聖白蓮の帰還
作品集: 2 投稿日時: 2011/04/01 19:30:24 更新日時: 2011/04/01 19:30:24 評価: 1/7 POINT: 1046662 Rate: 26167.18
分類
聖
ボツネタ供養
ギャグを目指してキリモミ飛行
法界は薄暗く、清浄な地である。地は不可思議な模様に包まれていているだけで、何も生えず、何も住まない。そんなつややかな地が、ひたすらつづいている。
法界はそんな所である。
しかし、法界の中央にはまばゆいばかりに光り輝く一角がある。
そこには、天をつかんばかりの塔が立ち並び、その塔自体が美しく輝いていた。
ひとつ、小さな庵がある。その中で聖白蓮は静かに座していた。
少し俯いた彼女の目は閉じられている。
可憐なまつげは下を向き、誰もいない世界の中で、彩りを添えていた。
その目が、ぱちりと開いた。憂いに満ちた目で彼女は口を開く。
「アー、ブシュニラナ。ペッテンボルナルラー(あー、暇ですね。なにかすることでもないでしょうか)」
法界語である。
法界語とは、約1000年の歴史をもつ言語で、世界的に見れば法界で使われており、この言語を母語とする地域は法界で、かつ使用人口は1名で、つまるところ聖のみが使う言語である。
けっして彼女はふざけてはいるのではない。
独り言が徐々に変異していって本来の日本語から法界語へと発展していったのである。
考えてみてもらいたい。聖は1000年間法界に閉じ込められてきたのである。孤独だと独り言を言ってしまうタイプの人がいるが、聖もまた、そういうタイプであったのだ。
気が狂う程の孤独を耐えるために、つい言語が変異するほどに独り言をしてしまっただけである。それを笑うのはあまりにも無慈悲で心ないのではないだろうか。著者はそう思う。
「カータ、ショウチャンザウ、レドケモーニラナ(やはり、毘沙門天像を拝みに行きますか)」
そう聖はつぶやいて立ち上がる。彼女の艶のある美しい髪が揺れた。彼女の髪は金と紫のグラデーションが掛かっているが、この髪型は法界で現在流行している「ユヌーラ(最先端)」ファッションである。もちろん服装もユヌーラで、白地の 布にたくさんの宝石が付けられており、偶然にもエ○ヴィス・プレ○リーのステージ衣装に似ていた。おそらく、犬とハイエナが似ているのと同じ理由であろう。
法界でただひとつの毘沙門天像が祀られる本堂に聖は向かった。光り輝く塔に囲まれた、いっそう巨大な建物、それが本堂である。広々と伸びた屋根がその巨大さを示しながら、繊細な装飾が施されていて、聖らしく可憐な印象を受ける。 正面には大きな門がありそれが正門である。正門の上には毘沙門天の絵が吊るされている。
聖が正門に近づくと、音もなく門は開いた。日が差さないのに堂内は明るい。大きな堂内にはきらびやかな祭壇が構えられていて、その最も高い中央に毘沙門天像が安置されていた。
白蓮は、階段を静々と上り、毘沙門天像の前に座った。
毘沙門天像は穏やかな表情をしている。目はパッチリと大きく、綺麗な鼻をしていて、口元は安心しきったかのように緩んでいる。髪は黄色と黒の虎模様で、可愛らしくて寅丸星そっくりである。
読者の皆さんは、おかしいと思うかもしれない。本物の毘沙門天に似せればよいではないか、と。
しかし、聖が本物の毘沙門天を見たことがないという事から説明できるのではないだろうか。
『像を作るからには嘘があってはならない』そう彼女が像を作るにあたって考え、なるべく毘沙門天に近いものとして毘沙門天の代理である寅丸星の姿を模したのではないだろうか。なので、髪がサラサラで、肉体部分は柔らかで弾力がありながら少し骨ばっていて、関節を有し、人肌程度の温度があって、人体そっくりでも何もおかしくないのである。ちなみに、毘沙門天像は正座している。
