魅魔様がバカヤロー解散する話

作品集: 1 投稿日時: 2011/04/01 00:28:23 更新日時: 2011/04/01 13:29:54 評価: 1/4 POINT: 1009221 Rate: 40369.84

 

分類
The
crazy
dream
of
''Bakayarou''
「あー外の空気は久しぶりだわー」

奇抜な帽子を被った麗しき女性が丑三つ時の暗い森の中を歩いていました。
今時、パーティでもこんな恰好はしないだろうと嘲笑されるかのような服装をしています。
そう、彼女は幻想郷という名のイカれた楽園に舞い降りた亡霊、魅魔でした。

「博麗神社の屋根裏で1日20時間寝るという仕事もそろそろ飽きたからねぇ、今日は思いっ切り暴れてやろうかい」

現代でいうNEETのような生活スタイルをさらっとカミングアウトしちゃう彼女はなんたって淑女。
いや、20時間寝るという荒技はコアラ並といったところでしょうか。
淑女じゃなくてコアラ女ですね。(ここで笑ってください)

「おっ? なにやら赤提灯が……幻想郷を混沌に陥れる前に腹ごしらえしていこうか」

したり顔で怪しい屋台の暖簾をくぐっていく彼女の後ろ姿はまさに因果のファンタズマゴリアですね。
ところで因果のファンタズマゴリアってなんですかね。

「やあ、やってる?」
「はぁ、やってますよ」

店主は愛想の良い笑顔を浮かべているようで、どこか気だるそうな雰囲気を醸し出していました。
ちなみにその店主の名前はミスティア・ローレライといいます。
ローレライシステムとは一切関係がないということは皆さんならわかりますね。

「なんでこんな所で屋台をやってるんだい?」
「商売……ですかね」
「ああ……うん」

微妙な返答が返って来たために、微妙な気分になってしまう魅魔でしたが、気を取り直して屋台のお品書きを見てみました。

「うーん、じゃあこの『煮込みウナギ』をひとつ頂戴」
「あ、ごめんなさい……それ来月からなんですよ」
(がーんだな……出鼻をくじかれた)

微妙な気分から、段々陰鬱な気分へと変わってきた魅魔。
飯を食うのに残念な気分になるのがたまらないというのは、亡霊も同じということでしょう。

「じゃ……この『ウナギ炒め』を」
「ですからごめんなさい。ウナギ炒めも来月からなんですよ。春だけのメニューでしてどうも」
「今まさに春じゃないかい……?」
「何か言いましたか」
「いや……」

魅魔はいよいよ腹がたってきました。
永いこと亡霊をやっていると短気になりがちで嫌ですね。

「参ったな……お品書きにはその二つしか書かれてないじゃないか……何を食えっていうんだい」
「お酒でも頼めば良いじゃないですか。ここの常連さんは皆席に着くと同時にお酒を注文しますよ。でもねぇ、先にお酒を呑まれると酔っちゃって折角の私の料理の味がわからなくなるでしょう。私それが非常に嫌でしてね。そりゃあ、ウチは居酒屋ですよ。赤提灯ぶら下げてますからね。でもね、やっぱり料理にプライド持ってるんですよ。ですから、お酒は料理を食べた後でも十分間に合うんじゃないかな、って常々思う訳なんですね」
「じゃあ料理を出しなよ」
「ないですスイマセン」
「……じゃあ酒を」 
「あ、そういえばさっき呑んじゃいました、私が」
「いい加減にしろ!」

幻想郷という名のマッドなユートピアに舞い降りた亡霊、魅魔は激昂しました。
しかしその時、思い切り立ち上がった為に勢い余って屋台の屋根に頭をぶつけたのは失態でした。
野球で例えると、外野フライエラーと言ったところでしょうか。

「お客さん、どうしましたか」
「この期に及んで『どうしましたか』じゃないだろう! アンタ料理も出せない、酒も出せない、しかも自分で呑んだって客を舐めてんのかい!?」
「まあまあお客さん、なんか極道の女みたいな迫力ですよ。近所迷惑なんで遠慮してください」
「こんな森の中で『近所』なんていう概念はないよ!」

ここにきて魅魔の怒りは最高潮に達しましたが、そこに白黒魔法使い、霧雨魔理沙が偶然通りかかりました。
彼女は何やら見覚えのある後ろ姿が、大声で怒鳴っているのを見て(さらに屋台の屋根にしょっちゅう頭をぶつけているのを見て)知らない振りをしようとしましたが、どう見てもその後ろ姿はかつての自分の師匠だったので、懐かしい思いにかられました。
それと共に、想い出は想い出として綺麗なままで残しておくことができないことを悟りました。
人は数年で変わると言います。
故郷もちょっと離れている間に変わると言います。
妖怪亡霊魑魅魍魎が変わらない訳がありません。
魔理沙はいよいよ悲しい気持になってきましたが、現実から目をそらすことが自分の弱さに繋がるのだと奮起し、思い切って喧嘩している二人の間に割って入りました。

