風流だった巫女

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 03:40:26 更新日時: 2011/04/01 03:41:58 評価: 0/4 POINT: 31108 Rate: 1245.32

 

分類
魔理沙
早苗
山の麓の神社にとても風流な巫女がいた。
もともと巫女は風流で、人に害を与える事なんてなかった。
老いた亀を飼っていたが、大変貧しく食べるものもなく、亀に餌をやることもできない。
毎日沐浴し身を清め、いつしか肩のところで千切れてしまった一枚きりの巫女服を着た。
いつも野で菜をつんで、それを食べて生活していた。
神社にいるときは常に境内の掃除を心がけた。
菜を調理し、微笑みを浮かべ、それを人に分け与える。
常にそれを心がけていた。
その心がけは不良天人も真っ青である。

さて、いつのことであったか。
この風流な様に神仙が感動し、巫女は春の野で菜をつみ、仙草を食べて空に飛んで行った。

なんとも不思議な話である。





「それから、三ヶ月後くらいだっけな。あいつが神社に帰ってきたのは」
「はあ……」

白黒の魔女は博麗の巫女の昔を語った。
青白巫女は滅多に聞く事のできない昔語りに耳を傾けていた。

「三ヶ月も何してたんでしょうか?」
「幻想郷中を回って来たようだ。広くない幻想郷を、三ヶ月もかけてな」

幻想郷を見て回るのに、三ヶ月は長いのか、短いのか、青白の巫女にはわからなかった。

「私は霊夢がいない間も、ちょくちょく神社に顔を出していたんだ」
「それは今も変わっていませんね」
「ああ。変わっていないな」
「そのころはまだ魔理沙さん、『うふふ』って言ってたんですか?」
「あー…… 言ってた気もするがそんな過去はなかった気もするな」

青白のからかいも何のその。
白黒はどこか懐かしむように、遠くを見つめた。


「帰ってきた日。私が行くとあいつは縁側に腰掛けててな」
「なんか目に浮かぶ光景ですね」
「まあな。で、開口一番『やっぱり自宅で食べる霞は一味違うわね』って言ったんだ」
「霞…… ですか?」
「ああ、そりゃあもう、美味しそうにむしゃむしゃと食べていたさ」

そう白黒は言うものの、青白はそんな紅白を見た事はない。
それでもどこか、もの寂しげな表情で白黒は続けるのだった。

「そう聞いた時、変わってしまったんだなぁ、としみじみ思ったよ」
「『変わった』ですか?」
「ああ。言っただろう。『風流で人に害を与える事なんてなかった』って」
「……その話、嘘ですよね」
「さあな。ただ、私は正直者だぜ」

青白巫女はどうも納得いかなかった。

「じゃあ、どうして、霊夢さんは最近、霞を食べたりしないんですか?」
「そりゃあ――」

何を聞くんだ、とでも言いたげな目で青白を見やる。


「菜をつむのにも、霞を食べるのにも飽きたからだろう」

そう言うなり、白黒は何処かへ行ってしまった。
残された青白巫女は、今の紅白のあまり風流でない様子を浮かべ、一人納得したのだった。
前半は今昔物語集の「女人、依心風流得感応成仙語」から。
解釈とか変でも大目に見てください。

なんか嘘っぽいですけどね。
らない
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 03:40:26
更新日時:
2011/04/01 03:41:58
評価:
0/4
POINT:
31108
Rate:
1245.32
簡易匿名評価
POINT
0. 31108点 匿名評価 投稿数: 4
名前 メール
評価 パスワード
<< 作品集に戻る
作品の編集 コメントの削除
番号 パスワード