「ショウチャン(毘沙門天様)」
聖はそうつぶやいて、瞑想に入った。
誰もいなくても修行を忘れない、その姿はまさにエ○ヴィスの格好をした聖女である。口を引き締め、毘沙門天像を見つめる彼女は身じろぎすらせず、腕のヒラヒラが空調で揺れる事と瞬き以外、堂内は静止した。
10分ほどたった時、聖は叫んだ。
「コンプリシャンクノール!(インスピレーションが来た!)」
聖は立ち上がり本堂を飛び出して、ある塔に向かった。塔の門を開け放つと、中には吊るされた大量の服や、畳まれた布や様々な材料があった。
聖は魔法を使い、次々と布地を呼び出す。
彼女が「コンプリシャン(インスピレーション)」と呼ぶものは、服のデザインの事である。しかし、聖のではない、毘沙門天像の服のコンプリシャンである。
毘沙門天像を前に瞑想をすると度々新たなる毘沙門天像の服装のコンプリシャンが湧いてくるのである。信心の賜物と言えよう。
現在、毘沙門天像は朽葉色の素朴な着物を着ているが、これも彼女の手によるものである。
偶然にも作る服はいつも寅丸星がその時に着ている服と酷似しているのだが、聖がそのことを知れるはずがないので、これもハイエナと犬が似ているのと同じ理由であろう。
聖はあっという間に新たな毘沙門天像の服を縫い上げた。彼女の毘沙門天への熱心な信心の表れだろう。
出来上がった服とその他の道具をもって、本堂に飛んでいった。
聖は「ショウチャン、カンチュールヌギヌギ(毘沙門天様、お召し物をお変えいたします)」と囁きながら、毘沙門天像の前に布団を敷いた。
衣装替えをするときは毘沙門天像を一度裸にして横にしなければならない。その時床板に直に置くのは忍びないからである。
毘沙門天像をお姫様抱っこして布団に運び、ふぅと息をついて聖は毘沙門天像を静かに見つめた。
その顔には信仰の喜びに満ちていた。誰もがめんどくさいと思うような雑務を喜ぶ、その姿はとても美しかった。
聖は毘沙門天像に傷をつけぬようそろそろと服を脱がしては、優しい眼差しで見つめた。
そして、すべての服を脱がし終わると、絞った綺麗なタオルで毘沙門天像を拭き始めるのだった。
毘沙門天像には汚れを防ぐ魔法がかかっているのであるが、彼女の信仰がそれを許さないのである。
ちなみに毘沙門天像の体を拭くことは服を変える時以外も毎日している。作務は日々行わなければ修行とは言えぬという高潔な精神が透けて見えるのではないか、と筆者は愚考する。
何度か毘沙門天像の体勢を変えて、拭き終わると毘沙門天像を座らせて、その柔らかな髪に櫛を通した。
そして、聖は櫛を通し終わると像の前に座って、像の目をまんじりと見た。
「ケヴォリナス、ベッテンガーズペロニルラー。マネス、ガッチューラペペロラナ。マネス、ケンペス。(やっぱり、瞬き機能を付けるべきかしら。いや、そこまで堕ちてはいけない。ダメ、絶対)」
今、聖が言った事の意味はよくわからない。筆者が思うに、何らかの仏教用語であろう。
そして、じっくりと服を着せ始めた。一つ着せては整え、一つ着せては整えとそれは丁寧にきせるのであった。
着せ終わり、直立させて最終確認をし、そして満足そうにつぶやいた。
「ケネスショウチャンザウカンチュールベルペルリナー(今度の毘沙門天像のお召し物はたまらないわ)」
いい加減、聖の毘沙門天への崇拝の度合いは伝わったと思うので、事実のみを述べたいと思う。けっして、解説が苦しくなったわけではない。
毘沙門天像を安置すると、聖はさて、とばかりに立ち上がり毘沙門天にささげる歌い始めた。
歌はエ○ヴィス・プレ○リー似ではなく、むしろホーミーであった。
聖の歌声は一時間以上響き渡り、その上踊りまで加わり、一層別世界の観を見せだしたのだった。
