穴＜フラ（ン）ジールです

「うーん、いい朝ね」

私は明るい光の差し込んでくる窓を見ながらうーん、と伸びをした。
さてと、起きましょうかね。

「フーラン♪ おはよー！」

隣で寝ているはずのフランに声をかける。
……しかし、隣にはフランはいなかった。

「あれ、フラン？ ……先に起きちゃったのかな」

はっ、誰かの気配……！
私が謎の気配に気がついて後ろを振り向くと……そいつは立っていた。

「あ、アンタ誰よ！？」
「フラジール、です」

……フラジール？
どう見ても人間ではないわね。
というか妖怪ですらなさそう。
金属で出来た細い手足……
簡単に折れてしまいそうな胴体……
そして「穴」という漢字にそっくりのシルエット……
なんなのよ、こいつ……

「はっ、そんなことよりフランはどうしたのよ！？
　アンタ、何か知ってるんでしょ！？」
「ああ、あの可愛いお嬢さんは私たちが身柄を拘束しております。
　大丈夫です、危害を加えはしません」

身柄を拘束している、ですって！？
一体何が目的よ……

「まぁ、まず彼らが彼女に手を出すことはありえません。
　……ゲイヴン、ですしね」

ゲイヴン？ 何それ？
まぁ、それは置いておきましょ。

「目的は何よ……？」
「目的、ですか？ さぁ、私は知りませんね。上が勝手に決めたことですから」
「何よそれ！ それじゃあ手の打ちようがないじゃない！」
「まぁ、落ち着いて……あと数時間もしたら開放することだけは約束できますから」

本当かしら？
でも今は信じるしかなさそう。

「わかったわ……とりあえずフランがどこにいるかだけ教えてくれない？」
「それは流石に教えられませんね。彼らから口止めされてるんで」

……もう怒ったわ。
だったら、嫌でも吐いてもらうんだから。

「……あれ、あなた、何をやってるんですか？
　そんな物騒なもの持って……」
「最終通告よ。どうしても教えるつもりはないのよね？」
「ええ、ありません」
「じゃ、恐ろしい目にあってもらいましょうか……！」

行くわよ……スピア・ザ・グング……ニルッ！

「な、何……！？　え、ＡＭＳから、光が逆流する……
　ギャァアアアアアアッ！」
『脚部破損、腕部損傷。ＡＰ３０％』

よし、倒れたわね。さて、尋問開始よ。
……今なんか音声が流れた気がするけど、気にしない。

「大丈夫、急所は外してあるから。
　さて、死にたくなければ私の質問に答えてもらいましょうか？」
「プランＤ、いわゆるピンチですね……」
「プランＤだかフランＤだか知らないけど！ 答えてもらうわよ！
　コラ、吐け！ 吐きなさい！」

ガンガンと奴の頭を壁に打ち付ける。

『ＡＰ１０％、危険です』

またなにやら音声が流れた。

「……撤退、します」

は、撤退？
この状態からどうやって逃げるっていうのよ？
すると。

「は、な、なにこれ？」

彼の背中が光っている。

「巻き込まれたら……マズイ……」

私の本能がそう告げた。
彼から離れなきゃ！

「フラジールがまさかここまでやられるとは……」

私が離れると、ほぼ同時に「ドヒャア」という音を立てて、
彼は私の部屋の壁をぶち抜いて空へ飛んでいってしまった。

「な、なんだったのよ一体……」

はぁ、もう朝から疲れたわ……
ごめんフラン、ちょっとだけ横にならせて……



「はっ、フラン！？」

……飛び起きると、いつもと変わらない私の部屋が目に飛び込んできた。
恐る恐る横を見ると、そこには天使のような寝顔のフランが。

「夢、だったみたいね」

ふぅ夢でよかったわ……
あの夢、多分昨日輝夜のところでみんなとゲームしたせいね……
ま、それはどうでもいいや。

「フーラン♪」

優しくフランの頭を撫でてやる。
するとフランはうーん、と呻きながら小さく呟いた。

「手こずっているようだな、尻を貸そう……」

……フランも昨日の影響が出てるみたい。
まったく、夢にまで出てくるか、変態どもが……！

終わり！