世紀末覇王伝そそわ

作品集: 2 投稿日時: 2011/04/01 11:06:59 更新日時: 2011/04/01 11:06:59 評価: 5/9 POINT: 5031108 Rate: 100622.66

 

分類
嘘々話のエアマスターをインスパイヤしてみた
中二
勝手に名前使っちゃった作家さん方ごめんなさいです……
 20XX年。世界は破滅の炎に包まれた。
 『PNS』『aho』『N』そう呼ばれた三神のジハードは、暴虐的なまでの衝撃となり、大地をなぎ払ったのだ。
 果てなく広がる焼け焦げた荒野。沈黙する空。
 ありとあらゆる生命が死に絶えてしまったかのようであった。絶望的な光景。

 だが、例えば石畳を突き破り可憐な花びらを咲かせた一輪の花が如く。
 闘士達の瞳より光は失われず。いや、むしろ爛々と輝いてさえいるではないか。
 鍛えに鍛えたレトリック。積み重ねた語彙。とっておきのセンテンス。それらを胸に彼らは武器(ペン)を握る。大地に足跡を残す。

 この荒野には、如何なる強敵がいるのだろうか?
 弱肉強食の修羅の国。
 大地は、東方創想話は、彼らの渇望がため今日も闘争を天命とする。
 ペンとペンが激しく交わり、火花を散らす。









 ★ ★ ★









 男がいた。強い風が吹く中、微動だにせず、乾いた大地を踏みしめている。
 巨大な背丈。丸太のような腕。厳めしい顔。存在だけで他を圧倒するオーラには覇王の風格さえ漂う。

 覇王……その表現はあながち間違いでもないのかもしれない。
 少なくとも彼はそれに近い場所にいる。
 『冬扇』彼の名前だ
 古くよりこの地で戦い続ける、大陸屈指の猛者である。

 ギャグとはパワーである。その哲学を最も純粋に体現する闘士。
 重量ある拳を激流の如く放ち続ける圧倒的暴力が、今まで数多の挑戦者を葬り去って来た。

 冬扇の視線の先の彼。
 冬扇の巨躯と比べると明らかに小さな彼。
 彼もまた、憐れなかつての挑戦者が如く、無残にも骸を晒してしまうのだろうか?

 否、話はそう簡単に終わらない。

 未熟な者が浴びればそれだけで恐怖に足を震わせるであろう冬扇の一睨みを受けて、しかし彼は怯まない。
 彼の覆面の下の表情は、まるで凍える地球が如く冷静なのだろう。
 全身を覆う黒装束は東洋の意匠だ。

 『Ninja』彼はそう呼ばれている。
 いつの間にか創想話(シュラノクニ)に降り立ち、いつの間にか大きな名声を得ていた彼は、しかしその実多くの謎に包まれている。
 僅かに分かっている事。敗者の証言。「気がついた時には、スクロールバーが一番下まで行っていた」

 単純なパワーでNinjaは冬扇に劣るだろう。
 だが、彼には冬扇にない軽快さがある。

 Ninjaの顔は涼しいが、ハートは熱い。期待に高なる拍動はヒップホップのビートのようでもあった。
 静かに背中より刀を抜く。二尺八寸和泉守兼定。ジャスコ特製の業物だ。

 艶やかな黒光りに、冬扇はダブルクォーテーションを浮かべる。
 それはおそらく感心だ。微かに緩んだかに見えた口元は、得難い強敵との邂逅を喜んでいたのだろうか。

 強い風がマントを揺らした。
 能力名「桃魔館」
 同時召喚されたマハトマ・ガンジー。毛沢東。波多野重雄(前八王子市長)が冬扇の巨大な拳にジャンクションされる。
 Ninjaも刀を構えた。

 刹那の交錯の先に――。









 ★ ★ ★









 ジャンル厨「ぐへへ、お嬢ちゃん、俺たちといい事しようぜ。嫌だって言ったら、どうなるか分かるよなぁ」
 アンチ百合厨「スレで叩かれたくないだろう? ぐふふ」

 創想話(シュラノクニ)の荒野で、この手の性質悪い人間を見つけるのは難しい事ではない。
 運悪く彼らに囲まれてしまった駆け出しが、為す術も無く斃されるのもよくある話だ。

 彼らが囲んでいるのは、一人の小柄な少女だった。
 武装はせず。肉体も華奢だ。おおよそ戦う力があるようには見えなかった。

 故に暴漢達は警戒をするべきだったのだ。既に手遅れだ。
 荒野のど真ん中で、無防備な少女がたった一人で歩いているというシチュエーションの不自然さ。
 真なる脅威とは、往々にして羊の皮を被る。