彼女の歌が、終わりに近付いた頃だろうか、そのとき異変が起きた。
法界を封じる結界にかすかな揺らぎが生じたのである。ほんの僅かな揺らぎであったが、聖の優れた感知能力は結界の緩みを感じ取った。
聖は素早く真言を唱え、結界の周りを監視する。
聖の脳内に、結界周辺の光景がノイズ混じりに駆け抜けた。結界の周りの、大小の構造物たちが徐々に像を型どっていく。その型どりの中に、光輝く何かを聖は観た。そのシルエットはどことなくユヌーラであり、それでいてカンペラー(古臭さ)を残していて、金色の餡を平たい底と尖った屋根で挟んだ、新種のモナカのような姿をしている。聖にはその形が鮮明になるにつれ「ピンペイ(懐かしい)」と繰り返しだした。それは、この白蓮を封じる結界を破る鍵となる宝塔そのものであった。そして、なにやら赤と白の服を纏う少女がそれを持っている。まず確実に、この少女が結界を解放しようとしているのだろう。
通常、聖は喜ぶべきである。言語が変質するぐらいの長きに渡って、ひたすらこの寂しい法界に幽閉されてきたのだから、脱出の可能性をチラつかされただけでも普通ならば喜ぶだろう。
しかし、聖は喜ぶどころか、口を真一文字に広げ、右往左往と堂内を歩きまわった。
「ベータカーナ、ショウチャンベッキショウチャンフリルヤベー……。チャラボンナラーショウチャンザウペコメロニアーン……(外には出たいけど、星ちゃんもう毘沙門天の代理辞めてるかも知れないし……。それだったらもうこのまま星ちゃん人形と暮らしたほうが絶対楽しいだろうし……)」
聖は毘沙門天像の膝に膝枕してもらうように寝転んだ。腕を組み、ユヌーラなカンチュール(服)をしわくちゃにして唸り続ける。
「ケンベーズピルビルバ、ペンドゥルカーヤ(ここは結界を解除しに来た人に大人しく帰ってもらうかぁ)」
寝返りをうって、毘沙門天像の温かく柔らかな太ももに顔を埋めた。
「ベノ、ラク、ショウチャンマクアイン……!?マネス、カポラーネベンチュルリン!……ケボン、ドーリララーノ……!(でも、もし、星ちゃんが私を待ってたら……!?いや、そんな良いことあるわけ無い!……でも、諦めたらそこでお終い……!)」
聖は八苦を体現するかのように顔を歪め、毘沙門天像を掻き抱いた。聖の顎を、毘沙門天像の柔らかな髪がくすぐった。
「アインカナーンショウチャンザウペロー……!(私に、星ちゃん人形を捨てる訳には……!)」
より強く、聖が毘沙門天像を抱きしめたその時、聖の脳内にある像が結ばれていった。少女の近くで、それは始めは微かな人形の像をとり、そして鮮明になるごとに、柔らかで口角の上がった口元、可憐な鼻、丸っこい指先、人懐っこい瞳を現していく。その姿はまさしく星だった。聖は雄叫びを挙げる。
「リアル!(リアル!)」
聖の腕の中の毘沙門天像が粉々に砕ける。肉体を超絶強化した聖の腕が、瞬間的に毘沙門天像を破壊したのだ。
「ベリショウチャン、ベールショウチャンヌボンノウブルンケッピャーキロリン、ピピティーコンネルハハナコバーンヌル……!(もし星ちゃんに、あの子への煩悩で出来上がった寺院を見られようものなら、向こう百年は手の届く範囲に入って来てくれない事は確実……!)」
強化された体をさらに魔法で強化していく。聖の体が燐光を発し始めた。
「チャラボ、ケッピャーデサンドゥン!(ならば、この寺院を消滅させるまで!)」
聖はグッと足に力を込めて、全速力で駆け出す。聖の走った後の床が、さらさらの粉塵と化して消滅していく。
その様は、聖の足が空中に舞う黒いうねりをを出している様にも映った。
聖が正門を吹き飛ばしながら飛び出ると、堂は音を立てて瓦解し、落下した毘沙門天の肖像画が聖の足元を勢い良く転がった。
