とあるレビュアーの憂鬱

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 04:08:41 更新日時: 2011/04/01 04:09:51 評価: 10/23 POINT: 10101101 Rate: 84176.05

 

分類
メタ
 ずっと創想話を見てきた。

 多くの作家が面白さを形にすべく、一字一字に魂を込めて物語を創ってきたのを知っている。自身の心にのみ映る物語を、寝る間も惜しんで取り出そうとしている、それはいつ終わるとも知れぬ孤独な作業。
 彼らは、実直なのだと思う。
 彼女らは、一途なのだと思う。
 無垢な少年少女のように夢見がちだ。いや、きっと、少年の頃に見た青空よりも美しいものを夢見ていて、少女の頃に知った海原の慈愛よりも深い優しさを信じている。
 そのくせ大人よりも、現実の狭量さも理解している。

「初めて書いてみました」「三日で書きました」

 だからだろう、こんな言葉を溢してしまう。嘘なのだ。これは一ヶ月かけて創った作品なのだ。同級生の誘いを断り、同僚たちの飲み会を辞退し、そうして毎日毎日悩みながら書いた作品なのだ。ゴミ箱にある作品の残骸は数え切れない。辞書は引きすぎて手垢がついた。
 言い訳をしないと、予防線を張っておかないと、紙切れのような盾で本心を隠さないと、きっともう筆を握れないと彼らの臆病な心は自覚しているのだ。
 彼らは、ひどく脆い。
 そんな思いをしてまで彼らが求めるのは、なんてことはない、ただの一言。


  面白かった


 彼らは愚かなのだと思う。
 彼女らは不器用なのだと思う。
 「私はこれぽっちしか努力してないから面白くないと言われてもしょうがない」と自分にも他人にも言い聞かせ、その心の裏では面白いと言ってもらえると信じようとしている。彼らは決して「努力をした」とは言わないが、しかし努力はしているのだ。努力の成れの果てを真正面から見つめる意気地が無いのだ。
 しかし、

  面白くなかった

 そう言われることもあるだろう。コメントの一つも、もらえないことだってあるだろう。
 現実はやはり狭量なのだ。苦労が報われるシステムではないのだ。彼らはいつだって覚悟だけはしている。誰しもが多かれ少なかれ自分を慰める言い訳をするし、あるいは真摯にその言葉と向き合う人も少なくない。悔しい、悲しい、他の作家に嫉妬して何になる――そうして彼らは涙を糧にし、またゼロから物語を創り始める。

 ずっと、そんな創想話を見てきた。
 全ての作家が報われるべきだとまさか思っているわけではない。積極的にコメントをしようと働きかけるつもりはないし、本音を偽って「面白かった」と作家に告げるのは、彼らが人知れず積み重ねた努力への侮辱だと思う。
 それでも。
 時々納得できないことがある。
 こんな面白い作品が、なぜ読まれていないのだろうと。実際は読まれたのかもしれない。そして面白くないと切り捨てられたのかもしれない。
 私は、それを信じたくない。
 面白くないと切り捨てたものが宝石の欠片であることを。読まれさえしなかったこの作品が深海に沈む真珠であることを。
 描いた風景、熾した熱、柔らかい雪、夜空を切り裂く流星、愛おしいキャラ達のその自由な姿。
 これが知られていないのは紛れもない不幸だ。作者の不幸だ。読者の不幸だ。創想話の不幸だ。
 だから、私はレビューをするのだ。



「すごく面白かったから読むべき! 星五つ! 読まない人はろくな死に方をしない! うーん……なんか単純だよねこのレビュー。感情ばっかり先走ってて見るからに痛いし。ダメだ書き直し」

 と、偉そうなこと言ってはみたものの、レビューは難しいのでござる。
 レビューは戦いである。情報戦である。面白いものが百パーセント評価される時代は終わったのだ。恋愛模様、コメディタッチ、シリアスパート、バトル展開、鬱≪ダークネスホラー≫、歴史、一発ネタ、多様化した嗜好と価値観は作品が持つ吸引力を減退させた。

「そういえばこの前、ジャンル叩きが横行していたからなぁ」

 この作品をオススメするには辛い流れか?
 しかし読めばわかる、この作品はグロの皮を被ったKENZEN作品だ。

「だけどそれを書くとネタバレになるしなぁ」

 そう、情報をどの程度出すか、その匙加減が難しい。
 一級レビュアーはそのギリギリのラインを見極めて読者を作品へと誘導する。面白い部分を紹介しているのに、それは核心的なネタバレじゃない。

「そう、なかなかの美人をフォトショップでちょちょいと修正して超絶美人にするようなものだ」

 あれ? なんか写真と顔ちょっと違わない? いや、気のせいかな? まあどっちでもいいや! 君かわいいね!
 これくらいの匙加減が理想である。どうせ出会ってしまえばそんな気にしないだろうし。
 いっそ作者に無断で登場キャラを増やしてしまおうか。魅魔さまを出しておけば釣れるかもしれない。301みたいな人が。