 彼らが頭の中で想像する未来は、残念ながらもう訪れない。

「うっ……?」

 相次いで倒れる暴漢。少女は彼らを冷ややかに見つめる。
 美しい花には棘があると言うが、彼女のそれは、より悲惨な結末を約束する猛毒だ。

「くっ……お前、自分が何やってるか分かってるのか!? 10点妖精の姐御を敵に回すつもりか!?」

 威勢のいい文句が、しかしもはや何の価値も持たない事を彼女は知っている。

「ムラヌェ……」

 暴漢の一人が声にならない声を上げた。心臓は動いている。呼吸も正常だ。ただ精神だけが変質を起こした。
 他の彼らもすぐにそうなった。うわ言のようにカプ名を呟き続ける肉塊だ。
 彼らは精神が尽きる時まで、ずっと幸せな夢を見続けるのだ。

 少女は何事も無かったように歩みを再開する。
 足音が止まる。物陰に気配を認めた。

 ――パチパチパチ

「お見事。鮮やかなお手並みでしたね」

 称賛の拍手をしながら物陰より出てきた彼女を少女は知らない。表情が怪訝になる。

 歳の頃はあまり変わりなさそうだった。
 にこりと微笑む表情は柔和で、気品が漂うが、おそらく善良な市民とは程遠い。
 正直面倒だと思った。溜息をつく。瞬間彼女の碧眼が曇る。

「アヤチル……」

 頭に沸いたイメージを掻き消すように彼女は頭を振る。表情は元の柔和なそれに戻っていたが、瞳の真剣さは増したようだった。

「……テンプテーション。能力を殆どセーブしてこの吸引力だと言うなら、まさしく怪物ですね」

 彼女の呟きは少女に聞こえていないし、興味も無い。目下最大の疑問は、この不可思議な彼女がコンタクトを取ろうとしている状況についてだ。

「あなたは一体?」
「おっと、挨拶が遅れまして。失礼。初めまして。私は『浅井キャビア』。星を巡る旅人とでも名乗りましょうか? でも今大切なのはそれよりも、私があなたにとても興味がある一人だってことなのです」
「私に興味? そんなに有名人なつもりはないんだけど」
「それは過小評価ですよ。何しろ私が興味を持つほどの人間なのですからあなたは。私は嬉しいのです。ようやく邂逅を果たせた。願わくばあなたもこの出会いを喜んでくれれば嬉しいですね。どうでしょう? “クイーン・オブ・ハーレム”『夏星』さん」

 浅井は不敵に笑んだ。

 浅井キャビアは百合の花が咲き乱れる国出身の、尊い身分なのだという。
 耽美を好む技巧派であり、豊富な知識に裏打ちされた錬金術(センテンス生成)の能力は大陸でも屈指だろう。
 基本ステータス値は総じて高く。すなわち隙が無い。

 ――彼女は強い。

 直感で理解をして、夏星は浅井を無視してやり過ごす事ができなくなった。
 表情を少し硬くする。

「理由を教えてくれないかしら? どうして私に絡もうとするのかしら?」
「ふむ。本音を端的に述べるなら、欲望ですかね」
「欲望? でも私は別に資産家ってわけじゃないわよ?」
「お金にそこまで執着心はありません。それよりももっと魅力的なものがあるじゃないですか。あなたは自分の能力が如何に強大が分かっていない」
「大した事はないわ」
「あなたがただ呼吸をするだけで、世界が百合色に染まる。これは単純に凄い事です。……私は、その力が、欲しい」
「無茶言ってるように聞こえる」
「無茶で結構。略奪愛はそれなりに素敵なのですよ」
「きっと後悔するわよ? 一応私、まだ一度も負けたことないの」
「炭酸の抜けたシードルのようなキスじゃ誰だって満足できないでしょう? 刺激的な戦いならむしろ望むところ。どうか私の心のFlammeを焚きつけてくださいな」

 もはや衝突は不可避と夏星はリミットを解除する。抑制されぬ百合力。壮絶なまでの甘さが天を覆った。張り詰めた空気に莫大な砂糖が撹拌される。
 嵐の気配に浅井は一際嬉しげな笑みを浮かべた。

