「稗田阿求、妖精に変化する!」
作品集: 2 投稿日時: 2011/04/01 17:11:09 更新日時: 2011/04/01 17:11:09 評価: 1/3 POINT: 108110 Rate: 5406.75
分類
阿求
チルノ
大ちゃん
はたて
「……無理ですよ。」
「そんなこと言わずに。」
「いや、そんな術はありませんから。」
「えー、稗田家ってそんなもんなの?」
今日もまた平和だった我が家に一陣の風が舞い込んできたのは、昼過ぎのことだった。
姫海棠はたてとか言う、うっとうしい天狗だ。最近になって、やたら絡んでくるようになった。
仕事をなめているとしか思えない失言も多く、正直ブン屋としても当てにならない。
「あ、ごほん、失礼。でもなぁ。
『稗田阿求、妖精に変化する!』、いい記事が書けそうだったのに。」
本当に意味が分からないことを言う。
天狗はどいつもこいつも毎日が四月バカなのか。それとも本物のバカなのか。
「あ、私はねつ造記事を作ろうってんじゃないんですよ。文とは違うから。」
「……じゃあ、私が妖精変化の術を持ってるなんて、大真面目に考え付いたんですか?」
「やだなぁ、そんなわけないじゃないですか。」
そう言うと、天狗はにやりと笑って私に耳打ちした。
「あのですね……」
わざわざ耳打ちされるほどの内容でもなかったが、意外だった。
いや、天狗をなめすぎていた。妖怪は頭の回りが早い。
「仕方ないですね、分かりました。試してみますよ。」
私は渋々返事をして、目を閉じ、気を高めた。
「私は花の妖精『アキュー』! 天狗に教えてもらった術で、人間から妖精になったの!」
湖のほとりに多くの妖精が集い始めたところで、私は声高に叫んだ。
がやがやと騒ぎ出す妖精たち。けれど、彼女たちはただ騒ぎたいだけ。
「だからみんな! しばらく仲良くしてね!」
ひたすら騒ぐだけの妖精に、私の本心など分かるはずもないのだ。
疑いもせず仲良くしてくれるに違いない。
(ふふ、この中で私は妖精の弱点をひそかに探り、今まで受けてきた辱めを倍にして返してやるのだ!)
この計画が上手く行けば、天狗への報酬を差し引いても、儲けは大きい。
私はつい、にやついてしまっていた。
「楽しそうじゃん、アキュー!」
油断した。ふと気付くと、見覚えのある妖精二匹に囲まれていたのだ。
「あれ? ねぇ、チルノちゃん。この子どこかで見たような気がするんだけど。」
「わ、私は初対面だよ! よろしくね、えーと……お名前は?」
慌てて繕ったが、聞くまでもない。
「あたいはチルノ、こっちは大ちゃんだよ。
うーん、あたいもどこかであんたを見たような気がするんだけど。」
妖精の記憶力を見くびっていたか。いや、勘だけは鋭いのか。
「そんなわけ、ハハ……」
落ち着け阿求。私は出来る子だ。
そもそもバレたところで問題ないじゃないか。私の計画が露呈するでもない。
だが、バレないことに越したことはない。考えろ、私。
「えーと、ほら、世の中には三人似ている人がいるらしいよ。知ってた?」
苦し紛れの言葉を紡ぎ、私は難を逃れた。
何故なら、妖精の頭脳はこの程度の迷信にもついて来られないからだ。
「へぇ、よく分かんないけどまあいいや。
それよりさ、今日はあんたも一緒に遊ぼうよ!」
この通りである。
隣の大妖精も、私を訝しむことをやめて、笑顔で話しかけてきた。
「あはは、アキューちゃん、チルノちゃんについていくのは大変だよ?