ためらいもなく肖像画は踏みつけられ、灰塵と帰す。聖は手近な塔を、下からだるま落としのように消滅させていく。
だが、タイムリミットは近付いている。もはや、結界も破られたに等しかった。聖はより急いで二つ目の塔を破壊していく。
毘沙門天枕、毘沙門天の生態を事細かに記した辞典、毘沙門天なりきりセット……
全てが壊されていく、聖が丹精こめて作りあげた千年の遺産は次々と消滅していく。
しかし、聖の目には迷いがない。筆者もめんど臭いのでぶっちゃけちゃうが、この星ちゃんバカは星ちゃんとかいう子に嫌われたくないの一心なのだ。嫌われたら自分からまた引きこもるかもしんないのだ。
結界が壊された、聖の煩悩の産物はまだ山ほど残っている。このペースで行くと、赤白の服を着た子が到着するまでに全てを処分できない。
聖はさらに肉体を強化し跳び上がって塔の上から一撃で破壊していく、空気を蹴り、塔を殴りつけ消滅させていく。
ドーン、ドーン、ドーンと心臓の鼓動のように一定のリズムを刻んで、塔は破壊されていく。
少女が到達する寸前に最後の一つの塔を残して全て破壊し尽くした、しかし、聖はあることに気がついた。聖は外の言葉をもはや話せないのだった。これではせっかく星ちゃんに会っても、遠まわしのセクハラをして楽しむ事が出来ないのだ。
聖はがっくりと膝をついた。しかし、それは絶望して膝をついたのではない、結界が破れた今、聖がレベルの魔法使いともなれば、ガイアの囁きを聴くだけで全てを知ることが出来るのだ。このポーズは、ガイアに語りかける時の儀式なのである。
ガイアの囁きに聖は耳を傾けた、するとガイアは優しく聖に囁いた、日本語の正しい話し方に始まり、果ては今は消えてしまった芸人達の悲話にまで及んだ。いつまでもガイアの囁きを聴き続けたかったが、もはや少女はそこまで来ている。塔に長々と吊るされた星ちゃんタペストリーを見られる前に破壊しなければならない。別れをおしみながらも聖はガイアに別れを告げ、塔を殴り潰した。
塔がさらさらの灰塵と化し、聖は落下する。だが、ガイアは最後の最後に重要な事を言ってきた。
『今着ている服、往年のロックンローラーみたいでダセェ。もっと黒に染まれよ』
「南無三!」
聖はそう叫び、ユヌーラだった服を粉々にして脱衣した。そして、魔法で黒い衣装を作り上げ、体にまとわせる。ぐるんぐるんと縦に何度も回転し、地面にへばり着いて聖は呟いた。
「南無三とノムさんって似てるわね……!」
少女がやってきた、どうやら戦うつもりらしく、遥かな高みから聖を見下ろしている。聖は少女を見上げた。
しかし、正直勝とうが負けようが関係ないなと聖は思っている。星ちゃんをハグさえ出来ればそれで良いのである。
いざ――南無三
魔界神 神綺著「聖白蓮の帰還」 おわり
ボツネタ供養。無理やり完成させたし、文章の校正すらしてないし、そもそも二人称の文なのか三人称の文なのかもわからないし、滑ってるしでゴメンナサイ
明日使えない法界語
「アイン ショウチャン ケンパル(私は毘沙門天を信仰しています)」
怨むなよ、ボツネタ。私の腕が悪いばっかりに……!
タノモウス
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2011/04/01 19:30:24
更新日時:
2011/04/01 19:30:24
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■2011/04/01 19:42:22
エルヴィスの衣装着た聖が横たえた女体を丁寧に拭いてあげてるんですね。やばいですねこの絵面。
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