうになり、
その先っぽが出たところでのどに詰まった。幻想郷の人里の茶屋ならば、
内心亡霊である幽々子におびえているかもしれないが、
表面上はほかの客と変わらない対応をしてくれる。
だが、外の世界ではそもそも幽々子の姿が見えていないのだ。

「いけないいけない。ここは幻想郷じゃなかったわ……」
「ぎゃあっ! 出たあ!」

 突然、店の奥からすさまじい絶叫が上がった。幽々子がぎょっとして振り向くと、
外の世界の人間にしては珍しく和服を着た老婆が目を剥いて倒れていた。
どうも驚いた拍子に腰を抜かして動けなくなってしまったらしい。
 限界まで開かれた目は、真っ直ぐ幽々子に向けられている。

「出たって、私が?」

 幽々子が自分を指差して聞くと、老婆はさらに悲鳴を絞り出し、
後ずさりして逃げようとした。離れていても震えている様子が分かり、
見ていて気の毒になるほどだ。
 普段なら助けようとしたかもしれないが、今の幽々子は動けなかった。
幽々子は見たことのないご馳走を前にしたかのように目を細め、
ごくりとつばを飲み込んだのだ。老婆のおびえようも、それに対する幽々子の反応も、異様であった。

「お母さん、どうしたんですか?」

 悲鳴を聞きつけて店の奥から妙齢の女が出てきた。
こちらも一見和服を着ているように見えるが、
着やすい洋服と和服を掛け合わせた和服と呼んでいいか分からないものを着ていた。
恐らく、店の雰囲気を出すために販売されている服なのだろう。

「でっ、でっ、出たっ! 出たんだ!」
「出た? ネズミがですか?」
「化け物! 化け物だよ!」

 老婆は娘の服の袖をつかんで必死に訴えるが、娘はおっとりとした表情を崩さず、
店内を見回した。幽々子と視線は交差したものの、
幽々子の背後にあるショーケースを見ていたように思われた。

「誰もいないじゃないですか」
「そこっ! そこの縁台に!」

 壊れた人形のように震える老婆と、その娘による一向にかみ合わない会話が続いた。
幽々子はむさぼるように二人を見比べていたが、
やがて立ち上がり、老婆に一礼してから店を出て行った。
 幽々子が去った後も、店内の狂騒は終わらなかった。

「ふふ、ふふふ」

 亡霊は京の町をさまよう。不気味に歪んだ口元を桜模様の扇で隠して。

「外の世界にも、まだ私が見える人がいたのねぇ」

 快感だった。人に見られ、驚かれることが、
こんなにも気持ちの良いことだったなんて。
西行寺幽々子という着物を全て脱ぎ捨てて、真の亡霊に還った気分だ。

「どんな人間が私を見ることができるのかしら。やっぱり、迷信深い人? 
それとも妖怪たちが支配していた闇への恐怖を覚えている人?」

 今日の天気は曇り。日が山際へ沈んでしまうと、京の町は一気に暗くなってしまう。
街灯は煌々と光を放って闇を駆逐し、自動車の灯りが闇を切り裂く。
人間は明るい生活に慣れて闇への恐怖を忘れてしまったのだろうか?
 幽々子は正面から歩いてくる男女に目を向けた。
定年退職して夫婦で過ごす時間も増えたから、せっかくだし京都旅行でもしてみるか、
という事情が手に取るように分かってしまう。

「べろべろばあ〜」

 夫婦の前に躍り出た幽々子は、どこぞの唐傘お化けのように稚拙な脅し方をしてみる。
舌を出してお化けのポーズをとり、遠目にはほのぼのとしていた。
ただ、目の焦点が合っておらず、幽々子の正体を何であるかを如実に表していた。
 鴉天狗の新聞屋なら手放しで喜びそうな構図だったが、
ガイドブックを見ながら歩く夫婦は幽々子の前を素通りしてしまった。
やはり老婆と違って見えていないのだ。

