バインバイン

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 01:25:17 更新日時: 2011/04/01 01:25:17 評価: 2/8 POINT: 2046662 Rate: 45481.93

 

分類
いや、だって宇宙とか膨張してるから大丈夫だって青いタヌキが言ってたし…
「ああ、実はこれな……」

 ここだけの話だけど、と赤い髪の死神が自分の耳元に口を寄せた。

「――霊魂を詰めてあるんだよ」





 白玉楼の自室にて。
 静かに座し、目を伏せ、精神を統一させるふりをしながら、妖夢は思い返していた。
 それは、先日の夜。宴会の席でのことであった。
 顔馴染みの、局部的にビッグな死神へ、妖夢は酔いに任せて訊ねたのだ。
 どうしたらそのような胸を持つことができるのか、と。
 すると死神は、厳かな顔をして曰く――




「――詰め物、か」

 呟いて、妖夢は目を開ける。
 聞いたことはあった。
 誰とは言わないが、知人の銀髪メイドもそのようなことをしているらしい、という噂である。
 噂の真相を探りに行った天狗が数名、消息不明になったという。
 しかし、霊魂を詰めるとは予想外であった。なるほど、夏場はひんやりして気持ちいいかもしれない。感触も悪くはなさそうだ。
 そう思いながら、妖夢は傍らの半霊をぷにぷにとつつく。

「しかし……」

 ため息を吐きながら、妖夢は暗い眼差しを半霊へと向ける。
 方法はわかっても、己には実践できそうにはない。
 意気込みはあった。覚悟もある。主やその友人達から憐れみの視線を向けられなくなるならば、何を躊躇することがあろうか。一緒に風呂に入った時の、「うわ、かわいそう……」という感じの主達の目を思い返して、妖夢は拳を血のにじむほど握り締めた。

 だが、霊魂を詰めるというこの方法、妖夢には用いることのできぬ理由があった。
 そう、この方法は、霊を使役できる者にしか許されないのだ。
 己の主のように全ての霊が平伏すような存在や、職業柄霊魂を扱う死神、はたまた怨霊を統べる火車。
 そのような能力を持った一部の者にしか、この方法を使うことはできない。
 そういえば、知り合いの火車。あれの胸もそれなりに大きいが、もしや……。

 いや、そんなことはどうでもいい。
 今、目の前に立ちはだかっているのは、己には越えられぬ、能力という壁だ。
 自分には、霊を己の意思で動かせるような力はない。物を斬るしか能のない半人である。もう半分は、詰めようとするそれと同じく霊である。
 同類をそのようなことに使うのも忍びない……というわけでもないが、自分の命令で素直に胸元へ入ってくれるような霊魂など、求めるべくもない。
 そこまで思考を巡らせて、ふと妖夢は何か引っかかりを覚えた。己のこれまでの思索に、何か重大な見落としがあるような……。
 その時、ある種のひらめきが、電流のように妖夢の体を駆け巡った。

「あるじゃないか、私が好きなように使役できる霊魂が……!」

 ……ごくり。
 喉を鳴らして、妖夢は傍らの半霊を舐め回すように見つめた。

 しかし、そこで新たな問題が存在することに、妖夢は気付いた。
 己の半霊は一つしかないのだ。
 目指すものは、双丘と形容されるツインドライブである。いや、もはや丘ではない、自分は山を手に入れるのだ。
 それなのに、そのための半霊の数が足りない。
 どうすれば……。
 その時、妖夢の脳裏に突如として師の言葉が甦った。

『取り敢えず、斬ってみればいいじゃん』

 妖夢は一筋の涙を零した。師の教えは、どのような窮地にあっても自分を導いてくれる。
 空に、師であった祖父の面影を浮かべて、妖夢は頷いた。
 二つに斬って増やそう。

「動くなよ」

 己の半霊を正面に置く。
 脇差しに手をかけ、妖夢は己の半分へそう言葉をかけた。
 真っ白な半霊がぷるぷると小さく震えている。
 白刃を抜き放ち、虚ろな瞳で妖夢はそれを見据える。正気ではない、曖昧の様相である。
 握る脇差し、白楼、霊を斬るための刃である。
 脱力、そして。

 己の半霊を半分に断ち斬った。

 そのまま白楼をまた鞘に納めてから、妖夢は満足げに息を吐く。
 これでよし。
 二つになった半霊を掴もうと手を伸ばす。
 すると、そこへ見知らぬ誰かの手が同時に重なった。

 ――何だ?

 訝しげに横を向くと、怪訝な表情をした自分がこちらを向いていた。




 ――それから二人に増えた妖夢は、それぞれの半霊をまた己のために断ち斬った。
 妖夢は四人になった。また二つに斬る。妖夢は八人になった。
 妖夢達は繰り返した。取り憑かれたように半霊を斬り続け、そして妖夢は増え続けた。
 すぐさま白玉楼は妖夢で溢れ返り、二百由旬を埋め尽くすそれに押し出された幽々子は紫に泣きついた。
 紫は、妖夢を一人だけ取り押さえて縛り付け、隙間を開き、残りの妖夢を宇宙の彼方へと放り捨てた。
 今でも、深遠なる宇宙の片隅で妖夢は増え続けている……。
小町「はぁ、霊魂を詰めてる? こりゃ自前だよ。酒の席での冗談じゃないか」
妖夢「えっ」
小町「えっ」
RとKとその他愉快な仲間達
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 01:25:17
更新日時:
2011/04/01 01:25:17
評価:
2/8
POINT:
2046662
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3. 1000000 奇声を発する(ry ■2011/04/01 01:38:34
これは酷いwww
4. 1000000 euclid ■2011/04/01 01:51:48
待ってました!(かなり)
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