男の子になりたい女の子
作品集: 2 投稿日時: 2011/04/01 18:42:43 更新日時: 2011/04/01 18:42:43 評価: 8/17 POINT: 7169993 Rate: 79666.87
分類
マリアリ
幻想郷は僕以外の全てを受け入れてくれる
「はぁ、男になりたい……」
霧雨魔理沙は一人呟いた。
「叶えてみせますその願い!」
東風谷早苗は叫んだ。
* * *
「いやいや、待てよお前なんでうちにいるんだよ! 勝手に入って来るなよ、時間を考えろよ! そもそも何しに来たんだよ」
「明日の朝食分のお味噌を切らしてしまいまして、借りに」
「神社……霊夢の所の方が近いだろ」
「まあそうなんですが参拝客の少ない……びんんんぇへんっ……えーっと」
「貧乏神社に味噌借りるのはかわいそうと」
「ま、まあそういう事です……霊夢さんには内緒だよ☆」
「言ったところでたいして気にしないぜあいつ」
「ところでどうしたんですか、男の子になりたいだなんて」
「いや……」
「良ければ聞きますよ味噌分くらいなら」
「まあ……うーん……じゃあ、早苗さぁ」
「はい」
「……生理って知ってるか?」
「馬鹿にしないでください」
* * *
今日……というよりはもう昨日の話。
魔理沙はなんとなく集まった連中でなんとなく始まった飲み会に参加していた。
勿論博麗神社である。
いつもの楽しいどんちゃん騒ぎ――しかし魔理沙は腹痛に顔をしかめていた。
生理の、一般的に辛いと言われている二日目だったのだ。
「あんた景気の悪い顔してるわねえ」
と酒を片手に霊夢。
絡み方がおっさんくさかった。
「具合悪いの? 変な物でも……ああ、きのこね」
小ばかにした物言いはアリス。
つまみにも酒にも少し距離のある場所にいた魔理沙に冷やかし半分心配半分に話しかけた霊夢アリスであったが、
魔理沙は無言で首をふるふると振るだけだった。
普段一番騒がしい魔理沙がろくに返事もせずにお腹を抱えて丸まっているのである。
ただ事ではない。
「……ねえあんた本当に調子悪いの? 帰る?」
「病気? 永遠亭まで送りましょうか?」
「……生理中だから……」
ふたりの問いかけに魔理沙はやっと小さな声で応えた。
それに反応したのは霊夢だった。
「は?」
「……いや……生理中だから、病気じゃない」
「まじで」
「あ、ああ……まじだ」
「せ、せいり」
「うん……せいりだ」
ただでさえ気が立っている魔理沙に、
霊夢の搾り出すような声はなんだか気に障った。
なんだ悪いかよ、どうせすぐに赤飯がどうとか大騒ぎするんだろ。
そしたら他の妖怪たちも騒ぐぜ。
私は晴れて酒の肴か。
そうなのか。
言わなきゃ良かった。
それどころじゃないんだ。
痛いんだよ、お腹痛いんだよ。
ポンポンペイン、ポンポンペインだ!
「ま、魔理沙……」
霊夢がまた、何か言おうとする。
二人のやり取りをぽかんと見つめるアリスにも腹が立った。
いいからもうほっといてくれ。
魔理沙は叫んだ。
「生理だよ! ほっといてくれ!」
そうして場の空気が一変した。
宴会の参加者はたぶん――見た目はともかく――みんな魔理沙より年上だ。
最年少の自分が来ているんなら皆きているだろうと思っていたのだが、どうもそうではなかったらしい。
周りを見渡すと声の届く距離にいた奴がみんなしてこっちを魔理沙を見ていた。
「うそよ……」
膝をついた霊夢からそんな台詞が聞こえる。
「そんな……」
と聞こえた方に目をやると妖夢がスッと目をそらす瞬間だった。
「ッッ……」
小さな舌打ちの聞こえた方を見ると咲夜がポーカーフェイスでそこにいた。
数秒の嵐の前の静けさが去れば、あとは質問疑問の嵐だ。
三人寄れば姦しいというが、三人どころの話ではない。
「せいりって何?」
「どうして霊夢が地に臥してるの?」
「魔理沙が何かしたの?」
「せいりって強い?」
よく考えなくとも、幻想郷には紫を初めとした一種一体妖怪、天狗や吸血鬼など特殊な繁殖法をもつ妖怪、死なない妖精が沢山いるのである。
珍しく宴会に参加していたパチュリーは魔法で取り出した本で講義を始めた。
「人間というのは短命で……」と基礎の基礎からだ。
彼女達には生理以前にまず子孫を残すといった考えがないのである。
書名『よいこのほけんたいいく』――今日のパチュリーは冴えていた。
「魔理沙、生理のときは暖めるといいらし……いいわよ」
霊夢がどもりながら言う。
「毎月大変よね……ほら、生姜湯作ってきたわ」
咲夜がにこやかに言う。
「湯豆腐とか良いっていいますよね」
ははは、と妖夢が笑う。
「いや、うん……ありがとう……」
まだだ、まだ遅くない。
あんな反応を見られてなお、彼女達の何かが、それを認めていないようであった。
魔理沙は怒る気も失せてしまった。
しかし酷いのはアリスである。
「ねえねえ魔理沙、それ本当? 生理ってあれよね、子供産めるようになるのよね? 私来る前に捨食使っちゃったんだけど、どんなもん? あ、もう子供産めるの? 産むの? お腹痛いってもしかしてもう赤ちゃんがいるわけ?」
と興味津々、質問攻め。
知りたいことがあるならパチュリーのところに行けと言っても経験者のほうが正確だろうと聞かず。
しかも、どこかが決定的におかしい。
