あくまでも東方二次だと言い張るんだからねっ(言い張れませんでした)

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 01:27:30 更新日時: 2011/04/01 02:08:31 評価: 0/4 POINT: 8776 Rate: 352.04

 

分類
鼠の権蔵さん
ただの鼠話
つーかもう鼠って
干支過ぎてますやん
こんな鼠の話ばかり書いてるから
まかり間違って変な名前つけるんですよ
本当は横文字の名前が良かった
タグはこんなですが、中身は至って普通です
 鼠の行き倒れとはさして珍しくも無いもので。
 この日、ある一匹の鼠が空腹の余り妖怪変化を遂げようとしていた。それは例えば腹が減りすぎた事によるものであったり、それによる生への執着であったり、またやっぱり最期には米が食いたいなあなどと思ったり。
 最終的にとにかく何かしら食いたいと言う一心で妖怪になる事を決意したこの鼠は、最後の力を振り絞って民家へと入っていった。何の変哲も無いあばら家。中には男が一人住んでいる。

 かつて、その道の鼠仲間から(その道とはどの道の事を指すのかは分からないが)妖怪鼠への成り方を教えてもらっていた彼は(まだ言っていなかったがこの鼠はオスである)早速その方法を実行する事にした。
 即ち、怖れられる事、名前を持つ事、そして最後に、強い意志の力。どれもが、一朝一夕には達成できない事ばかり。しかし、やるしかない。彼にはもう他に、道など残されてはしないのだから。

 知恵を振り絞った。たかが鼠などと馬鹿にしてはいけない。窮鼠猫を噛むと言う諺もある。窮した鼠は、思いもよらぬ力を持つのだ。まあ、尤もその諺で鼠が持った力と言えば猫を一噛みする程度のものだったのだが。
 結果、「とにかく驚かせれば良いんじゃね?」との結論に達し、彼は行動を開始する。映画で言うと、二十分が過ぎた辺り。本編の始まりであった。

 まず、天井裏を走り回った。ひたすら鳴き喚き続けて。ちゅーちゅーどたどたちゅーどたどた。やかましい。
 家主の男もこれには仰天したようだが(文字通り、仰天である。この場合は仰天井だが)そこはやはり男の子。手元にあった棒で天井を一突きすると、豪快な音とともに鼠の怪音は鳴り止んだ。

 今度こそ驚いたのは鼠である。力の限り天井を突かれた物だから、その衝撃は並大抵のものではない。生来が陰を暗躍する動物のため、身が縮こまって動けなくなってしまった。
 おいおい怖えーよ超怖えーよ。もう妖怪になんてなるの止めてしまおうか。そう本気で考える程度には、ビビリ上がってしまっていた。しかし、前述のように妖怪にならなければ待つのは死のみである。現実は、厳しい。
 と言う訳で、再度挑戦。ちゅー、ちゅ、ちゅー、とたとた、ちゅー、とたとた。心なしか、鳴き声に勢いが無い。最早走り回ると言うよりも歩き回ると言った方が良いような様相だが、それでも彼は勇気を振り出していた。

 ちゅーちゅー、とたとた、ちゅーとたた。まさかまだ懲りないのか。それなりに強い力で突いたつもりだったのだが、この鼠は随分と肝が据わっている。感心する事しきりではあったが、流石にこの調子で暴れられてはおちおち寝る事も出来ない。
 ついに、これを持ち出す時が来たのだな。そう呟いてその場を離れた男が、次に持っていたのは刃の白くきらめく槍であった。

「こいつは家宝なんだ。これで昇天できるのを、冥土の土産にしなっと……」

 そう言って、天井に狙いを定める。ちゅーちゅー、どたどた。男の顔には、今一筋の。平常時ではない狩猟者の顔、狩る者の顔が浮かんでいた。
 一向に下から反応が無い事に、鼠が調子に乗り始めたのだろう。音が段々と大きくなっていく。どたどた、ちゅーちゅー。男は、槍を構えたままじっと天井を見つめている。

