ムラサ食い人

作品集: 2 投稿日時: 2011/04/01 21:55:13 更新日時: 2011/04/01 22:00:15 評価: 1/1 POINT: 1000000 Rate: 100002.50

 

分類
村紗水蜜
ヤマメ
合作
「村紗。アンタに折り入って頼みがある」

 額を床板に押し付けたままヤマメはそう言った。
 日本の伝統的な謝罪方法、土下座である。
 ここまで見事なのは私も始めて見る。
 というより、正直に言おう。他人に土下座されるのなんて生まれて初めてだ。
 まあ、もう死んでるんだけど、私。

「頭上げなよヤマメ。知らない仲でも無いでしょうに。というか、何で私? 頼み事なら聖相手とかの方がいいんじゃない? あの人、軽く何でも出来るし」
「いや、村紗じゃなきゃ頼めない事なんだ」
「どうしても?」
「どうしても」

 ふむ。中々どうして、込み入り切迫し退っ引きならない事情があるようだ。
 そりゃそうだろうとは思う。何せヤマメがこの命蓮寺を訪れた時からして、もうぶっ飛んでいた。
 ヤマメは事もあろうにターザンキックで壁を突き破って登場したのだ。
 ターザンキックである。蜘蛛の糸を寄り集めて瓦屋根の上に塔を作り、そのてっぺんからまた一筋糸を垂らしての、まごう事なきターザンキック。
 その上片足ではなく両足で蹴破られたものだから、炸裂した瞬間に轟音が鳴り響き、すわ第三次世界大戦かと、ナズーリンはネズミを総動員し、一輪は十一面観音像もかくやと分身した雲山を付き従え、星は宝塔を失くしてあたふたし、聖は通常の三倍は力を溜めて臨戦態勢。
 かく言う私もえっちらおっちら錨を担いで、さあ命知らずの侵入者を絶滅タイムだとばかりに意気込んだものだ。
 しかし、バルサンでも焚いたのかと間違う程に演出過剰な感の煙が晴れてみれば、そこに居たのは地底で世話になったヤマメであった。更に言うなら、土下座の姿勢で頑として動かぬヤマメであった。
 そしてただ一言、「緊急事態につき村紗水蜜に助力を請いたい。願いましては二人きりにしてくれるよう」との旨を告げ、後は沈黙を保ったものだから、心優しく都合が良い聖を筆頭に、皆この場を去っていった。薄情者達め。
 とまあ、ここまで回想してみると、緊急事態なのにわざわざ塔をこさえたのかお前はとか、人の寺を何勝手に壊してくれてるんだとか、弁償するアテはあるんだろうなテメーとか、思うところはあるもののそれはそれとして。
 ヤマメには地底に封印されてから、随分と良くしてもらった記憶がある。
 その恩に報いるのにやぶさかではない。

「良いよ。私で良ければ力になるよ」
「ほ、本当に」
「舟幽霊に二言は無いって」
「じ、じゃあ!」

 残像を残す程のスピードでヤマメが顔を上げる。
 希望に満ちた表情だ。この気持ちを裏切ることは出来ない。
 私は気を引き締め、ヤマメの言葉を待つ。
 さあ、どんな事でもどんと来い。やると言ったからには例えどんなことであれ――

「今から、人間達に食われてほしいんだ!」

 わけがわからないよ。

「あ、いや、その前に分身の術を覚えてほしいんだ!」

 こんなの絶対おかしいよ。





     ◇





「えっと、要約すると? ヤマメが地上に遊びに来た結果、私を食べない限り理性を失いケダモノの如く本能のままに動くようになるウイルスが、人間相手にパンデミックと」
「更に言うなら、もう人間達はこの命蓮寺を包囲してる」
「おい何してくれてんだテメー」
「というわけで、分身してから人間達全員のお腹に収まってほしい」

 要求はカニヴァリズム。
 それも、分身した上で人間の腹に納まれという荒唐無稽な無理難題だ。
 一休宗純でも解決できないレベルのルナティック極まりない難題じゃないだろうか。どっかの蓬莱プリンセスの難題よりもずっときつい。

「頼む。頼むよムラサぁ! 例のウィルスは潜伏から発病までの期間が滅茶苦茶短くて、あと一時間もすれば感染者は動く屍さながらになってしまうんだ!
 このままだと、私の病気のせいで幻想郷がバイオハーザードに! アンブレラ社の二番煎じになっちゃうよ!」
「だからって私を食わせるかファッキン! 責任取るならてめぇが取れや!」
「取れるなら取ってるさ。でも、ムリなんだ。一度感染したウィルスは保菌者である私の支配を逃れていて。だから、駄目なんだ!
 ……もう、アウトブレイクは避けられない! おかしいよね弾幕ごっこは避けるゲームなのにっ!」
「上手いこと言ってる場合か!」

