- 分類
- 永江さん
第一話「出会い」
昨夏のことでした。暇を持て余した神の遊びと称して、おむすびという名前で出会い系サイトへと登録をしたのです。というのも、私はサクラからのメールを読むのがとても好きなのです。適当なのもあれば、手の込んだものもありますし。その中に一通、件名も無し、本文も「会える?」だけのメールが。
彼女は地子とだけ名乗りました。どうせ暇なのでと待ち合わせをしてその場所へいくと(今思うとがっついていただけに思えますが)腰ほどもある長い髪の少女が一人で立っていました。どこからどうみても上品なその子が地子ちゃんなのか。それとも別か。私も男性と名乗っていたので、しばらく待つことに。
数十分ほど経ちましたが、私も彼女も目当ての人が見つからないようでした。そこで携帯を取り出して、一通。すると、すぐに彼女の手の中で携帯がブルブルと震えだしました。「ああ、こんな子も出会い系サイトに登録するのだな」という感想を抱きましたが、彼女は目を丸くして私を見てきました。会釈。
立ち話もなんなので、牛丼屋に連れ込みました。近かったし、お金もなかったし、ドン引きさせて帰らせるつもりだったのですが……。妙に懐かれてしまいました。無味乾燥なメールの応対が気に入って、会ってみたいと思ったと言われても、困る。アドレスを交換してその場は別れましたが。次もあるとか。
第二話「メール」
ときに、私事でのメールというものが大嫌いです。用事があるのならば電話をすればいいですし、重要な連絡ならばなおさらです。何々が美味しかっただの、学校がめんどくさかっただの、帰りに面白いおじさんが居ただの友人に彼氏が出来ただの。よくもまぁ、こんなくだらない話題を送れるものです。
そのことを、唯一メルマガ以外で私にメールをよこす地子へと聞いてみたところ「特別でもないときに連絡をするから親しい間柄なんでしょ」ときょとんとされました。いつのまに特別な間柄になったかもわからないですし、そもそも返信も三通に一通しか返していない。しかも短文で満足なんでしょうか。
隣でみそラーメンを啜っている彼女が週末のたんびに押しかけてくる理由が、私にはわかりかねているのです。もっと歳の近い女の子と遊ぶようにと諭してはみたものの、学校のことに話が及ぶととたんに不機嫌になるのです。そういえば、彼女からは中学校の話は聞いても、高校の話は一度も聞いたことがない
私が知らない中学校時代の友人の話はしても、今通っている学校の話は一度もしない。この年代の子供は難しいので、無闇に突っ込みはしません。そんなことはご家庭かお人良しに任せておけばいいのです。少なくとも私の役割ではないと思っていたのです。出会って初めての、地子が来ない週末がくるまでは。
第三話「カラオケ」
愛し愛された経験があるのかと言えばそれは答えにくいですが。地子はまるで自分で経験してきたように見てきたようにソレを語るのです。妄想なんじゃないですかそれと片付けてしまうのは簡単ですが、カラオケ屋の薄いジュースと一緒にそれを飲み込んで、彼女がわからんとぶーたれる曲を入れるのです。
しかしこの年代の女の子というのはファストフードとカラオケが好きで、もう少し成長すると居酒屋の酒という名を冠した色水を好むようになって。私はのときはどうだったのかな、なんて思いつつ付き合っていると、思い出せずとも過ぎた後なのだなぁとは感じます。おじさん臭いなんて言われつつイカを齧る。
親愛も恋愛も一緒くたに纏めて面倒だと片付けてしまえればいいのですが、人と関わることを完全に拒んでしまわない限りはどちらも生活に関わってくるのです。面倒なパラメタではありますが、寝こけた彼女の薄い胸が背骨に当たっているこの瞬間には、それぐらいはあってもよいのかなぁ、なんて思うのです。
- 作品情報
- 作品集:
- 2
- 投稿日時:
- 2011/04/01 14:45:23
- 更新日時:
- 2011/04/01 14:45:23
- 評価:
- 1/3
- POINT:
- 1008776
- Rate:
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