「いやいや、流石にそれは作者ブチ切れだよね……うぎぎ……」

 しかしなんでこの作者はタグに「グロ」と書いたのだろう。これ全然グロ表現じゃないのに!
 自主規制の波がこんなところにも。

「タグにグロとあるけど個人的にはそんなグロじゃないと思います」

 こんなものかな?
 いや、しかし、作者がタグに「グロ」と設定したのに、一読者の自分が「グロじゃない」と言うのはどうなのだろう。

「おいィ! 作者出てこいーッ! 本当にこのグロ必要なんですかァ!?」

 パソコンのモニターを揺する。本当にここから出てこられてもそれはそれで困る。

「落ち着け深呼吸だ。ひっひっふーひっひっふー。読者様になってはいけないよね。作者が『グロ』としたのだから尊重しよう。作者が設定した、もしくはあえて設定しなかったタグに、注文をつけるのは読者様のやることだ」

 よし、冷静になった。整理しよう。
 「面白かった」と単純にレビューして嬉しいのはきっと作者だけだ。レビュアーに求められているのは作者を喜ばせる事じゃない。潜在的読者に「読んでみよう」と思わせることだ。「面白いのだろう」と思わせることではないし期待させることでもない。この点を勘違いしてはいけない。
 読み切れば面白いと思うのは間違いないのだ。どんな手を使ってでも作品へ足を運ばせればいいのだ。

「これか!?」


  やっぱパッチェさんは着痩せするタイプだった!
        ↓
  http://作品のアドレス


「これで一網打尽!」

 とはいえ作品のコメントに「パッチェさんの画像はどこですか 100点」なんて溢れても困るか。

「ちょっと他の一級レビュアーの参考にするかなあ」

 カチカチッ、ビュアー

「おおぅ、毒舌レビューだ……そうか、こんな手もあるなッ!」

 あえて毒を吐くことで「酷いもの見たさ」を誘い作品へ足を運ばせる。これは上手い手だ。
 やってみるか?

「この作品はダメ! まずグロ表記してるくせにグロじゃない! 作者はグロを勘違いしている! グロを読む時はね、誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで……」

 これ結局タグへの不満をぶつけてるだけじゃないか。

「だめっ……! だめっ……! こんなレビューがしたいわけじゃないっ……!」

 下手なレビューをやるくらいならやらない方がマシである。一度レビューされた作品を、他のレビュアーは避ける傾向がある。作品集全レビューの人が、他の人がレビューした作品を避けたのはあまりにも有名だ。
 ゆえに、この作品のレビューは最初で最後と考えなければならない。

「ひっひっふー。ひっひっふー」

 しかしこの一作品一レビューの法則は、レビュアーの立場からすると美味しくもある。
 自分が紹介してから数時間後、あるいは何日か後。その作品のポイントが増えていると自分のレビューの効果だと錯覚できるのだ。複数のレビューがあると、一体どのレビューが作品へと読者を呼び込んだのかわからない。
 この「自分のレビューで伸びたねやったー効果」は病みつきになる。
 ゆえに、レビューはなるべく早く、誰よりも先んずるのが望ましい。

「とは言え、いい加減に誉めるだけのレビューは三流だからなぁ。自演っぽいと言われると作者さんに迷惑かかっちゃうし」

 そこも注意すべきところだろう。「自演乙!」と言われて、作者本人は全く関与していないのに恥ずかしい思いをした作者は少なくないはずだ。

「うごごご……タグに触れちゃだめ、ネタバレは論外、釣りのような仕掛けは下策、遅すぎると先にレビューされるかもしれないし、誉めすぎると自演を疑われる世知辛いインターネッツですね。どうすればいいんだ!」

 カチカチッ、ビュアー

「あああああああぁぁぁぁぁ! 先にレビューされてる!!」

 もうだめぽ……






YY 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:20XX/0X/XX(月) 1X:3X:0X ID:MTB13410
>>YY-1 レビュー乙
私女だけどこの作品は面白かったよ!
Q で、いくつレビューしたんですか?

A い、一級レビュアーはそんなことを言わないキリッ(滝汗)
一級レビュアーを目指すMTB
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 04:08:41
更新日時:
2011/04/01 04:09:51
評価:
10/23
POINT:
10101101
Rate:
84176.05
簡易匿名評価
POINT
0. 101101点 匿名評価 投稿数: 13
1. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 04:22:31
あなたはむしろ作品を書くべきwwwwwww
2. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 04:39:07
いいから書けよw
4. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 05:27:24
>>xxx
レビュー乙、読んで来たよー実に面白かった
お前さんの薦めてくれる作品はいつも俺好みの物ばかりで時間が足りなくなって困る

とか書かれたら悶え苦しむよね、喜びで
5. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 06:45:58
レビュアーのはしくれとして大いに共感したw
8. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 08:35:41
感動したw
レビュー一つにこんな苦悩がw
9. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 10:13:02
レビュー書くときはどうしても気を遣っちゃうんですよねぇ
10. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 10:20:04
気持ちはわかるからまたww

でもそんな事ばっか言ってっからスレにレビューが少ねーんだよーっ。
12. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 11:09:42
レビュー頑張れw
結構レビュー見て読みに行くことあるから、本当に頑張ってほしい!
13. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 12:10:56
面白かった。
貴方は作品も書くべき。
期待してます。
14. 1000000 奇声を発する(ry ■2011/04/01 12:49:56
これはwwwレビューの大変さがよく分かりましたw
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