「これじゃ駄目みたいね。なら、これはどう?」

 幽々子は口元を歪めたまま、夫婦の背中に扇を向ける。
刹那、死を携えた蝶が音もなく出現し、夫婦目がけて飛んだ。

「うわっ!?」

 長に触れた瞬間、夫婦は倒れた。いくら他人への関心が薄い現代人でも、
道端で人が倒れたなら視線を向ける、そして、倒れた夫婦の次に視線を向けたのは、

「おっ、お化けだ!」
「ひいっ」
「きゃあー!」

 無数の蝶を従えた幽々子に通行人の視線が集まり、混沌が生まれた。

「やっぱり、死は手っ取り早く恐怖を集めるわねぇ」

 人間は闇の恐怖を忘れてしまったのではなく、
闇が怖いからこそ世界を人工の光で満たしたのだ。
ならば、隠してしまった恐怖を夜闇の下に引きずり出してやろうではないか。
そうしたら、亡霊だろうが妖怪だろうが見えるようになるだろう。
 悲鳴を上げて逃げ出す通行人に満足し、幽々子は亡霊らしく冷たく笑う。
だが、薄笑いはすぐに自嘲的な笑いへと変わった。

「生者に見られるのが快感。生者から生者のように見られるのが快感。
結局、私は死んだ身ながら死に馴染めず、生に魅せられながら生き返ることもできず、
未練たらたらだったってこと? 冥界の姫とはよく言ったものね」

 幻想郷の混沌で隠されていた幽々子の内なる願望が、
外の世界で明確な生からの拒絶を受けて顕在化したのだ。

「まあ、いいわ。ここは夢の中。思うがままにやってやろうじゃない。
ふふっ、死者による絶望的な反撃、たっぷりと味合わせてあげるわ!」

 誰に向けてでもなく宣言すると、幽々子は京都の闇へ溶けていった。
程なくして、遠くからサイレンと秩序の音が聞こえてきたが、
夫婦の死体と、その死体にとまった蝶がいる限り、そこで渦巻く恐怖は消えそうになかった。





 朝から、京都を行ったり来たり。
 蓮子とメリーは、道端の喫茶店で休憩を取っていた。
 現在時刻、午後八時過ぎ。
 往来は帰宅ラッシュの、真っ只中。
 古びたテレビが、今日のニュースを伝えていた。
 どうやら、今夜は曇りらしい。
 調査もままならないため、ひとまずやり過ごすことにしたのだ。
 
「メリー、あとは何処が残ってる?」
「宇治から金閣寺まで、仏閣は一通り回ったわね」
「ううん、あとは本当に霊的スポットしかないわね」
「ねえ、蓮子」
「なぁに? メリー」
「仏閣って、普通は清浄だから幽霊が寄り付かないんじゃない?」
「……」
「……」
「で、怪しいところというとやっぱり柳よね」
「枯れ尾花?」
「そんなとこ」

 春ともなれば、陽は長くなる。
 ギリギリで、夕陽が拝める。
 黄昏時の、一番迷いやすい時間帯。
 もう少し、宵が濃くなれば幽霊だって現れるかもしれない。
 少し考えれば、昼間に幽霊が出るわけがないのだ。
 そんなものは、幽霊ではなく気配が薄い人間みたいなものだ。
 そんなアグレッシブな幽霊は、いない。
 多分それは、幽霊のような何かだ。
 誰も知りえない、知りたくも無いものだろう。
 
「でも、本当に手詰まりよ? そもそも、手があったかといえばなかったけど」
「マエリベリー君、質問ばかりではなく提案をしたまえよ」
「帰って寝ましょう」
「馬鹿! メリーのバカ!」

 人目もはばからず、蓮子は声をはり上げて立ち上がった。
 大仰な、頭を抱えて悶える仕草もおまけでついている。
 当人が気にしていなくとも、その連れがそうとは限らないわけで。
 同じ卓にはいても、メリーは努めて他人を装った。
 
「メリー、返事くらいしてよ」
「あら、どうしたの? 同席しただけの知らない人」
「メリーが冷たい!」

 わめき続ける蓮子をよそに、メリーは今日調べた場所をチェックする。
 書店で買い求めた地図に付けられた、数多くの×印。
 新京都のガイドブックに載るポイントと、それをつなぐ道路に点在している。
 清水寺の坂にあるこの喫茶店まで、ぐるりと京都を一周するように目撃情報があった。
 
(幽霊なのに、観光でもしているのかしら?)