私がなるべく抑えるから、頑張ってね。」
ついて来られていないのはどっちだ。
私はひっそりと鼻で笑い、飛び立つ二人の後を追った。
「このへんでいいね! さ、いくよアキュー!」
湖の中央付近まで飛んだ頃、急にチルノが振り返り、叫んだ。
「チルノちゃん、手加減だよ手加減。」
「あたいにできるのは湯加減くらいだって、知ってるじゃん、大ちゃん。」
話がつかめない。この妖精たちは何を言っているのか。
氷の妖精が湯加減とは如何なることなのか。
……と、考えている間に頬をかすめていったのは、一本の氷柱だった。
「……な!?」
いつの間に正体も目的もばれていたというのか。そんなバカな。
いや、落ち着け阿求。こういう時はまず話し合いである。
「ちょっと、チルノ……ちゃん! 何でいきなり?
私、何か悪いことしちゃったかな? だとしたら謝るよ。」
我ながら鉄板の台詞である。
ところが。
「はぁ? 何言ってんのさ、アキュー。
意味分かんないけど、早く弾幕ごっこ続けようよ。」
弾幕ごっこ。
それは妖怪や一部の狂った人間が行う美しい遊びである。
この遊びは美しくて、私も本当に好きだ。もちろん、傍から見ている分には。
「ちょ、待ってよ、チルノちゃん! 大ちゃんも助け……うわっ!」
完全に失念していた、この可能性を。
妖精が弾幕を撃っているのも何度か見たことがある。
一方で、私は一般の人間であり、弾幕を撃てた試しなどない。
「遠慮しないで来なよ、アキュー。避けてるだけじゃ、あたいは止まらないよ!」
「頑張れアキューちゃん!」
「ううー、くそっ!」
このままでは、私はただの利益に溺れた妖精以下の愚かな人間である。
それだけは回避しなくては。
回避――いや、避けるだけじゃない。私も、力を出すのだ。
「むむぅ、妖精になった今ならむしろ……!」
ふと、気付いた。
妖精は、何事も一直線だ。一直線に信じる力。
それが妖精の力なのだと。
「私にも! できる!」
そう叫んだ瞬間、手のひらが暖かく輝いた。
見ると、小さなつぼみが手の中に息づいている。
「……これが、私の弾幕。」
私は手を大きく掲げた。
そこから輝く光に包まれ、周囲の氷塊は全て水と消えた。
「す、すごいね、アキューちゃん。」
大妖精が感嘆の息を漏らす。
一方、私の前方で驚嘆の声を上げているのがチルノだった。
「ま、負けるわけないじゃん! あたいが……」
その言葉を最後に、チルノはかなたへ吹き飛んだ。
花が開き、そこから放たれたレーザーによって。
こうして、私は妖精に一つ、打ち勝ったのである。
「――こんな感じになりましたが。」
「ほぉ、はぁ、これはなかなか……ぷくく……」
「笑わないでください。私も初心者ですので。」
「いや、でもこれ、いや、すいません……ぷくく……」
気に食わないが、私はそのまま原稿を天狗に手渡した。
何がおかしいのかも良く分からないし、わざわざ直す気も起きない。
こんな酔狂な企画に。
「あなたが新聞に創作小説を載せたいっていうから書いたんですけど。」
「それは感謝してるけど、でもこれでいいの?
……ううん、何でもないです。原稿頂きました!」
気に食わないが、外の新聞をたまたま見かけた時にあった「小説欄」は、確かに素敵だと思った。
ああしてハッキリと「嘘」をついた記事を書けるなら、私も協力しよう。
……そう思ったのに。どうにも天狗と妖精は私にとって害悪である。
「ちなみに、次号の予定は?」
「次号は、私の『一度見た物を忘れない程度の能力』と妖精としての記憶力が矛盾を起こして、
大変なことになるお話を考えています。」
「それはまた……ぷくく……!」
何これ。
私、新聞の小説全然読んだことないんですけど。
かいそー
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2011/04/01 17:11:09
更新日時:
2011/04/01 17:11:09
評価:
1/3
POINT:
108110
Rate:
5406.75
簡易匿名評価
POINT
0.
8110
点 匿名評価 投稿数:
2
1.
100000
点
sas
■2011/04/01 17:48:05
記憶wwwwww
名前
メール
評価
1000000点
100000点
10000点
1000点
100点
パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集
コメントの削除
番号
パスワード