「イヤァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
第一発見者は、レミリア・スカーレット(推定五百歳)だった。
「どうしました、お嬢様!?」
「何があったのお姉様!」
「な、何ですかいきなり?」
「اخرس، يرجى أن تكون هادئة」
そして咲夜、フラン、美鈴、小悪魔が順番にやってきた。
その場所は大図書館。レミリアは大図書館の真ん中でセカチューしていた。
「パチェが……パチェが死んでるの!!」
Ω ΩΩ<な、なんだってー!?
小悪魔を除く三人は、一様に同じリアクションを取った。小悪魔は眠たそうにしている。
「死因は分からないけど間違いなく他殺だわ……私のカリスマな勘がそう告げている」
レミリアは静かな声で呟くと、キッ、と三人のほうを睨みつけた。
「さあ……今なら怒らないわ。痛みなく殺してあげるから、誰がヤったのか正直に手を挙げなさい」
そのオーラが不夜城レッドなのを見て、三人は慌てて取り繕う。
「わ、私じゃないですよ! 今日は朝からずっと館のお掃除で大変でしたし……それに、確かにパチュリー様は居候のくせに今でもオネショするししかもそのオネショを隠すためにベッドを水浸しにして澄ました顔で私に洗濯を要求してくるのでたまに殺してやろうかと思う時もありましたけど……けど、私にはパチュリー様を殺す動機がありません!」
咲夜の弁だ。続いて美鈴が、慌てふためきながら話し始めた。
「私でもないですよ……私も起きてからずっと門番の仕事で外に居ましたし……それに、確かにパチュリー様は居候のくせに何の仕事もせずにずっと夏は涼しく冬は暖かい図書館の中で本を読んでいてたまに働いたかと思えばよく分からないロケットを作る程度のものだからしばしば殺してやろうかと思う時もありましたけど……けど、私にはパチュリー様を殺す動機がありません!」
最後にフランが締めくくる。
「私じゃないわよ!……私はいつもみたいに地下室でずーっと一人だったし……それに、確かにパチュリーは居候のくせに紅魔館地下の事情を我が物顔で取り仕切ってるしまるでお姉様の代弁者みたいな顔して私に命令してくるからマジウザくて何回も殺してやろうかと思ったりしたけど……けど、私にはパチュリーを殺す動機がないわ! 信じて!」
レミリアは思案を深める。
「そうね……それじゃあ、これは外部犯の犯行ということかしら……」
そこに別の声が一つ混ざった。
「いや、それはないぜ」
『ま、魔理沙!?』
本棚の陰から、霧雨魔理沙が現れたのだ。
「今日の大図書館は私除いて、レミリアしか足を踏み入れていないはずだぜ……おっと、誤解するなよ。私がパチュリーを殺すわけがないじゃないか。確かにパチュリーに借りた本は時々意味不明な怪物やら触手やらが封印されていて時々生命の危機に瀕するお陰でいつか殺してやろうかと思ったりもしたぜ……けど、私にはパチュリーを殺す動機はないぜ」
そんな魔理沙の言葉に、フランが息を荒らげた。
「ほら、魔理沙も言ってるじゃない、今日は大図書館には誰も来てないって! ……もしかして、第一発見者のお姉様がパチュリーを殺したんじゃないの?」
虚を突かれたように驚き、レミリアはパチュリーを床に叩きつけるようにして立ち上がった。
「ふざけないで! 私はさっきまでずっと自分の部屋で眠っていたのよ! ……それに、確かにパチェは居候のくせに昔から態度でかかったしいつの間にかフランの為に用意していた地下室を自分の図書館にしちゃうし私が昔好きだった人間を寝とったこともあるし吸血鬼が物珍しいからって実験に付き合わされてあわや焼死なんてことも多々あったけど……けど、私にパチェを殺す動機なんてないわ! そうでしょ、パチェ!!」