 ぱこぉんと。
 言葉と一緒に叩きつけた柄杓がヤマメの頭部に炸裂した。
 弾幕ごっこならさっきの一撃で1キル。異変解決への一歩、なのだけど。

「ごめんよぉ。ごめんよ、ムラサ……だからほら。とっとと食われておくれよ。アンタが犠牲になれば人間は救われるんだよぉ!」
「今、夜だよね……」

 夜の蜘蛛は子供でも殺せ。
 こいつ、殺してやろうかしら。頭蓋にアンカーを炸裂させて。脳漿と顎の破片を残飯みたいに撒き散らさせて。

 ……ああ、いや。違う。駄目だ。そんなので解決はしないんだ。
 ヤマメを成敗討伐ブッコロコロしたところで、私が食われかねないこの異常事態は解決しないんだ。
 妙な病気を、どうにかしないことには――……って

「……って、病気なんでしょ?
 じゃあ、永遠亭の八意先生に頼めば特効薬の1つや2つくらいすぐに作れるんじゃ」
「あー。八意先生ねえ。『面白い病気ね! 観察したいから投薬治療は後回しにするわ。さあ、舟幽霊をオムライスにして食べさせましょう!』って」
「あの医者ァ! 今度コミケで買ってきた薄い本の中身再現してやろうかァ!!」

 駄目だバカ。
 世の中、知的好奇心に負けた天才ほどタチの悪い奴はいない。医者だって研究者なんだ。好奇心に負けやがったファック!!!

「さあさあムラサ! 今こそ一肌脱いでぐちょぐちょ食われて、幻想郷を救うとき、なんだよぉ!」

 とか何とかを考えていると、ヤマメがスカートから三対の節足を露にしてこっちにしながれかかって来た。
 一瞬。反応に遅れた私はその場に押し倒されてしまう。
 淫蕩電脳紙芝居(エロゲー)ならケモノ系えっちシーンへの導入みたいな体勢になった私は、

「わ、うぎゃっ!? ちょ、ちょっと待て、待てって!
 私が食われたら聖輦船の操舵が――」
「自動操縦なんでしょ。大丈夫!」
「畜生聖め自動操縦にしやがって! つーかそれなら船長って何の為にいるんだよ! 飾りか!」
「イエス。お飾り! クリスマスケーキに乗ってるサンタクロースの砂糖菓子みたいな感じ!」
「あれくっそ不味いんだよ畜生! 口の中ザラザラするし!」

 マウントポジションのヤマメは、ぺこちゃんみたいなウィンク+あっかんべをしていて。
 ああ畜生こいつ脳天にアンカーぶつけたい! 汚いグラタンを床にぶちまけたい!
 仏道って基本的に殺生は厳禁だけど、今なら御釈迦様も正当防衛を認めてくれる気がする!

「さあさあ。お飾りの船長はとっとと食われちゃおうねぇ〜」
「やめろー! やーめーろー!!」
「まあ。食べるってのは『性的な意味で』もOKなんだけどね」
「え」

























 【以下、濃厚で体液と汁にまみれた船長のとってもエッチなシーンが入るはずだったんだけど。残念。ここは好々爺。エッチなのはご法度なのである。
  キーワードは『村紗水蜜』『多人数』『無理やり』『つゆだく』。以上、各々の想像力に期待】
        *'``" ''・* 。
        | _,,..,,_  ``*。
      ,。 .|,'´⌒ ⌒' ,  *。   無茶振りには なーむさん♥
     + .∩(ノノリハ))*。+
     `*。ノ ,リ.゚ ヮ゚ノi(_*゜*
      `(+。*Å*・'つ. +゜
.       )ノソ:::八:フ⊃ +゜
       ☆~"'''i_ノ~ 。*
       `・+。*・ ゜
はるかb
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2011/04/01 21:55:13
更新日時:
2011/04/01 22:00:15
評価:
1/1
POINT:
1000000
Rate:
100002.50
簡易匿名評価
POINT
1. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 23:56:39
>星は宝塔を失くしてあたふたし
いやそれ絶対前からだろw、、むしろ確信犯じゃねぇのかおいw
とか突っ込んでたらいつの間にか読み終わっていたでござるの巻。
合掌!
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード