閃き

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 01:45:56 更新日時: 2011/04/01 01:45:56 評価: 0/1 POINT: 7777 Rate: 780.20

 

分類
ノリのいい奴ら
 霊夢はアリスと約束があったので縁側で茶をすすって待っていた。
 そんな至福顔のところに、魔理沙が慌てた様子でやってきたのだ。

「おい霊夢……!」

 箒を持って駆け寄ってくる魔理沙は苦渋の顔だ。
 はたと目があって、数秒間時が止まった。

「私は……」
「何よ」
「実は……妖怪だったんだよー!!」

 キバヤシらしく、わななかせた右手の構えと表情。
 呆気にとられた霊夢の顔。
 それはすぐに崩壊した。

「な、何ですってー! 嘘でしょ、今まであんたのこと、人間だと思ってたのよ?!」
「それがどっこい、違ったんだよ! これは私も知らなかった話だ。親父が香霖のヤツにだけ告げていたらしい。俺は墓場まで持っていくとか言いやがってたんだ! 馬鹿親父が、私に黙ってやがったんだ……! これからとっちめに行くぜ!」
「ちょっと待って。あんた、それ、霖之助さんに聞いたの?」
「あー? そうだ。改まった顔で何言うかと思ったら爆弾発言だろ。爆弾すぎだろ。私の乙女心はズタズタだ! 香霖のヤツには面打ち一本で気絶させてやった。次は私をだまし続けてた親父のヤツに一本かましてやる!」

 勢い込んで拳を握る魔理沙。
 そこに来客者があった。

 アリス・マーガトロイドであった。

「ねえ、いいかしら?」
「よくねーよ」

 魔理沙の不躾な返事にアリスは顔をしかめる。

「何よ、あんたに用事なんてないのよ。私は霊夢に用事があるんだから」
「お前に用事が無くても私には用事があるんだ」
「え……、え? 何……?」

 困惑顔のアリスに魔理沙が言った。

「いや、お前にも関係がある話だった。実はな……。私は人間じゃないんだ」
「な、なんですって!」
「そして本当の名前をミセス・マーガトロイドというらしい。つまりな……」

 アリスが顔をしかめる。

「ちょっと、冗談も程ほどにしてよ! あんた、それ、本気で言ってるの……」
「本気だよ。意味が、分かるだろ?」
「わ、私のお母さんと、あなたの……、その、お父さんが……、ってこと……?」
「……あるいは」
「それ、ちょっと困る……」

 顔を赤らめ、目線を逸らすアリス。

「ちょっと、落ち着きなさい」

 霊夢が腋から後光を発しながら黙らせる。その輝きに抗える者は幻想郷には存在しない。
 今や霊夢の腋の注目度は幻想郷中においてトップであり、公平性を期すために株式会社ならぬ腋式会社が設立されているほどだ。ちなみに持腋の65%は八雲紫が保持している。物としては腋に宛がわれるべき布が配布される。霊夢が自ら脇布を引きちぎるわけだ。つまりざっくばらんに言うと、霊夢は自分の腋布を切り売りして生活しているんだよー!!

「ナレーションは黙ってて。今重要なのは魔理沙のことなの。それとアリス? あなたと魔理沙が百合の花を咲かせている場合でもないってのよ」
「咲かせないわよ……! って、そんな話じゃないし!」
「もっとそれより重要な問題があるの。わかるでしょ?」

 霊夢がニヤリと笑みを見せる。
 アリスは冷や汗をたらしていたが、研ぎ澄ませた顔に戻る。

「……黙ってろっていうの?」
「そういうこと」
「理由を聞かせてもらえるかしら」
「――魔理沙を苛められるから」

 150キロ直球ストレートがアリスに投げ込まれる。
 ふと魔理沙を見ると、こいつ何言いやがった、という顔をしている。

「ねえ、魔理沙。あなた、知られたくないわよね?」
「何を、いや、お前、まさか――」
「妖怪だと知られたら、色々と不都合なことがあるわよね?」

 それは――。

 霊夢に退治される。

 それと――。

「っていうかあんまり不都合ないんだけど」
「あるでしょ!」

 霊夢がふくれっ面で抗議する。
 首を傾げると、魔理沙はアリスに顔を寄せた。

「おいアリス、私が妖怪だと知られて何か困ることがあると思うか?」
「ある……のかしら。いや、わからないけど」
「もっともらしく霊夢が言うもんだから一瞬あせったけど、別に無いぜ?」

 カッと顔を赤くして霊夢が叫ぶ。

「私があんたを退治しなくちゃならないじゃない!」

 カッと魔理沙が顔を赤らめる。

「え、は、はは……何だよ恥ずかしいやつだな霊夢。ハハハ……」

 カッとアリスが嫉妬する。

「何これ……、え、私何なの……?」


「その必要はないわ……」

 ふと、時が止まったように思えた。
 驚いた霊夢が揺り動かした湯のみから水滴が飛ぶ。
 その水滴に平行移動する十六夜咲夜の姿が映し出される。

「霊夢は魔理沙を倒す必要なんてない。霊夢が魔理沙を倒すなら、代わりに私が倒す」

 ここに不可解な四角関係が誕生した。
 かに思えたが……。


「たのもーう!」

 そこに次なる訪問者があらわれる。妖夢であった。

「半人半霊のはずが半妖半霊になりましたと報告に来たぞ!」


 そこいらでいい加減アリスに嘘だとバレたわけだな。
生真面目は嘘が下手ね。
ニシシッピー連続殺人事件
作品情報
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1
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2011/04/01 01:45:56
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