- 分類
- 永遠亭の面々
「一億年と二千年前から愛してる」
起きてぼーっとしていたら私の部屋に手水を持ってきてくれた永琳の発した言葉がこれだった。
あれ?「おはよう」じゃね?
それから「今日は天気がいいわよ。早く起きて」とか。
普通に交わされるはずの挨拶を考えつつ、なんでそんなハイテンションな挨拶をしてくるんだろうと思ってたら柱のカレンダーに目がいった。
……ああ、そうそう。そうだったわね。
今日は4月1日。
永琳、朝から飛ばすわね。
これは私もちょっと素敵な嘘を考えないといけない。
でも私の頭が起き抜けの初月状態だったので、ルナティックな応答が浮かばなかった。
仕方ない。なら。
「そう、私もよ。貴女と合体したい」
結局、ベタな答えを返した。
そしたら、永琳が入ってきた時閉めたはずの襖がバアンと開いた。
「姫様そんなっ……私との事は遊びだったんですか!ヒドイ、ヒドすぎる……」
たれ耳イナバの鈴仙が現れた。
そして突然、ありもしない関係をのたまい嘆きだす。
これもノるしかないんだろうなあ。きっと。
「イナバ……ごめんなさい。私、どちらかなんて選べなかったわ」
よよよ、と泣く。
ここまで水が上から下へと落ちるように自然な流れ。
そして何故かあざといまでに演出される完璧な修羅場。完全な三角関係。
ソレに付き合わされる私。
この感じ……覚えがある。
スっと立ち上がり穴の開いている障子をスパァンと開けた。
「おはようございます。姫様」
にこやかな笑顔のてゐが朝の挨拶をしてくる。
たぶん、これが今日初めての普通の挨拶じゃなかろうか。
「おはよう。そこで何してるのかしら?」
「いやいや。お分かりでしょうに」
ビデオカメラと一眼レフにこの情景を納め終えたてゐがずりずりと後ろに下がっていく。
「ふうん。その映像をブン屋にいくらで売る気なのかしらね」
「そうですね。まあたいしたネタじゃないので、せいぜいこれ位って所ですかね」
てゐが指を三本立てた。
「あのね。てゐ。貴女には大したネタじゃなくても、私にとっては大問題なのよ。永遠亭がどんな風に世間様に思われるか……」
「だって今日4月1日ですから、誰も信じませんてば」
「嘘をつきなさい。貴女絶対日をずらしてこのネタ売る気でしょ」
「バレてました?」
「全く……タチが悪いったらありゃしないわ。この二人のセリフも貴女の差し金でしょ?」
すると、てゐが肩を竦めた。
「残念ながら、違いますよ」
「え?」
「姫様、考えてみてください。嘘をつける日に真実を語っても誰も信じないでしょう?
だから……」
「だから……なに?」
「おわかりでしょう?」
- 作品情報
- 作品集:
- 2
- 投稿日時:
- 2011/04/01 21:54:13
- 更新日時:
- 2011/04/01 23:31:11
- 評価:
- 2/6
- POINT:
- 2031108
- Rate:
- 58032.37