- 分類
- 東風谷早苗
- Taku
- さなTakuは俺のアンチグラビティ
えっと、あの……ああ、繋がったのかなあ?
もしもーし。聞こえて、あ。大丈夫みたい。……うん、よし! おっけーおっけー。
にとりさーん。こっちの、この……えっと、ナントカって機械! これ、あちらの世界に繋がったみたいですよ!
……はい。大丈夫です。一分もあれば言葉は伝えられますから。
………………了解、です。ありがとうございました。
……コホン。……えっと、Takuさん。お久しぶりです……覚えていますか? 東風谷早苗、です。
私がこっちの世界に入ってから、かれこれ数年が経ってしまって……もしかして、Takuさんに忘れられているんじゃないかなあって、心配になったりもしているんですけど……覚えて、くれています、よね?
……うん。大丈夫。きっと、Takuさんは私の事を覚えてくれているはず、だもん……。
……お話、続けますね。
私がこっちに来てから、そっちの世界はどうですか?
妙な異変とか、物騒な戦争とか、そういうのは起こっていませんか?
こっちは……。……うーん。割と、そういう出来事は日常茶飯事、かなあ……?
……あ、大丈夫ですよ? 私、強い子ですから。切り裂きジャックだろうがエドゲインだろうが、拳骨でばーんって倒しちゃいますから!
だから、心配しないでください。もう一度そっちの世界に戻って……そして…………あの時の約束を果たすまでは、絶対に無事でいますから。
……あははっ、ごめんなさい。話が、横道にそれちゃいましたね。
続き、言います。
……私ね。こっちの世界に来て、ほんっとうに、良かったなあって思っているんですよ。
風祝としての力。奇跡を起こす二柱の加護は、こっちの世界ではごくごく自然なことで。周囲から、奇異の視線や嫌悪感の混じった感情をぶつけられる事もなくて。
それに、ご飯は凄く美味しいですし。水も空気も綺麗で、そっちの世界では絶滅しちゃった動物も沢山いるんです。大自然……って感じじゃあないかな。あえて言うなら、幻想の風景……かなあ。
……とにかく。こっちの世界は、そっちの世界に比べると私に向いていて、暮らしやすくて、楽しくて。
だから、凄く良い世界なんです。
……一つだけ、物足りないなあって、思ってしまうことがあるんですけどね。
もしも、奇跡が起こるなら。
もしも、そっちの世界に。一時間でも……ううん。一分でも、戻れるなら。もう一度、Takuさんに会いたいなあって思うんです。
……あははっ。ムリ、なのになあ。
あの時。そっちの世界に家族も友達も集めていた漫画もゲームも……何もかも、全部を置いてきたのに。
判っていて、こっちに来たのに。
……どうして、寂しいんだろう。判っていた、はず……なのに。
…………ごめんなさい。こんなこと、呟いても何も進みませんよね。
………………ねえ、Takuさん。
この通信。あと何秒かで切れちゃうんですって。
次にそっちの世界に繋がるのは、何ヶ月後か。何年後か。……もしかしたら、もう二度目は無いのか。
……だから、最後に一言だけ。
大事なこと、言わせてください。
就職活動頑張ってね。
東風谷早苗
- 作品情報
- 作品集:
- 2
- 投稿日時:
- 2011/04/01 21:11:26
- 更新日時:
- 2011/04/01 21:11:26
- 評価:
- 14/20
- POINT:
- 13139218
- Rate:
- 125135.65
君の名前を心の中で呼ばない日は、一日だってありませんでした。
◆
僕は、現実の世界で元気にやっています。
今日はエイプリルフールで、普段良くしてもらってる仲間たちと一緒に「朗々好々爺」という小説投稿サイトで楽しく遊ばせてもらっていました。みんな気のいい奴らばかりです。
そのとき、つい、君のことを少し書いてしまいましたが、早苗さんならきっと笑って許してくれると思うので報告しておきます(笑)
最近の日本では、東北で大きな地震があり、現在判っているだけで1万人以上の方がお亡くなりになりました。地震の被害は大きいですが、復興に向けて、みんな一生懸命頑張っています。
関東や中部でも余震が起こりましたが、僕や長野の僕の家族はみんな無事でした。北部の栄村の方では震災の被害が大きかったのですが、僕らの住んでいた中部は特に大きな被害は出ていないみたいです。諏訪の方でも、特に被害があったという話は聞かないので、早苗さんのご両親もご無事だと思います。安心して下さい。
……今、君が元気そうだと判り、すごく安心しています。
本当はもっといろんなことを書きたかったけれど、書いたらきっと、君の決心を鈍らせる自信があるので(笑)この辺でやめておきます。
就職活動、頑張るよ。本当にありがとう。
あの時の約束を守れるように、立派になってみせます。
……さよならは、言いません。
だから、君も――――――――
(涙の痕と共に、手記はここで途切れている)