 目撃情報もばらばらではなく、ぐるりと順を追っている。
 本当に観光か、人が多いところを狙っているのか。
 
(で、目撃情報にはあともうちょっとで追いつく……はぁ)

 メリーは、小さく嘆息する。
 そもそも、メリーは蓮子の提案に乗り気ではなかったのだ。
 秘封倶楽部はオカルトサークルであるが、ここまで本格的に調査を行ったことはない。
 新しいものに食いつき、古いものを漁る自由気ままな感じだった。
 まさか、幽霊の調査などという王道に行き着こうとは思っても見なかったのだ。
 目をそらした視線の先は、府内のニュースを報じている。
 新京都で、また死亡事故があったらしい。
 事故と言うべきか、事件というべきか。
 自転車から落車したらしい男性が、心臓麻痺であったとか。
 ここ数日で、何人目だろうか。
 メリーは、ぼんやりとそんなことを思う。
 
「さて、そろそろ休憩も終わりね」
「やっぱり行くのね」
「そりゃそうよ。予想では、今度は外周から中に入ると思うの」
「……同意見」
「やっぱり、メリーならわかってくれると思ってた!」

 蓮子は、会計をさっさと済ませてメリーを引き起こした。
 爛々と、猫のような瞳を輝かせて進む相方を見てメリーは思う。
 この快活さは、自分にも真似できない。
 同時に、嫌な予感を呼び起こす。
 好奇心は、猫を殺す。
 猜疑心は、何を生かす?
 
 
 
 
  
 華やかだった。
 神社仏閣はともかく、灰色の塔が立ち並ぶ様は異様の一言に尽きる。
 ぐるりと一周してみたけれど、どこからもその灰色は見て取れる。
 低い家が並んで見晴らしが良かったのに、近づけば無機質な威圧しかない。
 よく見れば、家そのものだって幻想郷じゃありえない石の家だった。
 実感する。
 本当に、永い年月が過ぎたことを。
 それこそ、名残なんか亡くなってしまうほどの時間。
 そしていくら、灰色の塔が建とうとも――。
 
 闇の中だというのに、眩い光に包まれた街を眺めて思う。
 時間が、いくら経とうとも。
 変わらない。
 変われない。 
 街は、かつての雰囲気を残しただけかもしれない。
 けれど、私は違う。
 亡霊だから。
 生きていないから。
 変わることなど、とうに不可能になっている。
 
 往来の人間が、私をどう見ているか知らないけど。
 見えているのかすらも、わからないけれど。
 幻想郷の人間とは、やっぱり違う。
 髪の色でもない。
 着ている物でもない。
 決定的に違うことは、ただひとつ。
 やっぱり、私はもはやここに居ないということ。
 生きてるとか、死んでいるとかじゃなくて、私の居場所はここにはない。
 それは、もはや叶わない話なのだろう。
 白玉楼に移ってからは、こんなことを考えたことはなかった。
 考え始めてしまうと、止まらない。
 
