下手な嘘ならすぐばれて 寂しくなっちゃうよ

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 08:16:26 更新日時: 2011/04/01 08:16:26 評価: 7/23 POINT: 7110322 Rate: 59252.89

 

分類
パチュリー
美鈴
紅魔館
紅魔館の居候ことパチュリー・ノレッジには、常々気になっている事があった。
本を読み、外の世界と幻想郷での決定的な差異に気が付いたのだ。

「ねえ。あなた達、不思議に思った事は無い?」

夕食時、パチュリーは紅魔館の主要メンバーに尋ねてみる事にした。

「何よいきなり。小難しい事ならご飯の後にしてよね」
「ご飯時だからよ。ほら、例えば今日のメニューはレミィの好物、バター醤油ご飯よね?」
「うん。これマジうまい。なんていうかこう、日本に来てよかったって感じがするわ」
「バターってどうやって作るか知ってる?」
「え? うーん‥‥咲夜、知ってる?」
「はい。牛の乳に水と塩を加えて容器に入れ、延々と振って作っております」
「え、自家製だったの?」

道理で美味しいわけである。

「それはともかく、バターを作るには塩が必要なのよ。それに、醤油にも多分塩が使われているわね」
「そうかもね」
「さて、ここで問題よ。私達の食生活に彩を与える素敵な調味料、塩。では、この塩ってどうやって作られているのかしら?」
「はーい!」
「はいどうぞ」
「えーとね、パチェに借りた本にね? 海の水を煮詰めて水分を飛ばす、って書いてあったよ」
「そう、お利口さんね。でも残念」
「えー? 違うの?」
「確かに一般的には正解よ。ただし、その一般的と言うのは、外の世界での話。考えてみなさい? この幻想郷には海が無いのよ」
「あ‥‥」

そう、外の世界との大きな違い。
この地には海というものが存在しないのだ。

「じゃあアレじゃない? ほら、塩の濃度が高い湖ってのがあるでしょ?」
「私もそれは考えたわ。調査の結果、そんな湖も存在しなかったわ」
「では、岩塩というのはどうでしょう?」
「無かったわ。ありとあらゆる可能性を調べたけれど、塩の痕跡を発見する事はできなかったの」

今まで気にせずにいたが、言われてみれば確かに疑問だった。
うんうんと頭を捻るが、頭脳明晰な魔法使いに解けなかった問題を他の者が解決できるとは思えない。
そんな時だった。

「あ、私知ってますよ。ここでの塩の精製方法」
「な、なんですって!?」

パチュリーは驚きを隠せなかった。
魔法使いである自分で持て余す謎の答えを、この体育会系の妖怪が知っているとは。

「ほ、本当なの!? 教えてちょうだい!」
「でも‥‥聞かない方がいいかも知れませんよ?」
「いいから!」
「はあ、それじゃ言いますけどね? ‥‥汗です」
「ぶーっ!」

パチュリー以外の面々が口内の食べ物を噴き出した。
この門番は今なんと言ったのか。
汗?
たしかに汗は塩分を含んではいるが‥‥

「ほら、幻想郷って、肉体労働者が多いじゃないですか? その人達がですね、身に付けていたタオルとかを持って、塩を作っている職人さんのところに行くんですよ」
「も、もういいわ」
「それでですね、大きな鉄鍋に、ギューッと絞るわけですよ。それをグツグツと煮詰めまして‥‥」
「もういいってば!」

レミリアの怒声が響き、それに反応した美鈴は言葉を引っ込める。
フランドールと咲夜は青白い顔で、器の中の食べ物を見つめている。
自分達が今まで口にしていた物が、屈強な男達の体から生み出された物だと聞かされたのだから当然の反応だ。

「そ、そう。なるほどね。また一つ知識を得られたし、私は研究に戻るわ。あ、咲夜。私、明日から食事はいらないから」

種族魔法使いであるパチュリーは本来何かを食べる必要は無く、完全に娯楽として食事を楽しんでいたのだ。
絶食宣言をしたパチュリーは、そそくさと図書館に戻って行く。
その後ろ姿を見送ったレミリアは、暫く経ってからようやく口を開く。

「あっはっはっは! 見た? パチェの顔! 閉じ篭ってばっかりいるから、世間の行事に疎くなるのよね」
「お嬢様ったら、人が悪いですね」
「咲夜だって楽しんでたじゃん。あー面白かった」

パチュリーのげんなりした顔を思い出して、皆が笑い出す。
美鈴を除いて。

「あの‥‥どうしたんですか?」
「どうしたって、あなたの嘘にみんなで乗っかってあげたんじゃない」
「いやあ、流石美鈴ね。バカバカしい中にもリアリティがあって」
「はい? ええと、ちょっと意味が‥‥」
「ん?」
「あ、あら?」
「え?」
「‥‥‥‥」

どうにも話が噛みあわない。
三人は、美鈴がパチュリーに振られた話題に咄嗟に出任せを言ったものだと思い込んでいた。
しかしこの反応は‥‥

「ね、ねえ美鈴。今の話、どうやって思い付いたの?」
「はあ、思い付いたと言いますか、慧音先生に聞いたんですよ。3日くらい前でしたかね」
「3日前って‥‥3日前はエイプリルフールじゃないけど‥‥」
「え、嘘‥‥」

つい今しがたまで笑っていた面々の顔から血の気が引いていく。

「さ、咲夜。私、気分が悪くなってきたわ‥‥」
「実は私も‥‥少し休ませてもらいます」
「うー‥‥気持ち悪いよう‥‥」

三人は食事を切り上げ、それぞれの部屋へと戻って行くのであった。












「あら美鈴。どうだった?」
「あはは、それはもう大騒ぎですよ。大成功ですね!」
「幻想郷に無い物の調達なんて、隙間妖怪の仕事に決まっているのにね」
「ですよねえ。大体、食卓に海の魚が出る事もあるのに」
「ま、たまにはイベントに乗るのも悪くないわね。さて、次は誰を引っ掛ける?」
「そうですねえ‥‥いっその事、知り合い全員に試してみましょうか」
「あら、悪い奴ねえ」
「パチュリー様こそ。うへへへへ」
「魔女は悪者だって相場が決まってるのよ。おほほほほ」
「うへへへへ」
「おほほごほっごほっ! むせた」

二人の悪ノリはまだ始まったばかりだ!
日頃から嘘ばっか吐いてると、肝心の本番に誰も相手にしてくれなくて困ります。

年に一回のお楽しみ、アイレムの本業が中止らしくて寂しいので書きました。
俺はウルトラマンの小ネタが見たいんじゃねえ‥‥
アイレムが好きなんだよォォッ!!
ピートロの続編待ってます。
ブリッツェン
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 08:16:26
更新日時:
2011/04/01 08:16:26
評価:
7/23
POINT:
7110322
Rate:
59252.89
簡易匿名評価
POINT
0. 110322点 匿名評価 投稿数: 16
1. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 08:46:46
いい紅魔館w
パッチェさんとめーりんというのも良いコンビですね。
2. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 09:18:35
これはww
うへへwwww
3. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 09:36:05
これはいい紅魔館w
5. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 11:11:40
お祭り作品なのにいつもの紅魔舘で安心しましたw
6. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 12:04:44
うまい!
これはいい紅魔館だ。
7. 1000000 奇声を発する(ry ■2011/04/01 13:04:30
ノリの良い紅魔館w
11. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 19:26:52
タヌキコンビだなぁ
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