「み、魅魔様……ですよね。何があったんですか」
「うわっ、魔理沙」
「『うわっ』て……」

魅魔はかつての弟子の姿を見て落ち着きを取り戻しました。
彼女もまた、懐かしい思いにかられたのでしょう。

「で、どうしたんですか」
「どうしたもこうしたも……この店が飯も置いてないわ酒も置いてないわで」
「えぇ……あ、お前、この前会った夜雀とかいう……」
「アンタ誰?」
「お前……」

鳥頭のミスティアに顔を忘れられ、魔理沙は悲しみ(哀しみ)の背負い過ぎで究極奥義を使えそうな気になりましたが、やっぱり使えなかったので悲しみがさらに2乗されました。
2乗ですよ。
2倍じゃないのですよ。
この悲しみは絶大ですね。

「久しぶりだねぇ魔理沙……ところでアンタ最近アレな喋り方するんだろう? 言ってみて頂戴よ、『だぜ』って」
「だぜ」
「うわぁ……アンタやっぱり『うふふ』って言ってた方が可愛いよ」
「もう嫌だ!」

『だぜ』と言っただけで最愛の師にドン引きされた上、昔の話をほじくり返された魔理沙は右腕で顔を覆い隠して走り去っていきました。
それは涙を隠す為だったのかもしれません。
彼女のKANASHIMI、戸惑い、憤り……そういった負の感情は銀河系宇宙を内包するかのごとくでした。

「なんで泣いていたんだろう……」
「さあ」
「しかもここにきてタメ口……いよいよ商売する気がなくなってきたねアンタ」
「でもさぁ、幻想郷って適当な生き方してても食いっぱぐれることってほとんどないんだよね」

店主はもはや開き直っています。
この腹立たしいドヤ顔にますます怒りを増幅させる魅魔でしたが、これ以上怒ると成仏する勢いなので心を落ち着かせました。
それと同時に屋台の屋根にまた頭をぶつけました。
座ればいいと思います。

「何か食べたかったらさぁ、頼み方ってものがあるんじゃない?」
「アンタぶちのめされたいの?」
「ぶちのめされたくはない」
「………」

魅魔の怒りはアンドロメダを巻きこまんばかりの勢いにまで膨れ上がりましたが、大人な対応を見せてやろうと再び心を落ち着かせ、意を決して言いました。

「……スイマセン、何か食べさせてください」
「うん、まぁ、河童巻きなら作れるよ」
「なんでここまで引っ張っておいて河童巻きなんだい!? 河童文化に迎合しているのか!」
「いやー河童巻き……へへ(笑)」
「笑い方がイラつく」
「とりあえず今から作るんで」
「なんで居酒屋で河童巻きなんだ……なぜだ、お品書きに『煮込みウナギ』と『ウナギ炒め』しか書いてないくせに……わけがわからない……」
「あ、ごめん。酢ないんで作れないわ」
「別に酢飯じゃなくても良いよ」
「酢飯じゃない寿司なんてただのおにぎりよ」
「ふざけるな! 客をコケにするのも大概にしくぁwせdrftgyふじこlp;」
「なんて言ってるかわかんない」

ちなみに魅魔は『おにぎりディスってんじゃねーぞトーシロ!」みたいなことを叫んだつもりでしたが、凄い剣幕で叫んだ為に聞きとってもらえなかったようです。
何事も落ち着きが大切という良い教訓ですね。

「結局何もなかったじゃないか……」
「すいません、今日はもう店閉めるんで」
「帰れと?」
「うん」
「よし、じゃあ表出ようか」

魅魔はその時最高に良い笑顔を浮かべました。
背筋に寒気が走ったミスティアは、その笑顔を振り切るかのように全力で逃げ出しましたが、魅魔はその跡をとびっきりの笑顔で追いかけました。
二人はどんどん加速していき、その様はまるで幻想のマッハ号、否、赤い彗星のように厳かに煌びやかに淡い光となって遠ざかっていくかのようでした。
ところでこの二人に『赤い』要素がありませんね。
外見だけを見るから駄目なのでしょう。 
つまり二人は共産主義(ry














「あー怖かった……」

幻想郷という名のクレイジーな桃源郷に舞い降りた亡霊、魅魔はいつの間にかミスティアを追い越し、そのまま夜空へと駆け上がっていきました。
そう、彼女は彗星になったのです。
間一髪で危機を免れたミスティアは自分の屋台まで戻って来ていたのでした。

「あ、よく見たらウナギ余っていた……酒も酢も……なんだこれ、商売できたんじゃないの。たまげたなぁ、怒らせ損だよ(笑)」

ミスティアは飛びきり素晴らしいゲス顔を浮かべ、余った酒を呑みながら、幻想の夜空に輝く彗星をいつまでもいつまでも眺めていたのでした。
この彗星はいつしか、幻想郷の皆を見守る心優しい亡霊の化身だと言われるようになったということです。(魔理沙は否定する)
魅魔だけに、見守る―――そういうことです。
魅魔様がバカヤロー解散する夢を見たけど、それをSSに生かせなかった。
このKANASHIMIを次回に繋げます。
暇簗山脈
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/04/01 00:28:23
更新日時:
2011/04/01 13:29:54
評価:
1/4
POINT:
1009221
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40369.84
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1. 1000000 マミさま ■2011/04/01 00:46:26
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