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- 何となく書いたけど
ある、天気の良い日の出来事である。
外界と幻想の境界――博麗神社の社務所を訪れる人の姿があった。
「すいませーん」
来訪者の名は、射命丸文。
妖怪の山に棲む天狗にして、文々。新聞の記者である。
「……? すいませーん。すいませーん」
文は、二度三度と社務所の奥の方に向けて声を掛けるものの、反応はなし。
折角霊夢のところに遊びにきたというのに。文の心に、ほんの少しだけの落胆の感情が沸いてしまう。
「……! すいません!」
と、そのときだ。
社務所の奥の方から、ぱたぱたぱたと足音を立てて、緑の髪の少女が姿を見せる。
東風谷早苗。博麗神社ではなく、妖怪の山の神社。守矢神社の風祝の少女。本来ならば、こんな場所にはいるはずが無いのだが。
はて。何故、東風谷早苗がこの神社に。
文の頭の上には、ほんの少しだけ大きなハテナマークが浮かんでしまう。
「すいません! すいません!」
が、そんな文の疑問を知ってか知らずか。
早苗はただ、ペコペコと頭を下げるばかり。
疑問を浮かべる者と、謝り続ける者。コミュニケーションは不可能極まりである。
と、そこへ
「すいませーん」
第三の来訪者。
命蓮寺の尼僧、聖白蓮がどこからともなく現れていた。
その手に握られているは、命蓮寺で開催する縁日のチラシ兼招待状。
彼女自慢の、法力による俊足を活かしてあちこちで配り歩いているのだろう。彼女はいつもこうなのだ。音も無く、何処かから現れては、すぐに消えてしまう。
音も無く現れるのは勘弁して欲しいものだ――なんてことを。ふと、文が考えてしまったのも、無理はないかもしれない。
「すいません」
ぺこりと。白蓮は、おそまつさまでした、とでも言いたかったのだろうか。
会釈と共に短くそう告げると、その場を離れる。いや、離れていた。消えていた。
「……」
「……」
残された文と早苗は、渡されたチラシの方へと視線を寄せて、じーっとそれを眺めている。
寺が主催する縁日とは思えないほどにポップでカラフルなチラシには、ハートマークや星のマークが散りばめられていて。女子高の文化祭か何かのチラシだと思われても無理の無さそうな内容である。
「……」
「……」
チラシの文面を、二人の視線が追い回る。
金魚すくい。宝探し。雲のワタアメ。遊覧船ツアー。正体不明の焼きそば。
限定ビシャモン(ポケットビシャモンスターというゲームのキャラクター。一番人気はものさがしビシャモンのナズチュウ)の配布イベントも実施。
その他にも楽しいイベントが盛りだくさん、らしい。
――行きたい!
――面白そう!
瞬間。頭をがばりと持ち上げた二人の視線が中空でぶつかって。
何秒かの後に、二人はタァンと音を立てて空へと飛び上がり、博麗神社を後にしたのである。
目指すは命蓮寺の縁日。
レアモノのビシャモンをゲットして。遊覧船に乗って。エイリアンを捕獲して。
少女の胸は高鳴るばかりである。
その頃。
ヤマメの病毒で熱を出していた霊夢が、今の今まで看病をしていたはずの早苗が消えたせいで夢の中で妙な怪物に襲われていて。
うわ言を漏らしていたのは、また別の話である。
「すいません……すいません……すいま、せぇん……」
すいませんという言葉が結構便利な気がしたので
はるか
- 作品情報
- 作品集:
- 2
- 投稿日時:
- 2011/04/01 22:53:11
- 更新日時:
- 2011/04/01 22:53:11
- 評価:
- 3/12
- POINT:
- 3063327
- Rate:
- 47128.49