「あなたを喰らって私は更に強くなる。“どうしてもあなたが悪い話”を、さあ、始めましょうか!」









 ★ ★ ★









 『佐藤厚志』は魑魅魍魎が跋扈する創想話(シュラノクニ)の中でも異色の存在だ。
 静かなクラッシック音楽を背景にロシア文学を読みふける紳士が彼だが、彼のいる部屋はまるで前衛芸術のような景色を呈している。
 この大陸ではとても珍しい、生まれてくる場所を間違えたのではというほどの特殊な能力者が彼だ。
 『UNDERGROUND』と呼称される彼のフィールドはとても難解だ。現実とそうでないものの境界が時に曖昧となる。
 不可解であり、不条理であり。しかしそれらは彼のフィールドにおいて決して弱点ではない。

 彼の噂を聞く人間はそれなりに多い。だが実際会う事出来た人間はあまり多くない。多くはフィールドに弾かれる。
 フィールドは、あるベクトルを持つ人間にとって、酷く不快に感じられたりもするのだという。
 佐藤厚志の独特が過ぎるスタイルは万人を祝福するものでないのだ。

 とりあえず彼は世間の評判をさして気にする人間でも無かったので、いつも通り安楽椅子に腰かけ、ジャック・ダニエルを友にナボコフ短編集の頁をめくっていたのだが。
 ……それは全くの偶然だった。
 フィールドの境界を突破してくる者がいた。

 彼は嵐のような男だった。
 泣き笑いながらギターを掻き鳴らすような、やけくそででっかい罪を犯しちゃうような、時にはアバウトでファジーで怠惰な午後のような。青春そのもののような。
 異端をやりながら王道を進む男だった。それを可能とする驚異的な突貫力と馬力を有していた。
 『胡椒中豆茶』09年の土壌が産んだ怪物である。

 ファーストインプレッションはおそらく、互いに特筆するほどではなかった。
 胡椒中豆茶は単にここを通り過ぎようとしただけだ。佐藤は本の続きが気になっていたはずだ。

 彼らが戦うのに必然性など何もない。
 ああ、しかし。戦う理由なら用意できてしまったのだ。例えそれが荒唐無稽な散文詩の如き不明瞭な文面であったとしても。

 佐藤は本に栞を挟み、すっくと立ち上がる。
 「……ドン・プレシンデア・サンティアーノ」呟いた言霊が『UNDERGROUND』の密度を増大させる。
 何千体もの案山子が整列し、天より砂が糸を引く。濁流で満たされるが如くフィールドの混沌が増大する。

 レコードからマスカーニの曲が流れだした。それが合図だった。

 佐藤が右手を掲げた。
 せり上がった混沌が胡椒中豆茶を押し潰さんと迫る。
 胡椒中豆茶はそれに超高出力のマイクロウェーブと腕力からなる純粋な破壊力を以って応えた。
 眩く火花が散ったが。

 ――取り敢えず、時計の音が喧しいのである。









 ★ ★ ★









 優しくはないが、それでも来る者は拒まないのがここ創想話(シュラノクニ)。
 今日もまた、戦場を求め、新たな闘士が荒廃した大地を踏む。

 一人は『根古間りさ』と名乗った。
 一人は『タノモウス』と名乗った。
 まだ素の表情(アトガキ)に無垢さを残す彼らだが、足元には数名の暴漢が転がっている。

 ひび割れたような太陽が彼らを照らしていた。空気は埃混じりだった。
 情熱だけでのし上がれるほど易い世界ではないが、しかし何にしろ彼らは最初の洗礼(ソソワデビュー)を乗り切った。素晴らしい事だ。
 数日後、彼らが巻き起こす旋風を、この時はまだ誰も知らない。



 水分を失った大地に、二人分の足跡が刻まれていた。それは地平線の果てまで続いている。
 新しい血。陳腐化した価値観。穴を掘って埋める美徳。共鳴とdisの境界線。
 多くの変化と、栄光と、犠牲の繰り返しでこの地は発展してきたのだ。そしてこれからも。きっと。

 混沌と殺伐の大地。しかし、我々が未だ離れること出来ないこの大地。愛すべき大地。
 そう、その名は――





 
 ごめんなさい……。でも書いてて楽しかったんです……。
黒あるるん
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2011/04/01 11:06:59
更新日時:
2011/04/01 11:06:59
評価:
5/9
POINT:
5031108
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100622.66
簡易匿名評価
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0. 31108点 匿名評価 投稿数: 4
1. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 11:20:25
ヒャッハー!創想話は世紀末だー!
2. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 11:26:28
佐藤さん早く続き書いてくれないかなー。
3. 1000000 奇声を発する(ry ■2011/04/01 13:11:13
おーすげーwwww
5. 1000000 すぐに死ぬ程度のモヒカン ■2011/04/01 18:18:51
駄作は消ど(ハァーン
7. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/02 00:20:21
Ninjaさん続きマダー?
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