何か――根本的に――間違っている。
お腹に耳を当てたりさすったりやりたい放題。
しかしさすられていると暖まり痛みが和らぐ。
丁度良いいやとされるがままに生返事を繰り返していたらアリスは自説を信じ込んだらしい。
「ぜんぜん大きくないけど……あ、でもお腹、このへん、ちょっと丸いかも」
「そうだ、生まれたら人形……ううん、ぬいぐるみ! 作るわ。必要よね!」
「あと服……可愛いやつ……」
「魔理沙、部屋掃除しなきゃ赤ちゃんが怪我し放題よ!」
知らないというのは恐ろしいものだ。
知っているという思い込みはもっと恐ろしいものだ。
魔理沙は冬にお餅を食べ過ぎた自分を呪った。
* * *
「それで男になりたいと……」
「恥かしいやらなんやら……男にはこの痛みがないだなんて……不公平すぎる」
「はあ」
「明日アリスが服の採寸と大掃除に来るとか言ってたし……」
「のろけですか」
「聞かなかった事にしてやる」
「はあ」
「ところで……現人神ってのは子供生むのか?」
「当然です。神話を見てください、神様だって結婚もすれば嫉妬も浮気もします。子供なんてあたりまえに産みますとも。そんな遠まわしに聞かなくったって来てますよ私」
「そ、そうか。面倒くさい上に恥ずかしいし嫌だよな」
「生物として子孫を残す! 至極当然の事です! その為の体の変化です!」
「あ、ああ」
「ものの教科書によると生理も身長も声変わりも人それぞれ。早いから遅いからと何を恥ずことがありましょう!」
「そうだよな。別に恥かしいことじゃないよな……!」
「そうです。少しくらい胸がんっえふんッ」
「……まあいいよ私は胸に関してはまだこれからだしな……さっきの話、それとなく霊夢と咲夜と妖夢にしてやれってくれよ。なんか……落ち込んでたし」
「まあ機会があれば。ひとつ貸しですね」
* * *
「で、味噌ですよ。くれるんですか? ダメですか?」
「返してやるよ。さっきの貸しの分な」
「調子のいい」
魔理沙が味噌を小瓶に入れて渡してやると、
早苗は瓶を袂に入れて、礼を言いながら帰って行った。
明日はアリスが来る。
なんでもお腹を締め付けない服を作らなきゃいけないと言う。
……弁明が大変だ。
魔理沙はため息をついた。
それにしても今夜は冷える。
トイレに行ってから……ベッドに入って、アリスの誤解を解くために……生理についてなるべく恥かしくない説明を考えながら……寝よう。
騒がしい時間が過ぎて、森は静かだ。
魔理沙は体温が上がっていくのを感じ、自分は眠いのだなぁと思う。
横になったら考える間もなく眠るかもしれない。
考えながら宝とがらくたの山を避けて歩く。
トイレに入って、電気をつけて、ドロワーズを下げて――――
「早苗ェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ」
現人神の奇跡が、そこにあった。
* * *
「魔理沙聞いて!」
「なんだよ」
「私のお腹に赤ちゃんがいるって! 2ヶ月ですって!」
「mjd お前来てないって……」
「お祝いしなくちゃ!」
「どういうことなの……」
「レミィ、性別が変わることをTSっていうらしいわ」
「ティーエス? パチェ、なんの略なの」
「さあ……“Touzen Simasu”とか?」
みんな一緒に あ・い・うー☆
赤のあ
作品情報
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2
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2011/04/01 18:42:43
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うおぃwww
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魔理雄はじまったな
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奇声を発する(ry
■2011/04/01 20:52:11
おいwwwww
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■2011/04/01 20:57:37
これはひどいw
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■2011/04/02 08:19:04
続編はまだですか?
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こよぴ
■2011/04/02 12:35:18
あ・い・うー☆
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■2011/04/03 21:07:04
やっちゃったZE
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メール
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