 なぜ私なのか。
 なぜもう一度この場所なのか。
 なぜこんな時代に。
 なぜ。
 なぜ。
 なぜ。
 
 思えば思うほど、悩めば悩むほどに深みにはまる。
 
「なら、考えるのをやめましょう」

 あえて、口に出した。
 今、私が外にいることが異常。
 浮いていて当然。
 居ないことが、普通なのだから。
 
「あら? 普通って何かしらね」

 少しおかしくなって、自分で笑う。
 何人か振り返るも、首を傾げて去っていく。
 見えていないか、狂人に見えるのか。
 どちらでも、同じこと。
 所詮私は、ここに居てはいけないモノ。
 死と生が曖昧な世界に永く居たから忘れていた、この感情。
 冥界には、まだ少し頼りない頑張りやの庭師がいた。
 外に出れば、私に気づく生きている人間がたくさんいた。
 月にも、霊を恐れない兎がいた。
 世界が混ざり合う混沌とした彼岸でしか、私の居場所は無い。
 なぜ、と問うことも意味なんか無い。
 私の問いが届くことは無く、ゆえに応えるヒトはいない。
 

 思えば思うほど、悩めば悩むほどに深みにはまる。
 理性はやめろと言っているのに、もう腰までどっぷりと漬かってしまった。
 まがい者の私は思う。
 生きている人間が、妬ましい。
 ぽつんと取り残されて、自分は思ったよりも脆弱であったらしい。
 どうせ、もうすぐ幻想郷に戻ることになる。
 ならば、何人かを道連れに。
 
 案内は、私が承る。
 いざ、清らかな都へ。
 
 うらめしや。
 
 
 
 
  
「メリー、由々しき事態よ」
「そうね、蓮子と行動してると大抵はそこに行き着くわ」
「宇宙の神秘ね」
「便利な言葉ね」

 すでに、時刻は午前零時近い。
 曖昧になった理由は、空の月と星が雲に隠されたからだ。
 蓮子の能力は非常に便利である反面、ちょっとした天の気まぐれで無能となる。
 それこそ神秘の能力は、分相応に制限がかけられていた。
 
「へっくしゅ。さすがに、まだ冷えるわね」
「そりゃそうよ。まだ初夏に足かけたばかりなのに」

 気温自体は低くない、風が冷たいのだ。
 風が吹けば桶屋も儲かるらしいが、今の時期は桶より食事の皿のほうがいいだろう。
 実際、メリーもそう思っていた。
 誰が好き好んで、冷え込む京の夜を彷徨うというのだ。
 もはや、往来をふらつく酔っ払いすら見当たらない。
 疲れた顔をしたサラリーマンや、コンビニに用事があるような若者くらいしか歩いていない。
 二人は、夜の京都においてかなり異質だった。
 四条からも、ずいぶん離れている。
 
「……今日は、やめよっか」
「ええそうねそうしましょう今すぐベッドに潜るべきよシャワーも浴びたいわ」
「メリーさん?」
「そうよ、柳の下には枯れた花があるだけよ」
「疲れちゃったみたいね。続きは今度にしましょ」

 蓮子も、相当疲労がたまっている。
 引き際はずいぶん前に過ぎ去っているが、手遅れではなかったようだ。
 飽きたわけではないだろう。
 きっと、翌日以降メリーには改めて招待という名の面白くないことが待っている。
 普段ならば、そう邪険にすることはない。
 ただ、得手不得手はあるということだ。
 此度はたまたま、メリーの不得手だっただけである。
 
 
 
 
 
 かくして、秘封倶楽部は目的地へとたどり着く。
 一条戻り橋。
 新京都の中でも、中々曰くが多い橋である。
 橋姫の伝説、橋の下の十二神将、嫁入り前の娘が云々。
 ともあれ、夜の橋はそれなりに趣があった。
 風流とは、まったく逆の趣があった。
 有り体に言えば、「出る」気がするのだ。
 
「ふんふん、特に異常なし」
 
 蓮子は、橋の下から周囲まで徹底的に調べた。
 もちろん、メリーに配慮して手早く手短に。
 僅かな光を反射する水路は、泥のようにうねる。
 それ自体が、生き物になる。
 メリーも蓮子の横にいるが、周囲をしきりに見回している。
 この雰囲気に、飲まれているのだ。
 