 突如、甲高い音が鳴り響いた。およそ、人の身から発せられたとは思えぬ、その正体は音ではなく声であった。男の、裂帛の気合。その叫び声が、周囲にこだまする。
 浅い。男は槍の手応えからそう感じた。まだ、仕留めるには至っていない。どこだ、どこにいるのだ。男は耳を済ませた。

 ぎし、ぎしぎし。

 そこか。右の方から音が聞こえた。すかさず槍を天井から引っこ抜き、構えなおす。二度、裂帛の気合を込めた一撃を発しようとした時、後ろの方からまた音が聞こえた。
 なんと面妖な。音も立てずに、自らの身体を移動させたと言うのか。そう思った刹那、音があらゆる方向へと伝播した。みしみし、ぎしぎし。すわ何事ぞ。何事ぞ、ではない。
 天井が、崩落した。元々ボロかったと言うのに、そこへ男の渾身の一撃。それが致命傷となったのだ。

 もうもうと埃が立ち上る中、げほげほりと咳をしながら這い出てくる男が一人。槍はまだ瓦礫の下だ。ああ、えらい目に会った。そうした男の目の前には小さい動物。目と目が合う。かの鼠である。運命の、出会いであった。
 鼠が面食らったのも無理は無い。まさかの天敵と鉢合わせ。正直な所、掴みかかられでもしたら一発でげーむおーばーである。男は男で、いきなりの鼠の出現に意識が追いついていない。と言うか、既に意識はこの家をどうするかの方に向いてしまっている。両者の間に、気まずい沈黙が流れた。

 膠着を破ったのは鼠の方であった。何をやっているのかと気付き、せめてでもと男めがけて疾走。その腕にガジリと噛み付いた。
 いてえと叫び声を上げる男。腕を振り回すも、鼠は中々離れてくれない。それどころか、どんどん食い込んでくる。
 ああ、もう懲り懲りだ。鼠とはなんて怖ろしいのだろう。やっとの思いで鼠を引き剥がした男は、そのまま何処かへと去っていってしまった。後には、鼠だけが取り残された。


 あれ、と思った。何だか、全くお腹が空いていないのだ。それどころか、妙に元気になっている。
 この時の鼠にはまだ分からなかったが、彼は知らぬ間に妖怪変化へと成っていたのだ。や、やったー。死なないぞー。鼠は喜びに打ち震えていた。

 ちなみに、彼の種族は天井鼠とされている。名前も、天井鼠。全てあの家に住んでいた男が名付けたものだった。この鼠、あれから人の家の天井になどは一度も出没していない。
 その後気ままに妖怪暮らしを楽しんでいた鼠だったが、ある時それはそれは麗しい、それこそもう、鼠とは思えないような鼠妖怪を見つけて、居てもたまらず求婚した。

「うん? なんだい君は。ああ、私のお供に加えて欲しいと。いやあ物好きだね。でも丁度良かった、私もこの国の事にはまだまだ不得手で」

 お供ってなんだ。そんな事を感じる間もなく、鼠はひょいとつままれてかごの中へ入れられてしまった。

「中に居る子達とも仲良くな。あ、そうだ、君の名前を決めてなかったな。日本だし、権蔵。権蔵でいいか。うん、君の名前は権蔵だ。これからよろしく、権蔵」

 ちょっと前に通り過ぎた農家のおっちゃんの名前だった。彼は、権蔵になってしまった。



 後に妖怪鼠のリーダーとして働く事になる、権蔵の誕生秘話であった。




ナズーの鼠には個別に設定が付いてるんだよ!派なんですね。うん。

東方キャラの名前が一文字も出てこないのは仕様。
ポン酢だったり酢酸だったりするもの
作品情報
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1
投稿日時:
2011/04/01 01:27:30
更新日時:
2011/04/01 02:08:31
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