タイトルのない物語

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 01:54:56 更新日時: 2011/04/01 01:54:56 評価: 4/8 POINT: 4031108 Rate: 89580.73

 

分類
百合
悪魔×人間
絵本風(※絵は無い)





あるところに悪魔が棲む森がありました
とても怖い悪魔です
誰もその森に近寄ろうとはしませんでした

ある森に人間の女の子が住んでいました
女の子はその森が大好きです
いつも傍に優しい誰かが居てくれるから


女の子は今日も話しかけます
閉じた瞳で優しい誰かに話しかけます
優しい人は
今日も喋らずに女の子の話を聞いていました





その悪魔はキレイなものが好きでした
金銀財宝いろんなものを集めました
でも
どれも悪魔を満足させてくれません

そんなある日
森に人間の女の子が迷い込んできました
悪魔は初めて知りました
ただただ微笑む人間がこんなにも美しいと


悪魔は人間に近づきません
そっと今日も見守ります





悪魔は思いました
女の子の目を治してあげたい
女の子にもキレイなものを見せてあげたい

でも
女の子の目が治ったらいっしょに居られません
悪魔は人間の敵なのです


かなしくてかなしくて
悪魔は





目を開けてごらん
とても怖い声の人がそう言いました
女の子は怖くて怖くて泣いてしまいそうでした

声が怖いのではありません
目を開けることが怖かったのです
だって生まれてから一度も光を見たことがなかったから

でも怖い声は優しく言います
目を開けてごらん
女の子はがんばって怖い声の人を信じました


そこにはキレイな財宝が積まれていました
女の子はこんなにキレイなものを見たことがありません
怖い声の人が目を治してくれた
ありがとうと言いましたがそこには誰も居ません

そこには紅い紅い血だけが落ちていました





悪魔は今日も一人です
キレイなものは全部捨てて
森でぼうっとしてました

片方だけの目で
がらんとした寒い森を見つめています

誰かが森にやってきました
悪魔が棲む怖い森
誰も訪れない暗くて寒い悪魔の森

どうせすぐ出ていくだろうと悪魔はほうっておきました
自分の恐ろしい姿を見れば誰でも逃げてしまうのですから

だけど
誰かは逃げていきません
何かを探すかのように悪魔に近づいてきます

とうとうその誰かは悪魔の前に現れて



森は少しだけ暖かくなりました







「お嬢様? 何をなされておいでで?」
「ああ咲夜? 見てわかるでしょう。絵を描いているのよ」
「お洋服が油絵の具塗れですわ。キャンバスは服でしょうか」
「この傑作が見えないとはおまえの目はガラス玉か」
「ガラスより希少な宝石ですわ」
「はん」
「あら……何枚も。これは、物語……?」
「フランに絵本を与えようと思ってね。よき姉は忙しいわ」
「絵本……絵本? いささかキャンバスが大き過ぎるような」
「小さくまとめるのは任せる。得意でしょ細かい作業」
「なるほど。よきメイドは忙しいですわ」
「よし、これで完成」
「五枚の物語ですか」
「これで過不足ないのよ」
「………………」
「おまえの『眼』にはどう映る?」
「それを私に訊きますか」
「悪魔の『眼』に訊きたいのさ」
「希少な宝石たるこの『眼』の答えはただ一つ」
「言ってみな」
「血よりも紅いこの『眼』には、素晴らしい物語だと映ります」
「だろう?」
「ええ」














二度目ましてなんだぜ
犬井ずぼんなんだぜ
猫井はかまじゃないんだぜ
犬井ずぼん
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 01:54:56
更新日時:
2011/04/01 01:54:56
評価:
4/8
POINT:
4031108
Rate:
89580.73
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0. 31108点 匿名評価 投稿数: 4
1. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 01:58:40
まさしく絵本のような物語。
ちょっとダークですがこんな絵本読んでみたいなと思いました!
3. 1000000 奇声を発する(ry ■2011/04/01 01:59:31
ホラーちっくでもあり優しくもあり
4. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 17:22:10
これはレミリアと咲夜の物語だったんじゃないか
なーんて妄想
5. 1000000 名前が無い程度の能力 ■2011/04/01 17:54:56
絵のない絵本話好き。描かれない絵を文字の想像でつくる楽しさ
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