「赤外線撮影完了、一応フラッシュでも撮っておこうかな」

 眩い光が、二度三度。
 暗闇を切り取る光が、また暗闇を作る。
 僅かばかりであるが、隙間が出来上がる。
 きっと、油断とか恐怖を食べるものはそこに潜むのだ。
 メリーは、眠気と閃光に目を擦る。
 
「うん、あとは現像してみないとわからないわね」
「そうね、早く帰りましょう」
「寒いしね」
「そうよ」

 未練もなく、二人は振り返った。
 幽霊は見つけられなかった。
 また明日探そう、という気持ちがあったのだ。
 二人は、戻り橋を渡った。
 帰路に着くために。
 
 ――先の曰くは、もう一つあった。
 ――三善清行の葬列にて、子がこの橋ですがり祈った時。
 ――父親が黄泉還った。
 ――戻り橋、とはここに由来する名前である。
 ――死者の蘇生。
 ――橋の向こうは彼岸で、こちら側が生きる顕界。
 ――生と死を分かつ境界。
 ――ならば、現世に未練を持つ幽霊は?
 
 おかしい。
 可笑しい。
 オカシイ。
 そうとしか、表現しようが無かった。
 今は深夜であり、僅かな光源ではほとんど見えない。
 それなのに、その人は良く見えた。
 綺麗な空色の着物に、桃色の髪。
 髪に隠れて目は見えないが、きっと好意的ではない。
 顔は伏せたまま、体をこちらに向けている。
 メリーは、体を震わせた。
 蓮子は、息を呑む。
 目の前に、怪異がある。
 これ以上無い、オカルトがそこにある。
 しかし、体が動かない。
 わかっている。
 魅入られたら、連れて行かれる。
 
 
 
 くすりと、口が月のように歪んだ。
 
 
 
 永遠のようで、十秒にも満たない邂逅。
 最後に一瞥して、聞こえないはずの笑い声を一つ。
 ひらりと身を翻して、路地の中に消えた。
 
「…………何あれ」
「ゆ、幽霊、よね」

 蓮子とメリーの予想は当たっていた。
 新京都をぐるりと回って、中に入ってくる。
 本当に来た。
 探していた幽霊を見つけて、呆然とする二人。
 メリーは、地面にへたりと腰を落とした。
 
「……追わなきゃ!」

 蓮子は、駆け出そうと足に力を込める。
 地面を蹴って、
 
「……駄目、駄目よ。蓮子」

 裾をメリーに掴まれた。
 
「メリー?!」
「本当に、連れて行かれる。あれは、あのお化けはあっち側なの」

 メリーは一度、夢とはいえ境界の向こう側を見ている。
 気持ち悪いと他称される目で、あの世界を見た。
 だから、連れて行かれると表現したのだ。
 赤い目の化け物と、焼けた鳥。
 恐らくはそれと同じであることに、メリーは怯えたのだ。
 蓮子には、わからない。
 向こう側を、まだ見たことがないからだ。
 彼女には、メリーがただ幽霊に恐怖しているようにしか見えないだろう。
 
「わかった、わかったから」

 蓮子は、メリーを立たせて肩を貸す。
 振りほどくわけにもいかず、もう追いつくことはできないと思ったのだ。
 碁盤の目の如く走る道は、思った以上に迷いやすい。
 
「メリー、そんなにお化けが苦手なら言えばいいのに」
「お化け……そうね、私お化け苦手なのよ」
「遅いわね」
「いいえ、むしろ早かったわ」

 秘封倶楽部の活動日誌。
 幽霊の追跡、「失敗」。
 
 
 
 
 
「幽々子?」
「ちょっと、紫。近い怖い」
「ゆーゆーこー?」
「ごめんなさいごめんなさい。ほんとごめん」
「もう、外で殺しなんてしたら閻魔が黙ってないわよ。貴女、本当にわかってる?」
「もうしない、もうしないから怒らないでよ」
「いいや、怒る。友人だからこそ怒る」