「ええ、その通りよ。私とレミィの友情は絶対に崩れない、絶対によ」
「じゃあ、誰がパチュリー様を殺したっていうんですか!?」
「だから違う! 私じゃないもん!」
「私は絶対に違いますからね! それに、咲夜さんとフラン様は一目を盗んで誰かを殺せる力がある……」
「バカ言わないで美鈴ッ! 私が殺したら外傷は確実よ!」
「そうよ! 私だったらチリ一つ残さないわ!」
「魔理沙が毒薬を持ってきたに違いない!」
「فإنه لا يزال على قيد الحياة؟」
「もう、もう誰も信じられないわよ!」
「私じゃないぜ、絶対に!」
「パチュリー様は自殺したのよ!」
「私は自殺なんてしないわ」
「そうよ、パチュリーが自殺なんてするわけがない!」
「だったら何がどうなってるっていうんですか!?」
「私が毒薬? バカ言うなお前こそ!」
「咲夜が昨日の晩ご飯に毒を盛ったの!?」
「そんなこと、するわけがないわ!」
「じゃあもうなんだっていうのよぉおお!!」
「いやだ……こんなことで紅魔館が……」
「もうなかったことに、なかったことにしない?」
「それはいやっ! パチェの弔いは絶対よ!」
「レミィ……そんなにも私のことを」
「じゃあ、お姉様が全部の罪を被ればいいのよ」
「フラン様、それは」
「قريبا أصبحت كسول」
「私がパチェを殺したことにするなんて認めないッ!」
「みんな、こんなことでいがみ合ってもダメです!」
「こんなことってなによ!」
ゆかりんは作者の嫁です。
「みんな落ち着けよ!少し冷静になれ!」
「冷静になってたまるもんですか、これが」
「もうみんな死んじゃえばいいんだァ!」
「止めろッ! 特に私を巻き込むんじゃなぁい!」
「何で……何でこんなことに……? 教えてよ神様」
「うわああああああああああああああああああああ」
「!? 咲夜?!」
「もうだめですよこうなったら私たちはもう戻れない」
「美鈴ッ! 少し黙れ!」
「黙るのは貴女たちだッ! こんな押し付け合い嫌」
「いい加減に……」
「いい加減にしなさいッ!」
誰よりも大きな声で、小悪魔が叫んだ。子安武人の裏声に似ていた。
「まず、皆さんに言うことがあります。……パチュリー様は生きています」
「えっ!?(レミィ)」
「本当ですか!?(咲夜)」
「よかった……(美鈴)」
「どうして分かるの?(フラン)」
小悪魔による衝撃のカミングアウトに、一同驚きの声を上げる。
「ね、パチュリー様」
「ええ、生きているわ」
小悪魔の後ろから、すっとパチュリーが現れた。
「ああ、パチェ、パチェ!」
感動のあまり、レミリアは涙を流す。
「でも……どうしてこんなこと……?」
「そうですよ、何故こんなふざけた真似を」
「そうよー、とっても驚いたわ」
咲夜、美鈴、フランが口々に理由を問いかけ始めた。
「その質問には私が答えるわ」
毅然とした態度で、カリスマ溢れる佇まいのレミリアが、三人のほうを向く。
「今日はエイプリルフール……実は、パチェが死んだというのは嘘だったのよ!」
Ω ΩΩ<(ry
「ククク……みんな、よくもダマされてくれたわね!」
「そっかぁ〜! 今日はエイプリルフールだったのね! すっかり忘れていたわ! 流石お姉様!」
「あら、ということは今日はパーティを催さなきゃいけませんわね?」
「その通りよ咲夜!」
「やったぁ! 今日はパーティですね!」
「おっと美鈴、貴女はちゃんと仕事を済ませなきゃダメよ。今日の貴女は門番じゃなくて受付」
「さ、咲夜さん……」
「ちゃんとパーティには参加させてあげるから、頑張りなさい」
「あ、は、はい!」
「全く、美鈴は食い意地が張ってるわね」
「そんなこと言わないでくださいよお嬢様ぁ〜」
うふふあははと笑いが溢れる、紅魔館は今日も平和です。