- 分類
- マッチョだけど仕方がない
博麗神社の一室。
「なぁ、霊夢……脱いでくれないか?」
魔理沙の言葉に、はっと息を詰まらせる。何故そう言うことを聞くのか、と言う困惑。
とうとうばれてしまったか、と言う諦めが複雑に混ざった感情。
押し寄せてくる後悔。彼女に気が付く機会を与えてしまった、自分が情けなかった。
けれど、仕方がない、と言う思いもあった。
霊夢は自身の身を包む巫女服を引き裂いた。
下から現れたのは、やはり魔理沙の予想通りの鋼の肉体だった。
「やっぱり、お前……霊夢」
「ええ、そうよ。これが博麗に代々伝わるもっとも効率的な筋肉の鍛え方、よ」
「だけど、どうして――ッ!」
「隠してたのは悪いと思ってる、でもね魔理沙」
霊夢は大胸筋を揺らしながら、言う。そこにあるのはたわわに実った二つの果実ではなく、筋肉の塊だ。
「あなただって――隠してることがあるでしょう?」
霊夢の言葉に、魔理沙が顔を引き攣らせる。
俯いて、顔が髪に隠れて見えなくなった。
霊夢は、わかっていた。自身の肉体と同じく、魔理沙にも秘密があると言うことを。
そして魔理沙は、意を決したように顔を上げる。息を吸い込んで、吐く。
身体中の経穴から気が噴出した。
魔理沙の服を一瞬にして、布切れに変えていく。
「魔理沙……」
「これが、我が霧雨家に代々伝わる秘伝……」
魔理沙の肉体は、もはや以前とは明らかに違っていた。
これが彼女の秘密だ。
人間でありながら、妖怪と渡り合える彼女の隠していた力だ。
轟ッ! とうねりを上げる筋肉。だがしかし、それらは細い腕の中に束ねられているのだ。それはつまり、圧縮だ。無数の筋肉を束ね、凝縮し、細い腕の中に収めているのだ。それがどれほどのものなのか、想像を絶することだろう。
霊夢は歓喜した。目の前の友人が、こんな力を秘めていたことに。
そして、自然、霊夢は魔理沙の胸を――いや、おっぱいを揉んだ。
「たわわね」
「霊夢には負けるぜ」
「……ばか」
そこに表れたのは、まるで野獣のような八雲紫だ。
さらにあらわれたのは、まるでグラップラーの如く屈強な体躯をしたレミリア・スカーレットだ。
付き従うのは、十六夜咲夜。鍛え上げられた巌のような肉体。背後に見えるのは、幽波紋だろうか。
おまけにやってきたのは、白玉楼の二人だ。鉄塊のような剣を持ったムキムキ妖夢。
西行寺幽々子は、鉄扇で口元を隠している。
さらにやってくるのは永遠亭の奴らだ。彼女らはさらに、恐ろしい。
まるで億単位の時間を捻り潰したような肉体を持つ永琳。
姫の名に相応しい、まるで蛇のようなしなやかさで歩く輝夜。
鈴仙はソルジャーだ。無数の屈強な兎を従えている。
因幡てゐは、まさに圧巻と言えるだろう。小さな身体を長い時間かけて鍛えつくした、言わば必殺のための肉体だ。その力は、かつて自分を助けてくれて、手合わせした神様のために。
神様もやって来た。戦の神、八坂神奈子は素晴らしかった。背負った縄を、まるでチャクラムのように振り回してる。
もう片方の神、守矢諏訪子も負けていない。いつもの小さな体躯はどうしたと言わんばかりの八頭身。こちらも、輪のような武器を持っている。かつての宿敵と同じ武器を持って、立っているのだ。
現人神、東風谷早苗は、そんな二人を見守るように、けれど肉体は激しく脈動している。彼女は世紀末覇者になるのが将来の夢だと小学校で語ったのだ。
そこからも、たくさんの人妖が博麗神社にやってきた。
地底から、神社から、天空から、どこかしらから。
遅れてやってくるものもいた。
武器を持っているものがいた。
己の肉体を信用しているものがいた。
絶対の自信に目を輝かせるものがいた。
能力を過信するものがいた。
目の前の勝利を見据えるものがいた。
戦いに、自らの肉体から咆哮を上げるものがいた。
しかし、彼らは皆、等しく志を同じにしていた。
誰しもが、本気だった。
正面を見据え、絶対の勝利を誓うのだ。
優勝を手にする、と。
いま、この時より、このトーナメントは開催される。
幻想郷全土を巻き込んだお祭り騒ぎだ。
全ては、幻想郷の意思の元に――――
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2011/04/01 04:56:11
- 更新日時:
- 2011/04/01 04:56:11
- 評価:
- 1/3
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