 紫は、白玉楼の床に幽々子を押し倒して説教していた。
 もちろん、外での能力使用について。
 直接幽々子が手を下したわけではない。
 連れて行こうと思っても、呪い殺したり吸血鬼のように命を吸うこともできない。
 ただ、死にやすい状態へ移行させるだけである。
 
「直接だったら、言い訳も無く冥界から外されていたわよ」
「あら大変」
「それだけじゃない。もっともっとある。例えば――」
「幽々子様、お茶を……って何してるんですかぁ!」

 妖夢である。
 主人を押し倒されていることは、従者として許しがたい。
 冷静にお茶を置いて、刀の柄に手をかけた。
 しかし、押し倒しているのは妖夢よりも永い友人である。
 斬るべきか否か、判断がつかなかった。
 
「情事よ」
「そうよ、妖夢。この場合は貴女が悪い」
「えっ。お茶を持ってこいって、幽々子様が」
「仕方ないでしょう、切羽詰ったんだから」
「どういうことですか……はぁ、出ますよ。出ればいいんでしょう」

 憮然として、妖夢は部屋を出る。
 茶々が入ったからか、紫も幽々子を解放した。
 
「あら、やめるの?」
「ええ、ムード台無しだもの」
「そう」
「……幽々子、本当にこれまでよ。次は、絶対にありえないからね」
「大丈夫、もう二度とないわ」

 紫は、怪訝な思いで幽々子を見る。
 いつもと、変わらない笑顔がそこにあった。
 ただし、その裏側はいつもと違う。
 
「私は、もうあっち側じゃないの。こっち側なのよ」
「……」
「いつ如何なることがあろうと、もはやあっちには戻れない」
「……幽々子」
「それがわかったもの。もう、あっちに未練も何もないわ」

 淡々と、幽々子は語る。
 紫は、黙ってそれに耳を傾ける。
 
「それに、私の可愛い妖夢を放っておくなんてできない」
「わかったわ。反省の言葉が聴けたから、もう十分」
「あ、そうなの?」
「ええ、よくわかった。貴女って、結構怖いのね」
「お化けだもの」
「その通り」

 紫は、それだけ言ってスキマに飛び込む。
 じゃあね、と手を蝶のようにひらひらさせて向こう側へ。
 
「幽々子が、あそこまで執着するとは思わなかった」

 紫が、スキマをつなげた場所。
 幽々子を回収した、戻り橋付近。
 時刻は、不明。
 東の空がどんどん白んでくる。
 地縛霊ができるのは、その場所に執着するからだ。
 取り憑くのは、それを羨んでいるからだ。
 
「亡霊は、死んだことに気づかない。もしくは、それを認めない」

 輪廻から外れて、人であれば生きられない時間を過ごした。
 達観したように見えて、実はずっと羨望していたのかもしれない。
 死して、彼女の時間は止まってしまった。
 
「まだまだ西行寺幽々子のことをわかっていない、か」

 夜明けの新京都。
 幽霊は、もう現れない。
 恐怖はただの怪談となり、噂となって風化する。
 目撃した者でさえ、忘れていくことだろう。
 やはり、ここに西行寺幽々子は居なかった。
 
「でも、忘れられるまでは記憶の中に刻み付けられた」

 紫は、空を見上げる。
 諦めた幽々子に、そのことを伝えることは未来永劫無いだろう。 
 ありえないはずの、わずかばかりの亡霊の居場所。
 気づいていないだろう親友のために、紫はそれを飲み込んだ。
 
「さて、閻魔への弁解でも考えないと」

 ふと思いついたように、紫は踵を返した。
 まだ、人通りは少ない街を歩き出す。
 戻り橋には、何もいない。
 人も亡霊も、いなくなった。
 魍魎が跋扈する夜が、明けた。
 今日も、旧く新しい都の一日が始まる。
 人間は、日常へ。
 亡霊は、向こう側へ。
 
 
 
 気まぐれによって生まれた出会いの話は、これにておしまい。
 亡霊より締め切りが怖かった。
 ああ、怖い。
 ついでに、お茶も怖い。
秘封ファンクラブ会員(文鎮、タ々ル、とても暇な人)
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2010/06/14 03:00:08
更新日時:
2010/07/31 22:21:34
評価:
29/75
POINT:
4050
Rate:
10.72
分類
秘封倶楽部
幽々子
京都
8. 80 名前が無い程度の能力 ■2010/07/02 05:47:50
ゆゆ様のふわふわした面と怖い面がうまく書けてますねー。
面白かったです。
10. 30 名前が無い程度の能力 ■2010/07/02 12:47:09
京都が舞台で登場人物は秘風倶楽部に幽々子様、そのわりに文章は固かったですね
この話が幽々子様や秘風倶楽部にどんな変化を与えたのかわかりませんでした
さながら昼間の幽霊の様にぼんやりとした印象です
14. 90 あおこめ ■2010/07/03 01:23:02
京都に行った経験のある人にとってはたまらない作品でした。
100万都市であり、それでいて歴史と伝統が残る現代の京都の空気がとてもリアル。
ゆゆ様も秘封倶楽部も、実際に京都の街を歩いている姿が脳裏に浮かびました。
22. 100 名前が無い程度の能力 ■2010/07/04 04:50:32
ゆゆ様はこわいな
様相が変わりすぎると失望することもない
26. 100 名前が無い程度の能力 ■2010/07/04 18:02:49
蓮子とメリーが幽々子さまと出会う件は思わずぞくっとしました。
その光景が浮かび上がるほどに。
33. 30 電気羊 ■2010/07/06 05:47:00
小説としてキャラ萌えの域を超えることができるのか、というのは二次創作の書き手の宿命だと思う。
この作品に関しては演出面でも文量でも、その境界を飛び越えることはできなかったなぁと残念な気持ちを抱いてしまうのだ。
三人で書くということで難しさはあったのかもしれないけれど、そこへのチャレンジが見たかったですね。
38. 80 名前が無い程度の能力 ■2010/07/08 22:49:28
幽々子の考え方が非常にそれっぽくて脱帽。
ああ、かき氷が怖い。
40. 80 名前が無い程度の能力 ■2010/07/09 20:48:27
秘封と幽々子と京都。
雰囲気がマッチしていて、とても良かったです。
ただ、なんとなく幽々子への主観描写の切り替えに
違和感を感じてしまいました。
47. 80 名前が無い程度の能力 ■2010/07/17 14:40:12
幽霊の正体見たり死蝶の亡霊。そのまんまのようなそうでもないような。
ふわふわと達観しているようでも、やはり生への憧れ、妬みは消しがたいものがあるんでしょうか。
もう少し秘封倶楽部と幽々子の絡みが見たかったとも思いましたが、
このくらいの交わり方が、「こちら」と「あちら」の距離を表しているようでなおよろしいのかもしれませんね。
48. 60 euclid ■2010/07/19 02:23:23
悪いってわけでもなくアリだとは思う。が、特段何か動かされるとかいうことがない。
読後の気分も余り良くはない。
何とも言えない感覚。
50. 80 名前が無い程度の能力 ■2010/07/19 23:02:45
京都モノっていうのは、一種独特な雰囲気を持ちますよね。
その点があと一歩及ばないという印象を受けました。
あと、こういった内容のものはもう少し短くまとまっていた方が個人的には好みです。
52. 80 半妖 ■2010/07/21 00:30:01
境界の対岸に対する思いを此方、彼方双方の視点から見られるのが面白かったです。
改めて幽霊はやっぱり怖い。

…これ寝る前に読んで良かったの?
53. 70 名前が無い程度の能力 ■2010/07/21 07:07:34
しそペプシがまさか現代入りフラグだったとは。
ゆゆさまがあずきペプシ飲んだら間違いなく異変が起きる。
夜の京都でゆゆさま見かけたら俺のSAN値は確実にマイナス。

雰囲気のある言葉を書き連ねただけでは少々物足りないと思った。
深みのある表現が欲しかった。
58. 50 名前が無い程度の能力 ■2010/07/29 19:04:12
幽々子の感じた孤独とか、ちょっかい出したくなる気持ち、
無視される苛立ちややるせなさ、伝わりました。
しかし登場人物三者が出会ってから会話はおろか、コメントすらなかったのが不満です。
これならば最初から、幽々子一人に絞って書いたほうが
よかったのではないかと思います(投稿者名を見た上で)。
59. 80 PNS ■2010/07/30 00:56:00
あとがきに同意しますw
60. 70 即奏 ■2010/07/30 04:30:47
こうまで雰囲気のある幽々子一人称のお話を読めるとは!
とても有意義な時間を過ごさせて頂きました。ありがとうございました。
62. 10 八重結界 ■2010/07/30 16:34:08
ところどころ説明不足だったような。
63. 90 Ministery ■2010/07/30 18:06:31
怖いなあ。簡単に人を死に誘うものが、こんなに曖昧なままで、彷徨っている。
はかなくて、凄惨な。だからこそ美しいのか。
やはり桜の樹の下には死体が埋まっている。

お見事、お見事。
64. 70 ムラサキ ■2010/07/30 19:17:53
ゆゆ様の脅かし方も可愛いなと思った次の瞬間夫婦抹殺とは恐ろしい。
しそペプシネタや、秘封クラブのオカルトチックな感じが見ていて面白かったです。
65. 100 春野岬 ■2010/07/30 21:55:29
ストーリー展開が巧みですらすら読めました。
序盤のゆゆさまが眠りにつく時の描写が好きだなぁ。
66. 100 サバトラ ■2010/07/30 22:01:27
時間の都合上、点数だけの投稿とさせて頂きます!
大変申し訳ありません!
67. 80 黒糖梅酒 ■2010/07/30 22:06:58
読みやすく、京の都のように美しく、怖いお話で面白かったです。
68. 70 蛸擬 ■2010/07/30 22:14:02
もっと事件に大きな動き(?)が欲しいとも思ってしまいましたが、良い雰囲気でした。
69. 70 如月日向 ■2010/07/30 22:35:41
ホラーテイストのSSというのはこのようなSSを指すのでしょうか。
幽々子が亡霊らしく怖かったです。
秘封の人たちにはもう少し時間をかけて事件に迫っていってほしかったですっ。
71. 60 沙月 ■2010/07/30 22:51:51
秘封倶楽部の良作。流石は会員です。作者によってなのか文体が全く違うのでそこがなんとなくチグハグな印象を受けました。ストーリーは文句なしです(n'∀')η
もうちょっと読みやすければ私は手放しで(n'∀')ηしますよう・・!
72. 90 名前が無い程度の能力 ■2010/07/30 23:02:57
幽々子様が京都に出るなら命が危うくても喜んで行くのに…
原因は飲み物なのかゆかりんの仕業なのか
73. 40 更待酉 ■2010/07/30 23:35:53
一人と一組が巡る京旅行。
どこか独特な空気が面白かったです。
ただ、何か味気が無かったのが惜しまれます。
74. 90 つくね ■2010/07/30 23:40:40
取り急ぎ点数のみにて失礼します。感想は後日、なるべく早い時期に。
75. 100 ぱじゃま紳士 ■2010/07/30 23:48:09
 申し訳ございませんが、採点のみで失礼いたします。
76. フリーレス 名前が無い程度の能力 ■2010/08/01 02:16:28
ラグナロクの存在に気づいたのが今日だったっていう
採点こそ出来ないけど心の中で90点入れときます!
これはいい秘封
77. フリーレス 名前が無い程度の能力 ■2015/01/19 19:53:48
なんとなく時代を感じます
そそわの
名前 メール
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